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【発明の名称】 低ヤング率ポリエステル仮ヨリ加工糸およびその製造方法
【発明者】 【氏名】木村 大

【氏名】犬山 久夫

【目的】 従来のポリエステル仮ヨリ加工糸にはないカサ高で、ドレープ性に優れ、かつヤング率の低い、衣料用に好適な低ヤング率ポリエステル仮ヨリ加工糸およびその製造方法を提供するにある。
【構成】 ヤング率が30g/d以下であり伸縮復元率CRが5%以上であることを特徴とする低ヤング率ポリエステル仮ヨリ加工糸、および複屈折率Δnが30×10-3〜80×10-3のポリエステル高配向未延伸糸を、ポリエステル高配向未延伸糸の自然延伸倍率(NDR)の95%以下の延伸倍率、ヒーター温度130〜230℃、仮ヨリ数23,000/D1/2 〜35,000/D1/2 (T/M)でベルトニップツイスターによって仮ヨリ加工することを特徴とする低ヤング率ポリエステル仮ヨリ加工糸の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ヤング率が30g/d以下であり伸縮復元率CRが5%以上であることを特徴とする低ヤング率ポリエステル仮ヨリ加工糸。
【請求項2】自然延伸領域を有しないことを特徴とする請求項1に記載の低ヤング率ポリエステル仮ヨリ加工糸。
【請求項3】 複屈折率Δnが30×10-3〜80×10-3のポリエステル高配向未延伸糸を、ポリエステル高配向未延伸糸の自然延伸倍率(NDR)の95%以下の延伸倍率、ヒーター温度130〜230℃、仮ヨリ数23,000/D1/2 〜35,000/D1/2 (T/M)でベルトニップツイスターによって仮ヨリ加工することを特徴とする低ヤング率ポリエステル仮ヨリ加工糸の製造方法。
【請求項4】 請求項1に記載の低ヤング率ポリエステル仮ヨリ加工糸をヒーター温度130〜230℃、オーバーフィード率4〜15%でリラックス熱処理することを特徴とする請求項2に記載の低ヤング率ポリエステル仮ヨリ加工糸の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】この発明はカサ高で、ドレープ性に優れる衣料用に好適な低ヤング率ポリエステル仮ヨリ加工糸に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ポリエステルの仮ヨリ加工糸は織物、編物にソフト感と適度なストレッチ性を与える素材として婦人、紳士用衣料を中心に衣料用全般に用いられてきた。
【0003】さらに、張り腰とソフトなタッチを兼ね備えさせるため、繊度の異なる糸条を複合仮ヨリするなどの改善技術が提案されている。
【0004】しかしながら、これらの方法においては種々の特徴を付与した加工糸が得られるが、ポリエステルの基本特性であるヤング率が高いことによるドレープ性不足、かさつき感、ふかつきなどの欠点を有している。
【0005】また、形態安定性、防シワ性などの特徴を有するポリエステルと上記欠点を補う天然繊維との混繊が実施されているが、複雑な加工によるコストアップならびにポリエステルの風合い調整の最良の手段である減量加工が制約されるなどの問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ポリエステル仮ヨリ加工糸は多種多様な原糸を用い、多様な仮ヨリ方法、仮ヨリ条件で加工され、幅広い用途に使用されている。しかし、糸のヤング率が高いためドレープ性不足、かさつき感、ふかつきなどの問題があった。
【0007】本発明の目的は、従来のポリエステル仮ヨリ加工糸にはないカサ高で、ドレープ性に優れ、かつヤング率の低い、衣料用に好適な低ヤング率ポリエステル仮ヨリ加工糸およびその製造方法を提供するにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、ポリエステルのヤング率を大幅に低下させ、かつ軽度のケン縮を付与することによって、これまでにみられない新規な風合いを得るポリエステルの基質を改善できることを知見して本発明に到達した。
【0009】すなわち、本発明の低ヤング率ポリエステル仮ヨリ加工糸は、ヤング率が30g/d以下であり、伸縮復元率CRが5%以上あることを特徴とする。
