トップ :: B 処理操作 運輸 :: B21 本質的には材料の除去が行なわれない機械的金属加工;金属の打抜き




【発明の名称】 板金製内歯車の山部形成方法
【発明者】 【氏名】金光 俊明

【氏名】金光 秀治

【氏名】西岡 裕則

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 山部の軸方向開放端面を成形するための山部開放端成形面を端部に備える山部成形用の凹形成形空間と谷部成形用の凸部とが周方向に並んだ歯車成形面と、この歯車成形面に上記山部開放端成形面を境にして軸方向で隣接する円筒面と、を備える回転内型に、基板部の外周に筒状の周壁が連設されたカップ状素材をその周壁の先端部が上記円筒面に対向する状態に取り付けた後、回転内型と共にカップ状素材を回転させながら、カップ状素材の周壁を上記山部開放端成形面に近い箇所で回転内型側に定位置で押圧して周壁の肉を上記凹型成形空間の中へ流動させることにより、周壁を上記凹型成形空間に対応する箇所で増肉させて山部の軸方向開放端面を含む端部だけを成形し、次に、カップ状素材の周壁を回転内型側に押圧してその周壁の肉を上記凹型成形空間の中へ流動させることによりその周壁を凹型成形空間に対応する箇所で増肉して山部の残部を成形することを特徴とする板金製内歯車の山部形成方法。
【請求項2】 山部の軸方向開放端面を含む端部だけを成形するときに、回転内型の円筒面とカップ状素材に接触して連れ回りする環状部材とでカップ状素材の周壁を挾み付けると共にその環状部材を上記周壁に喰い込ませて周壁の肉が環状部材と上記円筒面との隙間を通って外方へ流動することを制限する請求項1に記載の板金製内歯車の山部形成方法。
【請求項3】 山部の軸方向開放端面を含む端部だけを成形する工程を、山部開放端成形面に近い箇所でカップ状素材の周壁に接触してカップ状素材に連れ回りする成形ローラを回転内型に近付く方向に移動させながら行う請求項1に記載の板金製内歯車の山部形成方法。
【請求項4】 請求項2に記載の環状部材が一体に設けられた成形ローラを用いる請求項3に記載の板金製内歯車の山部形成方法。
【請求項5】 山部の軸方向開放端面を成形するための山部開放端成形面を端部に備える山部成形用の凹形成形空間と谷部成形用の凸部とが周方向に並んだ歯車成形面と、この歯車成形面に上記山部開放端成形面を境にして軸方向で隣接する円筒面と、を備える回転内型に、基板部の外周に筒状の周壁が連設されたカップ状素材を、その周壁の先端部が上記円筒面に対向する状態に取り付けた後、回転内型と共に上記カップ状素材を回転させながら、カップ状素材の基板部と周壁との連設部分を回転内型側に定位置で押圧してその連設部分の肉を上記凹型成形空間の中に流動させ、もってその連設部分を上記凹型成形空間に対応する箇所で増肉させることにより内歯車の山部における上記連設部分側の根元部分だけを成形することと、回転内型と共にカップ状素材を回転させながら、カップ状素材の周壁を上記山部開放端成形面に近い箇所で回転内型側に定位置で押圧して周壁の肉を上記凹型成形空間の中へ流動させることにより、周壁を上記凹型成形空間に対応する箇所で増肉させて山部の軸方向開放端面を含む端部だけを成形することと、カップ状素材の周壁を回転内型側に押圧してその周壁の肉を上記凹型成形空間の中に流動させることによりその周壁を凹型成形空間に対応する箇所で増肉して山部の中間部を成形することと、を任意の順序で行うことを特徴とする板金製内歯車の山部形成方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、板金製内歯車の山部形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、自動車の差動装置に使用されるビスカスカップリングカバーやトランスミッション部品などのような内歯車を備えたカップ状部品は、鋼材に熱間鍛造や温間鍛造を施して概ね内歯車の形状に成形し、次にその素材を機械加工で切削して完成品としている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、従来の加工方法では、鋼材を熱間鍛造または温間鍛造に要求される温度にまで加熱する必要があるばかりか、加工工程に鍛造工程と機械加工工程とが含まれるので生産効率が悪く、また、内歯車に要求される精度を得るのに熟練を要するといった様々な問題があった。
