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【発明の名称】 粉体の成形方法
【発明者】 【氏名】西尾 浩明

【氏名】加藤 明

【目的】 成形後の機械加工を軽減ないし省略できるような寸法・精度の高い成形体を、CIP 装置を用いて得るための粉体の成形方法を提供する。
【構成】 CIP 装置を用いて剛性型1 内の粉体4 に実質的1軸圧縮を施して成形する。充填口3 に隣接付近に補給用粉体4aを配置した剛性型1 を、弾性型容器2内に収納密封し、CIP 装置で加圧して1軸圧縮成形体を得る。弾性型容器2 内に予め剛性型1 をセットしておいてもよい。上記方法で1軸圧縮に振動圧力を負荷する。粉体4 は金属又は/及びセラミックス粉体を90wt.%以上含む粉体で、補給用粉体4a量を剛性型1 キャビティ体積の5 〜100%とする。望ましくは圧力上限値を20〜5000kgf/cm2 、振動範囲を圧力上限値の0 〜70% から上限値までとする。また、黒鉛製剛性型、振動圧力での1軸圧縮、圧力上限値20〜500kgf/cm2、振動範囲を圧力上限値の0 〜70% から上限値まで、5 サイクル以上負荷する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 冷間等方圧縮装置内に剛性型を配置し、前記剛性型内に充填された原料粉体に対して、前記冷間等方圧縮装置を用いて実質的な1軸圧縮を施すことにより成形体を得ることを特徴とする、粉体の成形方法。
【請求項2】 1個または複数個の粉体充填口を有する剛性型のキャビティに原料粉体を充填し、そして、前記剛性型の外部にあって前記粉体充填口に通じて隣接する充填口外部空間の一部または全部を前記原料粉体で充填し、次いで、このように調製された前記剛性型と前記原料粉体とからなる調製体を弾性型容器内に封入し、次いで、このようにして前記調製体が封入された前記弾性型容器を冷間等方圧縮装置に装入し、そして、次いで、前記冷間等方圧縮装置により前記原料粉体に対して実質的な1軸圧縮を施すことにより成形体を得ることを特徴とする、粉体の成形方法。
【請求項3】 弾性型容器内に1個または複数個の粉体充填口を有する剛性型を装入し、次いで、前記剛性型のキャビティに原料粉体を充填し、そして、前記剛性型の外部にあって前記粉体充填口に通じて隣接する充填口外部空間の一部または全部を前記原料粉体で充填し、次いで、前記弾性型容器を密封し、次いで、このようにして前記剛性型と前記原料粉体とが封入された前記弾性型容器を冷間等方圧縮装置に装入し、そして、次いで、前記冷間等方圧縮装置により前記原料粉体に対して実質的な1軸圧縮を施すことにより成形体を得ることを特徴とする、粉体の成形方法。
【請求項4】 前記1軸圧縮を、少なくとも2つの圧力値の間を振動する圧力を負荷することにより行なうことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1つに記載の粉体の成形方法。
【請求項5】 前記原料粉体は、金属粉体、セラミックス粉体、または、金属粉体とセラミックス粉体との混合物を90 wt.%以上含む粉体であり、且つ、前記充填口隣接空間の一部または全部を占有する前記原料粉体の量は、前記剛性型のキャビティの体積の5〜100%の範囲内にあることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1つに記載の粉体の成形方法。
【請求項6】 前記1軸圧縮における圧力の上限値は、20〜5000kgf/cm2 の範囲内にあり、且つ、前記圧力の振動範囲は、上限値の0〜70%から前記上限値までの範囲内にあることを特徴とする、請求項2〜5のいずれか1つに記載の粉体の成形方法。
