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【発明の名称】 歯車及びその製造方法
【発明者】 【氏名】松本 清

【目的】
【構成】 外周に歯形部を備え、内周に周状の溝を備える歯車において、溝の軸線方向一端は鍛造成形される第一周壁を有し、溝の軸線方向他端はかしめ成形される第二周壁を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 外周に歯形部(17)を備え、内周に周状の溝(21)を備える歯車において、前記溝(21)の軸線方向一端は鍛造成形される第一周壁(19)を有し、前記溝(21)の軸線方向他端はかしめ成形される第二周壁(20)を有することを特徴とする歯車。
【請求項2】 外周に歯形部(17)を備え、内周に周状の溝(21)を備える歯車の製造方法において、外周に歯形部(17)を成形する歯形成形工程と、内周に溝(21)の底部(18)と、その底部(18)に連続し軸線方向一端から軸心(M)に向かって突設される第一周壁(19)とを鍛造成形により形成する鍛造工程と、溝(21)の底部(18)に連続し軸線方向他端から軸心(M)に向かって突設される第二周壁(20)をかしめ成形により形成するかしめ工程からなることを特徴とする歯車の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車の動力伝達機構等に用いられる歯車及びその製造方法に係り、特に外周に歯形部を備え、内周に周状の溝を備える歯車及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より自動車の動力伝達機構等に用いられる歯車において、図7に示す如く、外周に歯形部67を備え、内周に周状の溝71を備えるものがある。この溝71は、歯車W56が嵌挿される軸等から供給される潤滑油を溜めるためのもので、溝71に溜まった潤滑油はオイル孔72を通って歯形部67側に供給される構造である。
【0003】また、この歯車W56の製造工程は、図6に示す如く、円柱状の素材W50(図6の(ア))を軸線方向に押圧して円盤材W51(図6の(イ))を形成し、連続的に鍛造成形を施して軸線方向両端に凹部61,62を備える断面略H状の予備材W52(図6の(ウ))、更に予備材W52の中心を打ち抜いてピアス材W53(図6の(エ))を形成する。その後、ピアス材W53に前方押出し成形を施して歯形部67を成形した中間材54(図6の(オ))を形成し、その中間材W54の歯形部67に仕上げサイジングを施した荒歯車W55(図6の(カ))を形成後、最後に溝71、オイル孔72等を切削、穴開け加工で仕上げて歯車W56(図7)を形成していた。
【0004】上記歯車W56の製造工程の中で、特に溝71を切削加工する工程を図8に基づいて説明する。
【0005】図において、81は保持具で、荒歯車W55の外周を保持して固着するチャック82と、そのチャック82を支持するベース部83とからなる。また、91は切削具で、先端に切削用のチップ92を備えている。この切削具91と保持具81とを使用して溝71を成形する工程を説明すると、まず荒歯車W55を、その歯形部67が切削具91側に位置するように保持具81のベース部83端部に当接させ、チャック82により外周側から荒歯車W55を保持する。続いて、保持具81を軸心Mを中心に回転させることにより一体的に荒歯車W55を回転させる。その後、切削具91を荒歯車W55の内周に前進させ、溝71の切削加工を行なっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述の如く、鍛造成形で荒歯車W55成形後、切削加工で溝71を成形して歯車W56を形成すると、精度の高い歯車W56を得ることができる。しかし、溝71を切削加工で成形すると鍛造フローが切れ、強度が低下するということがある。また、歯車W56の製造方法において、溝71の切削加工による成形により余分な材料が必要となり、歩留りが悪化するということがある。更に、切削具91により歯車W56の内周を切削加工するため、加工工数が増加するということがある。
【0007】従って、本発明は上述の如き課題を解決し、強度が高く、歩留りが良好で、更に加工工数の増加を抑制する歯車及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の歯車の構造は以下の通りである。
【0009】外周に歯形部を備え、内周に周状の溝を備える歯車において、溝の軸線方向一端は鍛造成形される第一周壁を有し、溝の軸線方向他端はかしめ成形される第二周壁を有する。
【0010】また、本発明の歯車の製造方法は以下の通りである。
【0011】外周に歯形部を備え、内周に周状の溝を備える歯車の製造方法において、外周に歯形部を成形する歯形成形工程と、内周に溝の底部と、その底部に連続し軸線方向一端から軸心に向かって突設される第一周壁とを鍛造成形により形成する鍛造工程と、溝の底部に連続し軸線方向他端から軸心に向かって突設される第二周壁をかしめ成形により形成するかしめ工程からなる。
【0012】
【実施例】以下、本発明の実施例を図1乃至図5に基づいて説明する。