【0004】そこで、本願発明者は、図14に示したように基板部101の外周に筒状の周壁102が連設された板金製のカップ状素材Wを回転内型1に取り付け、回転内型1と共に回転するカップ状素材Wの周壁102に成形ローラ3を矢符zのように近付けていき、その成形ローラ3がカップ状素材Wに接触したところで成形ローラ3をカップ状素材Wに連れ回りさせながら成形ローラ3でカップ状素材Wを回転内型1側に押し付け、これにより回転内型1の外周面に備わっている山部成形用の凹形成形空間11の中へ上記周壁102の肉を流動させることにより、周壁102における凹形成形空間11に対応する箇所を増肉させて内歯車の山部を成形するという方法を試みた。なお、図14において、2は押え型である。
【0005】しかしながら、図15のように、この方法で成形した内歯車200は山部202の軸方向開放端面を含む端部に欠肉部202aが生じることがあり、その場合には山部202が不完全な形状に仕上がるという事実を突き止めた。また、内歯車200の山部202の根元部分に欠肉部204aが生じて山部202が不完全な形状に仕上がることもあった。
【0006】本発明は以上の状況の下でなされたものであり、カップ状素材の周壁を回転内型の凹形成形空間に対応する箇所で増肉して内歯車の山部を形成する場合に、山部の軸方向開放端面を含む端部に欠肉部を生じさせない対策を講じることによって、成形された内歯車の山部の軸方向開放端面を含む端部を欠肉部の存在しない形状に精度よく仕上げることのできる板金製内歯車の山部形成方法を提供することを目的とする。また、上記の場合に、山部の軸方向開放端面を含む端部だけでなく、山部の根元部分にも欠肉部を生じさせない対策を講じることによって、成形された内歯車の山部の軸方向開放端側部分を欠肉部の存在しない形状に精度よく仕上げることのできる板金製内歯車の山部形成方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明の板金製内歯車の山部形成方法は、山部の軸方向開放端面を成形するための山部開放端成形面を端部に備える山部成形用の凹形成形空間と谷部成形用の凸部とが周方向に並んだ歯車成形面と、この歯車成形面に上記山部開放端成形面を境にして軸方向で隣接する円筒面と、を備える回転内型に、基板部の外周に筒状の周壁が連設されたカップ状素材をその周壁の先端部が上記円筒面に対向する状態に取り付けた後、回転内型と共にカップ状素材を回転させながら、カップ状素材の周壁を上記山部開放端成形面に近い箇所で回転内型側に定位置で押圧して周壁の肉を上記凹型成形空間の中へ流動させることにより、周壁を上記凹型成形空間に対応する箇所で増肉させて山部の軸方向開放端面を含む端部だけを成形し、次に、カップ状素材の周壁を回転内型側に押圧してその周壁の肉を上記凹型成形空間の中へ流動させることによりその周壁を凹型成形空間に対応する箇所で増肉して山部の残部を成形する、というものである。
【0008】この方法によると、内歯車の山部の全体が成形される前にその山部の軸方向開放端面を含む端部が成形されてしまうので、その後に行われる山部の残部の成形により、山部が軸方向開放端面を含む端部に欠肉部の存在しない形状に精度よく仕上がる。この作用は、請求項3に係る発明のように、山部の軸方向開放端面を含む端部だけを成形する工程を、山部開放端成形面に近い箇所でカップ状素材の周壁に接触してカップ状素材に連れ回りする成形ローラを回転内型に近付く方向に移動させながら行うことによっても発揮される。
【0009】上記方法においては、請求項2に係る発明のように、山部の軸方向開放端面を含む端部だけを成形するときに、回転内型の円筒面とカップ状素材に接触して連れ回りする環状部材とでカップ状素材の周壁を挾み付けると共にその環状部材を上記周壁に喰い込ませて周壁の肉が環状部材と上記円筒面との隙間を通って外方へ流動することを制限することが望ましい。
【0010】この方法によると、回転内型側に定位置で押圧されたカップ状素材の周壁の肉が、環状部材と上記円筒面との隙間から外方へ流動して逃げるという現象が抑制されるので、それだけカップ状素材の周壁の肉が回転内型の凹型成形空間の中へ流動する傾向が強まり、山部の軸方向開放端面を含む端部が確実に成形されるようになる。この作用は、請求項4に係る発明のように、上記環状部材が一体に設けられた成形ローラを用いることによっても発揮される。
