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【発明の名称】 等速ボールジョイント外輪の成形方法及びその装置
【発明者】 【氏名】安田 剛

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 有底円筒で且つ外周面の底寄りの部分を第1外周面、開口寄りの部分を第2外周面とし、前記第1外周面に軸方向に延びる肉抜き溝を設けた等速ボールジョイント外輪又は前記第1外周面が第2外周面より小径である等速ボールジョイント外輪の鍛造予備成形品を対象に、前記第1外周面を第1のダイ、第2外周面を第2のダイで各々しごき成形することで縮径仕上することを特徴とした等速ボールジョイント外輪の成形方法。
【請求項2】 前記第1外周面を第1のダイでしごき、次にこのダイで第1外周面を抑えたままで、第2外周面を第2のダイでしごくことを特徴とした請求項1記載の等速ボールジョイント外輪の成形方法。
【請求項3】 有底円筒で且つ外周面の底寄りの部分を第1外周面、開口寄りの部分を第2外周面とし、前記第1外周面に軸方向に延びる肉抜き溝を設けた等速ボールジョイント外輪又は前記第1外周面が第2外周面より小径である等速ボールジョイント外輪の鍛造予備成形品をしごき成形する成形装置において、この成形装置は、外輪を支えるパンチと、外輪の前記第1外周面をしごくための第1しごきダイスと、この第1しごきダイスを昇降するための第1昇降ラムと、この第1昇降ラムとは別に配置した第2昇降ラムと、この第2昇降ラムに上から下にこの順で取付けた、外輪を払い出すための払い出し機構及び前記第2外周面をしごくための第2しごきダイスとからなることを特徴とする等速ボールジョイント外輪の成形装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は等速ボールジョイント外輪の成形技術の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】図4は代表的な車両用推進軸の断面図であり、推進軸100は、プロペラシャフトともいい、比較的長い中間軸101の一端にバーフィールド型等速ボールジョイント102、他端にトリポート型等速ボールジョイント120を備えたフレキシブルシャフトである。
【0003】バーフィールド型等速ボールジョイント102は、カップ部105と軸部106とを一体成形したところの外輪104に、ボールベアリング状のボール107・・・・・・は複数個を示す。以下同様。)、リテーナ108及び内輪109を収納したものであり、この内輪109に中間軸101の一端を取付けることにより、この中間軸101と前記軸部106の間に交角を持たせてもトルクを伝達することのできる等速型自在継手である。前記ボール107はグリース潤滑する必要があり、グリースの洩れ防止と外部からの異物混入防止とを図るために、蛇腹型ゴムカバー111を取付ける。112,113は取付用バンドである。
【0004】トリポート型等速ボールジョイント120は、カップ部122と軸部123とを一体成形したところの外輪121の内面に、3本の溝124・・・を付け、一方、Y字部材125の3脚(図では1脚のみ示す。)に各々ローラベアリング126を取付け、ローラベアリング126を前記溝124に摺動自在に嵌合したものであり、Y字部材125に中間軸101の一端を取付けることにより、中間軸101に対して外輪121を軸方向に移動可能とした軸継手である。127は蛇腹型ゴムカバー、128,129は取付用バンドである。
【0005】図5はトリポート型等速ボールジョイントの外輪の斜視図であり、外輪121は上述の通りに3本の溝124・・・を有するカップ部122と、このカップ部122から延びる軸部123とからなり、カップ部122は文字通り有底円筒であり且つ外周面の底寄りの部分を第1外周面131、開口寄りの部分を第2外周面132とし、前記第1外周面131を第2外周面132より小径としたものである。第1外周面131を小径としたのは、外輪121の軽量化を目的としたものである。
