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【発明の名称】 等速自在継手外輪の製造方法およびその内型装置
【発明者】 【氏名】稲垣 良文

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 カップ状の素材の内径面に交差溝を鍛造する等速自在継手外輪の製造方法において、外周に交差溝型を有する内型を前記カップ状素材に挿入し、前記素材の外径面を回転式打撃装置で繰り返して打撃することにより、前記素材の内径面に前記交差溝型に倣う交差溝を成形する等速自在継手外輪の製造方法。
【請求項2】 前記内型として、円周方向に並ぶ複数のセグメントに前記交差溝型を設けて縮径可能としたものを用い、交差溝の成形後、前記内型を縮径させて素材から軸方向に抜き出す請求項1記載の等速自在継手外輪の製造方法。
【請求項3】 カップ状の素材の内径面に交差溝を鍛造するに際して、素材外径面を打撃する回転式打撃装置と共に用いられる内型装置であって、内型および縮径リングを備え、前記内型は、軸状のポンチベースの外周に複数個のセグメントを設け、かつポンチベースの軸心部にノックアウトを進退自在に挿通したものとし、前記各セグメントは素材内径面の一部を成形する内径面成形面および交差溝型を有し、かつ位置決め用勾配面および縮径用勾配面が内径側および外径側に各々形成され、前記ポンチベースは、素材内径面の残り部分を成形する内径面成形面と、各セグメントが嵌合する複数の嵌合溝とが形成されて嵌合溝の底面が前記位置決め用勾配面に面接触するセグメント位置決め面とされ、前記縮径リングは軸方向移動自在に設けられてセグメントの縮径用勾配面を押すガイド勾配面を有するものとした等速自在継手外輪の製造用内型装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、自動車等に使用される動力伝達用等速自在継手の構成部品である外輪を鍛造で製造する製造方法およびその内型装置に関する。
【0002】
【従来の技術】等速自在継手では、一般に図4に示すように、カップ部51および軸部52を有する外輪50が用いられる。カップ部51の内径面にはボールのトラック溝となる交差溝53が軸方向に対して傾斜して設けられる。従来、このような形状の外輪50を製造するには、図5に示すような鍛造粗成形品Waをもとに、カップ部51の内径部を切削して交差溝53および内径面51aを加工し、焼入後、研削により仕上げている。この他に、塑性加工の応用として、図5のような鍛造粗成形品Waの中に内型(図示せず)を入れ、外径を軸方向からしごくことによって成形する方法も試みられている。また、塑性加工の別の応用として、前記鍛造粗成形品Waの中に内型を入れ、外周を複数の外型で加圧して内型に倣う交差溝を成形する方法も提案されている(特公平5−62007号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記の切削加工による方法では、交差溝および内径加工に多大の工数がかかり、製品のコスト増加の原因となっている。前記のしごき加工による方法の場合は、内型への素材Waの充填性が悪く、良質の形状形成が困難である。また、前記の外周を複数の外型で加圧する方法では、各外型を一度に加圧するものであるため、加圧の駆動源に大出力のものが必要になる他、加圧中の各外型間の円周方向隙間に素材Waの外周がはさまりバリ(微小突起)が発生する等の問題がある。
【0004】この発明の目的は、切削加工に比べて生産性が良く、かつ従来の鍛造法に比べて充填性の良い高精度の品質が得られ、打撃用の駆動源も小出力のもので済む等速自在継手外輪の製造方法およびその内型装置を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明の製造方法は、カップ状の素材の内径面に交差溝を鍛造する等速自在継手外輪の製造方法であって、外周に交差溝型を有する内型を前記カップ状素材に挿入する。この状態で、素材の外径面を回転式打撃装置で繰り返して打撃することにより、素材の内径面に前記交差溝型に倣う交差溝を成形する。このように回転式打撃装置を用いることにより、素材の外周から半径方向に高速に何度も繰り返して打撃を加えることができ、これにより冷間鍛造であっても充填性の良い高精度の品質が得られる。また、回転式打撃装置を用いるため、少しずつ継続的に順を追って打撃を行うことになり、そのため加圧あるいは打撃用の駆動源が小出力のもので済む。前記内型としては、円周方向に並ぶ複数のセグメントに交差溝型を設け、セグメントの移動で縮径可能としたものを用いることが好ましい。この構成の内型を使用する場合、交差溝の成形後、内型を縮径させて素材から軸方向に抜き出すことができる。このように縮径可能な内型を用いることで、交差溝と交差溝型の間に無理な力を生じさせることなく、円滑に内型を抜き出すことができる。