【請求項7】 前記剛性型は黒鉛製であり、前記1軸圧縮は、少なくとも2つの圧力値の間を振動する圧力を負荷することにより行ない、且つ、前記圧力の上限値は20〜500kgf/cm2 の範囲内にあり、前記圧力の振動範囲は、上限値の0〜70%から前記上限値までの範囲内にあり、そして、このようにして定まった振動する前記圧力を少なくとも5サイクル以上負荷することを特徴とする、請求項2または3記載の粉体の成形方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、粉末冶金工程、セラミックスの製造工程および金属とセラミックスとの複合材料の製造工程において、冷間等方圧縮法により金属、セラミックス、または、金属とセラミックスとの粉末を原料として成形体を得る方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近、粉末冶金、セラミックス(エンジニアリングセラミックス、機能性セラミックスおよび耐火物を含む)製造、および、金属とセラミックスとの複合材料(以下、「金属・セラミックス複合材料」という)の製造工程における、原料粉末から成形体を得る方法の1つとして、冷間等方圧縮(所謂、CIP)法が知られている。この方法は別名ラバープレスとも称されるように、粉末をゴム型に充填し封入し、水や油等の加圧媒体を用いてゴム型を加圧して粉末を成形する方法である。
【0003】CIP法においては、通常、粉末を充填しても変形しないような硬くて厚肉のゴム型を用いるが、CIPの過程でこの厚肉ゴム型は等方収縮をせずに変形する。このため、成形体の形状は、液圧を負荷する前のゴム型のキャビティ形状と同じにはならない。例えば、厚肉ゴム型の角部は、収縮が遅れて突出し、その結果得られる成形体の角部は突出する。また、充填体から成形体にいたる収縮の程度は、原料粉末の充填状態のバラツキによって変動し、成形体の寸法・形状のバラツキの原因となる。即ち、通常のCIP法では成形体の変形および寸法のバラツキは不可避である。
【0004】従来、このような問題を解決しようとする方法が提案されている。例えば、特公昭47−37383号公報には、ゴム型の代わりにゴム袋を用い、所定形状の型内にゴム袋を入れ、このゴム袋の中に粉末を充填し、次いで、ゴム袋内を減圧し、型の形状を保持したまま粉末を充填したこのゴム袋を型から取出し、取り出された粉末入りのゴム袋をそのままCIPして成形体を得る方法(以下、「先行技術」という)が開示されている。
【0005】先行技術の方法によれば、肉厚の薄い柔らかなゴム袋が相似形状を保持したまま充填体を圧縮するので、型と相似形の成形体を得ることが原理的に可能となる。しかしながら、この方法においても、原料粉末の充填状態のバラツキに起因する成形体の寸法のバラツキを回避することは困難である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで、通常、先行技術の方法では、先ず、オーバーサイズの成形体をつくり、成形後あるいは焼結後、機械加工により目的とする形状・寸法に仕上げるという方法がとられている。その結果、成形体の原料粉末の歩留が低下し、また、機械加工工程が必須となる等の問題がある。
【0007】従って、この発明の目的は、上述した問題を解決することにより、冷間等方圧縮装置を用いて、粉体圧縮後の成形体に対する機械加工を省略、あるいは軽減することができ、しかも、成品の寸法・精度が高く、且つ、原料粉末からの歩留が改善されるような粉体の成形方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上述した問題を解決するためのこの発明の特徴は、冷間における等方圧縮装置を用いて、剛性型内の粉体に対して等方圧縮を施すのではなく、実質的な1軸圧縮を施す点にあり、下記の構成からなる。
【0009】この発明の第1の粉体の成形方法は、冷間等方圧縮装置内に剛性型を配置し、前記剛性型内に充填された原料粉体に対して、前記冷間等方圧縮装置を用いて実質的な1軸圧縮を施すことにより成形体を得ることに特徴を有するものである。
【0010】この発明の第2の粉体の成形方法は、1個または複数個の粉体充填口を有する剛性型のキャビティ、即ち、成形所望形状対応内部空間に原料粉体を充填し、そして、前記剛性型の外部にあって前記粉体充填口に通じて隣接する充填口外部空間の一部または全部を前記原料粉体で充填し、次いで、このように調製された前記剛性型と前記粉体原料とからなる調製体を弾性型容器内に封入し、次いで、このようにして前記調製体が封入された前記弾性型容器を冷間等方圧縮装置に装入し、そして、次いで、前記冷間等方圧縮装置により前記原料粉体に対して実質的な1軸圧縮を施すことにより成形体を得ることに特徴を有するものである。但し、上記「充填口外部空間」4bとは、図5に例示するように、剛性型1のキャビティ1dを除いた空間であって、且つ、弾性型容器2内部の空間を指す。そして、図6および図7は、それぞれ「充填口外部空間の一部または全部を原料粉体で充填し」た状態4b’および4b”を例示する。従って、「粉体充填口に通じて隣接する充填口外部空間の一部または全部を前記原料粉体で充填する」というのは、図6および図7のように、「粉体充填口」が原料粉体で完全に覆われた状態の場合のみを指すものである。