【0013】図2は本発明の実施例による歯車W6を表し、その歯車W6を製造する工程を図1に表す。この歯車W6を製造する工程を図1に基づいて説明すると、初めに図1の(ア)に示す如き円柱状の素材W0を軸線方向に押圧して、図1の(イ)に示す如き円盤状の円盤材W1を形成する。続いて、円盤材W1の軸線方向両端中心部を押圧して、図1の(ウ)に示す如き両端に凹部11,12を備え、その凹部11,12間に隔壁部13を備える断面略H状の予備材W2を形成し、連続的に予備材W2の隔壁部13の中心を打ち抜いて、図1の(エ)に示す如く、内周にピアス孔14を備える略円筒状のピアス材W3を形成する。
【0014】次に、このピアス材W3を前方押出し成形により、図1の(オ)に示す如く、外周に歯形部17を備える中間材W4に形成する。この歯形成形工程を図3に基づいて説明する。
【0015】図3は鍛造金型40を表し、左半部は成形前、右半部は成形後の状態を表す。42は下型で、内周に歯型43aを有するダイ43と、ダイ43の下方に一体的にスペーサ44及び基板45とを備える。ダイ43、スペーサ44及び基板45の内周側には、下方が基板45に嵌合する大径部46bと上方がピアス材W3のピアス孔14を嵌挿させる小径部46aとを有する円柱状のマンドレル46が配設されている。そして、マンドレル46の大径部46bと小径部46aとの間には、ピアス材W3を着座させる段部46cが形成され、このマンドレル46の段部46c、小径部46a及びダイ43の内周との間で型彫空間47が画成される。また、41はパンチで、下型42の型彫空間47に対向して、進退自在に配置されている。
【0016】上記鍛造金型40でピアス材W3から中間材W4を成形する場合、まず図3の左半部に示す如く、ピアス孔14をマンドレル46の小径部46aに嵌挿させたピアス材W3を下型42の型彫空間47に投入し、マンドレル46の段部46cに着座させる。その後、パンチ41を下降させ、型彫空間47内に進入させると共にピアス材W3を上方より押圧しダイ43の歯型43a側へ押出す。そして、図3の右半部に示す如く、歯形部17と歯形部17よりも軸線方向に突出するかしめ部16を備える中間材W4に形成する。このとき中間材W4の内周には、形成する歯車W6の溝21と同内径の底部18と、底部18の軸線方向一端から軸心に向かって突設される第一周壁19が成形される。
【0017】続いて、中間材W4から、図1の(カ)に示す如く内周に溝21を有する荒歯車W5を形成する工程を図4及び図5に基づいて説明する。
【0018】図4及び図5はかしめ装置30を表し、図4はかしめ成形前、図5はかしめ成形後の状態を表す。図4において、31は保持具で、中間材W4の外周を保持して固着するチャック32と、そのチャック32を支持するベース部33とからなる。また、39は軸心を中心に回転するかしめローラで、中間材W4のかしめ部16を加圧する加圧部39aを有する。
【0019】上記かしめ装置30で中間材W4から荒歯車W5を形成する場合、まず図4に示す如く中間材W4を、その歯形部17がかしめローラ39側に位置するように保持具31のベース部33端部に当接させ、チャック32により外周側から中間材W4を保持する。続いて、保持具31を軸心Mを中心に回転させることにより一体的に中間材W4を回転させ、その後、かしめローラ39を中間材W4に対して前進させ、加圧部39aをかしめ部16に当接させる。そして更にかしめローラ39が前進することにより、かしめ部16はかしめローラ39から加圧力を受け加圧部39aに沿って、軸心M側に変形し、図5に示す如く軸心Mに向かって突設される第二周壁20が成形される。この第二周壁20の成形により溝21が成形され、これにより荒歯車W5が形成される。
【0020】そして最後に、図2に示す如く溝21と歯形部17を連通するオイル孔22の穿設、歯形部17のサイジング等を施して、歯車W6が形成される。
【0021】従って、本発明では溝21の軸線方向一端第一周壁19を鍛造成形し、他端第二周壁20をかしめ成形するため、溝21を塑性加工のみで成形できる。
【0022】尚、上記実施例では歯形成形工程は底部18と第一周壁19とを成形する鍛造工程と同時に行なったが、歯形成形工程を別工程で、溝21成形の前又は後に行なっても良い。
【0023】また、中間材W4形成時、かしめ部16を突出成形したが、かしめ部16は突出させる必要はなく、中間材W4の端部を直接かしめ加工しても良い。
【0024】更に、中間材W4のかしめ部16は鍛造成形でなく、切削加工等により成形しても良い。
【0025】
【発明の効果】以上のように本発明の歯車によれば、外周に歯形部を備え、内周に周状の溝を備える歯車において、溝の軸線方向一端は鍛造成形される第一周壁を有し、溝の軸線方向他端はかしめ成形される第二周壁を有するため、溝を塑性加工のみで成形できるので、鍛造フローが切れることがなく、高い強度が得られる。
【0026】また、本発明の歯車の製造方法によれば、外周に歯形部を備え、内周に周状の溝を備える歯車の製造方法において、外周に歯形部を成形する歯形成形工程と、内周に溝の底部と、その底部に連続し軸線方向一端から軸心に向かって突設される第一周壁とを鍛造成形により形成する鍛造工程と、溝の底部に連続し軸線方向他端から軸心に向かって突設される第二周壁をかしめ成形により形成するかしめ工程からなるため、溝成形にともなう余分な材料の発生がなく、歩留りが向上する。更に、連続的な塑性加工で溝を成形するため、加工工数を抑制できる。
【出願人】 【識別番号】000238360
【氏名又は名称】武蔵精密工業株式会社
【出願日】 平成7年(1995)8月11日
【代理人】
【公開番号】 特開平9−52140
【公開日】 平成9年(1997)2月25日
【出願番号】 特願平7−227406