| 【発明の名称】 |
軸受のクリープ防止用樹脂 |
| 【発明者】 |
【氏名】上野 弘
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| 【目的】 |
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| 【構成】 |
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【特許請求の範囲】
【請求項1】 ハウジングや軸など組み込み対象に対する軸受の嵌合面に設けられるクリープ防止用樹脂であって、ポリアミド66が母材とされて、ミネラル粉体およびエラストマー粉体が分散混入されている、ことを特徴とする軸受のクリープ防止用樹脂。 【請求項2】 前記ミネラル粉体は、炭酸カルシウムあるいはマイカ、エラストマー粉体は、変性EPDM(エチレン・プロピレンおよび若干のジエン成分の三元重合体を無水マレイン酸でグラフトしたもの)あるいはEPM(エチレンとプロピレンの共重合体)がそれぞれ選定される、請求項1に記載の軸受のクリープ防止用樹脂。 【請求項3】 前記ミネラル粉体が1〜3μmの粒子、エラストマー粉体が0.1〜1μmの粒子にそれぞれ設定される、請求項1または2に記載の軸受のクリープ防止用樹脂。 【請求項4】 前記ミネラル粉体が5〜15〔wt%〕、エラストマー粉体が10〜20wt%にそれぞれ設定される、請求項1ないし3のいずれかに記載の軸受のクリープ防止用樹脂。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ハウジングに対する軸受の嵌合面に設けられて軸受のクリープを防止するのに用いる樹脂に関する。 【0002】 【従来の技術】アルミニウム合金製のハウジングと鋼製の軸受とは、熱膨張係数が異なるため、環境温度が上昇したとき、熱膨張係数の差が原因でハウジングと軸受との嵌合部分のしめしろが低下することになり、軸受がハウジングに対して回る、いわゆるクリープが発生することになる。 【0003】このようなクリープについての防止対策は、従来から種々考えられている。この対策としては、軸受のハウジングに対する嵌合面に樹脂を周方向に連続する形態で取り付け、嵌合部分のしめしろが低下しても、軸受に取り付けた樹脂の摩擦抵抗でもって軸受がハウジングに対して回るのを防止するようにしている。 【0004】このクリープ防止用の樹脂としては、ポリアミド66(PA66)、ポリアミド11(PA11)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などが用いられている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】ところで、従来のクリープ防止用樹脂として用いるPA66、PA11、PBTは、それぞれ下記表1に示すような物性を有しており、下記表2で評価するように、クリープ防止という本来の目的は十分発揮できるものの、それぞれ一長一短がある。つまり、PA66の場合、吸湿寸法変化が大きいことが指摘される。PA11の場合、例えば150℃を越える環境で長期連続使用に耐えられないだけでなく、高価であって汎用性に劣ることが指摘される。PBTの場合、例えば150℃を越える環境で長期連続使用に耐えられないことが指摘される。このように、クリープ防止用樹脂について、改良の余地がある。 【0006】 【表1】
【0007】 【表2】
【0008】したがって、本発明は、安価で優れた性能を発揮するクリープ防止用樹脂の提供を目的としている。 【0009】 【課題を解決するための手段】本発明は、ハウジングや軸など組み込み対象に対する軸受の嵌合面に設けられるクリープ防止用樹脂であって、ポリアミド66が母材とされて、ミネラル粉体およびエラストマー粉体が分散混入されている。 【0010】なお、前述のミネラル粉体として、炭酸カルシウムあるいはマイカ、エラストマー粉体として、変性EPDM(エチレン・プロピレンおよび若干のジエン成分の三元重合体を無水マレイン酸でグラフトしたもの)あるいはEPM(エチレンとプロピレンの共重合体)をそれぞれ選定するのが好ましい。 【0011】また、ミネラル粉体を5〜15〔wt%〕、エラストマー粉体を10〜20〔wt%〕にそれぞれ設定するのが好ましい。 【0012】ミネラル粉体は、5〔wt%〕未満であると、効果に乏しく、また、15〔wt%〕を越えると、熱膨張係数が小さくなりすぎクリープ防止の効果をきたさなくなる。表3にミネラルの添加量の比較を示す。 【0013】 【表3】