【0011】この発明の第3の粉体の成形方法は、弾性型容器内に1個または複数個の粉体充填口を有する剛性型を装入し、次いで、前記剛性型のキャビティに原料粉体を充填し、そして、前記剛性型の外部にあって前記粉体充填口に通じて隣接する充填口外部空間の一部または全部を前記原料粉体で充填し、次いで、前記弾性型容器を密封し、次いで、このようにして前記剛性型と前記原料粉体とが封入された前記弾性型容器を冷間等方圧縮装置に装入し、そして、次いで、前記冷間等方圧縮装置により前記原料粉体に対して実質的な1軸圧縮を施すことにより成形体を得ることに特徴を有するものである。
【0012】この発明の第4の粉体の成形方法は、第1から第3発明のいずれか1つにおいて、前記1軸圧縮を、少なくとも2つの圧力値の間を振動する圧力を負荷することにより行なうことに特徴を有するものである。
【0013】この発明の第5の粉体の成形方法は、第1から第4発明のいずれか1つにおいて、前記原料粉体が、金属粉体、セラミックス粉体、または、金属粉体とセラミックス粉体との混合物を90 wt.%以上含む粉体であり、且つ、前記充填口隣接空間の一部または全部を占有する前記原料粉体の量が、前記剛性型のキャビティの体積の5〜100%の範囲内にあることに特徴を有するものである。
【0014】この発明の第6の粉体の成形方法は、第2から第5発明のいずれか1つにおいて、前記1軸圧縮における圧力の上限値が、20〜5000kgf/cm2 の範囲内にあり、且つ、前記圧力の振動範囲が前記圧力の上限値の0〜70%から前記上限値までにあることに特徴を有するものである。
【0015】この発明の第7の粉体の成形方法は、第2または第3発明において、前記剛性型が黒鉛製であり、前記1軸圧縮が、少なくとも2つの圧力値の間を振動する圧力を負荷することにより行ない、且つ、前記圧力の上限値は20〜500kgf/cm2 の範囲内にあり、前記圧力の振動範囲が前記圧力の上限値(20〜500kgf/cm2 の範囲内の一定値)の0〜70%から前記上限値までにあり、そして、このようにして定まった振動する前記圧力を少なくとも5サイクル以上負荷することに特徴を有するものである。
【0016】
【作用】
1軸圧縮この発明においては、冷間等方圧縮装置を用いて、剛性型内の原料粉体に対して、等方圧縮ではなく実質的な1軸圧縮を施すので、剛性型内のキャビティ形状を忠実に転写でき、目標の形状および寸法に対して精度よい成形体を得ることができる。剛性型に原料粉体を充填し、得られた剛性型を弾性型容器に収納して密封し、得られた弾性型容器を冷間等方圧縮装置に装入して等方圧縮を施すと、原料粉体に対しては実質的な1軸圧縮が施される。
【0017】剛性型の粉体充填口に隣接する外部空間の原料粉体による占有この発明においては、1個または複数個の粉体充填口を有する剛性型のキャビティに原料粉体を充填し、原料粉体が1軸圧縮されて圧密化されるに伴って必要とされる原料粉体がキャビティに自動的に補給される。このために、剛性型の外側部分で粉体充填口に通じて隣接する部分(以下、「充填口外部空間」という)に、更に、所定量の原料粉体を占有させておく。
【0018】原料粉体の種類と構成粉体は、粉末冶金、セラミックスの製造、金属・セラミックス複合材料の製造原料に供されるものであれば特に制限されない。
【0019】金属としては、例えば、鉄、合金鋼、コバルト、コバルト合金、ニッケル、ニッケル合金、クロム、クロム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ケイ素、チタン、チタン合金、ジルコニウム、ジルコニウム合金、モリブデン、モリブデン合金、タングステン、タングステン合金等が適する。
【0020】セラミックスとしては、酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物、ケイ化物および炭素が適する。
