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【発明の名称】 ナット部を有する鋼板部材および鋼板部材へのナット部形成方法
【発明者】 【氏名】中島 教雄

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 鋼板部材に、鋼板形成材と一体形成材からなる筒部を一面側外方へ突出して形成するとともに、鋼板部材から筒部に亘って、肉厚方向の雌ねじを形成したことを特徴とするナット部を有する鋼板部材。
【請求項2】 鋼板部材に肉厚方向の導孔を形成し、円錐状部と円直状部との連続体からなる下孔形成体を、その円錐状部側から前記導孔内に回転させながら圧入させて、円錐状部により導孔の周辺部分を押し拡げたのち円直状部により下孔を形成するとともに、押し拡げによる余剰肉厚部分により、鋼板形成材と一体形成材からなる筒部を一面側外方へ突出させて成形し、前記下孔を利用して、肉厚部から筒部に亘って雌ねじを成形したことを特徴とする鋼板部材へのナット部形成方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、たとえば鉄骨構造物を組み立てたり、鉄骨構造物に他物を連結するのに採用されるナット部を有する鋼板部材、およびナット部を有する鋼板部材を得るに好適な鋼板部材へのナット部形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、たとえば図12に示すように、角形鋼管50の平板部51に肉厚方向のボルト孔52が形成され、このボルト孔52にねじ孔を連通させて、平板部51の内面にナット53が溶接54により固定されることで、平板部51(鋼板部材)にナット部が形成されていた。そして角形鋼管50に対する他物55の組み立て(連結)は、この他物55に形成されたボルト孔56が前記角形鋼管50のボルト孔52に連通されたのち、外側から両ボルト孔56,52間に通されたボルト57をナット53に螺合させることで行っていた。このような形式によると、平板部51の肉厚が薄くても、ナット53により十分な螺合長さを確保し得る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記した従来形式によると、連結箇所が多数の場合、ナット53を位置決めしながらの溶接54は面倒な作業となる。また平形鋼やL形鋼など、溶接54を行う面が開放されている場合はよいが、前記した角形鋼管50のように閉塞状の空間側で溶接54を行う場合、その溶接作業は面倒であり迅速に行えなかった。特に角形鋼管50が長尺の場合、その長さ方向の中央箇所でのナット53の溶接54は不可能に近かった。
【0004】そこで本発明のうち請求項1記載の発明は、溶接を行うことなく十分な螺合長さを確保し得るナット部を有する鋼板部材を提供することを目的としたものである。
【0005】また請求項2記載の発明は、ナット部を有する鋼板部材を容易に得ることのできる鋼板部材へのナット部形成方法を提供することを目的としたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】前述した目的を達成するために、本発明のうちで請求項1記載のナット部を有する鋼板部材は、鋼板部材に、鋼板形成材と一体形成材からなる筒部を一面側外方へ突出して形成するとともに、鋼板部材から筒部に亘って、肉厚方向の雌ねじを形成したことを特徴としたものである。
【0007】ここで鋼板部材は、角形鋼管の各平板部、L形鋼材の両辺、H形鋼材のフランジ部やウエブ部、円管状鋼材の一部、C形鋼材やI形鋼材や平形鋼材における所望箇所などに相当するものであり、そして筒部および雌ねじの形成箇所は、任意な単数または複数箇所である。
【0008】したがって請求項1の発明によると、筒部の肉厚方向での突出長さを考慮することで、鋼板部材の肉厚が薄くても、雌ねじが十分な螺合長さを確保し得る。鋼板部材に対する他物の組み立て(連結)は、他物に形成したボルト孔を雌ねじに連通させ、そしてボルト孔に対して外側から通したボルト体を雌ねじに螺合して、締め付けることで行える。
【0009】また本発明の請求項2記載の鋼板部材へのナット部形成方法は、鋼板部材に肉厚方向の導孔を形成し、円錐状部と円直状部との連続体からなる下孔形成体を、その円錐状部側から前記導孔内に回転させながら圧入させて、円錐状部により導孔の周辺部分を押し拡げたのち円直状部により下孔を形成するとともに、押し拡げによる余剰肉厚部分により、鋼板形成材と一体形成材からなる筒部を一面側外方へ突出させて成形し、前記下孔を利用して、肉厚部から筒部に亘って雌ねじを成形したことを特徴としたものである。
【0010】したがって請求項2の発明によると、鋼板部材の任意な箇所に、鋼板部材の鋼板形成材の一部、すなわち余剰肉厚部分を利用して、ナット部を形成し得る。
【0011】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を、角形鋼管に採用した状態として図1〜図3に基づいて説明する。
【0012】図1に示すように、角形鋼管1の平板部(鋼板部材の一例)2には、鋼板形成材と一体形成材からなる筒部3が内方(一面側外方)へ突出して形成されるとともに、平板部2から筒部3に亘って、肉厚方向Aの雌ねじ4が貫通して形成されている。ここで筒部3の肉厚方向Aでの突出長さL1 は、平板部2の肉厚が薄くても、雌ねじ4が十分な螺合長さLを確保し得るように設定されている。これにより、ナット部5を有する平板部2が形成される。
【0013】次に、上記の構成からなる角形鋼管1に対して、他物の組み立て(連結)を行う作業を説明する。図2に示すように、L形状のブラケット(他物の一例)7にはボルト孔8が形成されている。そしてブラケット7は平板部2の外面に当接され、そのボルト孔8が前記雌ねじ4に連通される。次いで、ワッシャ9が介在された状態で、ボルト孔8に対してボルト体10が外側から通され、そしてナット部5の雌ねじ4に螺合され、締め付けられる。
