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【発明の名称】 アルミニウムの連続鋳造方法
【発明者】 【氏名】常川 雅功

【氏名】林 典史

【氏名】宇野 照生

【氏名】渡辺 良夫

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 鋳型上部からアルミニウムの溶湯を供給し、凝固した鋳塊を鋳型下部から引き出すアルミニウムの垂直連続鋳造において、鋳造の初期段階に、鋳型下部から引き出された鋳塊の表面を膜沸騰冷却し、鋳塊表面からの熱抽出を熱伝達係数で4000W/m2 K以下にすることを特徴とするアルミニウムの連続鋳造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルミニウムの連続鋳造方法、詳しくは、アルミニウムの垂直連続鋳造において、鋳造の初期段階で生じる鋳塊底部の欠陥を低減するアルミニウムの連続鋳造方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】アルミニウム(アルミニウム合金を含む、以下同じ)の垂直連続鋳造は、上下に開放された筒状鋳型の上部からアルミニウム溶湯を供給し、凝固した鋳塊を鋳型の下部から引き出すことにより行われる。通常、鋳造開始に際しては、鋳型内に底台を設置したのち、鋳型内に溶湯を供給して、底台および鋳型内に所定量の溶湯が注入された段階で底台を鋳型の下方へ降下させるとともに周囲から冷却水を供給して溶湯を凝固させ、凝固した鋳塊を垂直方向に連続的に引き出す。
【0003】この場合、とくに断面矩形状の圧延用インゴットを鋳造する場合には、図1に示すように、鋳造の初期段階において、鋳型1から引き出された鋳塊Cの底部は冷却水3によって急冷される結果、鋳塊C底部の温度が急激に低下し、鋳塊の縦方向に急温度勾配が生じて熱応力が誘導されるとともに、鋳塊Cの中央部と端部との間の急温度勾配からも熱応力が生じ、このため鋳塊の短辺側底部に反り上り4が発生する。鋳塊の短辺側底部が反り上ると、その上部にはくびれ5が生じ、縦割れや湯漏れの原因となる。なお、図1において、Mはアルミニウム溶湯、Bは凝固界面である。
【0004】また、反り上がり4の形成に起因して、鋳塊Cの長辺側の中央部には引張応力がはたらくため縦割れ6が生じ易くなり、反り上がり部においては、鋳型Cの底部と底台2の間に空隙部7が形成されるため、底台2の方向への抜熱が低下して鋳塊底部が再溶解し、再溶解部から割れが発生するという問題も生じる。
【0005】連続鋳造の初期段階における鋳塊底部の冷却による収縮を最適化して反り上がりをなくし、鋳塊底部に発生する欠陥を防止するために、これまでいくつかの技術が開発されている。例えば、鋳造の初期段階において、冷却媒体中に炭酸ガスなどのガスを混合させて鋳塊からの熱抽出の速度を減少させ、鋳造の進行に従ってガスの混合量を減少させ、冷却速度を通常の速度に戻して行く方法(特公昭55-42903号公報) 、鋳造の初期段階において、冷却水を間欠的に供給して鋳塊底部の収縮を制御するパルス冷却法( 米国特許第3,441,079 号明細書) などが提案され、それぞれ実用化されている。
【0006】上記の方式はいずれも、アルミニウムの連続鋳造の初期段階の鋳塊底部の欠陥防止に効果的であるが、炭酸ガスを冷却媒体に混合する方法は、炭酸ガスの発生、混合量の制御などのための大がかりな設備が必要であり、パルス冷却法においては、冷却水のオン・オフを制御するための複雑な装置を要し、制御系に問題が発生した場合には、鋳塊冷却が中断される結果、再溶解が生じ鋳型壁が損傷するなどの難点もある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、アルミニウムの垂直連続鋳造において、鋳造初期段階において生じる鋳塊の欠陥を防止するための上記従来の方式の難点を解消する方法を開発するために、高温のアルミニウム鋳塊の冷却段階について基礎的な実験検討を行った結果としてなされたものであり、その目的は、複雑な設備を使用することなく、簡便な方法で連続鋳造の初期段階における鋳塊底部の欠陥の発生を抑制することができるアルミニウムの連続鋳造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するための本発明によるアルミニウムの連続鋳造方法は、鋳型上部から溶湯を供給し、凝固した鋳塊を鋳型下部から引き出すアルミニウムの垂直連続鋳造において、鋳造の初期段階に、鋳型下部から引き出された鋳塊の表面を膜沸騰冷却し、鋳塊表面からの熱抽出を熱伝導係数で4000W/m2 K以下とすることを特徴とする。
【0009】本発明は、アルミニウム溶湯を鋳型上部から供給し、凝固した鋳塊を鋳型下部へ引き出すアルミニウムの垂直連続鋳造のうち、とくに圧延用の矩形状インゴットを鋳造する場合に有効であり、図1に示すように、鋳型1内に底台2を設置し、鋳型内の底台2上に溶湯Mを注入し、冷却水3を供給して鋳塊Cの底部を形成する鋳造の初期段階において鋳塊の表面を膜沸騰冷却する。
【0010】膜沸騰冷却によれば、冷却水が高温の鋳塊表面で沸騰、気化して蒸気膜を形成し、鋳塊は直接、水に曝されることなく、蒸気膜を通して冷却される。従って、鋳塊表面からの熱抽出は著しく抑制される。その後、鋳塊表面の温度が低下すると、蒸気膜が部分的にやぶれ、その部分が水と接触して気泡を発生する遷移沸騰段階、蒸気膜が全体的になくなって鋳塊表面が冷却水と接触し、気泡が生じる核沸騰段階に移行し、鋳塊表面からの熱抽出が増大して所定の冷却速度となり、定常の連続鋳造が行われる。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明のアルミニウムの連続鋳造において、鋳造初期に膜沸騰冷却状態を維持する方法としては、初期段階において、鋳造速度を大きくする方法、冷却水の供給量を少なくする方法あるいはこれらを組合わせる方法があるが、本発明の効果を達成するためには、膜沸騰限界の熱抽出を熱伝導係数として4000W/m2K以下にすることが必要である。
【0012】上記の熱伝導係数は、鋳塊表面から5mm、15mm内部の位置に熱電対を埋め込み、これらの位置の温度変化を所定時間毎に測定して温度変化を求め、水温を20℃として算出する。(住友軽金属技報、第35巻、第1、第2号、1994年6月号、第99頁、「アルミニウム連続鋳造用各種冷却法の冷却特性」、2.2 冷却性能の評価方法の項参照)
【0013】膜沸騰冷却を維持するためには、鋳塊表面からの熱抽出を、熱伝導係数として4000W/m2 K以下の制御して、鋳塊の表面温度を低下させないことが重要であり、熱抽出量が多くなると、冷却形態が膜沸騰から遷移沸騰、核沸騰に移行して、本発明の効果が得られなくなる。しかしながら、例えば冷却水量が少な過ぎると、鋳塊表面の温度が上昇して、湯漏れが生じるおそれがあるから、膜沸騰冷却を得るための冷却水量、鋳造速度は、鋳造するアルミニウムの材質、鋳塊の寸法を考慮して実験的に決定される。
【0014】本発明によれば、連続鋳造の初期段階において、冷却水が鋳塊の底部に衝突する場合、膜沸騰冷却が行われるから、鋳塊表面からの熱抽出が抑制されて、冷却速度は小さくなり、熱応力が緩和されるため、鋳塊底部に反り上りが生じることがなく、反り上りに起因する種々の鋳塊欠陥が防止される。
【0015】
【実施例】
実施例1JIS3004合金に相当する組成のアルミニウム合金を、通常の垂直連続鋳造方式に従い、断面寸法が縦550mm、横170mmの矩形状インゴットに造塊した。鋳造条件を表1に示す。なお、鋳造温度は700℃、鋳型として有効鋳型長さ65mmのものを使用し、各条件でそれぞれ50本づつのインゴットを鋳造した。
【0016】上記の連続鋳造においては、初期段階の鋳塊表面の冷却が膜沸騰冷却により行われ、表2に示すように、平均反り上り量は4.6mm以下と小さく、反り上りに起因する鋳塊の長辺側中央部の割れ、鋳塊短辺側の割れ、湯漏れ、底部の再溶解から生じる割れなどは全く発生しなかった。なお、表2において、熱伝達係数の値は、鋳造初期段階に相当する鋳造開始から鋳込長さ150mmまでについてのものである。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】比較例1実施例1と同じ組成のアルミニウム合金を、実施例1と同様、通常の垂直連続鋳造方式に従って、実施例1と同一の断面寸法を有するインゴットに造塊した。鋳造条件を表3に示す。なお、鋳造温度、使用した鋳型の有効長は、実施例1と同じく、それぞれ700℃および65mmとし、各条件でそれぞれ50本づつのインゴット鋳造した。各条件での鋳造において、鋳造初期に相当する鋳込長さが150mmまでの熱伝達係数を求め、平均反り上り量、割れ発生状況を調べた。結果を表4に示す。
【0020】
【表3】