【0021】酸化物としては、例えば、Al2 3 、CaO、Cr2 3 、HfO2 、La23 、MgO、SiO2 、TiO2 、Y2 3 、ZrO2 、および、上記それぞれの酸化物同士の複合酸化物が適する。
【0022】窒化物としては、例えば、AlN、AlON、BN、Cr2 N、HfN、Si3 4 、Si2 ON2 、TiNおよびZrNが適する。
【0023】炭化物としては、例えば、Al4 3 、B4 C、Cr3 2 、Cr7 3 、SiC、TiC、ZrCおよびWCが適する。
【0024】ホウ化物としては、例えば、AlB2 、CrB、CrB2 、TiB2 および(TiZr)B2 が適する。
【0025】ケイ化物としては、例えば、CaSi2 、CrSi2 、MoSi2 、TiSi2 およびWSi2 が適する。
【0026】また、CaCO3 、MgCO3 ・CaCO3 のような炭酸塩やMg(OH)2のような水酸化物であってもよい。
【0027】そして、粉体は、上記物質の単一粉体でもよく、また、これらの混合粉体であってもよい。
【0028】この発明における粉体には、有機物が添加されてもよい。有機物添加の目的は、例えば、流動性の悪い微粒子粉体を流動性のよい顆粒にするため、あるいは、成形体の強度を向上させるためのバインダー等であり、各種ワックスや各種樹脂が適する。
【0029】樹脂としては、フェノール樹脂のように炭素を残留させるものであってもよい。また、同様の目的で、水分や有機溶剤を添加してもよい。有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノールおよびイソ−プロパノール等の低級アルコールが適する。
【0030】有機物の添加量は、目的を達成する範囲内で少ない方がよい。10 wt.%以上では成品の特性発揮を期待する主原料である金属、セラミックス、または、金属とセラミックスとの混合物の密度が低くなり、粉体成形後の焼結過程において焼結が阻害される等の欠点が顕著となるので望ましくない。即ち、有機物の添加量は10 wt.%未満が望ましい。従って、粉体としては、金属、セラミックス、または、金属とセラミックスとの混合物を90 wt.%以上含むものが望ましい。
【0031】剛性型剛性型は、適用される液圧の範囲内において、その収縮および変形を無視することができる性質を有する型を指す。この剛性型は外部から液圧により支持されるので、1軸プレス用の型と比べて小型軽量のものでよい。その材質としては、例えば、工具鋼、ジュラルミンおよび黒鉛が適する。
【0032】工具鋼の剛性型は肉厚を十分大きくすれば5000kgf/cm2 までの液圧に耐える。また、ジュラルミンにより2000kgf/cm2 までの液圧に耐える剛性型を作ることができ、黒鉛により500kgf/cm2 までの液圧に耐える剛性型を作ることができる。このうち、黒鉛はこのように耐圧に制限があるが、軽量で持ち運びが容易であり、機械加工が容易であり、且つ、自己潤滑性を有するので、粉体の均一な圧密に好都合であり、離型も容易であるという特徴を有する。
【0033】剛性型は、少なくとも1個の粉体充填口を必要とするが、特に個数を限定するものではない。成形体の形状によって、粉体の充填を容易にするように個数を決定する。この粉体充填口より、金属または/およびセラミックスを90 wt.%以上含む粉体を充填する。このとき、充填を容易に行なうために、例えば、剛性型を振動テーブルに載せて振動を与えつつ充填してもよい。また、棒状バイブレーターで剛性型に振動を与えてもよいし、あるいは、充填口から直接、粉体にバイブレーターを接触させて振動を与えてもよい。
【0034】充填口外部空間の堆積粉体の占有体積次いで、剛性型のキャビティ容積の5〜100%の範囲内の体積の粉体の堆積層を充填口外部空間に占有させる(以下、「充填口外部粉体」という)。堆積層の充填密度については、特に限定するものではないが、CIP装置の効率的利用の観点から、充填密度は大きい方が望ましい。この発明にいおては、CIPによって、この充填口外部粉体の一部または全部がキャビティ内に補給されるが、充填口外部粉体が過少だと、キャビティ内への粉体補給不足をきたし、所望の成形体形状を得ることができない。一方、充填口外部粉体が過多だと、成形体の形成に寄与しない粉体が発生し、材料歩留が低下する。従って、充填口外部粉体の体積は、剛性型のキャビティの容積の5〜100%の範囲内であることが望ましい。
