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【発明の名称】 フランジ部材の鍛造方法及びその装置
【発明者】 【氏名】萩原 誠一

【目的】 加熱等にかかわるコスト削減を図る。
【構成】 少なくとも先端側の部分が加熱された所定寸法の中空管を起立した状態で保持するための保持機構12と、保持機構12に保持された中空管の先端側を所定のフランジ部13の形状に型打ちすべくその軸方向に突き合わされる上金型14及び下金型15と、上金型14に設けられ型打ちの際に中空管の先端側軸孔に嵌入して金型14,15へ適宜押し拡げる中央突起部35とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定のフランジ部をかたどる鍛造型をその上下方向に分割させた形で上金型と下金型とを製造しておくと共に、所定寸法の中空管を素材として用意し、該中空管をその先端側の部分のみ加熱してから、該中空管を先端側が前記下金型内に位置するように保持した後、中空管の先端側軸孔を径方向外方に押し拡げて前記上金型を下金型に突き合わせて前記先端側を拘束してフランジ部を成形することを特徴とするフランジ部材の鍛造方法。
【請求項2】 少なくとも先端側の部分が加熱された所定寸法の中空管を起立した状態で保持するための保持機構と、該保持機構に保持された前記中空管の先端側を所定のフランジ部の形状に型打ちすべくその軸方向に突き合わされる上金型及び下金型と、該上金型に設けられ型打ちの際に前記中空管の先端側軸孔に嵌入して前記金型へ適宜押し拡げる中央突起部とを備えたことを特徴とするフランジ部材の鍛造装置。
【請求項3】 前記保持機構が、前記中空管の基端側の端面を着座させる着座面部と、該着座面部に前記中央突起部と同軸で形成され前記中空管の基端側の軸孔端面に接触するセンター部とを備えた請求項2記載のフランジ部材の鍛造装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プロペラシャフトのシャフトエンド等のフランジ部材の鍛造方法及びその鍛造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】フランジ部を一端に有したフランジ部材、例えば自動車のプロペラシャフトのシャフトエンドを製造するに際しては、まず熱間鍛造により素材からの成形が行われる。図7に示すように、従来この種のフランジ部材の鍛造方法は、所定の長さに切断した棒状の素材(鉄鋼)1を高温に加熱した後、これを水平な状態にして下金型2にセットし、可動側となる上金型3の型打ち(プレス)により、所定形状のフランジ部4を有したフランジ部材を鍛造するようにしていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら前記従来の鍛造方法においては、中実の棒材1全体を加熱し、総型(2,3)で径方向にプレスするようにしていたので、部分的なフランジ部4を成形するという目的からみて、加熱コスト或いは鍛造型規模が過大であるという問題があった。また鍛造されたフランジ部材は機械加工の工程に送られるが、この機械加工において必要な部材基端5のセンター出しを面倒なドリル穿孔にて行わねばならず、工数削減及び生産能率向上を図る上での妨げとなっていた。
【0004】そこで本発明は、加熱等にかかわるコスト削減が図れるフランジ部材の鍛造方法及びその鍛造装置を、またさらに後工程にかかわる工数削減が図れる鍛造方法及びその装置を提供すべく創案されたものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、所定のフランジ部をかたどる鍛造型をその上下方向に分割させた形で上金型と下金型とを製造しておくと共に、所定寸法の中空管を素材として用意し、中空管をその先端側の部分のみ加熱してから、この中空管を先端側が下金型内に位置するように保持した後、中空管の先端側軸孔を径方向外方に押し拡げて上金型を下金型に突き合わせて先端側を拘束してフランジ部を成形するものである。
