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【発明の名称】 鍛造品の製造方法
【発明者】 【氏名】吉 岡 英 夫

【氏名】小 原 裕二郎

【目的】 鍛造による効果が十分に得られることによって機械的性質のより一層の向上をはかると共に強圧下によって表面品質のより一層の向上をはかる。
【構成】 鋳造により鍛造用素材を成形したのち、前記鍛造用素材を鍛造により所望形状の鍛造品に成形するに際し、鍛造により得られる所望形状の鍛造品2の主たる部位において圧下率15%以上および応力50MPa以上の少なくともいずれかが得られるように前記所望形状の鍛造品2とは非近似形状の鍛造用素材を鋳造により成形したのち、前記鍛造用素材を鍛造により所望形状の鍛造品2に成形して当該鍛造品2の主たる部位において圧下率15%以上および応力50MPa以上の少なくともいずれかを得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 鋳造により鍛造用素材を成形したのち、前記鍛造用素材を鍛造により所望形状の鍛造品に成形するに際し、鍛造により得られる所望形状の鍛造品の主たる部位において圧下率15%以上および応力50MPa以上の少なくともいずれかが得られる形状の鍛造用素材を鋳造により成形したのち、前記鍛造用素材を鍛造により所望形状の鍛造品に成形して当該鍛造品の主たる部位において圧下率15%以上および応力50MPa以上の少なくともいずれかを得ることを特徴とする鍛造品の製造方法。
【請求項2】 鍛造により得られる所望形状の鍛造品の主たる部位において圧下率15%以上および応力50MPa以上の少なくともいずれかが得られるように前記所望形状の鍛造品とは非近似形状の鍛造用素材を鋳造により成形したのち、前記鍛造用素材を鍛造により所望形状の鍛造品に成形して当該鍛造品の主たる部位において圧下率15%以上および応力50MPa以上の少なくともいずれかを得る請求項1に記載の鍛造品の製造方法。
【請求項3】 鍛造用素材のうち鍛造により肉厚が薄くなる部分は圧下率15%以上を得ると共に鍛造により前方押出しや後方押出しなどで塑性流動して形成される部分は応力50MPa以上を得る請求項1または2に記載の鍛造品の製造方法。
【請求項4】 鍛造品がロードホイール用ディスクであり、凹部および凸部が形成されるスポーク部において鍛造により肉厚が薄くなる部分に相当する凹部の底肉部分は圧下率15%以上を得ると共に鍛造により前方押出しや後方押出しなどで塑性流動して形成される部分に相当する凸部の突肉部分は応力50MPa以上を得る請求項1ないし3のいずれかに記載の鍛造品の製造方法。
【請求項5】 ディスクにアウターリムを一体的に成形する請求項4に記載の鍛造品の製造方法。
【請求項6】 圧下率15%以上に代えてひずみ量0.25以上を得る請求項1ないし5のいずれかに記載の鍛造品の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鋳造によって鍛造用素材を成形したのち、前記鍛造用素材を鍛造によって所望形状の鍛造品に成形するのに利用される鍛造品の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種の鍛造品の製造方法としては、例えば、特開平3−142031号公報に記載されているものがある。
【0003】この鍛造品の製造方法は、ロードホイール用ディスクを対象としたものであって、まず、鋳造によって、前記ロードホイール用ディスクのディスク部の形状に近似した形状の鍛造用ディスク素材を成形したのち、次に、前記鍛造用ディスク素材を鍛造によって所望のディスク部の形状に成形するようになすものである。
【0004】この製造方法によれば、鋳造によってロードホイール用ディスクのディスク部の形状に近似した形状の鍛造用ディスク素材を成形したのち、所望のディスク部の形状に鍛造を行うようにしているので、鍛造工程が簡略化されるという利点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した従来における鍛造品(ロードホイール用ディスク)の製造方法にあっては、鋳造によって成形する鍛造用ディスク素材の形状は、所望のディスク部の形状に近似したものとなっていたため、鍛造の際の加工度が小さなものとなり、したがって、鍛造による効果、例えば、鋳造において凝固する際に発生した樹脂状晶の微細分断効果や、鍛流線の発生による効果、などが得がたいと共に、鍛造品の特徴のひとつである滑らかで光沢のある表面を得がたいという難点があり、このような難点を解消することが課題としてあった。
