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【発明の名称】 流体噴射加工糸
【発明者】 【氏名】近野 哲

【目的】 モールヤーンに似た、独特の鞘糸と芯糸とからなる流体噴射加工糸を提供する。
【構成】 鞘糸と芯糸とからなる流体噴射加工糸であって、該鞘糸のヤング率が70〜100g/dの再生セルロースマルチフィラメント糸である流体噴射加工された複合糸。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 鞘糸と芯糸とからなる流体噴射加工糸において、該鞘糸がヤング率70〜100g/dの再生セルロースマルチフィラメント糸であることを特徴とする流体噴射加工糸。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は流体噴射加工糸に関するものであり、特に詳しくはラッセルモールヤーンのような外観をもつ流体噴射加工糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】芯糸と花糸で構成されるモールヤーンは、その特異な意匠効果から各種用途に多用されている。一般に、モールヤーンはラッセル編機を用いた、いわゆる、ラッセルモールヤーンと、撚糸機を用いた、いわゆる、撚糸モールヤーンが知られているが、特に前者のラッセルモールヤーンは、花糸に方向性がなく、ソフトでボリューム感に富むものとして好評であるが、ラッセル編機を用いるために生産性が低く、コスト高という問題点を有する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、生産性並びにコスト面で優れた、ラッセルモールヤーンのような外観を有し、ソフトでボリューム感に富んだ風合いを有する流体噴射加工糸を提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、鞘糸と芯糸とからなる流体噴射加工糸において、該鞘糸がヤング率70〜100g/dの再生セルロースマルチフィラメント糸であることを特徴とする流体噴射加工糸、にある。本発明の流体噴射加工糸に用いる鞘糸は、ヤング率が70〜100g/d、好ましくは70〜90g/dの再生セルロースマルチフィラメント糸である。70g/d未満ではラッセルモールヤーンのような外観とは異なる、いわゆる単なるタスラン加工糸となり、100g/dを越えると風合いが硬くなり、又、製造が困難である。 上記のような特定のヤング率を有する再生セルロースマルチフィラメント糸は、いわゆる、ネットプロセス法や連紡法によって得られるものである。
【0005】本発明において鞘糸に用いる再生セルロースマルチフィラメント糸とは、キュプラ、ビスコースレーヨンをいう。本発明の流体噴射加工糸は、鞘糸に用いる全ての再生セルロースマルチフィラメント糸が上記の特定のヤング率を有する再生セルロースマルチフィラメント糸で構成されていることが最もよい。
【0006】なお、本発明の流体噴射加工糸は、他のフィラメント糸と混用してもよく、例えば、ヤング率70〜100g/dの再生セルロースマルチフィラメント糸が糸表面を構成する割合が、好ましくは20%以上、さらに好ましくは50%以上の鞘糸と、芯糸とからなる複合糸も包含するものである。特に好ましくは、本発明に用いるヤング率70〜100g/dの再生セルロースマルチフィラメント糸が鞘部の全てを構成しているような鞘芯構造の複合糸がよい。
【0007】再生セルロースマルチフィラメント糸と他のフィラメント糸との混用は、同種又は異種、70〜100g/dの範囲内並びに範囲外の組合せのヤング率の異なるものなどの再生セルロースマルチフィラメント同士の組合せが挙げられる。また、70〜100g/dの再生セルロースマルチフィラメント以外の例えば羊毛、綿、麻、ポリノジックレーヨン、ライオセル(LYOCELL、コートルズ社製、商品名テンセル){繊維学会誌(繊維と工業)、48〔11〕p.584−591(1992)参照}、アセテート、ポリエステル等の合成繊維との組合せが挙げられる。合成繊維は、例えば、単糸デニールが0.05〜0.5デニールのいわゆる極細繊維や単糸デニールが0.5デニール以上5デニール程度のレギュラー糸、部分延伸糸(POY)の延伸仮撚糸(DTY)、スピンテイクアップ糸、スピンドローテイクアップ糸等の高速紡糸糸条、高収縮ポリエステル繊維やポリエステル異収縮混繊糸等が挙げられる。
【0008】混用の方法は、特に限定されるものでなく、例えば、混繊、交撚、カバリング、仮撚加工、流体噴射加工等が挙げられる。再生セルロースマルチフィラメント糸のデニールは、希望に応じて適宜選定すればよく、例えば単糸デニールは1〜3デニール、トータルデニールは50〜150デニールが好ましく用いられる。又、単糸断面も丸型、偏平等の異型断面を用いてもよい。
【0009】本発明の流体噴射加工糸は、70〜100g/dのヤング率の再生セルロースマルチフィラメント糸を鞘糸に用い、芯糸とともに流体噴射加工することによって得られる。給糸量が多い鞘糸と給糸量が少ない芯糸との給糸量(オーバーフィード率)は、少なくとも50%以上の差があることが好ましく、さらに好ましくは60〜150%の差をもたせて鞘糸構造を発生させるとラッセルモールヤーンに酷似した、一味違ったものが得られるので好ましい。