【0011】請求項5に係る発明による板金製内歯車の山部形成方法は、山部の軸方向開放端面を成形するための山部開放端成形面を端部に備える山部成形用の凹形成形空間と谷部成形用の凸部とが周方向に並んだ歯車成形面と、この歯車成形面に上記山部開放端成形面を境にして軸方向で隣接する円筒面と、を備える回転内型に、基板部の外周に筒状の周壁が連設されたカップ状素材を、その周壁の先端部が上記円筒面に対向する状態に取り付けた後、回転内型と共に上記カップ状素材を回転させながら、カップ状素材の基板部と周壁との連設部分を回転内型側に定位置で押圧してその連設部分の肉を上記凹型成形空間の中に流動させ、もってその連設部分を上記凹型成形空間に対応する箇所で増肉させることにより内歯車の山部における上記連設部分側の根元部分だけを成形することと、回転内型と共にカップ状素材を回転させながら、カップ状素材の周壁を上記山部開放端成形面に近い箇所で回転内型側に定位置で押圧して周壁の肉を上記凹型成形空間の中へ流動させることにより、周壁を上記凹型成形空間に対応する箇所で増肉させて山部の軸方向開放端面を含む端部だけを成形することと、カップ状素材の周壁を回転内型側に押圧してその周壁の肉を上記凹型成形空間の中に流動させることによりその周壁を凹型成形空間に対応する箇所で増肉して山部の中間部を成形することと、を任意の順序で行うというものである。
【0012】この方法であると、根元部分や軸方向開放端面を含む端部のいずれにも欠肉部を持たない山部が精度よく成形される。
【0013】
【発明の実施の形態】図1〜図8に板金製内歯車製造の全工程を示してあり、このうち、図5〜図8が請求項1〜請求項4に係る発明についての実施の一形態を示す説明図であり、また、図4〜図8が請求項5に係る発明についての実施の一形態を示す説明図である。
【0014】図1には、円形の平坦な板金製素材の中央部に膨出部100を成形することにより得られた素材Aを部分端面図で表してある。この素材Aにおいて、膨出部100を形成する方法には、プレスなどの公知の方法を採用することが可能である。
【0015】図1の素材Aに対しては、プレスや転造などの公知の方法で周壁が形成される。こうして形成されたカップ状素材(以下「ワーク」という)Wが図3に示されている。このワークWは、基板部101の外周に筒状の周壁102が連設されたものであって、周壁102は元の素材Aよりも少し厚肉化されている。なお、図2ではワークWの周壁102が少し湾曲しているけれども、この周壁102は基板部101に対して直交する方向に突き出た円筒壁であっても、あるいは基板部101から先拡がり状に突き出た円錐壁であってもよい。
【0016】ワークWの周壁102は図2に示した中間工程を経た後、最終的に図3の工程を経て形成されている。すなわち、図2の中間工程では、回転内型1に取り付けられた図1の素材Aに成形ローラ9を接触させてその成形ローラ9を連れ回りさせながら、その成形ローラ9に設けられている短い円弧状の成形面91で上記素材Aの外周部を矢符yのように押圧することが行われる。この中間工程を経ることにより素材Aの外周部102aが上記成形面91に沿って短い円弧状をなす湾曲状に成形される。次に、図2の成形ローラ9に代えて、図3に示した成形ローラ9Aが組み合わされる。そして、この成形ローラ9Aを短い円弧状の外周部102aに接触させてその成形ローラ9Aを連れ回りさせながら、この成形ローラ9Aに備わっている長い円弧状をなす成形面91Aで素材Aの短い円弧状の外周部102aを矢符y’のように押圧することにより、同図のように長い円弧状に湾曲した周壁102を形成している。なお、図2の工程で用いられている成形ローラ9は、素材Aの外周端面に対する受面92を有しており、この受面92に素材Aの外周部102aが突き当たることによってその素材Aの外周部102a、ひいては図3の工程で形成される周壁102の厚肉化がなされる。
【0017】周壁102を形成する工程を図2と図3で説明した2工程に分けて行うと、ワークWの周壁102の端部に肉の巻込みに伴う肉の重なりが生じないので好ましい。
【0018】図2や図3の工程を経て形成されたワークWの周壁102に対して、内歯車の成形工程が行われる。
