トップ :: D 繊維 紙 :: D02 糸;糸またはロ−プの機械的な仕上げ;整経またはビ−ム巻き取り




【発明の名称】 異染混繊糸の製造方法
【発明者】 【氏名】新明 輝美

【氏名】小椋 東一

【目的】 染色性の異なる複数のフィラメント糸を均一に混繊して杢を生ぜしめ、更にかかる杢の調子の調整が可能な異染混繊糸の製造方法を提供すること。
【構成】 隣接する紡糸延伸装置に、互いに染色性の異なるポリマーを供給して複数のフィラメント糸を紡糸し、該複数のフィラメント糸の沸水収縮率の差が1.2%以下、伸度の差が8.0%以下となるように延伸、熱処理を施し、少なくとも1のフィラメント糸に流体交絡処理を施した後、一旦捲き取ることなく合糸し、次いで流体交絡処理を施す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 隣接する紡糸延伸装置に、互いに染色性の異なるポリマーを供給して複数のフィラメント糸を紡糸し、該複数のフィラメント糸の沸水収縮率の差が1.2%以下、伸度の差が8.0%以下となるように延伸、熱処理を施し、少なくとも1のフィラメント糸に流体交絡処理を施した後、一旦捲き取ることなく合糸し、次いで流体交絡処理を施すことを特徴とする異染混繊糸の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、染色性の異なる複数のフィラメント糸が混繊された混繊糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】染色性の異なる複数の合成繊維フィラメント糸からなる混繊糸は、これを編織した後染色を施すと染色部分が不均一に現れ杢調の特異な外観が得られるため、従来より種々の提案が存在する。
【0003】例えば、特開昭59−204937号公報には、ポリエチレンテレフタレートとカチオン染料可染性ポリエステルとを延撚機で混繊し(延撚混繊)、前記のような混繊糸を得ることが開示されている。また、特開昭49−19166号公報には塩基性染料可染性ポリエステルと酸性染料可染性ポリエステルとを同一の紡糸口金から紡糸して混繊し(紡糸混繊)、前記のような混繊糸を得ることが開示されている。
【0004】更に、特開昭3−279428号公報には、3000m/分以上の引き取り速度で溶融紡糸された沸水収縮率7〜12%のポリエステルフィラメントと、沸水収縮率5%以下のポリエステルフィラメントとを紡糸延伸後、一旦捲き取ることなく合糸し交絡処理を施すことが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記の如き従来技術には以下の如き問題点がある。すなはち、紡糸混繊法は製造設備が固定されるため、多品種小ロット的な生産にはそぐわず、また各糸条の熱収縮率や伸度等の物性を細かくコントロールすることが困難なため、杢の微妙な調整を行うことができない。また、延撚混繊法は混繊方法としては最も一般的で技術的にも確立された方法ではあるが、紡糸後に糸条を一旦パーンに捲き取る際、延撚の際、更には一旦捲き取られたパーンをを解舒する際等に若干の実撚が糸条に付与されて各糸条が規則的に集束するため、十分に均一な混繊が行えず、自然な異染効果が得られないという問題点があった。
【0006】更に、特開昭3−279428号公報に開示された方法によれば、各糸条に実撚を付与することなく混繊糸を得ることができるが、同公報に開示されたものは2種の糸条の熱収縮率差や伸度差が大きいため、得られた混繊糸は芯鞘状の構造となって一方の糸条のみが表面に現れ、特に染色性が著しく異なる異ポリマー糸を混繊すると熱収縮率差が生じ易く不自然な杢が発生してしまうという欠点があった。
【0007】このため、本出願人は先に提案をした特開平1−221505号等の紡糸延伸装置を用いた異収縮混繊糸の製造技術を鋭意研究し、該方法を改良して転用することにより、均一性に優れた混繊糸が得られることを見出し、本発明に至ったのである。
【0008】すなはち、本発明は前記の如き問題点を解決するものであって、その目的は、染色性の異なる複数のフィラメント糸を均一に混繊して杢を生ぜしめ、更にかかる杢の調子の調整が可能な異染混繊糸の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、隣接する紡糸延伸装置に、互いに染色性の異なるポリマーを供給して複数のフィラメント糸を紡糸し、該複数のフィラメント糸の沸水収縮率の差が1.2%以下、伸度の差が8.0%以下となるように延伸、熱処理を施し、少なくとも1のフィラメント糸に流体交絡処理を施した後、一旦捲き取ることなく合糸し、次いで流体交絡処理を施すものである。