【0035】弾性型容器の種類弾性型容器は、粉体が充填された剛性型と充填口外部粉体とを収納するための、弾性を有する容器である。弾性型容器の形態は、軟質の袋であってもよいし、また、保形性を有する蓋付きの容器であってもよい。その材質は特に限定しないが、例えば、天然ゴム、または、スチレン−ブタジエンゴム、ポリイソプレン、イソブチレンイソプレンゴム、シリコーンゴムおよびウレタンゴム等の合成ゴムが適する。
【0036】このような弾性型容器内に、所定の粉体が充填された剛性型および充填口外部粉体とを収納し密封する。なお、密封前に弾性型容器内部を真空吸引により脱気することが望ましい。これにより、CIPの負荷過程において粉体を構成する粒子の間隙にある気体が圧縮され、次いで、負荷除去過程においてこの気体が膨張し、成形体の破損を引き起こすのを防止することができる。
【0037】冷間等方圧縮装置(CIP装置)
上述したように調製された弾性型容器が装入される圧力容器は、CIP装置の一部を構成するものであって、公知の圧力容器を適用することができる。液圧を負荷する液体としては、水、油、水・油エマルジョン等公知のものでよい。CIP装置の液圧を負荷することにより、CIP装置に装入された剛性型内の粉体は、粉体充填口から充填口外部粉体を介して加圧され、圧密が進行して体積が減るので、充填口外部粉体の一部がキャビティ内部へ移動する。この方法には下記問題点がある。
【0038】少なくとも2つの圧力値の間を振動する圧力の負荷即ち、液圧を除去すると圧縮された粉体層に復元力が働き、この過程で粉体層に亀裂が発生することである。これに対して、本発明者は、液圧の振動を繰り返すことにより、この亀裂を修復することができることを見い出したのである。望ましい負荷液圧の振動方法は、液圧の上限値を20〜5000kgf/cm2 の範囲内とし、液圧の振動範囲を、上記液圧の上限値の0〜70%から前記上限値までの範囲内とし、また、このような液圧条件下で5サイクル以上の液圧を負荷することである。下記に更に詳細に述べる。
【0039】液圧の上限値については、これが20kgf/cm2 未満では、圧密が不十分であり、望ましくない。一方、液圧の上限値が5000kgf/cm2 を超えても、液圧上昇による圧密効果が飽和する。従って、液圧の上限値を20〜5000kgf/cm2 の範囲内にすることが望ましい。
【0040】液圧の振動範囲について具体例で説明すると、例えば、液圧の上限値が20kgf/cm2 の場合は、振動幅は6〜20kgf/cm2 であって下限値は0〜14kgf/cm2、液圧の上限値が300kgf/cm2 の場合は、振動幅は90〜300kgf/cm2 であって下限値は0〜210kgf/cm2 、液圧の上限値が5000kgf/cm2 の場合は、振動幅は1500〜5000kgf/cm2 であって下限値は0〜3500kgf/cm2 となる。
【0041】本発明者は、初期の減圧で亀裂が発生するのに十分な低いレベルまで液圧を下げ、再加圧によって亀裂の修復を図ることを繰り返すことにより、除荷しても亀裂が発生しなくなることを見い出し、除荷したときの液圧の振動幅が負荷液圧の上限値の70%を超えると、減圧が不十分で亀裂の発生が見られず、そのためにCIP終了後に亀裂が発生し易い。従って、液圧の振動範囲の下限値を、液圧振動範囲の上限値の70%以下とすることが望ましい。
【0042】このようにして、成形体の亀裂を修復するためには、成形体に対して負荷する振動液圧が5サイクル未満では、亀裂後の修復が十分でない場合がある。従って、亀裂を修復するためには、上記液圧条件下で、5サイクル以上の振動液圧を負荷することが望ましい。なお、このような亀裂は成形体には認められないが、焼結後に発生することもあるので、一層望ましくは10サイクル以上負荷するのがよい。
【0043】
【実施例】次に、この発明を実施例により更に詳細に説明する。本発明法および比較法のそれぞれにより、アルミナ製ノズルを成形した。
【0044】(実施例)図1は、本発明法により成形し、そして、完成させたアルミナ製ノズル成品の形態を示す概略斜視図を示し、図2は、図1のA−A線断面図である。アルミナ製ノズル7の入口径D1 は91mm、出口径D2 は20mm、長さH0 は92mmであり、ノズル孔6は入口から出口に向かって滑らかな曲線状で絞られている。