【0019】この実施形態においては、回転内型1と押え型2とが板金製内歯車製造の全工程において共通して用いられる。回転内型1は、その外周面に周方向に交互に等間隔で並んだ山部成形用の凹形成形空間11と谷部成形用の凸部12とを備える歯車成形面P1と円筒面P2とを備えている。凹形成形空間2は軸方向の一端側が開放され、他端側に山部の軸方向開放端面(後述する)を成形するための山部開放端成形面13が設けられていて、この山部開放端成形面13を境にして上記歯車成形面P1と円筒面P2とが軸方向で隣接している。そして、凹形成形空間11や凸部12の軸方向の長さ(軸長)は、周壁102を成形することによって形成される内歯車の山部や谷部(後述する)の軸長に合わせて適切に定めてある。
【0020】回転内型1に図外の駆動源の回転力が伝達される。成形の最初の工程では、回転内型1に成形ローラ3が組み合わせられる。押え型2は、ワークWを回転内型1との間に挾み込んで取り付けるために必要で、ワークWを押さえ付けたままで回転内型1に連れ回りする。
【0021】成形ローラ3は回転内型1に対してその軸線に直交する方向で遠近可能であり、成型中は回転内型1に対して離れた位置から次第に近付く方向に移動される。図4に示したように、成形ローラ3は、ワークWの基板部101と周壁102との連設部分103に接触するテーパ状の傾斜成形面31と、傾斜押圧面32とを備えている。傾斜押圧面32は、傾斜成形面31の最径小部に連設されていて、傾斜成形面31と傾斜方向が同一であり、しかも傾斜成形面31よりも軸線に対して緩勾配のテーパ状になっている。なお、軸線に対する傾斜成形面31の傾斜角は45°になっており、また、軸線に対する傾斜押圧面32の傾斜角は3°になっている。この成型ローラ3は、上記傾斜押圧面31がワークWの上記連設部分103に押し付けられているときには、ワークWに連れ回りする。
【0022】内歯車の山部は、まず最初に根元部分204が成形される。この工程を図4に示してある。同図に示したように、回転内型1と押え型2とでワークWを挾み込ませて取り付けることにより、回転内型1にワークWの周壁102を嵌合することから始まる。このとき、成型ローラ3は回転内型1から離れた位置に後退している。
【0023】回転内型1と共にワークWを回転させ、成型ローラ3を回転内型1に近付けていく。成型ローラ3の傾斜成形面31がワークWの連設部分103に接触すると、成型ローラ3がワークWとの連れ回りを開始する。
【0024】ワークWに連れ回りしている成型ローラ3がさらに回転内型1に近付いていくと、傾斜成形面31がワークWの連設部分103を回転内型1側に定位置で押圧する。これにより、ワークWの連設部分103での肉の流動が始まり、凹形成形空間11の開放された一端側部分14に対応する箇所では連設部分103の肉が回転内型1の径内方向と軸方向とに向けて流動し、そのように流動する肉が凹形成形空間2の中に入っていき、それによって連設部分103が増肉される。他方、回転内型1の凸部12に対応する箇所ではその凸部12が上記凹形成形空間2の中に流動した肉の相互間に突入するので、ワークWの連設部分103がその凸部12に対応する箇所では減肉される。この工程を行った後のワークWの周壁102は先拡がりに傾斜した状態になる。
【0025】図4に回転内型1の凹形成形空間11の開放された一端部14の中に流動した肉が凹形成形空間11のその一端部14を完全に埋めた状態を示しており、同図の矢符aは成形ローラ3による押圧方向を表している。このように、凹形成形空間11の一端部14がワークWにおける連設部分103から流動した肉で埋まると、その凹形成形空間11を埋めている肉によって、図11〜図13に示した内歯車200の山部202の根元部分204だけが先に形成される。図例の実施形態においては、山部202の根元部分204を形成した周壁102に対して、次に、山部202の軸方向開放端面205を含む端部を成形する工程が行われる。この工程を図5〜図7に示してある。
【0026】この工程では、上記した回転内型1に図5に示した成形ローラ4が組み合わされる。この成形ローラ4は、正円筒状の成形面41の一端部にテーパ状の傾斜保形面42を有すると共に、成形面41の他端部に径方向に少し突出したリング状の鍔形成形面43を有している。この成形ローラ4は回転内型1に対して軸方向に直交する方向で遠近移動可能であり、成型中は回転内型1に対して離れた位置から次第に近付く方向に移動される。この実施形態において、成形ローラ4の鍔形成形面43は、成形ローラ4に一体に備わっている環状部材4Aの外周面によって形成されている。