【0006】この発明の等速自在継手外輪の製造用内型装置は、カップ状の素材の内径面に交差溝を鍛造するに際して、素材外径面を打撃する回転式打撃装置と共に用いられる内型装置であって、内型および縮径リングを備える。前記内型は、軸状のポンチベースの外周に複数個のセグメントを設け、かつポンチベースの軸心部にノックアウトを進退自在に挿通したものとする。各セグメントは、素材内径面の一部を成形する内径面成形面および交差溝型を有し、かつ位置決め用勾配面および縮径用勾配面が内径側および外径側に各々形成されたものである。ポンチベースは、素材内径面の残り部分を成形する内径面成形面と、各セグメントが嵌合する複数の嵌合溝とが形成されて嵌合溝の底面が前記位置決め用勾配面に面接触するセグメント位置決め面とされる。前記縮径リングは、軸方向移動自在に設けられてセグメントの縮径用勾配面を押すガイド勾配面を有するものとする。この構成の内型装置によると、成形の後、ポンチベースを引き抜き方向に移動させてセグメントを径方向内側へ移動可能とし、縮径リングのガイド勾配面でセグメントを軸方向に押すことにより、各セグメントを内側へ移動させて内型を縮径させる。ことにより、交差溝型が成形済み素材の交差溝から外れ、内型を軸方向に抜き出すことができる。
【0007】
【発明の実施の形態】この発明の一実施形態を図1ないし図3に基づいて説明する。この等速自在継手外輪の製造方法は、図1(A)に示す一端が閉鎖されたカップ状の素材Wを鍛造して、図1(C),(D)に成形済み品(W)を示すように交差溝3および内径面1aを鍛造する方法であり、次のように行う。素材Wは、前工程の鍛造で粗成形したものであり、カップ部1およびその裏面から突出する軸部2を有する。まず、概略方法を説明する。図1(B)に示すように、カップ状素材Wに内型4を挿入する。この内型4として、外周に交差溝型4aを有するものを用い、素材Wの外径面を図1(E)に示す回転式打撃装置5の外型6で繰り返して打撃することにより、素材Wの内径面に交差溝型4aに倣う交差溝3を成形する。この成形と同時に、素材Wのカップ部1の内径面1aも成形される。このように回転式打撃装置5を用いることにより、素材Wを外周から半径方向に高速に何度も繰り返して打撃を加えることができ、このように回転式打撃で圧縮して鍛伸することにより、充填性の良い高精度の品質が得られる。
【0008】回転式打撃装置5は、いわゆるロータリスエージング方式の回転鍛造機であり、一般に市販されているものが使用できる。この回転式打撃装置5は、放射状に並ぶ複数の外型6で円筒面状の加圧面6aを形成するものであり、この例では4個の外型6を使用している。これら外型6は、スピンドル8に設けたガイド溝8aに楔状のシム9およびカム10と共に半径方向に進退自在に嵌合させてある。スピンドル8とハウジング11のアウターリング11aの間を転走するローラ12がガイド溝8aを通過する都度、カム10およびシム9を介して外型6が半径方向内側へ加圧される。ローラ12は、外型6に対する打撃部材となるものであり、スピンドル8とアウターリング11aとを相対的に回転させることで、両者8,11aの間の円筒状の隙間を転走する。カム10とシム9とは、図2のように互いの接触面を傾斜面としてあり、カム10を軸方向に移動させることで、外型6の半径方向のストロークが与えられる。各ローラ12は、ハウジング11に設けたローラガイド13で軸方向に位置決めされている。素材Wの成形に際しては、ローラ12の転走による加圧の開始から、カム10を次第に深く進入させることで、外型6を回転しながら内径側へ移動させ、素材Wの外径面を絞って内径面を内型4に押し付け、交差溝3を形成する。または、外型6でテーパ状の加圧面も形成しておき、カム10を軸方向に移動させる代りに素材で軸方向に移動させ、外型6を回転しながら前記テーパ状の加圧面で絞る事も可能である。