【0045】図3は、この発明の方法により、図1および2に示したアルミナ製ノズル成品を成形する状況を説明するための、剛性型、弾性型容器および原料粉体の概略縦断面図であり、CIP装置に装入する直前の弾性型容器等の調製体Pを示す。図3において、1は剛性型、2は弾性型容器、3は粉体充填口、4は剛性型のキャビティに充填された原料のアルミナ粉、そして、4aはアルミナ粉体の堆積からなる充填口外部粉体である。
【0046】図4は、図3に示した調製体PをCIP装置に装入し、次いで、等方圧縮負荷を作用させた後、CIP装置から取出し、弾性型容器を除去したものの状態を示す概略縦断面図である。
【0047】(実施例−1)
剛性型図3および4に示すように、剛性型1は、外型1aと中子1bとから構成されており、外型1aは、内径がL1 :122mmからL2 :92mmまで直線的に減少し、一方、外径L3 が一定値142mm、全高H2 が102mm、そして、内高、即ち、剛性型のキャビティ深さH1 が92mmである。なお、剛性型のキャビティ深さH1 はノズルの長さH0 と実質的に同一である。外型1aの中に中子1bが同図のように配置されている。更に、剛性型1はノズル孔6の出口6a相当位置側の端部に、円環状の粉体充填口3を1個有する。このような剛性型1を炭素工具鋼で製作して使用した。
【0048】剛性型へのアルミナ粉体の充填および弾性型容器への収納上記の剛性型1を粉体充填口3を上にした状態で振動テーブル(図示せず)に配載し、325メッシュ通過の平均粒径8μm のアルミナ粉体4に振動を与えながらこれを粉体充填口3から剛性型1に充填した。更に、充填口外部空間4bに、手で押し固めたアルミナ粉体4の充填口外部堆積層4aを、剛性型1のキャビティ体積の約15%だけ形成させた。キャビティと充填口外部空間との占有に用いたアルミナ粉体の合計重量は、2221gであった。このようにして調製されたアルミナ原料粉体と剛性型1との剛性型調製体を弾性型容器2に収納した。
【0049】弾性型容器2は、ウレタンゴム製のゴム型であり、弾性型容器本体2aと弾性型容器蓋2bとからなっている。弾性型容器2の外径L4 は162mm、全高H3 は138mmであり、内径および内高は上記剛性型調製体がスムーズに収納されうる寸法である。弾性型容器2内に剛性型調製体を収納した後、弾性型容器本体2aと弾性型容器蓋2bとの嵌合部にビニールテープ5を巻いて弾性型容器2を密閉した。次いで、このようにして得られた弾性型容器調製体Pを、CIP装置に装入してアルミナ製ノズルを成形した。
【0050】CIP装置による1軸圧縮成形CIP装置内に装入された弾性型容器2に、水・油エマルジョンにより液圧を負荷した。
(1)先ず、液圧を20kgf/cm2 に昇圧して5秒保持した後、1000kgf/cm2 まで昇圧し、5秒保持した後20kgf/cm2 まで減圧した。この操作を5回繰り返した。
(2)次いで、液圧を20kgf/cm2 で5秒保持した後、2000kgf/cm2 まで昇圧し、5秒保持した後20kgf/cm2 まで減圧した。この操作を5回繰り返した。
(3)次いで、液圧を20kgf/cm2 で5秒保持した後、3000kgf/cm2 まで昇圧し、5秒保持した後20kgf/cm2 まで減圧した。この操作を5回繰り返した。
(4)次いで、液圧を20kgf/cm2 で5秒保持した後、4000kgf/cm2 まで昇圧し、5秒保持した後20kgf/cm2 まで減圧した。この操作を5回繰り返した。
(5)次いで、液圧を20kgf/cm2 で5秒保持した後、5000kgf/cm2 まで昇圧し、5秒保持した後20kgf/cm2 まで減圧した。この操作を5回繰り返した。
(6)次いで、液圧を20kgf/cm2 で5秒保持した後、4000kgf/cm2 まで昇圧し、5秒保持した後20kgf/cm2 まで減圧した。この操作を5回繰り返した。
(7)次いで、液圧を20kgf/cm2 で5秒保持した後、3000kgf/cm2 まで昇圧し、5秒保持した後20kgf/cm2 まで減圧した。この操作を5回繰り返した。
(8)次いで、液圧を20kgf/cm2 で5秒保持した後、2000kgf/cm2 まで昇圧し、5秒保持した後20kgf/cm2 まで減圧した。この操作を5回繰り返した。