【0014】エラストマー粉体は、10〔wt%〕未満であると、効果に乏しく、また、20〔wt%〕を越えると、真円度と引張強度が低下する。表4にエラストマーの添加量の比較を示す。 【0015】 【表4】
【0016】さらに、ミネラル粉体を1〜3μmの粒子、エラストマー粉体を0.1〜1μmの粒子にそれぞれ設定するのが好ましい。 【0017】ミネラル粉体が1μm未満となると、市販品での入手が困難となりコスト高となり、3μmを越えると、熱膨張係数が大幅に低下する。 【0018】エラストマー粉体は、1μmを越えると、分散性が悪くなり、強度も低下し、成形精度も低下し、0.1μm未満となると、市販品での入手が困難となりコスト高となる。 【0019】上記本発明は、要するに、耐熱性に優れ安価で汎用性の高いポリアミド66において劣っている性能特に寸法安定性を添加物によって改善している。つまり、添加物の一つであるミネラル粉体は、成形特有のひけやそりを防止し、また、添加物の他の一つであるエラストマー粉体は、樹脂の硬化速度を遅くするので、射出圧力が樹脂全体に均一に伝わりやすくなって金型からの転写が正確に行われるようになる他、吸水率を下げるのに役立つ。しかも、これら二つの粉体の混入により、全体の熱膨張係数が上がるようになる。 【0020】 【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細を図1ないし図4に示す実施例に基づいて説明する。 【0021】図1ないし図4は本発明の一実施例にかかり、図1は、クリープ防止用樹脂を有する転がり軸受の使用状態を示す縦断面図、図2は、クリープ防止用樹脂の構造を模式的に示す図、図3は、軸受のクリープ力と環境温度との関係を示すグラフ、図4は、クリープ防止用樹脂の倉庫内放置日数と外径寸法の変化との関係を示すグラフである。 【0022】図1において、Aは転がり軸受、Bはアルミニウム合金製のハウジング、Cは軸である。 【0023】転がり軸受Aは、内輪1、外輪2、転動体3、および保持器4から構成されており、図示例では、外輪2の外周面において軸方向に離れた二カ所に、周方向に連続する溝5を設け、この各溝5内にクリープ防止用樹脂6が設けられている。内輪1、外輪2、転動体3は、軸受鋼(SUJ2)で、また、保持器4は、軟鋼(SPCC材)でそれぞれ形成される。 【0024】クリープ防止用樹脂6は、図2に示すように、ポリアミド66(PA66)を母材61として、ミネラル粉体62およびエラストマー粉体63を分散混入したものからなる。 【0025】具体的に、前述のミネラル粉体62は、炭酸カルシウムやマイカなど、エラストマー粉体63は、変性EPDMあるいはEPMなどとするのが好ましい。EPDMは、エチレン・プロピレンおよび若干のジエン成分(第3成分と呼ばれ、ジシクロペンタジエン、エキリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエンなど)の三元重合体であり、無水マレイン酸でグラフトすることにより変性されている。EPMは、エチレンとプロピレンの共重合体である。 【0026】ここで、クリープ防止用樹脂6の一例についての物性を調べた。ここで用いたクリープ防止用樹脂6の組成は、ミネラル粉体62として、1〜3μmの粒子からなるパウダー状の炭酸カルシウム、エラストマー粉体63として、0.1〜1μmの粒子からなるパウダー状の変性EPDMをそれぞれ選定するとともに、母材61を75〔wt%〕、ミネラル粉体62を10〔wt%〕、エラストマー粉体63を15〔wt%〕の割合に設定した。 【0027】物性は、下記表5のとおりであり、先に例示した表1に比べると明らかなように、本実施例のクリープ防止用樹脂6では、母材61であるポリアミド66において劣っている性能特に吸水率が改善されている。しかも、熱膨張係数がPA11と同等のレベルに上がっている。 【0028】 【表5】