【0006】また本発明は、この方法を実施するための装置であって、少なくとも先端側の部分が加熱された所定寸法の中空管を起立した状態で保持するための保持機構と、保持機構に保持された中空管の先端側を所定のフランジ部の形状に型打ちすべくその軸方向に突き合わされる上金型及び下金型と、上金型に設けられ型打ちの際に中空管の先端側軸孔に嵌入して金型へ適宜押し拡げる中央突起部とを備えたものである。保持機構は、中空管の基端側の端面を着座させる着座面部と、着座面部に中央突起部と同軸で形成され中空管の基端側の軸孔端面に接触するセンター部とを備えたものであることが好ましい。
【0007】
【作用】上記構成によって、保持機構は、先端側の部分が加熱された中空管を起立した状態で保持して下金型にセットする。そして上金型を下金型に突き合わせて中空管の先端側を型打ちする。このとき中央突起部が中空管の先端側軸孔に嵌入してこれを径方向外方に押し拡げ、フランジ部を成形する。保持機構のセンター部は、上金型のプレス時に、中空管の基端側の軸孔を面取りして、フランジ部と同軸にセンター穴を成形する。
【0008】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面に従って説明する。
【0009】図1乃至図3は、本発明であるフランジ部材の鍛造装置の一実施例を示したものである。この鍛造装置は、フランジ部材たるプロペラシャフトのシャフトエンドを、中空管11を素材として用いて成形するためのものであって、中空管11を起立した状態で保持するための保持機構12と、保持機構12の上方に設けられた上金型14及び下金型15とにより主として構成されている。上金型14及び下金型15は、所定のフランジ部13の形状をかたどる鍛造型を軸方向に上下に分割させた形となっている。
【0010】保持機構12は、中空管11の外径よりも充分大きな径の軸穴16を上下方向に有した保持ブロック17と、金型14,15により型打ちされて成形された鍛造シャフトエンド18を取り出すための下部ノックアウト19と、下部ノックアウト19に設けられた下部パンチ20とで構成されている。下部ノックアウト19は、保持ブロック17の軸穴16に摺動する略円柱状の摺動体21を有し、この摺動体21を昇降手段(アクチュエータ)22の駆動により所定ストロークで昇降させるようになっている。摺動体21と昇降手段22とを連結する支持部材23は、保持ブロック17の下部に設けられたガイドフレーム24により案内されている。ガイドフレーム24には支持部材23を摺動自在に支持する軸受部材25が取付けられ、この軸受部材25の上面が型打ちの際に支持部材23の段部26に当接して、適宜支えるようになっている。
【0011】下部パンチ20は、摺動体21の上端面に載置される円板部分27と、円板部分27と一体的に形成されて上方に伸びた円柱部分28とで成る。円板部分27は摺動体21及び軸穴16と同径の短円柱状に形成され、円柱部分28は中空管11の外径と略等しい外径を以て形成されている。そして円柱部分28の上端には、中空管11の基端側の端面11aを着座させる着座面部29と、着座面部29から立ち上げられたセンター部30とが形成されている。センター部30は、中空管11の基端側の軸孔11bに没入するような大きさの略円錐形状を呈し、着座面部29と接続する周縁の位置では、軸孔11bよりも僅かに大きい外径となるように形成されている。すなわち軸孔11bの端面に接触して、これに嵌合するようになっている。
【0012】下金型15は、その下面が保持ブロック17の上面31に接合した状態で支持されており、中空管11の外径に略等しい径で成る軸穴15aと、軸穴15aの上端側においてフランジ部13の外面形状の下半分(軸方向基端側)をかたどるキャビティ15bとが形成されている。保持ブロック17の上面31の下金型15と接合する位置には、耐衝撃性に富むリング状の補強部材32が埋設されている。上金型14は、所定の圧力を以て下方にプレスする押圧機構(図示せず)に設けられており、その下部にフランジ部13の外面形状の上半分(軸方向先端側)をかたどるキャビティ14bが区画形成されている。上金型14の下面の外周端には下方に突出した段部14aが形成され、型打ちの際に下金型14と嵌め合わされるようになっている。そして上金型14の軸心Oの位置には、金型14,15と協動してフランジ部13を成形するための上部パンチ33が取り付けられている。