【0027】回転内型1に取り付けられたワークWの周壁102の先端部104は、回転内型1の円筒面P2に対向している。この状態から、図5の矢符bのように成形ローラ4が回転内型1に近付いていくと、鍔形成形面43がワークWの先拡がりに傾斜した周壁102の先端部104に同図のように最初に接触し、成形ローラ4がワークWとの連れ回りを開始する。
【0028】ワークWに連れ回りしている成型ローラ4がさらに回転内型1に近付いていくと、成型ローラ4の鍔形成形面43により押圧された周壁102の先端部104が回転内型1における凹形成形空間11の形成されていない領域の外周面15に当たり、この外周面15と鍔形成形面43とによりワークWの周壁102の先端部104が挾まれる。
【0029】さらに成型ローラ4が図6の矢符cのように回転内型1に近付いていくと、鍔形成形面43が周壁102を押圧し、周壁102の肉が鍔形成形面43と上記円筒面P1との隙間を通って外方へ流動し、鍔形成形面43が上記周壁102に喰い込んで周壁102の肉が上記隙間を通って外方へ流動することを制限する。このため、周壁102の肉が、鍔形成形面43と上記円筒面102との隙間から外方へ流動して逃げるという現象が抑制されことになり、それだけ周壁102の肉が凹型成形空間11の中へ流動する傾向が強まる。
【0030】その後さらに成型ローラ4が図7の矢符dのように回転内型1に近付いていくと、凹形成形空間11の中へ流動した周壁102の肉がその凹形成形空間11の他端部16を完全に埋める。このように、凹形成形空間11の他端部16が周壁102から流動した肉で完全に埋まると、その凹形成形空間11を埋めている肉によって図11〜図12に示した内歯車200の山部202の軸方向開放端面205を含む端部が成形される。このとき、回転内型1の山部開放端成形面13が、山部202の軸方向開放端面205を所謂“肉垂れ”や“バリ”を生じさせずに精度よく仕上げることに役立つ。
【0031】なお、このとき、回転内型1の凹形成形空間11の他端部16に対応する箇所ではその凹形成形空間11の中に向けて周壁102の肉が流動して周壁102が増肉され、また、回転内型1の凸部12に対応する箇所ではその凸部12が上記凹形成形空間11の中に流動した周壁102の肉の相互間に突入するので、周壁102が減肉される。
【0032】この後、内歯車200の山部202の残部が成形される。山部202の残部の成形は、ワークWの周壁102を回転内型1側に押圧してその周壁102の肉を上記凹型成形空間11の中に流動させることによりその周壁102を凹型成形空間11に対応する箇所で増肉する一方で、その周壁102を凸部12に対応する箇所で減肉することにより行われる。すなわち、成型ローラ4が図8の矢符eのように回転内型1に近付いていくと、成形ローラ4の傾斜保形面42が上記連設部分103の形状を保つ作用を発揮する。同時に、正円筒状の成形面41によって周壁102の軸方向中間部が押圧されてその肉が回転内型1の凹形成形空間11の中へ向けて流動し、その凹形成形空間11が周壁102の肉で完全に埋まる。これにより、回転内型1の凹形成形空間11に対応する箇所ではその凹形成形空間11の中に向けて周壁102の肉が流動して周壁102が増肉され、また、回転内型1の凸部12に対応する箇所ではその凸部12が上記凹形成形空間11の中に流動した周壁102の肉の相互間に突入するので、周壁102が減肉される。
【0033】以上により内歯車200の山部202の成型が終了し、凹形成型空間11を埋めている肉が、図11および図13に示した内歯車200の山部202となり、凸部12の突入した箇所が内歯車200の谷部203となる。なお、図5〜図8で説明した工程において生じた余剰の肉垂れ部分、すなわち鍔形成形面43と回転内型1の外周面15との間にはみ出してきた周壁102の先端部104は、離型後に切削して除去される。
【0034】以上の説明では、山部202を成形する場合に、最初に山部202の根元部分204を成形し、次に山部202の軸方向開放端面205を含む端部を成形し、最後に中間部を成形する方法を説明したが、これとは逆に、山部202の軸方向開放端面205を含む端部を先に成形し、その後、山部202の根元部分204を成形し、最後に中間部を成形するという方法を採用することも可能である。要するに、山部202の根元部分204を成形することと、山部202の軸方向開放端面205を含む端部を成形することと、中間部を成形することとを任意の順序で行えばよい。