【0006】
【発明の目的】本発明は、このような従来の課題にかんがみてなされたものであって、鋳造によって鍛造用素材を成形したのち、前記鍛造用素材を鍛造によって所望形状の鍛造品に成形するに際し、鍛造による効果(樹脂状晶の微細分断効果や、鍛流線の発生による効果など)が十分に得られることによって機械的性質のより一層の向上をはかることが可能であると共に、滑らかで光沢のある表面が得られることによって表面品質のより一層の向上をも実現することが可能である鍛造品の製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明に係わる鍛造品の製造方法は、請求項1に記載しているように、鋳造により鍛造用素材を成形したのち、前記鍛造用素材を鍛造により所望形状の鍛造品に成形するに際し、鍛造により得られる所望形状の鍛造品の主たる部位において圧下率15%以上および内部応力50MPa以上の少なくともいずれかが得られる形状の鍛造用素材を鋳造により成形したのち、前記鍛造用素材を鍛造により所望形状の鍛造品に成形して当該鍛造品の主たる部位において圧下率15%以上および内部応力50MPa以上の少なくともいずれかを得る構成としたことを特徴としている。
【0008】そして、本発明に係わる鍛造品の製造方法の実施態様においては、請求項2に記載しているように、鍛造により得られる所望形状の鍛造品の主たる部位において圧下率15%以上および内部応力50MPa以上の少なくともいずれかが得られるように前記所望形状の鍛造品とは非近似形状の鍛造用素材を鋳造により成形したのち、前記鍛造用素材を鍛造により所望形状の鍛造品に成形して当該鍛造品の主たる部位において圧下率15%以上および内部応力50MPa以上の少なくともいずれかを得るようになすことができる。
【0009】また、同じく本発明に係わる鍛造品の製造方法の実施態様においては、請求項3に記載しているように、鍛造用素材のうち鍛造により肉厚が薄くなる部分は圧下率15%以上を得ると共に鍛造により前方押出しや後方押出しなどで塑性流動して形成される部分は応力50MPa以上を得るようになすことができ、さらに具体的には、請求項4に記載しているように、鍛造品がロードホイール用ディスクであり、凹部および凸部が形成されるスポーク部において鍛造により肉厚が薄くなる部分に相当する凹部の底肉部分は圧下率15%以上を得ると共に鍛造により前方押出しや後方押出しなどで塑性流動して形成される部分に相当する凸部の突肉部分は応力50MPa以上を得るようになすことができ、この場合、請求項5に記載しているように、ディスクにアウターリムを一体的に成形するようになすことができる。
【0010】さらにまた、本発明に係わる鍛造品の製造方法の実施態様においては、請求項6に記載しているように、圧下率15%以上に代えてひずみ量0.25以上(伸び25%以上)を得るようになすことができる。
【0011】
【発明の作用】本発明に係わる鍛造品の製造方法は、請求項1に記載しているように、鍛造により得られる所望形状の鍛造品の主たる部位において圧下率15%以上および応力50MPa以上の少なくともいずれかが得られる形状の鍛造用素材を鋳造により成形したのち、前記鍛造用素材を鍛造により所望形状の鍛造品に成形して当該鍛造品の主たる部位において圧下率15%以上および応力50MPa以上の少なくともいずれかを得ることとしているが、この場合、圧下率15%以上および応力50MPa以上を得ることとしているのは次の理由による。
【0012】すなわち、鋳造によって成形した鍛造用素材に対する鍛造の際の圧下率と耐力,引張強さとの関係を調べると共に、圧下率と伸びとの関係を調べたところ、それぞれ図12および図13に例示する結果が得られた(ただし、いずれも鍛造後にT6処理を実施した場合を示す。また、圧下率0%は鋳造ままであることを示す。)
図12に示すように、圧下率と耐力,引張強さとの関係では、圧下率を15%以上とすることによって耐力約220MPa以上を得ることが可能であると共に、引張強さ約300MPa以上を得ることが可能であり、図13に示すように、圧下率と伸びとの関係では、圧下率を15%以上とすることによって、伸び約14%以上を得ることが可能であった。