上部パンチ33は、上金型14のキャビティ14bに連なる小段部34と、小段部34から下方に垂下した中央突起部35とを有している。小段部34は、キャビティ14bと協動して中空管11の先端側11cを、鍛造シャフトエンド18の端面18aの形状に成形するようになっている。中央突起部35は、金型14,15及び下部パンチ20のセンター部30と同軸で、下窄まりの略円錐状を呈して形成され、小段部34との接続部分では軸孔11bよりも大きな外径となっている。そしてキャビティ14b,15bの内側に相当する部分35aにおいて、軸孔11bと同径になるまで滑らかな曲面を以て縮径している。そして下端の部分35bは軸孔11bと同径に形成され、下金型15の軸穴15aに適宜進入する位置まで膨出されている。すなわち、上金型14が下降したときに上部パンチ33も下降することで、その中央突起部35が中空管11の先端側11cの軸孔11b内に嵌入し、この部分を金型14,15のキャビティ14b,15bへと押し拡げるようになっている。
【0013】次に、本発明であるフランジ部材の鍛造方法の一実施例を、前記構成の作用として説明する。
【0014】まず素材として、シャフトエンドに要求される強度等の特性を満たすもの、例えば炭素鋼(S50C等)製の中空管11を用意する。この中空管11としては、図2(a)に示したように、成形すべきシャフトエンドと略同じ外径Dの肉厚のパイプをシャー切断等により切断して所定の長さLとし、例えば外径D=73mm,内径d=40mm,長さL=450mm の寸法とする。次にこの中空管11を、図2(b)に示したように、先端側11cの所定の区間、すなわちフランジ部13を成形すべき部分のみを、誘導加熱装置などの加熱炉36に装入し、所定の高温(例えば1,200 ±50℃)になるまで加熱する。
【0015】そしてこの中空管11を、基端側の端面11aが下部パンチ20の着座面部29に当接し、且つ軸孔11aがセンター部30に嵌合するように、保持ブロック17及び下金型15の軸穴16,15a内に起立させる。このときの下部パンチ20の高さは、部分加熱された先端側11cが下金型15のキャビティ15bの内側に位置するように調節しておく。この状態で、押圧機構の駆動により上金型14を下降させて下金型15に突き合わせ、そのキャビティ14b,15bを軸方向に閉じることで中空管11の先端側11cを型打ちする。この過程で、上部パンチ33の中央突起部35が中空管11の軸孔11bに嵌入し、上金型14の下降に従ってその円錐状の部分35aが先端側11cを径方向外方に速やかに押し拡げて、拘束するキャビティ14b,15bの内壁へと押し付け、適宜な肉厚でフランジ部13を確実に成形する。
【0016】またこの型打ちの際は、中空管11の基端側を下部ノックアウト19及びガイドフレーム24が、下部パンチ20及び摺動体21,支持部材23によりストッパーとして支えている。従って下部パンチ20のセンター部30は、このときの衝撃力を利用して、基端側の軸孔11cに嵌合して面取りを行い、フランジ部13と同軸のセンター穴37を成形する。
【0017】型打ちが終了したなら、図1中の左半分に示したように、上金型14を原位置まで上昇させた後、下部ノックアウト19を駆動させて、鍛造シャフトエンド18を上方に押し上げ、下金型15及び保持ブロック17の軸穴15a,16から取り出す。取り出された鍛造シャフトエンド18は、金型14,15間の突き合わせ面の位置に生じたバリ38をトリミングされ、図3に示したような所定形状のフランジ部13を有する鍛造シャフトエンド18となる。この鍛造シャフトエンド18は、次工程の機械加工に送られ、さらに洗浄・溶接などを経てプロペラシャフトアッセンブリーとして組み立てられる。
【0018】このように、素材として中空管11を使用し、これを起立させた状態で金型14,15及び上部パンチ33によって先端側11cを軸方向に型打ちするようにしたので、先端側11cのみを部分加熱するだけで、確実に所定のフランジ部13を成形することができ、全体加熱が必要であった従来の工法よりも、加熱コスト(消費電力)及び加熱時間を削減することができる。また金型14,15は従来の径方向の型打ちを行う鍛造型に比べて小形のものですみ、プレスのエネルギーも小さくできる。そしてバリ38の量も少なくなり、原料の無駄をなくすることができると共に、トリミング工程の簡略化につながる。さらに、成形された鍛造シャフトエンド18は、中空管11の軸孔11bをそのまま生かした形状であり、中空となることで、最終製品(シャフトエンド)の軽量化が達成される。