【0010】さらに本発明の上記の低ヤング率ポリエステル仮ヨリ加工糸は、自然延伸領域を有しない特性を有しているものである。また、本発明の仮ヨリ加工糸は伸度が50%以上であるという特性を有している。
【0011】また、上記低ヤング率ポリエステル仮ヨリ加工糸の製造方法は、複屈折率Δnが30×10-3〜80×10-3のポリエステル高配向未延伸糸をポリエステル高配向未延伸糸の自然延伸倍率(NDR)の95%以下の延伸倍率、ヒーター温度130〜230℃、仮ヨリ数23,000/D1/2 〜35,000/D1/2 (T/M)で、ベルトニップツイスター仮ヨリ加工することによって得られる。
【0012】
【作用】以下、さらに詳しく本発明について説明をする。
【0013】ドレープ性に優れ、ふかつきの少ないしっとりした布帛を得るには、糸のヤング率を低くすることが一つの手段である。そのためにはヤング率を30g/d以下にすることが重要がある。また適度なカサ高性、ストレッチを得るためにはケン縮復元率CRが5%以上であることが重要である。
【0014】また、本発明の仮ヨリ加工糸は、自然延伸領域を有しない特性を有している。この自然延伸領域を有しない特性とは、室温で測定したこの糸の強伸度曲線において、ある一定荷重において伸度が水平方向に伸びる領域が実質的にないということである。自然延伸領域を有する糸を用いて布帛とし、この布帛を例えば指で押さえた場合に、布帛が延びて変形したり凹みが発生し、いわゆる“わらい”が発生する。
【0015】しかし従来の仮ヨリ方法のように複屈折率Δnが30×10-3〜80×10-3のポリエステル高配向未延伸糸をポリエステル高配向未延伸糸の自然延伸倍率(NDR)の95%を越える延伸倍率での仮ヨリ加工ではカサ高性、ストレッチは得られても、ヤング率の低い仮ヨリ加工糸を得ることはできない。
【0016】また、仮ヨリ加工を行わず、複屈折率Δnが30×10-3〜80×10-3のポリエステル高配向未延伸糸をポリエステル高配向未延伸糸の自然延伸倍率(NDR)の95%以下の延伸倍率で延伸熱セットしただけではヤング率は低くてもカサ高性、ストレッチが得られない。さらにまた、低伸長領域の残留および延伸ムラ(シックアンドシン)の発生により均一な糸は得られず、わらい、染差が強調された糸になる。本発明によれば、ヤング率は低くても均一な太さの糸が得られる。
【0017】一方、ヒーター温度130℃以下での仮ヨリ加工では適度なカサ高性、ストレッチ性が得られない。230℃以上の仮ヨリ加工では未解ネンが発生する。
【0018】さらに、仮ヨリ数23,000/D1/2 (T/M)以下ではカサ高性、ストレッチが得られない。また、35,000/D1/2 (T/M)以上では操業性が悪化する。
【0019】複屈折率Δnが30×10-3〜80×10-3のポリエステル高配向未延伸糸をポリエステル高配向未延伸糸の自然延伸倍率(NDR)の95%以下の延伸倍率、ヒーター温度130〜230℃、仮ヨリ数23,000/D1/2 〜35,000/D1/2 (T/M)での仮ヨリ加工では加ネン張力が低くなる。
【0020】仮ヨリツイスターは張力に依存しないヨリ掛けが可能な、すなわち低張力仮ヨリ加工が可能なベルトニップツイスターを使用する。このベルトニップツイスターとしては、例えば、特開昭63−264922号公報、特開平6−184848号公報などに記載されているような交差して互いに異なる方向に走行する2本の無端ベルト間に繊維をニップして仮ヨリする公知のベルトニップツイスターが使用できる。
【0021】従来から広く用いられているフリクションツイスターでは加ネン張力が低いとツイスターディスクと糸の摩擦が減少し安定したヨリ掛けができない。
【0022】また、スピンドル仮ヨリでは加ネン張力が低すぎることによるサージング現象のため、安定した仮ヨリ加工ができない。サージング現象とは、仮ヨリ加工速度に対して加撚張力が低いとき、もしくは加撚張力に対して加工速度が早いときに加撚部でバルーニングが発生し、このバルーニングの発生により加工張力(特に解撚張力)が大きく変動し、安定した加工糸を得ることができず、また張力変動により加工糸切れとなる現象をいう。
【0023】さらにまた加工スピードを極端に下げて加工可能になってもスピンドル仮ヨリでは加ネン張力に比べ解ネン張力が高くなるため解ネンゾーンで糸が延伸されるという問題が発生する。
【0024】そこでヤング率が30g/d以下であり、ケン縮復元率CRが5%以上である低ヤング率ポリエステル仮ヨリ加工糸を得るため、本発明においては次のような製造方法を採用する。