【0006】図6は別のトリポート型等速ボールジョイント外輪の斜視図であり、図5と区別するために符号にAを添付したが、外輪121Aは3本の溝124A・・・を有するカップ部122Aと、このカップ部122Aから延びる軸部123Aとからなり、カップ部122Aは有底円筒であり且つ外周面の底寄りの部分を第1外周面131A、開口寄りの部分を第2外周面132Aとし、前記第1外周面131Aに軸方向に延びる肉抜き溝133A・・・を設けたものである。肉抜き溝133Aは、外輪121Aの軽量化を目的として設けたものである。
【0007】図7は従来の等速ボールジョイント外輪のしごき加工説明図であり、鍛造工程でほぼ形状を整えた外輪121Aを、パンチ135にセットし、その外輪121Aにしごきダイス136を上から下へ摺接して第1外周面131A、第2外周面132Aの順でしごく。このしごきにより、第1・第2外周面131A,132Aに大きな縮径力が作用し、先ず内周面(便宜上、第1内周面141Aと第2内周面142Aとに区分する。)がパンチ135に当接して、内周面141A,142Aの寸法が規定され、つづいて第1・第2外周面131A,132Aの外径寸法が規定される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】図8は従来の外輪加工品の要部断面図であり、加工後の外輪121Aを調べてみると、第1内周面141Aの径が規定値より大きいことが分かった。詳しくは第1内周面141Aが隙間δだけパンチ135から離れていることが分かった。肉抜き溝133Aがあるために、この部分はしごきダイス136でしごかれないためである。詳しくは、塑性変形に伴う肉の流動がこの部分では不充分であって、肉の充満不足となったためである。図5で述べた外輪121も同様の現象が起こる。すなわち、外輪121の第1外周面131が小径であるために、しごきダイス136でしごかれないためである。上記隙間δは外輪121,121Aの寸法精度を著しく低下させて製品の品質を落とすため、その対策が切望されている。
【0009】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者らは上記課題を解決するために、請求項1において、外輪の第1外周面を第1のダイ、外輪の第2外周面を第2のダイで各々しごき成形することで縮径仕上することとした。小径若しくは肉抜き溝を有する前記第1外周面を第1のダイでしごくので、外輪の内周面を良好にパンチに密着させることができ、隙間の発生が防止できる。
【0010】請求項2において、前記第1外周面を第1のダイでしごき、次にこのダイで第1外周面を抑えたままで、第2外周面を第2のダイでしごくことにした。第2のダイでしごく際に、肉が第1外周面へ流れようとするが、この流れを適度に抑えることができ、外周面の仕上り精度を高めることができる。
【0011】請求項3の成形装置は、外輪を支えるパンチと、外輪の前記第1外周面をしごくための第1しごきダイスと、この第1しごきダイスを昇降するための第1昇降ラムと、この第1昇降ラムとは別に配置した第2昇降ラムと、この第2昇降ラムに上から下にこの順で取付けた、外輪を払い出すための払い出し機構及び前記第2外周面をしごくための第2しごきダイスとからなることを特徴とする。第1しごきダイスと第2しごきダイスを互いに独立させたので、小径若しくは肉抜き溝を有する前記第1外周面を第1のダイでしごくことができ、外輪の内周面を良好にパンチに密着させることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。また、ワークとしての外輪には従来の技術の説明で使用した符号を流用する。図1は本発明に係る等速ボールジョイント外輪の成形装置の要部断面図であり、等速ボールジョイント外輪の成形装置1は、基台2にディスク3及びボルト4・・・で固定したパンチ5と、このパンチ5の上方に配置した上パンチ6と、想像線で示す外輪121の第1外周面131をしごくための第1しごきダイス7と、この第1しごきダイス7を昇降するための第1昇降ラム8と、この第1昇降ラム8を包むように配置した第2昇降ラム9と、この第2昇降ラム9の下端にボルト11・・・で取付けたブラケット12と、このブラケット12の下部に取付けた払い出し機構13・・と、ブラケット12の下面にボルト17・・・で取付けた第2しごきダイス18とからなる。