【0019】そして本実施例にあっては、上部パンチ33の中央突起部35と同軸である下部パンチ20のセンター部30によって、型打ちと同時に後加工用のセンター穴37を基端側に成形するようにしたので、素材の中空管11の両端間に肉厚差があっても、容易に且つ正確なセンター出しができ、従来のドリル穿孔の工程が不要となって、工数削減及び生産能率向上が達成される。
【0020】次に、図4は本発明の他の実施例を示したもので、前記実施例と同様の保持ブロック17の軸穴16に、中空管11の外径に等しい内径を有した管体41が挿嵌されている。管体41の上部は段状に形成されて、補強部材32に嵌合支持されている。管体41の軸方向長さは、その下端42が下部パンチ20の着座面部29よりも下方に位置するように形成されている。従って中空管11は、下部パンチ20上に立設された状態にあって、その周側面が略全長に亘って下金型15及び管体41に接触保持されることになる。すなわち、中空管11を確実に軸心O上にセットできる。また下部ノックアウト19は、上昇時に下部パンチ20の円板部分27が管体41の下端42に当接するので、そのストロークは管体41の下端42から円板部分27上面までの区間43に規制される。また中央突起部35は、前記実施例と同様なキャビティ14bを有する上金型44と一体に製造されている。この他の構成及び作用効果は、前記実施例と同様である。
【0021】ここで、以上の実施例にあっては、下部パンチ20によってセンター穴37を成形するものとしたが、その際に軸孔11bの開口端において「返えり」が生じるので注意を要する。すなわち図5に示すように、下部パンチ20は軸孔11bの開口縁に対してセンター部30と着座面部29との接続の位置で当接するが、この面取りに伴う返えり51が着座面部29により押し出されて、軸孔11bの内側に入り込む(a)。この返えり51は不規則な形状となるため、後工程の機械加工において、その加工センター52をセンター穴37に挿嵌させたときに、加工センター52が返えり51の存在によって偏位し、鍛造シャフトエンド18の軸心Oと加工センター52の軸心Pとの差Sが生じて、機械加工精度に悪影響を及ぼす(図5(b))。
【0022】これを防止するために、図6に示すように、センター部61の形状を加工センター52と同じ錐角θを持つ円錐台形状とし、着座面部29とセンター部61との接続位置に、所定深さの円環状の溝62を形成する。このように構成することで、型打ちと同時にセンター穴37を成形する際の返えり51は溝62内に収容され、軸孔11b内に突出することがなくなり、求心差の発生を防止できる。すなわち適正なセンター穴37が成形されることで、後工程における機械加工の精度が低下するのを未然に防ぐことができる。
【0023】なお保持機構12或いは下部パンチ20等の構成は図示例に限らず、中空管11を起立した状態で保持できるものであれば、どのような構成でもかまわない。また本発明の対象となるフランジ部材としては、前記実施例で示した形状・寸法の部品に限るものではなく、また自動車のプロペラシャフトのシャフトエンド以外に、同様なフランジ部を有したフランジ部材に広く適用されるものである。
【0024】
【発明の効果】以上要するに本発明によれば、部分加熱及び軸方向型打ちによって確実にフランジ部を成形することができ、従来よりもコスト削減が達成されるという優れた効果を発揮する。またセンター部を備えた構成によれば、後工程の機械加工に必要なセンター穴を同時に正確に加工でき、フランジ部材製造上の工数削減が達成される。さらに溝を備えた構成によれば、適正なセンター穴を容易に成形できる。
【出願人】 【識別番号】000181273
【氏名又は名称】自動車部品工業株式会社
【出願日】 平成7年(1995)6月26日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
【公開番号】 特開平9−10887
【公開日】 平成9年(1997)1月14日
【出願番号】 特願平7−159421