【0035】図9および図10に、山部202の軸方向開放端面205を含む端部を成形した後、山部202の残部を成形する別の方法を示してある。この方法では、上述した回転内型1と押え型2とに成形ローラ5が組み合わされる。この成形ローラ5は、正円筒状の成形面51の端部に一体に環状部材5Aが設けられており、この環状部材5Aの外周面が鍔形成形面53となされている。この成形ローラ5は回転内型1に対して軸方向に直交する方向で遠近移動可能であり、成型中は回転内型1に対して離れた位置から次第に近付く方向に移動される。
【0036】図9の矢符fのように成形ローラ4が回転内型1に近付いていくと、鍔形成形面53がワークWの周壁102の先端部104に同図のように接触し、成形ローラ5のワークWとの連れ回りが始まる。
【0037】ワークWに連れ回りしている成型ローラ5が図10の矢符gのようにさらに回転内型1に近付いていくと、ワークWの周壁102が鍔形成形面53により上記山部開放端成形面13に近い箇所で回転内型1側に定位置で押圧され、周壁102の肉が上記凹型成形空間11の中へ流動する。これにより、周壁102が上記凹型成形空間11に対応する箇所で増肉して山部202の軸方向開放端面205を含む端部だけが先に成形される。さらに、成型ローラ5が回転内型1に近付いていくと、正円筒状の成形面51が周壁102を押圧するので、周壁102の肉が凹形形成形空間11の中へ流動していき、最終的にはその凹形成形空間11が肉で埋まって山部202の残部が形成される。これにより、回転内型1の凹形成形空間11に対応する箇所ではその凹形成形空間11の中に向けて周壁102の肉が流動して周壁102が増肉され、また、回転内型1の凸部12に対応する箇所ではその凸部12が上記凹形成形空間11の中に流動した周壁102の肉の相互間に突入するので、周壁102が減肉される。これと併行して周壁102の先端部104が成形面51と回転内型1の外周面15との間に挾み付けられて周壁102の余剰の肉が“肉垂れ”となって成形面51と回転内型1の外周面15との間から外方へ向けて流動する。
【0038】以上により内歯車の山部の成型が終了し、凹形成型空間11を埋めている肉が、図11〜図13に示した内歯車200の山部202となり、凸部12の突入した箇所が内歯車200の谷部203となる。なお、図10で説明した工程において生じた余剰の肉垂れ部分、すなわち成形面51と回転内型1の外周面15との間にはみ出してきた周壁102の先端部104は、離型後に切削して除去される。
【0039】図11は本発明方法によって成型された内歯車200を備えたビスカスカップリングカバーCの要部拡大端面図、図12は本発明方法によって成型された内歯車200を備えたビスカスカップリングカバーCの断面図、図13は図12のXIII線矢視図である。このビスカスカップリングカバーCの内歯車200は、周壁201の内面側に山部202と谷部203とを交互に等間隔に備え、また、中央部にボス206を備えている。
【0040】
【発明の効果】請求項1に係る発明によれば、山部が軸方向開放端面を含む端部に欠肉部の存在しない形状に精度よく、しかも熟練を必要とせずに仕上がる。この効果は、請求項3に係る発明によっても同様に奏される。
【0041】請求項2に係る発明によれば、回転内型側に定位置で押圧されたカップ状素材の周壁の肉が、環状部材と上記円筒面との隙間から外方へ流動して逃げることを抑制しながら山部の軸方向開放端面を含む端部の成形がなされるので、山部の軸方向開放端面を含む端部がいっそう確実に精度よく成形されるようになる。同じ効果は、請求項4に係る発明によっても奏される。
【0042】請求項5に係る発明によれば、内歯車の山部の根元部分と軸方向開放端とが先に成形され、その後に、山部の中間部が成形されて山部の全体形状が成形される。したがって、根元部分や軸方向開放端面を含む端部のいずれにも欠肉部を持たない山部を熟練を必要とせずに精度よく仕上げることが可能になる。
【出願人】 【識別番号】000129138
【氏名又は名称】株式会社カネミツ
【出願日】 平成7年(1995)9月25日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 孝一 (外1名)
【公開番号】 特開平9−85384
【公開日】 平成9年(1997)3月31日
【出願番号】 特願平7−246300