【0013】また、鋳造によって成形した鍛造用素材に対して鍛造を行ったのちにおいて、鍛造品が受けている主応力と機械的性質との関係を調べたところ、鍛造品の主たる部位において50MPa以上の応力を受けているものとすることによって、耐力約220MPa以上、引張強さ約300MPa以上、伸び約14%以上の良好なる機械的性質が得られることがわかった。
【0014】したがって、本発明では、鍛造により得られる所望形状の鍛造品の主たる部位において圧下率15%以上および応力50MPa以上の少なくともいずれかが得られる形状の鍛造用素材を鋳造により成形したのち、前記鍛造用素材を鍛造により所望形状の鍛造品に成形して当該鍛造品の主たる部位において圧下率15%以上および応力50MPa以上の少なくともいずれかを得るようにしているのであり、これによって、鍛造品の各部において鍛造による強度上の効果(樹脂状晶の微細分断効果や、鍛流線の発生による効果など)が十分に得られることにより機械的性質のより一層の向上がもたらされることになると共に、鍛造による強加圧の効果により滑らかで光沢のある表面が得られることによって表面品質のより一層の向上がもたらされることとなる。
【0015】そして、請求項2に記載しているように、鍛造により得られる所望形状の鍛造品の主たる部位において圧下率15%以上および応力50MPa以上の少なくともいずれかが得られるように前記所望形状の鍛造品とは非近似形状の鍛造用素材を鋳造により成形したのち、前記鍛造用素材を鍛造により所望形状の鍛造品に成形して当該鍛造品の主たる部位において圧下率15%以上および応力50MPa以上の少なくともいずれかを得るようになすことによって、鍛造による強度上の効果が十分に得られることにより機械的性質のより一層の向上がもたらされると共に、鍛造による強加圧の効果が十分に得られることにより滑らかで光沢のある表面が得られることによって表面品質のより一層の向上がもたらされることとなる。
【0016】また、請求項3に記載しているように、鍛造用素材のうち鍛造により肉厚が薄くなる部分は圧下率15%以上を得ると共に鍛造により前方押出しや後方押出しなどで塑性流動して形成される部分は応力50MPa以上を得るようになすことによって、鍛造用素材のうち鍛造により肉厚が薄くなる部分は圧下率によって表現できるので(すなわち、圧下率=[(H−h)/H]×100(%) ただし、Hは鍛造前の厚さないしは高さ,hは鍛造後の厚さないしは高さである。)、このような肉厚が薄くなる部分は圧下率15%以上を得るようになすと共に、鍛造に際して前方押出しや後方押出しやアプセット加工などで塑性流動して形成される部分は上記圧下率で表現することができないので、このような塑性流動して形成される部分は内部圧縮応力で表わすこととして、鍛造後には応力50MPa以上を受けているような鍛造を行うこととした。
【0017】このような圧下率15%以上および/または応力50MPa以上を得ることによって、鍛造による強度上の効果が十分なものとなることにより機械的性質のより一層の向上がもたらされると共に、鍛造による強加圧の効果が十分なものとなることにより滑らかで光沢のある表面が得られることによって表面品質のより一層の向上がもたらされることとなる。
【0018】さらに、請求項4に記載しているように、鍛造品がロードホイール用ディスクである場合において、このロードホイール用ディスクのうち凹部および凸部が形成されるスポーク部において鍛造により肉厚が薄くなる部分に相当する凹部の底肉部分は圧下率15%以上を得ると共に鍛造により前方押出しや後方押出しなどで塑性流動して形成される部分に相当する凸部の突肉部分は応力50MPa以上を得るようになすことによって、機械的性質および表面品質のいずれにも優れた高性能なロードホイール用ディスクが得られることとなり、請求項5に記載しているように、ディスクにアウターリムを一体的に成形するようになすことによって、ロードホイールにおいて最も強度が要求され且つホイールの外観となるアウターリムにも鍛造による強度および表面品質の向上の作用がもたらされることとなる。