【0014】その際に前記ボルト体10は、頭部11と、ねじ部12とからなり、そして前記頭部11には、小径部13を介して締め付け操作部14が一体に設けられ、ここで小径部13は、締め付けトルクが設定値以上のときに頭部11に対して破断されるよう設定されている。したがって、回転装置(または回転具)15を締め付け操作部14にセットして回転させることで、その回転力は締め付け操作部14、小径部13、頭部11を介してねじ部12に伝達され、以てねじ部12を雌ねじ4に螺合回転させ得る。
【0015】そして頭部11が、ワッシャ9を介して平板部2側に圧接された状態での締め付けにおいて、締め付けトルクが設定値以上のときに小径部13が破断され、以て頭部11に対して締め付け操作部14が離れる。これにより図3に示すように、角形鋼管1に対してブラケット7が、締め付けトルクを設定値としたボルト体10を介して連結される。
【0016】上記した実施の形態では、締め付け操作部14を有するボルト体10を示したが、これは締め付け操作部14を有さない通常のボルト体を使用してもよい。またワッシャ9を省略して連結を行ってもよい。
【0017】次に、本発明の別の実施の形態を、図4〜図6に基づいて説明する。図4は、L形鋼材20の一辺21が鋼板部材であって、この一辺21に、鋼板形成材と一体形成材からなる筒部3が一面側外方へ突出して形成されるとともに、一辺21から筒部3に亘って雌ねじ4が形成されている。
【0018】図5は、H形鋼材22の一方のフランジ部23が鋼板部材であって、このフランジ部23に、鋼板形成材と一体形成材からなる筒部3が一面側外方へ突出して形成されるとともに、フランジ部23から筒部3に亘って雌ねじ4が形成されている。
【0019】図6は、円管状鋼材24の一部25が円弧状の鋼板部材であって、この一部25に、鋼板形成材と一体形成材からなる筒部3が円内部(一面側外方)へ突出して形成されるとともに、一部25から筒部3に亘って雌ねじ4が形成されている。
【0020】同様にして、C形鋼材やI形鋼材や平形鋼材における鋼板部材の所望箇所に、鋼板形成材と一体形成材からなる筒部を一面側外方へ突出して形成し得るとともに、鋼板部材から筒部に亘って、肉厚方向の雌ねじを形成し得るものである。
【0021】以下に、上記した角形鋼管1の平板部2に対するナット部5の形成方法の実施の形態を、図7〜図11に基づいて説明する。平板部2にナット部5を形成するに際して、図7に示す下孔形成装置30が準備される。この下孔形成装置30は、回転軸部31の先端にチャック具32が設けられ、そしてチャック具32に対して基端側には送風具33が設けられる。前記チャック具32に着脱される下孔形成体35は、円錐状部36と円直状部37と径大部38と被クランプ部39とがこの順に位置された連続体からなり、被クランプ部39を介してチャック具32に保持される。
【0022】平板部2にナット部5を形成するに、まず図7に示すように、角形鋼管1の上部に位置した平板部2でナット部5を形成しようとする目的箇所に、たとえばドリル形式により肉厚方向A(上下方向)の導孔45が形成される。ここで導孔45は、細い径(たとえば1〜数mm)で形成され、また角形鋼管1は常温である。そして回転力付与装置40に、下孔形成装置30の回転軸部31の基端が取り付けられる。このとき下孔形成装置30は、基端が上部として、すなわち円錐状部36が下部でかつ下向きとして取り付けられる。
【0023】次いで、回転力付与装置40により回転軸部31や下孔形成体35を一体回転させながら下孔形成装置40を下降させて、下孔形成体35を、その円錐状部36側から前記導孔45内に圧入させる。すると、円錐状部36が導孔45の部分に回転摺接することによる摩擦熱で、この部分ならびに周辺が次第に加熱軟化され、さらに下孔形成体35に下降力(圧入力)が付与されていることで、図8に示すように、円錐状部36は導孔45の周辺部分を押し拡げることになり、引き続いて円直状部37により導孔45が押し拡げ形成されることになる。
【0024】そして、押し拡げによる余剰肉厚部分により、平板部2の鋼板形成材と一体形成材からなる筒部3が内面外方(一面側外方)へ突出して成形される。その際に筒部形成部、すなわち回転摺接部には、グリース状のペーストが供給され、また送風具33から送風され、以て過熱が防止される。
【0025】そして、図9に示すように、たとえば径大部38が平板部2の上面に当接するまで下孔形成装置30を下降させたのち、この下孔形成装置30を上昇させて下孔形成体35を引き抜くことで、図10に示すように、肉厚方向Aにおいて所望の突出長さL1 でかつ中央が貫通した下孔46の筒部3が形成される。次いで図11に示すように、ペーストを供給しながら下孔46にタップ41が立てられ、以て平板部2から筒部3に亘って、肉厚方向Aの雌ねじ4が貫通して形成される。
【0026】
【発明の効果】上記した本発明の請求項1によると、筒部の肉厚方向での突出長さを考慮することで、鋼板部材に、十分な螺合長さを確保したナット部を、溶接を行うことなく形成できる。
【0027】また上記した本発明の請求項2によると、鋼板部材の任意な箇所にナット部を容易に迅速に形成することができ、特に長尺の角形鋼管における長さ方向の中央箇所でのナット部の形成を、容易に実現できる。
【出願人】 【識別番号】000110446
【氏名又は名称】ナカジマ鋼管株式会社
【出願日】 平成7年(1995)8月18日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】森本 義弘
【公開番号】 特開平9−57388
【公開日】 平成9年(1997)3月4日
【出願番号】 特願平7−209823