(9)次いで、液圧を20kgf/cm2 で5秒保持した後、1000kgf/cm2 まで昇圧し、5秒保持した後20kgf/cm2 まで減圧した。この操作を5回繰り返した。
(10) 次いで、液圧を20kgf/cm2 で5秒保持した後、大気圧まで戻して処理物をCIP装置から取り出した。
【0051】成形体このようにして、CIP装置を用いて、アルミナ粉体に対して実質的に1軸圧縮成形を施された処理物から、弾性型容器2のゴム型を除去した(図4参照)。次いで、このようにして1軸圧縮成形されたアルミナの充填口外部堆積層4a’を削り取り、剛性型2を除去して、図1および2に示したようなアルミナ製ノズル7の成形体を得た。このようにして得られた成形体の完成品の重量は1931gであった。成形体の表面状態、形状および寸法はいずれも良好であり、原料粉体からの成形体歩留も良好であった。
【0052】(実施例−2)
剛性型図3および4に示した実施例1で使用した剛性型1と同じ形状・寸法であって、嵩密度1.98g/cm3 の黒鉛で剛性型1を製作して使用した。
【0053】剛性型へのアルミナ粉体の充填および弾性型容器への収納上記の剛性型1を粉体充填口3を上にした状態で振動テーブル(図示せず)に配載し、325メッシュ通過の平均粒径8μm のアルミナ粉体4に振動を与えながらこれを粉体充填口3から装入し充填した。更に、充填口外部空間4bに、手で押し固めたアルミナ粉体4の充填口外部堆積層4aを、剛性型1のキャビティ体積の約15%だけ形成させた。キャビティと充填口外部空間との占有に用いたアルミナ粉体の合計重量は、2001gであった。このようにして調製されたアルミナ原料粉体と剛性型1との剛性型調製体を弾性型容器2に収納した。
【0054】弾性型容器2は、ウレタンゴム製のゴム型であり、弾性型容器本体2aと弾性型容器蓋2bとからなっている。弾性型容器2の外径L4 は162mm、全高H3 は138mmであり、内径および内高は上記剛性型調製体がスムーズに収納されうる寸法である。弾性型容器2内に剛性型調製体を収納した後、弾性型容器本体2aと弾性型容器蓋2bとの嵌合部にビニールテープ5を巻いて弾性型容器2を密閉した。次いで、このようにして得られた弾性型容器調製体Pを、CIP装置に装入してアルミナ製ノズルを成形した。
【0055】CIP装置による1軸圧縮成形CIP装置内に装入された弾性型容器2に、水・油エマルジョンにより液圧を負荷した。
(1)先ず、液圧を20kgf/cm2 に昇圧して5秒保持した後、100kgf/cm2 まで昇圧し、5秒保持した後20kgf/cm2 まで減圧した。この操作を5回繰り返した。
(2)次いで、液圧を20kgf/cm2 で5秒保持した後、200kgf/cm2 まで昇圧し、5秒保持した後20kgf/cm2 まで減圧した。この操作を5回繰り返した。
(3)次いで、液圧を20kgf/cm2 で5秒保持した後、300kgf/cm2 まで昇圧し、5秒保持した後20kgf/cm2 まで減圧した。この操作を5回繰り返した。
(4)次いで、液圧を20kgf/cm2 で5秒保持した後、200kgf/cm2 まで昇圧し、5秒保持した後20kgf/cm2 まで減圧した。この操作を5回繰り返した。
(5)次いで、液圧を20kgf/cm2 で5秒保持した後、100kgf/cm2 まで昇圧し、5秒保持した後20kgf/cm2 まで減圧した。この操作を5回繰り返した。
(6)次いで、液圧を20kgf/cm2 で5秒保持した後、大気圧まで戻して処理物をCIP装置から取り出した。
【0056】成形体このようにして、CIP装置を用いて、アルミナ粉体に対して実質的に1軸圧縮成形を施された処理物から、弾性型容器2のゴム型を除去した(図4参照)。次いで、このようにして1軸圧縮成形されたアルミナの充填口外部堆積層4a’を削り取り、剛性型2を除去して、図1および2に示したようなアルミナ製ノズル7の成形体を得た。このようにして得られた成形体の完成品の重量は1740gであった。成形体の表面状態、形状および寸法はいずれも良好であり、原料粉体からの成形体歩留も良好であった。
【0057】(比較例)図8は、比較法による成形体の切削部分および切削されて完成したアルミナ製ノズル成品の形態を示し、ノズル孔の軸線を含む平面で切断した概略縦断面図である。同図中、破線で示した外形と実線で示した外形との間の斜線部分が上記の切削部分である。アルミナ製ノズル7の入口径D1 は91mm、出口径D2 は20mm、長さH0'は92mmであり、ノズル孔6は入口から出口に向かって滑らかな曲線状で絞られている。