【0019】さらにまた、鋳造により成形された鍛造用素材に対する圧下率と鍛造品におけるひずみ量との関係を調べたところ、図14に示すような比例関係にあることが認められたので、請求項6に記載しているように、圧下率15%以上に代えてひずみ量0.25以上(伸び25%以上)を得るようになすことによっても、同様に、機械的性質および表面品質のいずれにも優れた高品質の鍛造品ないしはロードホイール用ディスクその他の機械要素等が得られることとなる。
【0020】
【実施例】
実施例1図1ないし図6は、本発明に係わる鍛造品の製造方法の一実施例を示すものであって、鍛造品がロードホイール用ディスクである場合を示しており、図1は鋳造により成形された鍛造用素材としてのディスク素材1を示していると共に、図2は前記ディスク素材1を鍛造により所望形状に成形された鍛造品としてのディスク2を示している。
【0021】図1に示すディスク素材1は、例えば、Si含有量などを適宜に調整することによって鋳造性と鍛造性とを両立させると共に良好なる機械的性質が得られるようにしたアルミニウム合金よりなるものであって、裏側(図1の下側)の中央部分に窪んだ形状のハブ取付け部相当部1Aを有していると共に、ハブ取付け部相当部1Aの外周側に凹部1Bおよび凸部1Cが形成されたスポーク部相当部1Dを有し、さらに、スポーク部相当部1Dの外周には裏側へ突出した環状のインナーリム接合部相当部1Eを有すると共に、インナーリム接合部相当部1Eの外周にアウターリム相当部1Fを有しており、全体として、所望形状の鍛造品であるディスク2に対して非近似形状に成形してある。なお、ハブ取付け部相当部1Aの中央には、鍛造の際において材料の流れを生じさせることができるようにするためのセンター穴1Gが設けてある。
【0022】そして、ディスク素材1の形状を設定するに際しては、所望形状のディスク2の主たる部位において圧下率15%以上および応力50MPa以上の少なくともいずれかが得られるようにする。
【0023】そして、鍛造後には、ディスク素材1に対応するものとして、図2に示すように、裏側(図2の下側)の中央部分に窪んだ形状のハブ取付け部2Aを有していると共に、ハブ取付け部2Aの外周側に凹部2Bおよび凸部2Cが形成されたスポーク部2Dを有し、さらにスポーク部2Dの外周には裏側へ突出した環状のインナーリム接合部2Eを有すると共に、インナーリム接合部2Eの外周にアウターリム2Fを有しているディスク2に成形される。
【0024】そこで、図1に示すディスク素材1から図2に示すディスク2を鍛造により成形するに際し、ディスク素材1のハブ取付け部相当部1Aにおける厚さtとディスク2のハブ取付け部2Aにおける厚さtとの関係は、厚さtから厚さtへの鍛造において圧下率15%以上を得ることができるように、この実施例では、厚さtを厚さtの1.3倍以上(すなわち、圧下率約23%以上)にすると共に、ディスク素材1の凹部1Bの底肉部における厚さtとディスク2の凹部2Bの底肉部における厚さtとの関係は、厚さtから厚さtへの鍛造において圧下率15%以上を得ることができるように、この実施例では厚さtを厚さtの1.3倍以上(すなわち、圧下率約23%以上)にした。
【0025】また、ディスク素材1の凸部1Cの高さh(図4参照)は鍛造時に生じる後方押出しによってディスク2の凸部2Cの高さh(図5参照)へと増加するが、このような後方押出しによる材料の塑性流動で凸部2Cが形成される場合には圧下率で評価することができないので、この凸部2Cにおいては鍛造によって応力50MPa以上を受けることができるように、この実施例では、ディスク素材1の凸部1Cの高さh(図4参照)がディスク2の凸部2Cの高さh(図5参照)の3分の1以下であるものとした。
【0026】さらに、ディスク2のインナーリム接合部2Eにあっては、鍛造の際にディスク素材1のインナーリム接合部相当部1Eの突出部分に対して両側からの材料流れを生じ、これによって図6に示すように割れなどの鍛造欠陥Dを発生することがあるため、体積としては鍛造後と同等の材料配分にしてある。なお、ディスク2のアウターリム2Fにあっては材料の一部が鍛造型の外側へ流れてばり2Hとなるので、その分だけ余裕のある寸法設定を行うことが可能である。
【0027】このように、厚さt,t,および高さh等に設定したディスク素材1を鋳造により成形したのち、このディスク素材1を鍛造によりディスク2に成形することによって、圧下率約23%以上が得られる厚さt,tに鍛造成形されると共に、後方押出しによって図5に示すように応力50MPa以上を受ける高さhに成形されて、鍛造による強度向上の効果および強加圧による表面品質向上の効果がもたらされ、品質の良いロードホール用ディスク2を製造することが可能であった。