【0021】
【表4】

【0022】表4に示すように、比較例に従って鋳造された試験No.6〜9では、膜沸騰冷却が行われず、反り上り量が大きく、割れや、湯漏れが生じた。例えば、試験No.6においては、反り上り量が15〜19mm、平均反り上り量は17.1mmと大きく、反り上りに起因して、2本のインゴットに鋳塊の長辺方向中央部の割れ、1本のインゴットに鋳塊短辺部の割れが観察され、2本のインゴットにくびれ部の再溶解による湯漏れ不良が発生した。
【0023】また、試験No.1と試験No.6について、鋳込長さに対する熱伝導係数の変化を算出した結果を図2に示す。膜沸騰冷却が行われる試験No.1においては、鋳造初期段階に相当する鋳込長さ150mmまでの熱伝導係数が4000W/m2 K以下であるが、膜沸騰冷却が行われない試験No.6では最高16000W/m2 Kに達する急冷が行われている。
【0024】
【発明の効果】以上のとおり、本発明によれば、アルミニウムの連続鋳造、とくに断面矩形状のアルミニウムインゴットの垂直連続鋳造において、鋳造初期段階における冷却速度が緩和され、鋳塊底部の反り上りが抑制されるから、反り上りに起因して鋳造底部に生じる欠陥が防止され、安定した鋳込みを行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000002277
【氏名又は名称】住友軽金属工業株式会社
【出願日】 平成7年(1995)10月30日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】福田 保夫
【公開番号】 特開平9−122860
【公開日】 平成9年(1997)5月13日
【出願番号】 特願平7−305140