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【発明の名称】 析出硬化型ステンレス鋼座金の製造方法
【発明者】 【氏名】中村 稔

【氏名】清水 成人

【氏名】谷田沢 純

【目的】 SUS630のような析出硬化型ステンレス鋼の座金を製造すること。
【構成】 析出硬化型ステンレス鋼の丸棒を切断して所定の大きさの円盤状加工片にし、この円盤状加工片を冷温間鍛造して所定の座金の形状にし、さらに析出硬化熱処理をすること。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 析出硬化型ステンレス鋼の丸棒を切断して所定の大きさの円盤状加工片にし、この円盤状加工片を冷温間鍛造して所定の座金の形状にし、その後析出硬化熱処理をすることを特徴とする析出硬化型ステンレス鋼座金の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、丸棒を切断した円盤状加工片を冷温間鍛造する析出硬化型ステンレス鋼座金の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、SUS630のような析出硬化型ステンレス鋼は、耐熱性及び耐食性に優れ、強度が高く、しかも低温で析出硬化処理ができるため、熱処理による歪みが殆どないので、エンジンなどの座金として最適であるが、硬度が高いために製造が難しく、従来製造されていなかった。一方、座金は、(1)丸棒を切削して製造する方法、(2)薄板をプレスして成形した後、熱処理し、ショットブラストをして表面を仕上げて製造する方法、及び(3)熱間鍛造して製造する方法があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、(1)の丸棒を切削して製造する方法は、析出硬化型ステンレス鋼のような硬い材料では削り難く、また材料の歩留りが悪いので、コストが高くなる欠点がある。また(2)の薄板をプレスして製造する方法は、材料の歩留りがそれほど良くないが、材料が柔らかい場合には、有効な方法である。しかし、析出硬化型ステンレスのような硬い材料の場合には薄板にすることが難く、また軟化熱処理をすると変形するなどの欠点がある。さらに、(3)の熱間鍛造による方法は、高温にする必要があるため、表面の酸化膜が厚くなり、除去するのが困難である。また酸化膜を除去するために厚く削る必要があるので、材料の歩留りが良くないことなどの欠点がある。本発明は、硬度の高いSUS630のような析出硬化型ステンレスの座金を歩留よく製造する方法を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明においては、析出硬化型ステンレス鋼の丸棒を切断して所定の大きさの円盤状加工片にし、この円盤状加工片を冷温間鍛造して座金の形状に成形し、その後析出硬化熱処理をして製品にすることである。
【0005】上記方法をさらに説明すると、本発明においては、析出硬化型ステンレス鋼の丸棒を切断して所定の大きさの円盤状加工片にし、この円盤状加工片を冷温間鍛造して座金の形状にし、その後析出硬化熱処理し、ショットブラストなどで表面を仕上げて製品にすることである。上記析出硬化型ステンレスは、SUS630、631などである。そのうちの代表的なものであるSUS630は、重量%で、C≦0.07%、Si≦1.0%、Mn≦1、0%、P≦0.040%、S≦0.030%、Ni:3.00〜5.00%、、Cr:15.50〜17.50%,Cu:3.00〜5.00%、Nb:0.15〜0.45%、残部は実質的にFeからなるものである。
【0006】冷温間鍛造は、3又は4工程で行い、その温度は、400℃〜600℃で行うが、SUS630は、500℃〜600℃で行うのが好ましい。冷温間鍛造後の熱処理は、析出硬化するための熱処理で、靱性を必要とする場合には、550〜650℃で、硬さを主とする場合には、400〜550℃で行うが、SUS630は、靱性を必要とする場合には、570〜590℃で、硬さを主とする場合には、470〜490℃で行うのが好ましい。座金には、JISの規格でM12、M16、M20、M22、M24がある。その大きさは、M12が、内径13mm、外径26mm、厚さ3.2mmであり、M24が、内径25mm、外径48mm、厚さ6.0mmである。
【0007】
【作用】本発明は、冷温間鍛造によって成形し、その後冷温間鍛造と同じ様な温度で析出硬化熱処理するので、熱間鍛造のように高温にする必要がなく、表面の酸化膜が薄いので、ショットブラストのような簡単な方法で表面処理ができ、また冷間鍛造のように中間焼鈍をする必要がない。また、本発明において、円盤状加工片を丸棒から作成しているのは、丸棒は製造及び熱処理が簡単であるために、安価であり、また丸棒から作成した円盤状加工片は材料の歩留りが良いからである。
【0008】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。
実施例1C=0.05%、Si=0.26%、Mn=0、91%、P=0.032%、S=0.004 %、Ni=4.33%、Cr=15.74%,Cu=3.35% 、Nb=0.36%、残部は実質的にFeであるSUS630の直径23mmの丸棒を切断して図1の(a)の厚さ7.3mmの円盤体の加工片を作成し、600℃に加熱して冷温間鍛造し、図1の(d)の形状にした。これを580℃で析出硬化熱処理した後ショットブラストにより表面処理して外径32mm、内径17mm、厚さ4.5mmのM16の座金を得た。この座金の歩留り、後処理コストは表1の試料番号1のとおりである。
【0009】実施例2実施例1と同じ加工片を作成し、この加工片を500℃で冷温間鍛造し、第1工程として図2の(b)の形状にし、その後図2の(c)及び(d)の工程を経て(e)の形状にした。これを590℃で析出硬化熱処理した後ショットブラストにより表面処理して外径32mm、内径17mm、厚さ4.5mmのM20の座金を得た。この座金の歩留り、後処理コストは表1の試料番号2のとおりである。
【0010】比較例1実施例1と同じ加工片を作成し、この加工片を1000℃に加熱して熱間鍛造し、第1工程として図1の(b)とほぼ同じ形状にした。これを再度1000℃に加熱して熱間鍛造し、図1の(c)とほぼ同じ形状にし、再度1000℃に加熱して熱間鍛造し、外径32.4mm、内径16.6mm、厚さ4.9mmの座金を得た。これを610℃で析出硬化熱処理した後酸洗いにより表面処理して外径32mm、内径17mm、厚さ4.5mmの座金を得た。この座金の歩留り、後処理コストは表1の試料番号3のとおりである。
【0011】

本発明の製造方法によって製造した試料番号1及び2の座金は、比較例の試料番号3の座金と比較して酸化が少ないので、表面処理が簡単で、しかも削り代が殆ど必要がなかった。これに対して、比較例の試料番号3の座金は、酸化膜が厚く、酸洗によって0.2mm除去しなければならなかった。
【0012】本発明は、上記以外の点においても実施例に限定されることなく、要旨を変更しない範囲において種々の変更をすることが出来ることはもちろんである。
【0013】
【本発明の効果】本発明は、上記のような構成にしたことにり、次のような優れた効果を奏する。
(1)本発明によって、従来硬くて製造できなかったSUS630のような析出硬化型ステンレス鋼の座金を製造することができるようになった。
(2)本発明は、冷温間鍛造をして製造するので、熱間鍛造より酸化膜の生成が少なく、表面仕上げが簡単である。
(3)本発明は、丸棒を切断した円盤状加工片を鍛造によって成形するので、歩留りが高く、板を打ち抜いて製造するより材料費が安い。
(4)本発明は、鍛造材料として丸棒を使用しているので、熱処理による変形が少なく、軟化熱処理が容易であるので、材料費が安価である。
【出願人】 【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
【出願日】 平成7年(1995)6月22日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】荒崎 勝美
【公開番号】 特開平9−10886
【公開日】 平成9年(1997)1月14日
【出願番号】 特願平7−177928