【0028】また、この実施例におけるディスク2は、アウターリム2Fが一体で成形されており、このアウターリム2Fの部分においても鍛造の際に圧下率15%以上および応力50MPa以上の少なくともいずれかを得ることができるようにすることによって、ロードホイールにおいて最も強度が要求され且つホイールの外観となるアウターリム2Fにおいても鍛造による十分な機械的強度と良好な表面品質を得ることが可能であった。
【0029】実施例2図7ないし図10は本発明に係わる鍛造品の製造方法の他の実施例を示すものであって、断面H形をなす鍛造品である自動車サスペンション用トランスバーリングの製造に適用した場合を示しており、図7は鋳造により成形された鍛造用素材としてのリンク素材11を示していると共に、図9は前記リンク素材11を鍛造により所望形状に成形された鍛造品としてのトランスバーリンク12を示している。
【0030】図7に示すリンク素材11は、実施例1と同様に、例えば、Si含有量等を適宜に調整することによって鋳造性と鍛造性とを両立させると共に良好なる機械的性質を得ることができるようにしたアルミニウム合金よりなるものであって、3点の支持部S,S,S間において凹部11Bと凸部11Cが形成してあって図8に示すように概略H形状をなし、全体として最終形状である図9,図10に示すトランスバーリンク12に対して非近似形状のリンク素材11となっている。
【0031】そして、リンク素材11の形状を具体的に設定するに際しては、所望形状のトランスバーリンク12の主たる部位において圧下率15%以上および応力50MPa以上の少なくともいずれかが得られるようにする。
【0032】そこで、リンク素材11の凹部11Bにおける厚さtとリンク12の凹部12Bにおける厚さtとの関係は、厚さtから厚さtへの鍛造において圧下率15%以上を得ることができるように、この実施例2では、厚さtを厚さtの1.4倍以上(すなわち、圧下率約29%以上)にすると共に、リンク素材11における凹部11Cの高さhは鍛造時に生じる押出しによってリンク12における凸部12Cの高さhへと増加するが、このような押出しによる場合には圧下率で評価することができないので、この凸部12Cにおいては鍛造によって応力50MPa以上を受けることができるように、この実施例ではリンク素材11の凸部11Cの高さhがリンク12の凸部12Cの高さhの2分の1以下にした。
【0033】このように、厚さtおよび高さh等に設定したリンク素材11を鋳造により成形したのち、このリンク素材11を鍛造によりリンク12に成形することによって、圧下率約29%以上が得られる厚さtに鍛造成形されると共に、押出しによって応力50MPa以上を受ける高さhに成形されて、鍛造による強度向上の効果および強加圧による表面品質向上の効果がもたらされ、品質のよいトランスバーリンク12を製造することが可能であった。
【0034】実施例3図11は本発明に係わる鍛造品の製造方法のさらに他の実施例を示すものであって、アーム部22Aが断面矩形状をなすと共に両端に膨出部22Bを有する自動車サスペンション用アッパアーム22の製造に適用した場合を示しており、鋳造により成形された鍛造用アーム素材は図示を省略している。
【0035】このアッパアーム素材においても、前記実施例と同様に、例えば、Si含有量等を適宜に調整することによって鋳造性と鍛造性とを両立させると共に良好な機械的性質を得ることができるようにしたアルミニウム合金を素材としてなるものである。
【0036】そして、アーム素材の形状を設定するに際しては、所望形状に鍛造成形されたアッパアーム22のうちアーム部22Aの板厚がtである場合において、鍛造によりアーム部22Aにおいて圧下率15%以上を得ることができるように、アーム素材におけるアーム部の板厚を前記板厚tの1.3倍以上(すなわち、圧下率約23%以上)にすると共に、同じく鍛造により膨出部22Bにおいて応力50MPa以上を受けることができるように、アーム素材における両端部分の板厚がアーム部の板厚と等しいかむしろ小さ目であるようにしておく。
