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【発明の名称】 スリッタ用スペーサ
【発明者】 【氏名】太田 年昭

【氏名】阪本 正悟

【氏名】柴田 曉典

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 スリッタ刃間に配置されるスリッタ用スペーサにおいて、基準スペーサについて設定締め付け力を付与したときの弾性変形量を有限要素法により算出し、前記基準スペーサと材質が異なる使用スペーサについて設定締め付け力を付与したときの弾性変形量を有限要素法により算出して、その差分を考慮して前記使用スペーサの寸法が決められていることを特徴とするスリッタ用スペーサ。
【請求項2】 前記有限要素法による弾性変形量のシュミレーション計算は、縦弾性係数及びポアソン比並びにスペーサの形状寸法をパラメータとするものであることを特徴とする請求項1に記載のスリッタ用スペーサ。
【請求項3】 前記基準スペーサは鉄製であり、使用スペーサはAl−Si系合金及びAl−Li系合金からなる群から選択された1種の合金により製造されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のスリッタ用スペーサ。
【請求項4】 スリッタ刃間に配置されるスリッタ用スペーサにおいて、使用スペーサについて設定締め付け力を付与したときの弾性変形量を有限要素法により算出し、この弾性変形量とスリッタ刃の所定の間隔とを考慮して前記使用スペーサの寸法が決められていることを特徴とするスリッタ用スペーサ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は加工時と締め付け時の寸法幅が異なるスリッタ用スペーサに対して使用され、予備加工することなく加工寸法幅を決定することができるスリッタ用スペーサに関する。
【0002】
【従来の技術】スリッタ用スペーサは、複数のスリッタ刃を所定間隔で配置するためにこれらの複数の刃の間に配置される円筒形状の交換部品であり、スペーサとスリッタ刃とは両端から10乃至40トンの力で締め付けることによって固定されている。スペーサが両側から加圧されると、このスペーサは弾性変形を生じることによって、幅方向において収縮する。従って、締め付けによって固定された後のスリッタ刃間の寸法幅は、スペーサの弾性変形分だけ狭くなる。そこで、従来においては、スリットを加工する前に予備加工を実施し、要求寸法公差を満足するように調整用のシムを再度組み合わせた後に、スリットを加工していた。
【0003】ところで、従来より、このようなスペーサとして鋼製のスリッタが使用されているが、鋼製スペーサは重量が大きいので、交換時等の作業効率が低いと共に、安全性の点においても問題を有していた。そこで、スペーサの軽量化に対する要求に対して、近時、アルミニウム又はアルミニウム合金(以下、アルミニウム又はアルミニウム合金を総称して、単にアルミニウムという)等を使用した軽量スペーサが開発されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、アルミニウムは鋼よりも弾性係数が小さいため、アルミニウム製のスペーサを使用すると、鋼製スペーサを使用した場合と比較して弾性変形量が大きいという問題点がある。従って、アルミニウム製のスペーサと鋼製スペーサとを同時に使用するか、又はアルミニウム製のスペーサのみを使用する場合には、寸法幅の微調整が必要となる。このように、所望の寸法幅に設定する度に、予備加工による微調整を実施するので、スリット加工時の作業効率が低下する。
【0005】本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、金属帯の切断ロスの発生を低減できると共に、寸法幅設定時の作業効率及び締め付け固定後の寸法安定性を向上させることができるスリッタ用スペーサを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明に係るスリッタ用スペーサは、スリッタ刃間に配置されるスリッタ用スペーサにおいて、基準スペーサについて設定締め付け力を付与したときの弾性変形量を有限要素法により算出し、前記基準スペーサと材質が異なる使用スペーサについて設定締め付け力を付与したときの弾性変形量を有限要素法により算出して、その差分を考慮して前記使用スペーサの寸法が決められていることを特徴とする。
【0007】この有限要素法による弾性変形量のシュミレーション計算は、縦弾性係数及びポアソン比並びにスペーサの形状寸法をパラメータとすることができる。
【0008】また、基準スペーサは鉄製であり、使用スペーサはAl−Si系合金及びAl−Li系合金からなる群から選択された1種の合金により製造されていることが好ましい。
【0009】本発明に係る他のスリッタ用スペーサは、スリッタ刃間に配置されるスリッタ用スペーサにおいて、使用スペーサについて設定締め付け力を付与したときの弾性変形量を有限要素法により算出し、この弾性変形量とスリッタ刃の所定の間隔とを考慮して前記使用スペーサの寸法が決められていることを特徴とする。
【0010】
【作用】本発明においては、例えば、従来の鋼製スペーサ(基準スペーサ)を軽量なアルミニウム製スペーサ(使用スペーサ)に交換する場合において、鋼製スペーサ及びアルミニウム製スペーサの材質、形状、寸法から有限要素法により各スペーサの弾性変形量を算出する。この弾性変形量は使用するスペーサの材質に固有のヤング率及びポアソン比、並びにスペーサの肉厚及び形状に依存するので、これらのスペーサの軸方向の弾性変形量を算出することができる。そして、鋼製スペーサの弾性変形量d1 とアルミニウム製スペーサの弾性変形量d2 との差を鋼製スペーサの軸方向の加工寸法幅W1 に加算した寸法(W1 +(d2 −d1 ))でアルミニウム製スペーサを加工する。そうすると、このアルミニウム製スペーサを使用して締め付け固定したときに、従来使用していた鋼製スペーサと同一の寸法幅を得ることができる。
【0011】また、本発明においては、新たに加工するスペーサ(使用スペーサ)についても適用することができる。即ち、所定の形状及び寸法並びに加工するスペーサの材質から、設定締め付け時における弾性変形量を有限要素法により算出する。そして、この変形量をスリッタ刃の所定寸法幅に加算することにより、スペーサの加工寸法幅を決定することができる。
【0012】前述の如く、有限要素法により算出する弾性変形量は、設定の締め付け力において算出するものであり、通常、この締め付け力は使用する装置によりほぼ一定である。しかしながら、装置内の油圧の変化等により締め付け力が変化することがあり、これにより、弾性変形量にもずれが生じる虞がある。そこで、本発明においては、軽量で材料コストが低いと共に、ヤング率が高いアルミニウム合金等をスペーサの材質として選択する。そうすると、弾性変形量が小さくなり、締め付け固定後のスペーサの寸法幅の安定性が向上する。従って、スペーサとしてAl−Si系合金又はAl−Li系合金を使用することが好ましい。
【0013】
【実施例】以下、本発明に係るスリッタ用スペーサの実施例について具体的に説明する。
【0014】図1はスリッタ用スペーサの構成を示す模式的断面図である。円盤状のスリッタ刃2a及び2bが支持軸3に挿通されており、このスリッタ刃2aと2bとの間には、円筒形状のスペーサ1が挿通されている。
【0015】このような形状の種々の肉厚のスペーサを使用して、このスペーサの軸方向に対して締め付け力を付与した場合の弾性変形量を有限要素解析により算出する。
【0016】図2はアルミニウム製スペーサ1の1/2モデルの有限要素解析方法を示す要素分割図である。この有限要素解析は軸対象要素を利用して、軸方向の寸法幅が100mmであるスペーサの1/2モデルとして解析した。なお、本実施例においては、アルミニウム製のスペーサの材質としてA7075FH−T652を使用し、ヤング率を7000( kgf/mm2)、ポアソン比を0.3とした。また、鋼製スペーサとして鉄を使用し、ヤング率を21000( kgf/mm2)、ポアソン比を0.29とした。
【0017】また、解析においては、壁4及び5は剛表面であって変形しないものとし、壁6は中立点であって移動しないものとする。そして、壁4を介してスペーサ1に対しその軸方向に締め付け力を付与する。
【0018】スペーサ1に締め付け力が付与されていないときには、このスペーサ1は変形していないが、壁4によって締め付け力を付与すると、補助壁4の位置がδだけ移動し、スペーサ1の形状はスペーサ1aのように変形する。このとき、実際の変形量はδの2倍であるので、スペーサ1の変形量は2δである。このようにして、有限要素解析により算出した軸方向の変形量を下記表1に示す。
【0019】
【表1】