【0010】本発明で用いるフィラメント糸としては、繊維形成性のポリマーであるポリエステル,ポリアミド,ポリオレフィン等を挙げることができ、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンオキシベンゾエート,ポリジメチルシキロヘキサンテレフタレート,ポリピバロラクトン等のホモポリエステルや、これらのポリエステル成分に第二酸成分として、イソフタル酸,スルホイソフタル酸を共重合させたものや、第二アルコール成分としてポリピレングリコール,ポリエチレングリコールを共重合させたもの等を用いることができる。
【0011】また、ポリアミドとしては、ナイロン6,ナイロン66,ナイロン610,ナイロン11,ナイロン12,ビス(パラアミノシクロヘキシル)メタンとドデカン二酸との縮合体や、これらのポリアミド形成成分間で共重合させたものや、他のジカルボン酸やジアミンを共重合させたもの等を用いることができ、ポリオレフィンとしては、ポリエチレン,ポリプロピレン等のホモポリオレフィンや、少量の第2成分を含むものを用いることができる。
【0012】更に、染色性の異なるフィラメント糸の組み合わせとしては、ポリエステルとポリアミドのように異なった種類のものを組み合わせても良いが、后加工や染色処理の容易性から同種のポリマーの共重合体で、染色性が大きく異なる組み合わせを選ぶことが好ましく、例えば、ポリエチレンテレフタレートとカチオン可染性ポリエステルとの組み合わせ等を挙げることができる。
【0013】次に、本発明方法で用いる紡糸延伸装置について説明する。かかる紡糸延伸装置は、所謂スピンドロー(紡糸直接延伸)装置と呼ばれるもので、例えば特開平1−221505号公報等に記載されたものを用いることができる。
【0014】図1はかかる紡糸延伸装置の概略を示す説明図である。同図に示す如く、通常の紡糸延伸装置では複数の紡糸系列(錘)が併設されており、本発明方法ではかかる2錘を1組として用いる。同図の場合、Sは紡糸部、Dは延伸部を示し、ペレット貯蔵槽1a,1bに貯蔵された各フィラメント糸の原料ポリマーは、溶融押出機2a,2bにより溶融されてギヤポンプ3a,3bにより紡糸口金4a,4bより夫々溶融紡糸され、冷却装置5a,5bによって冷却個化される。
【0015】次いで、紡糸冷却された糸条は、第1ゴデットローラ6a,6bに引き取られ、第2ゴデットローラ7a,7bとの間で所定の延伸が施される。そして、延伸された2つの糸条は右部紡糸系列の第2ゴデットローラ7aを経た後、少なくともその一方は第1流体交絡ノズル10によって交絡処理が施され、次いで合糸されて第2流体交絡ノズル8により混繊交絡処理された後パッケージ9に巻き取られる。ここで、流体交絡処理は、第1流体交絡ノズル10と、第2流体交絡ノズル8の少なくとも二つのノズルを用いて行うが、更に、第1流体交絡ノズル10による処理を施さなかった方の糸条にも第3の流体交絡処理ノズルを設けて交絡処理を施した後、各々交絡処理を受けた糸条を第2流体交絡ノズル8により混繊交絡処理しても良い。
【0016】さて、本発明方法では、前記ペレット貯蔵槽1a,1bに染色性の異なる原料ポリマーチップ例えば、右部紡糸系列のペレット貯蔵槽1aにポリエチレンテレフタレートチップを、左部紡糸系列のペレット貯蔵槽1bにカチオン可染性ポリエステルチップを夫々投入する。
【0017】そして、紡糸糸条を第1ゴデットローラ6a,6bにより引き取るとともに、第2ゴデットローラ7a,7bとの間で延伸がなされるが、かかる条件は例えば、ポリエチレンテレフタレートとカチオン可染性ポリエステルの場合、ポリエチレンテレフタレートの系列は第1ゴデットローラ6aの速度を、1000〜1400m/min程度、表面温度を80〜100℃程度、第2ゴデットローラ6bの速度を、3000〜4500m/min程度、表面温度を135〜155℃程度とすることが好ましく、かかる条件によれば沸水収縮率が7%前後の延伸糸を得ることができる。また、カチオン可染性ポリエステルの系列は第1ゴデットローラ6aの速度を、1200〜1800m/min程度、表面温度を80〜100℃程度、第2ゴデットローラ6bの速度を、3000〜4500m/min程度、表面温度を120〜140℃程度とすることにより、前記ポリエチレンテレフタレート糸と同程度の熱収縮率、伸度を有した糸条を得ることができる。さらに、流体交絡処理は、糸条の走行速度を3700m/min程度とした場合、第1流体交絡ノズル10では2.0〜5.0kg/cm3 程度の圧力にて、第2流体交絡ノズル8では、2.0〜5.0kg/cm3 程度の圧力にて行うことが好ましい。