【0025】複屈折率Δnが30×10-3〜80×10-3のポリエステル高配向未延伸糸をポリエステル高配向未延伸糸の自然延伸倍率(NDR)の95%以下の延伸倍率、ヒーター温度130〜230℃、仮ヨリ数23,000/D1/2 〜35,000/D1/2 (T/M)でベルトニップツイスターにより仮ヨリ加工を行う。
【0026】またカサ高性、ストレッチがさほど必要でなく、よりドレープ性に優れ、よりふかつきの少ない低ヤング率ポリエステル仮ヨリ加工糸を得るには、上記製造方法で得られたポリエステル仮ヨリ加工糸をヒーター温度130〜230℃、オーバーフィード率4〜15%でリラックス熱処理を行えば良い。
【0027】図1は、本発明の低ヤング率ポリエステル仮ヨリ加工糸の製造方法の一例を示す工程図である。
【0028】図2は、2ndヒーターを付加した本発明の低ヤング率ポリエステル仮ヨリ加工糸の製造方法の一例を示す工程図である。
【0029】図において、1はポリエステル高配向未延伸糸、2は第1フィードローラー、3は1stヒーター、4は冷却板、5はベルトニップツイスター、6は第2フィードローラー、7は2ndヒーター、8は第3フィードローラー、9はワインディングローラーを示す。
【0030】図1ではポリエステル高配向未延伸糸1は第1フィードローラー2と第2フィードローラー6の間でポリエステル高配向未延伸糸の自然延伸倍率(NDR)の95%以下の延伸倍率で延伸される。そして伸縮復元率CRが5%以上になるように仮ヨリ数23,000/D1/2 〜30,000/D1/2 (T/M)に仮ヨリされ、ヒーター3にてヒーター温度130〜230℃に加熱され、ベルトニップツイスター5で仮ヨリ加工されてワインディングローラー9に巻取られる。
【0031】図2では図1の加工工程に2ndヒーター7、第3フィードローラー8を追加した工程になっている。フィードローラー2とフィードローラー6の間でヒーター温度130〜230℃、オーバーフィード率4〜15%でリラックス熱処理を行う。
【0032】
【実施例】
実施例1〜2,比較例1〜3表1に本発明の実施例1〜2および比較例1〜3を示す。
【0033】
【表1】

実施例1は複屈折率Δnが42.1×10-3、繊度が274.1D,自然延伸倍率NDRが1.50のポリエステル高配向未延伸糸を図1に示す装置を用い、延伸倍率1.300、ヒーター温度160℃、仮ヨリ数1876T/Mでベルトニップツイスターを用い仮ヨリ加工した糸である。
【0034】実施例2は図2に示す装置を用い、上記実施例1の加工条件にヒーター温度160℃、リセットオーバーフィード率10.0%を付加してリラックス熱処理した糸である。
【0035】実施例1、2はヤング率が低いためドレープ性に優れ、ふかつきの少ない風合いになっている。
【0036】比較例1は実施例1と同様のポリエステル高配向未延伸糸を図1に示す装置を用い、延伸倍率1.794、ヒーター温度160℃、仮ヨリ数2274T/Mでベルトニップツイスターを用い仮ヨリ加工した糸である。
【0037】比較例2は図2に示す装置を用い、上記比較例1の加工条件にヒーター温度160℃、リセットオーバーフィード率10.0%を付加してリラックス熱処理した糸である。
【0038】比較例3は、上記実施例1と同様のポリエステル高配向未延伸糸を延伸倍率1.300、ヒーター温度160℃、でフリクションツイスター(2軸、ウレタンディスク)を用い仮ヨリ加工を試みた例である。
【0039】比較例1、2はヤング率が高いためドレープ性、ふかつき共に実施例1、2に比べ劣っている。
【0040】比較例3は本発明の加工糸をフリクションツイスターで加工を試みた例である。加工張力が低いため安定したヨリ掛けができず本発明の加工糸を得ることができなかった。
【0041】
【発明の効果】本発明は、上記の構成としたことにより、次の如き優れた効果を奏する。
【0042】本発明の低ヤング率ポリエステル仮ヨリ加工糸を用いて布帛を形成することにより、カサ高でドレープ性に優れ、またふかつきの少ない布帛を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
【出願日】 平成7年(1995)6月21日
【代理人】
【公開番号】 特開平9−3738
【公開日】 平成9年(1997)1月7日
【出願番号】 特願平7−154914