【0037】このようにして、アーム部の厚さおよび両端部の厚さを設定したアーム素材を鋳造により成形したのち、このアーム素材を鍛造によりアッパアーム22に成形することによって、アーム部22Aでは圧下率約23%以上が得られる厚さtに鍛造成形されると共に、両端部は塑性加工によって応力50MPa以上を受ける膨出部となっている車体あるいはサスペンションメンバーへの取付部22Bに成形され、鍛造による強度向上の効果および強加圧による表面品質向上の効果がもたらされ、品質のよいアッパーリンク22を製造することが可能であった。
【0038】
【発明の効果】本発明に係わる鍛造品の製造方法によれば、請求項1に記載しているように、鍛造により得られる所望形状の鍛造品の主たる部位において圧下率15%以上および応力50MPa以上の少なくともいずれかが得られる形状の鍛造用素材を鋳造により成形したのち、前記鍛造用素材を鍛造により所望形状の鍛造品に成形して当該鍛造品の主たる部位において圧下率15%以上および応力50MPa以上の少なくともいずれかを得るようにしたから、鍛造品の各部において鍛造による強度上の効果(樹脂状晶の微細分断効果や、鍛流線の発生による効果など)が十分に得られることにより機械的性質のより一層の向上を実現することが可能であると共に、鍛造による強加圧の効果により滑らかで光沢のある表面が得られることによって表面品質のより一層の向上を実現することが可能であるという著しく優れた効果がもたらされる。
【0039】そして、請求項2に記載しているように、鍛造により得られる所望形状の鍛造品の主たる部位において圧下率15%以上および応力50MPa以上の少なくともいずれかが得られるように前記所望形状の鍛造品とは非近似形状の鍛造用素材を鋳造により成形したのち、前記鍛造用素材を鍛造により所望形状の鍛造品に成形して当該鍛造品の主たる部位において圧下率15%以上および応力50MPa以上の少なくともいずれかを得るようになすことによって、鍛造による強度上の効果が十分に得られることにより機械的性質のより一層の向上を実現することが可能であると共に、鍛造による強加圧の効果が十分に得られることにより滑らかで光沢のある表面が得られることによって表面品質のより一層の向上を実現することが可能であるという優れた効果がもたらされる。
【0040】また、請求項3に記載しているように、鍛造用素材のうち鍛造により肉厚が薄くなる部分は圧下率15%以上を得ると共に鍛造により前方押出しや後方押出しなどで塑性流動して形成される部分は応力50MPa以上を得るようになすことによって、鍛造品の各部位において鍛造による強度上の効果が十分なものとなることにより機械的性質のより一層の向上が可能になると共に、鍛造による強加圧の効果が十分なものとなることにより滑らかで光沢のある表面が得られることによって表面品質のより一層の向上が可能になるという優れた効果がもたらされる。
【0041】さらに、請求項4に記載しているように、鍛造品がロードホイール用ディスクである場合において、このロードホイール用ディスクのうち凹部および凸部が形成されるスポーク部において鍛造により肉厚が薄くなる部分に相当する凹部の底肉部分は圧下率15%以上を得ると共に鍛造により前方押出しや後方押出しなどで塑性流動して形成される部分に相当する凸部の突肉部分は応力50MPa以上を得るようになすことによって、機械的性質および表面品質のいずれにも優れた高性能なロードホイール用ディスクを製造することが可能となり、請求項5に記載しているように、ディスクにアウターリムを一体的に成形するようになすことによって、ロードホイールにおいて最も強度が要求され且つホイールの外観となるアウターリムにも鍛造による強度および表面品質の向上が可能であるという優れた効果がもたらされる。
【0042】さらにまた、請求項6に記載しているように、圧下率15%以上に代えてひずみ量0.25以上(伸び25%以上)を得るようになすことによっても、同様に、機械的性質および表面品質のいずれにも優れた高品質の鍛造品ないしはロードホイール用ディスクその他の機械要素等を製造することが可能であるという優れた効果がもたらされる。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成7年(1995)6月22日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】小塩 豊
【公開番号】 特開平9−10884
【公開日】 平成9年(1997)1月14日
【出願番号】 特願平7−156417