【0058】図9は、比較法により、図8に示したアルミナ製ノズルを成形する状況を説明するための、型および原料粉体の概略縦断面図であり、CIP装置に装入する直前の、アルミナ粉体が充填された弾性型であるゴム型調製体Qを示す。図9において、8aはウレタンゴム製ゴム型本体、8cは炭素工具鋼製のゴム型中子、8bはウレタンゴム製ゴム型蓋、そして、4は型のキャビティに充填された原料のアルミナ粉である。
【0059】図10は、図9に示したゴム型調製体QをCIP装置に装入し、次いで、等方圧縮負荷を作用させた後、CIP装置から取出し、ゴム型本体8aおよびゴム型蓋8bを除去したものの状態を示す概略縦断面図である。
【0060】ゴム型図9に示すように、ゴム型8は、ゴム型本体8aとゴム型蓋8bと炭素工具鋼製の中子8cとから構成されている。ゴム型8の内径L3'は142mm、外径L4'は162mm、内高、即ち、ゴム型8のキャビティ深さH1'は92mm、そして全高H3'は138mmである。なお、ゴム型8のキャビティ深さH1'は、ノズルの長さH0'(図8参照)と実質的に同一である。更に、ゴム型8はノズル孔の出口6a相当位置側の端部に、円環状の粉体充填口3を1個有する。
【0061】ゴム型へのアルミナ粉体の充填上記のゴム型8を粉体充填口3を上にした状態で振動テーブル(図示せず)に配載し、325メッシュ通過の平均粒径8μm のアルミナ粉体4に振動を与えながらこれを粉体充填口3からゴム型8に充填した。ゴム型8のキャビティを充填した後、更に、充填口外部空間に、手で押し固めたアルミナ粉体4の充填口外部堆積層4aを形成させた。次いでゴム型蓋8bを被せた後、ゴム型本体8aとゴム型8bとの嵌合部にビニールテープ5を巻いてゴム型8を密閉した。キャビティと充填口外部空間との占有に用いたアルミナ粉体の合計重量は、2936gであった。このようにして調製されたアルミナ原料粉体とゴム型8とのゴム型調製体QをCIP装置に装入してアルミナ製ノズルを成形した。
【0062】CIP装置による等方圧縮成形CIP装置内に装入されたゴム型8に、水・油エマルジョンにより従来法で液圧を負荷した。即ち、先ず、液圧を5000kgf/cm2 まで昇圧して5分保持した後、20kgf/cm2 まで減圧し、1分保持した後、大気圧まで戻して処理物をCIP装置から取り出した。
【0063】成形体このようにして、CIP装置を用いて、アルミナ粉体に対して等方圧縮成形を施された処理物から、ゴム型本体8aおよびゴム型蓋8bを除去した(図10参照)。次いで、ゴム型中子8cを除去した。図11はこのようにして得られた成形体の形状を示す概略縦断面図である。この成形体の重量は2936gであった。これを図11に示したように削って図2と同一の寸法に仕上げたところ、成形体の完成品の重量は1913gであった。
【0064】成形体の表面状態については、成形体の表面にゴム型の皺が転写されており、また、形状については、成形体の角部に突起が発生し、いずれも本発明法により製作された成形体より劣るものであった。所望の形状・寸法のノズルを削り出すことができる体積はぎりぎり確保されたが、ぎりぎりでもアルミナ粉体使用量は多かった。即ち、アルミナ粉体使用量については、実施例1の本発明法では2221gであったが、比較法では2936gと多かった。
【0065】
【発明の効果】上述したように、この発明によれば、冷間等方圧縮装置を用いて剛性型内の原料粉体に対して、実質的な1軸圧縮を施すことができ、このようにすることによって小型軽量の型を用いて寸法精度の良好な成形体を得ることができる。従って、成形体の機械加工工程を軽減ないし省略することができ、しかも、原料粉体からの成品歩留が向上する粉体の成形方法を提供することができ、工業上極めて有用な効果がもたらされる。
【出願人】 【識別番号】000004123
【氏名又は名称】日本鋼管株式会社
【出願日】 平成7年(1995)6月15日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】潮谷 奈津夫
【公開番号】 特開平9−1398
【公開日】 平成9年(1997)1月7日
【出願番号】 特願平7−172876