【0029】ここで、図1に示す転がり軸受Aの形態で、クリープ防止用樹脂6を上記物性測定に用いた構成として、使用状態でのクリープ力および長期放置による吸湿寸法変化を調べた。その結果は、図3および図4に示すとおりである。なお、転がり軸受Aの外輪2の各溝5に対してクリープ防止用樹脂6を射出成形により形成している。この射出成形でのクリープ防止用樹脂6の外径寸法精度は、公差20μmとかなり低いレベルになった。 【0030】図3において、比較例1は、クリープ防止用樹脂6をPA11とし、その外径寸法を後加工で仕上げたものであり、比較例2は、クリープ防止用樹脂6を設けていない転がり軸受である。また、使用軸受は、呼び番号6000(外径φ26mm)のSUJ2製軸受であり、ハウジングはアルミニウム合金製である。実施例と比較例の初期寸法は表6のとおりである。 【0031】 【表6】
【0032】図4においては、軸受コーティング樹脂の所定位置にマーキングを施し、その部分の外径を追跡調査した。使用軸受は、呼び番号6202(外径φ35mm)である。 【0033】クリープ力は、図3に示すように、比較例2より明らかに高いレベルで、比較例1と遜色ないレベルにまで高くなっており、180℃まで所要レベル以上を維持している。また、吸湿寸法変化は、図4に示すように、梅雨に相当する期間において寸法変化が大きくなるものの、全期間を通じて比較例1に比べて寸法変化が小さくなっている。 【0034】以上のことから、クリープ防止用樹脂6の評価は、下記表7に示すように、すべての項目において所要の基準を越えたものになる。 【0035】 【表7】
【0036】以上説明した実施例のクリープ防止用樹脂6では、高温環境での長期連続使用に耐え安定したクリープ防止性能を発揮することが明らかになった。しかし、この実施例のクリープ防止用樹脂6のみに限定されるものではなく、ミネラル粉体62を5〜15〔wt%〕、エラストマー粉体63を10〜20〔wt%〕の範囲でそれぞれ設定することができるが、両粉体を合わせて25〔wt%〕程度にする配合が最も好ましい。但し、ミネラル粉体62の大きさは、1〜3μm、エラストマー粉体63の大きさは、0.1〜1μmにそれぞれ設定するのが適正と考えられる。それは、前述の値以上に大きく設定した場合には、熱膨張係数が小さくなる傾向を示すからである。 【0037】なお、本発明は上記実施例のみに限定されるものではなく、種々な応用や変形が考えられる。 【0038】(1) クリープ防止用樹脂6は、外輪2の外周面の軸方向に離れた二カ所あるいはそれ以上に設けてもよいし、また、外輪2の溝5に設けずに、外輪2に溝5を設けずに平坦な外周面に設けてもよい。さらに、外輪2に対して射出成形により接着せずに、接着剤を用いて貼着してもよい。 【0039】(2) クリープ防止用樹脂6は、外輪2ではなく内輪1において軸Cとの嵌合面つまり内周面に設けるようにしてもよい。 【0040】(3) クリープ防止用樹脂6は、転がり軸受だけでなくすべり軸受にも利用することができる。 【0041】 【発明の効果】本発明では、高温環境での長期連続使用に耐え安定したクリープ防止性能を発揮することができて、しかも非使用時の吸湿寸法変化の少ない高性能なクリープ防止用樹脂を安価で提供することができる。 【0042】特に、このクリープ防止用樹脂を軸受のハウジングに対する嵌合面に設けた場合では、軸受を使用対象にクリープ防止する状態に簡単に設置することができるなど、実用面で有利となる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000001247 【氏名又は名称】光洋精工株式会社
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| 【出願日】 |
平成8年(1996)5月30日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】岡田 和秀
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| 【公開番号】 |
特開平9−314695 |
| 【公開日】 |
平成9年(1997)12月9日 |
| 【出願番号】 |
特願平8−136393 |
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