【0018】以上の如く得られた混繊糸は、これを必要に応じて追撚したり、他の糸条と交撚したりして用い、一方のフィラメント糸のみを染色したり、夫々のフィラメント糸を異色に染めたりすることによって、杢調の外観を得ることができる。
【0019】以上の如くして得られた混繊糸に特徴的なことは、第1に染色性の異なるポリマーからなる複数のフィラメント糸の物性が近似している点であり、第2に各フィラメント糸が実撚によって集束し規則的な収束部を形成することがない状態で混繊されている点にある。
【0020】すなわち、かかる混繊糸は、各フィラメント糸の熱収縮率が極めて近似しており、所謂異収縮混繊糸とは異なるものである。例えば、カチオン可染性ポリエステルのような共重合ポリエステルの場合、ポリエチレンテレフタレートと同様の延伸条件や熱履歴、例えばポリエチレンテレフタレートの場合沸水収縮率が6.0〜8.0%の範囲となるような条件で製造を行うと、ポリエチレンテレフタレートとは1.5%以上の沸水収縮率差を生じてしまう。本発明では、両糸の条件を夫々設定すること等によって、沸水収縮率の差を1.2%以下、好ましくは0.8%以下とする。また、本発明により得られた混繊糸の沸水収縮率は5〜10%とすることが好ましい。
【0021】更に、本発明により得られた混繊糸は各フィラメント糸の伸度の差も8.0%以下、好ましくは4.0%以下となっており、製品となった際、糸長差によって芯鞘形状等の一方の糸条だけが表面に現れる構造を呈することのないものである。また、各フィラメント糸の総繊度は20〜200デニール程度で、各フィラメント糸間の繊度差は混繊糸の総繊度の1/3以下であることが好ましい。
【0022】次に、各フィラメント糸の集束性について説明する。本発明により得られた混繊糸は、各フィラメント糸が規則的に集束することなく混繊されているものである。これは、具体的には各フィラメント糸が実質的に実撚を有しないことを意味する。実撚が付与されると、各フィラメント糸は長手方向に沿って連続的且つ規則的に集束せしめられ、このような糸条同志に交絡処理を施してももはや自然で均一な混繊を行うことはできない。よって、かかる実撚の撚数としては、延伸装置においてパーンを捲き取る際のスピンドルの回転により付与されるものや、該パーンを解舒する際に付与される解舒撚り等の5T/M程度以上のものを指す。
【0023】
【実施例】
(実施例1〜3)固有粘度(η)0.635のポリエチレンテレフタレートチップと、ポリエチレンテレフタレートにスルホイソフタル酸を2.5モル%共重合したカチオン可染性ポリエステルチップを用意し、図1に示す紡糸延伸装置のチップ貯蔵槽に投入し、溶融温度287℃で紡糸し、ポリエチレンテレフタレート糸にのみ流体交絡処理を施したもの(実施例1)、カチオン可染ポリエステル糸にのみ流体交絡処理を施したもの(実施例2)、両糸に流体交絡処理を施したもの(実施例3)について表1に示す条件の下、異染混繊糸を得た。各フィラメント糸の物性値を表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】次いで、かかる混繊糸に300T/Mの追撚を施した後、これを経緯糸に用いて平織物を製織し、カチオン染料により灰色に染色したところ、楊柳調の自然な粗杢が見られる外観となった。
(比較例1〜3)実施例で用いたポリエチレンテレフタレート糸と、カチオン可染ポリエステル糸を紡糸後一旦巻取り、その後通常の延撚機を用いて処理して異染混繊糸を得た。結果を表2に示す。
【0026】
【表2】

【0027】次いで、かかる混繊糸に300T/Mの追撚を施した後、これを経緯糸に用いて平織物を製織し、カチオン染料により灰色に染色したところ、粗杢調の外観が得られたが自然な杢の均一さに劣っていた。
【0028】
【発明の効果】本発明によれば、従来の異染混繊糸では得られなかった自然な杢調の外観を有した繊維製品を得ることができ、かかる杢調子の制御も容易に行うことが可能であって、その有用性は明らかである。
【出願人】 【識別番号】000000952
【氏名又は名称】鐘紡株式会社
【出願日】 平成7年(1995)6月16日
【代理人】
【公開番号】 特開平9−3741
【公開日】 平成9年(1997)1月7日
【出願番号】 特願平7−174480