【0020】図3は縦軸にスペーサの軸方向変形量をとり、横軸にスペーサの肉厚をとって、アルミニウム製スペーサ及び鉄製スペーサの肉厚と変形量との関係を示すグラフ図である。
【0021】例えば、肉厚が15mm、軸方向の幅が100mmである鉄製のスペーサ(基準スペーサ)をアルミニウム製のスペーサ(使用スペーサ)に交換するとき、以下の方法で補正することができる。上記表1及び図3に示すように、従来の鉄製スペーサの変形量d1 は0.0090mm、アルミニウム製のスペーサの変形量d2 は0.0267mmである。従って、この変形量の差(0.0267-0.0090=0.0177(mm))を従来の鉄製スペーサの加工寸法幅W1 (100mm) に加算することにより、アルミニウム製スペーサの加工寸法幅W2 (100.0177mm)が得られる。この加工寸法幅W2 でアルミニウム製スペーサを加工すると、設定締め付け時において鉄製スペーサを使用した場合と同一の寸法幅となる。このように、従来より使用していた鉄製スペーサをアルミニウム製スペーサに交換する場合に、予備加工をした後にシム等を組み合わせて調整する必要がない。
【0022】また、例えば、肉厚が15mmである鉄製スペーサを新たに加工するとき、所望の軸方向の寸法幅が100mmであるとすると、この場合の軸方向の変形量は0.0090mmであるので、これを100mmに加算して100.0090mmの寸法幅の鉄製スペーサ(使用スペーサ)を加工するとよい。
【0023】このようにして、予備加工をすることなくスペーサの加工寸法幅を決定することができるが、スペーサの締め付け力が油圧等によって変化すると、締め付け固定後の寸法の安定性が低下することがある。従って、寸法の安定性をより一層向上させるために、種々のアルミニウム合金等におけるヤング率及び有限要素解析による軸方向の変形量を調査した。この結果を下記表2に示す。但し、下記表2に示す変形量は、肉厚tが15mm、内径Hが240mm、外径Dが270mm、軸方向の幅が100mmであるスペーサに20トンの締め付け力を付与した場合について算出したものである。
【0024】
【表2】

【0025】上記表2に示すように、スペーサへの締め付け力の差による寸法安定性を向上させるためには、軸方向への変形量が小さい材質、即ち、ヤング率が高い材質を使用することが好ましい。一方、Ti−6Al−4V系合金はヤング率が高いので変形量は小さいが、原料コストが高いので、スペーサ用の材料としては好ましくない。従って、スペーサの材質としては、Al−Si系合金又はAl−Li系合金等を選択するとよい。
【0026】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、有限要素法により予めスペーサの軸方向の変形量を算出して、予備加工をすることなく所望の寸法幅に設定できるので、金属帯の切断ロスの発生を低減することができると共に、作業効率を向上させるスリッタ用スペーサを得ることができる。また、縦弾性係数が高い材質を使用すると、スペーサの寸法安定性を向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【出願日】 平成8年(1996)1月18日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】藤巻 正憲
【公開番号】 特開平9−192920
【公開日】 平成9年(1997)7月29日
【出願番号】 特願平8−6915