【0009】図3は内型装置15およびその動作を示す。同図(A)は成形完了時の状態を示し、同図(B)は成形完了直後の内型縮径状態を示す。内型装置15は、主に内型4および縮径リング16で構成され、内型4に対向して幅押え28が設けられる。幅押え28は、素材Wのカップ部1の背面を支持する部材であり、軸部2を嵌合させる軸部嵌合孔28aを有している。内型4は、軸状のポンチベース17の外周に複数個(この例では6個)のセグメント18を設け、かつポンチベース17の軸心部に傘形のノックアウト19を進退自在に挿通したものとする。各セグメント18は、素材内径面の一部を成形する内径面成形面18aおよび交差溝型4aを前部の外径側に有するものであり、位置決め用勾配面18bが内径側の全長に渡って形成され、かつ縮径用勾配面18cが外径側における後部に形成されている。ポンチベース17は、素材内径面の残り部分を成形する内径面成形面17aと、各セグメントが嵌合する複数の嵌合溝17bとが形成されて嵌合溝17bの底面が前記位置決め用勾配面18bに面接触するセグメント位置決め面17baとされる。嵌合溝17bの深部側端はポンチベース17の先端面に開口し、浅部側端はセグメント18の位置決め用係合面17bbとされている。縮径リング16は、リング状のストリッパ29内を軸方向移動自在に設けられてセグメント18の縮径用勾配面18cを押すガイド勾配面16aを有している。
【0010】ストリッパ29は、素材Wのカップ部1の前端面を当接させる部材であり、シリンダ装置20のシリンダケース21に一体に結合されている。シリンダ装置20は、ポンチベース17に接続したピストンロッド22を進退させる油圧式等の流体圧シリンダであり、ピストンロッド22の外周のピストン22aがシリンダ室21a内に嵌合している。ピストンロッド22およびポンチベース17は中空軸とされ、内部に配置したばね部材23でノックアウト19を突出付勢している。前記シリンダケース21の周方向複数箇所に、縮径リング16の駆動手段となるシリンダ装置24が形成してあり、そのピストンロッド25が縮径リング16に結合されている。縮径リング16は復帰ばね26で後退方向へ付勢してある。
【0011】この内型装置15は、次のように使用される。素材Wは軸部2をガイドしながら幅押え28と傘状のノックアウト19とで挟み、セグメント18,ポンチベース17,およびノックアウト19で構成される内型4を図3(A)のように素材Wのカップ部1の内側へ挿入する。その後、素材Wのカップ部1の外径面を、回転する外型6を介して回転式打撃装置5で加圧することにより、セグメント18とポンチベース17の外形形状に倣った内径形状に素材Wが成形される。成形後、ピストンロッド22に締結されたポンチベース17を成形済み素材Wからストッリッパ29を使用して抜き取り、縮径リング16がシリンダ装置26により前進することによってセグメント18が縮径する。この縮径状態で成形済み素材Wを内型4から軸方向に離脱させる。
【0012】
【発明の効果】この発明の等速自在継手外輪の製造方法は、外周に交差溝型を有する内型を前記カップ状の素材に挿入し、前記素材の外径面を回転式打撃装置で繰り返して打撃することにより、前記素材の内径面に前記交差溝型に倣う交差溝を成形する方法であるため、切削加工に比べて生産性が良く、かつ従来の鍛造法に比べて充填性の良い高精度の品質が得られる。また、回転式打撃装置を用いるため、打撃用の駆動源が小さなもので済み、外周にバリのない高品質のものが得られる。前記内型として、複数のセグメントに交差溝型を設けた縮径可能なものを用い、成形後、内型を縮径させて素材から軸方向に抜き出すようにした場合は、脱型が無理なく円滑に行える。この発明の内型装置は、回転式打撃装置と共に用いられるものであって、内型および縮径リングを備え、前記内型は、ポンチベースの外周に複数個のセグメントを設け、かつ軸心部にノックアウトを進退自在に挿通したものとし、各セグメントは素材内径面の一部を成形する内径面成形面および交差溝型を有し、ポンチベースで各セグメントを径方向におよび周方向に位置決めすると共に、ポンチベースの退避後に縮径リングでセグメントの配列を縮径させるように構成したため、前記の成形方法による成形および脱型が円滑に行える。
【出願人】 【識別番号】000102692
【氏名又は名称】エヌティエヌ株式会社
【出願日】 平成7年(1995)10月31日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士 (外1名)
【公開番号】 特開平9−122815
【公開日】 平成9年(1997)5月13日
【出願番号】 特願平7−308283