【0013】なお、前記上パンチ6はスプリングなどの弾発手段10で下方へ付勢されており、一定以上の押上げ力を受けたときに抑え作用を保持しつつ上方へ移動する部材である。なお、図は理解を容易にするために、第1しごきダイス7と第2しごきダイス18とを上下に分離して記載したものであって、待機状態を示すものではない。正しくは図2で説明する。
【0014】前記払い出し機構13は、ロッド14と、このロッド14を外輪121の払い出し位置まで出し入れするシリンダ15とからなり、図ではロッド14は待機位置にある。
【0015】以上に述べた等速ボールジョイント外輪の成形装置の作用を次に説明する。図2(a)〜(c)は等速ボールジョイント外輪の成形工程図(前半)である。(a)において、先ずパンチ5に外輪121をセットする。(b)において、第1昇降ラム8と第2昇降ラム9とを同時に一定位置まで下げる。先ず、上パンチ6が外輪121の上面に当接し、外輪121をパンチ5へ押圧する。続いて、第1しごきダイス7で外輪121の第1外周面131をしごく。このしごき加工で第1内周面141はパンチ5に密着し、且つ第1外周面131が縮径加工される。
【0016】(c)において、前記第1外周面131を第1しごきダイス7で抑えたままとし、この状態で、第2昇降ラム9を下げて、第2しごきダイス18で第2外周面132をしごき加工する。これで、第2内周面142はパンチ5に密着し、且つ第2外周面132が縮径加工される。第1外周面131は第1しごきダイス7で抑えたままなので、第2しごきダイス18によるしごき加工の際に押された肉が第1外周面131へ流動することを防止でき、増径することがない。
【0017】図3(a)〜(c)は等速ボールジョイント外輪の成形工程図(後半)である。(a)は第2しごきダイス18が外輪121の下方へ抜けた状態を示す。(b)において、シリンダ15を伸動してロッド14を払い出し位置まで前進させる。更に、第1昇降ラム8を上げる。すると、第1しごきダイス7が外輪121から外れる。このときに、上パンチ6で外輪121を抑えるので、外輪121がパンチ5から抜ける心配はない。(c)において、第2昇降ラム9を上げる。すると、次いでロッド14,14が外輪121の下面をすくい上げる。従って、外輪121はパンチ5から外れて側方へ払い出し可能となる。上記図2及び図3の工程は、外輪121Aについても同じなので説明を省略する。
【0018】尚、本発明の請求項1では、第1しごきダイス7は第1外周面131をしごいた後、直ちに上方へ待機してもよい。また、本発明は、鍛造により加工した加工品を、更にダイによりしごき成形するものであるから、上記加工品を請求項において鍛造予備成形品と記載した。
【0019】
【発明の効果】本発明は上記構成により次の効果を発揮する。請求項1において、外輪の第1外周面を第1のダイ、外輪の第2外周面を第2のダイで各々しごき成形することで縮径仕上することとした。小径若しくは肉抜き溝を有する前記第1外周面を第1のダイでしごくので、外輪の内周面を良好にパンチに密着させることができ、隙間の発生が防止できる。
【0020】請求項2において、前記第1外周面を第1のダイでしごき、次にこのダイで第1外周面を抑えたままで、第2外周面を第2のダイでしごくことにした。第2のダイでしごく際に、肉が第1外周面へ流れようとするが、この流れを適度に抑えることができ、外周面の仕上り精度を高めることができる。
【0021】請求項3の成形装置は、外輪を支えるパンチと、外輪の前記第1外周面をしごくための第1しごきダイスと、この第1しごきダイスを昇降するための第1昇降ラムと、この第1昇降ラムとは別に配置した第2昇降ラムと、この第2昇降ラムに上から下にこの順で取付けた、外輪を払い出すための払い出し機構及び前記第2外周面をしごくための第2しごきダイスとからなることを特徴とする。第1しごきダイスと第2しごきダイスを互いに独立させたので、小径若しくは肉抜き溝を有する前記第1外周面を第1のダイでしごくことができ、外輪の内周面を良好にパンチに密着させることができる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成7年(1995)9月26日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎
【公開番号】 特開平9−85383
【公開日】 平成9年(1997)3月31日
【出願番号】 特願平7−247577