【0010】本発明の流体噴射加工糸は、鞘糸と芯糸との糸長差が30〜100%であることが好ましく、さらに40〜80%が好ましい。本発明の流体噴射加工糸に用いる芯糸は、鞘糸と同じ再生セルロースマルチフィラメント糸、および異なる再生セルロースマルチフィラメント糸、又は本発明で鞘糸として特定するヤング率並びに特定する範囲外のヤング率の再生セルロースマルチフィラメント糸が挙げられる。さらに、アセテート、ポリエステル等の合成繊維が挙げられる。合成繊維は、例えば、単糸デニールが0.05〜0.5デニールのいわゆる極細繊維や単糸デニールが0.5デニール以上5デニールのレギュラー糸、部分延伸糸(POY)の延伸仮撚糸(DTY)、スピンテイクアップ糸やスピンドローテイクアップ糸等の高速紡糸糸条、高収縮ポリエステル繊維やポリエステル異収縮混繊糸等のマルチフィラメント糸、仮撚加工または噴射加工した嵩高加工糸が挙げられる。
【0011】また、必要に応じて艶消し剤、顔料、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、染色性や接着性向上剤等を添加したものや、単糸断面が丸型、Y型、L型、W型、三角、偏平等の異型断面を用いてもよい。芯糸の単糸デニールは、鞘糸のものよりも大きい方がハリや腰があって好ましいが、5デニールを越えるとソフト感が損なわれることがある。芯糸のトータルデニールは30〜150デニールが好ましく、さらには50〜150デニールがよい。
【0012】本発明の鞘糸と芯糸とからなる流体噴射加工糸は、一般的には製編織し布帛とするが、目的に応じ他のフィラメント糸や紡績糸と交編織して用いられる。例えば、単糸デニールが0.1〜3デニールの通常のポリアミドやポリエステル糸条、4000m/分以上や6000m/分以上の巻取り速度で紡糸したスピンテイクアップ方式や、4000m/分以上の巻取り速度で紡糸−延伸−巻取り−を一連工程で行うスピンドローテイクアップ方式で得られたポリアミド糸条やポリエステル糸条(嵩高糸を含む)を交編織して用いられるが、50%以下で混用すると鞘糸と芯糸とからなる流体噴射加工糸の特徴がある布帛となり好ましい。
【0013】また、本発明の流体噴射加工糸の、鞘芯構造嵩高糸と弾性繊維とを交編織して伸縮性の布帛としてもよい。この場合、弾性繊維は、20〜50デニールが好ましく、さらには30〜40デニールのポリウレタン弾性繊維で、ベア糸使いでもカバリング糸使いでもよい。カバリング糸としては、シングルやダブルカバリング糸、流体噴射加工等によって得られる被覆嵩高弾性糸があるが、カバリングする糸や被覆する糸としては本発明の流体噴射加工糸で鞘糸して用いられる再生セルロースマルチフィラメント糸と同じものを用いると風合的に好ましい。
【0014】
【実施例】以下、本発明を実施例で具体的に説明する。尚、ヤング率は、1%伸長の応力をデニールで除した値である。
【0015】
【実施例1】鞘糸は、ヤング率が70g/d、80g/d、100g/dの異なる3種類の100d/40fのビスコースレーヨンマルチフィラメント糸を用いた。芯糸は、ヤング率が80g/dの100d/40fのビスコースレーヨンマルチフィラメント糸を用いた。流体噴射加工する際のオーバーフィード率は、鞘糸が120%、芯糸が5%で、115%のオーバーフィード率の差として、下記の流体噴射加工条件で加工し、鞘糸と芯糸の糸長差が70%の鞘芯構造の流体噴射加工糸を得た。
流体噴射加工条件エアー圧;7kg/cm2水付与;有り糸速;80m/分得られた流体噴射加工糸を用いて14GGの横編地を作成した。
【0016】得られた編地は、流体噴射加工糸がラッセルモールヤーンに似ているが一味違う外観とソフトでポリューム感に富んだ風合いにより、ラッセルモールヤーンに類似のソフトでポリューム感のあるものであった。
【0017】
【比較例1】鞘糸としてヤング率が60g/dのものを用いたほかは、実施例1と同様にして流体噴射加工糸を得た。得られた流体噴射加工糸は、従来のいわゆるタスラン加工糸と殆ど変わらないものであり、特に外観は何等目新しくなかった。
【0018】
【比較例2】鞘糸に巻取り速度5500m/分のスピンテイクアップ方式で紡糸して得られた50d/24fのナイロン66マルチフィラメント糸(沸水収縮率4%)、芯糸に20d/7fのナイロン66マルチフィラメント糸(沸水収縮率12%)を用いた以外は実施例1同様に流体噴射加工糸を得た。
【0019】得られた流体噴射加工糸は、従来のいわゆるタスラン加工糸であり、特に外観は何等目新しくなかった。
【0020】
【実施例2】芯糸に20d/7fのナイロン66マルチフィラメント(沸水収縮率12%)を用いた以外は実施例1と同様にして流体噴射加工糸を得た。得られた流体噴射加工糸を緯糸に用い、経糸に70d/68fのナイロン66マルチフィラメント糸を用いて平織物を製織し、常法に従い染色、仕上げ加工した。 得られた織物は、ラッセルモールヤーンに似た外観でありながら、従来のものとは一味違う独特の外観とソフトでボリューム感に富んだ風合いに加えてハリ、腰のあるものであった。
【0021】
【発明の効果】本発明の流体噴射加工糸は、フイラメント1本1本が絡んでおり、フイラメントの先端は切れずにループ状に、立体的(三次元的)にふくれており、従来のラッセルモールヤーンに似た外観を有しながら、従来のものとは一味違った外観をもち、極めて生産性に優れているものである。
【0022】したがって、編地にした場合、凹凸感があり、カバーフアクターが良く、目付が少なく、軽くて、ソフトでボリューム感に富んだ風合いのものが得られる。
【出願人】 【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成工業株式会社
【出願日】 平成7年(1995)6月23日
【代理人】
【公開番号】 特開平9−13238
【公開日】 平成9年(1997)1月14日
【出願番号】 特願平7−157825