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【発明の名称】 スクロール部品の型鍛造方法
【発明者】 【氏名】長田 卓

【氏名】森田 章靖

【氏名】服部 重夫

【氏名】尾崎 勝彦

【氏名】金丸 信夫

【目的】 薄肉渦巻状のスクロール羽根を有するスクロール部品を、背圧等を加えることなくスクロール羽根の成長を揃え、単純形状の素材から1工程で成形することができる型鍛造方法の提供を目的とする。
【構成】 スクロール部品(10)のスクロール羽根(21)を成形する金型(1) の羽根成形インプレッション部(Is)の側面の面粗度を、該スクロール羽根(21)の成形時での成長速度の遅い中央部羽根を成形する部位で細かくし、逆に成長速度の早い外周部羽根を成形する部位で粗くして型鍛造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 フランジ部の片面に薄肉渦巻状のスクロール羽根を形成してなるスクロール部品を型鍛造するに際し、用いる金型の前記スクロール羽根を成形するインプレッション部の基端部コーナRを含む側面の面粗度を、該スクロール羽根の成形時での成長速度の遅い中央部羽根を成形する部位で細かくし、逆に成長速度の早い外周部羽根を成形する部位で粗くして型鍛造することを特徴とするスクロール部品の型鍛造方法。
【請求項2】 フランジ部の片面に薄肉渦巻状のスクロール羽根を形成してなるスクロール部品を型鍛造するに際し、用いる金型の前記スクロール羽根を成形するインプレッション部の基端部コーナRを、該スクロール羽根の成形時での成長速度の遅い中央部羽根を成形する部位で他の部位よりも大きくして型鍛造することを特徴とするスクロール部品の型鍛造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、スクロール部品の型鍛造方法に関し、詳細には、薄肉渦巻状のスクロール羽根を有するスクロール部品を単純形状の素材から1工程で成形するに適する型鍛造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】周知のように、スクロール圧縮機は、〔図6〕の (a)図に示すように、フランジ部(22)の片面に薄肉螺旋状のスクロール羽根(21)を形成してなるスクロール部品(20)を、互いのスクロール羽根(21)を対向させて2個組合わせ、その一方を他方に対して公転させて両スクロール部品(20)のスクロール羽根(21)間で流体を圧縮する機構とされている。また、それらスクロール部品は、従来鋳造品が主流であったが、近年では、軽量化および高強度化のために型鍛造により一体成形されることが多くなっている。
【0003】そして、従来のスクロール部品の型鍛造方法としては、〔図6〕の (b)図に示すように、羽根成形部(21') 、フランジ部(22)およびボス部(23)からなるブランク(20') を型鍛造や切削加工などで成形する第1工程と、同 (c)図に示すように、ブランク(20') のボス部(23)およびフランジ部(22)を下金型(31)と上金型(32)とで拘束すると共に、所定のスクロール羽根を成形する渦巻状のインプレッション部(33a) を備えた上ポンチ(33)を、上金型(32)に設けたポンチ孔(32a) に嵌入されている羽根成形部(21') に押し込んでスクロール羽根を成形する第2工程とからなる型鍛造法が広く採用されていた。この方法では、第1工程でボス部(23)およびフランジ部(22)が最終形状に成形され、第2工程でスクロール羽根(21)が最終形状に成形され、その後に該スクロール羽根(21)の先端部を切削して平坦に仕上げる程度で (a)図に示すスクロール部品(20)が成形される。
【0004】しかし、上記方法では、ブランク成形と仕上成形との2工程を要して生産性に劣るため、その改善が検討され、例えば、特開昭59-61542号、特開平5-337586号公報等では、円盤状等の予備成形を要さない単純形状のブランクから1工程にてスクロール部品を成形する型鍛造法が提案されている。前者の型鍛造方法(特開昭59-61542号)では、〔図7〕の (a)図に示すように、ブランク(45)を、下金型(41)およびノックアウトピン(44)と、外周を規制する上金型(42)とで拘束すると共に、スクロール羽根を成形する渦巻状のインプレッション部(43a) を備えたポンチ(43)を、上金型(42)に設けたポンチ孔(42a) を通して、ブランク(45)に押し込み、同図の中心線の右方に示すように、スクロール部品(20)のフランジ部(23)とスクロール羽根(21)とを1工程で成形する。この方法では、予備成形の不要な円盤状のブランクから所定のスクロール部品を1工程で成形することができる。後者の型鍛造方法(特開平5-337586号)では、〔図8〕の (a)図に示すように、スクロール羽根を成形する渦巻状のインプレッション部(52a) を貫通させて設けると共に、該インプレッション部(52a) 内に抜きピン(54)でバックアップされた渦巻状の下パンチ(53)を摺動自由に挿入した下金型(52)を、フランジ部(22)の外周を規制するダイプレート(51)に取り付け、そのダイプレート(51)内に装入された円盤状のブランク(55)を、上パンチ(50)の圧下によって加圧し、 (b)図に示すように、該ブランク(55)の材料を下パンチ(53)のインプレッション部(52a) に流入させて、フランジ部(22)とスクロール羽根(21)とを1工程で成形する。また、上パンチ(50)の圧下に際し、抜きピン(54)を介して下パンチ(53)に所定の背圧を加えることで、下パンチ(53)のインプレッション部(52a) に流入する材料の先端に圧力をかけて進入速度を制御しつつ成形する。この方法では、下パンチのインプレッション部内に入った材料に十分高いプレス圧力を加えて塑性流動を均一化させ、亀裂の発生がなくて高さの均一なスクロール羽根を成形することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、薄肉渦巻状のスクロール羽根を有するスクロール部品を低コストで型鍛造するには、単純形状の材料からブランク成形を省いて少ない工程数で成形できるだけでなく、スクロール羽根の高さを均一に成形でき、先端部の切削加工を最小限として加工ロスを抑えられ、かつ、用いる金型の高寿命化を図るために低荷重で成形できることが重要となる。
【0006】しかしながら、上記前者の型鍛造方法(特開昭59-61542号)では、予備成形の不要な円盤状のブランクから1工程で成形できるものの、その成形後のスクロール部品の断面図である〔図7〕の (b)図に示すように、成形されるスクロール羽根(21)の中央部羽根の成長が遅れ、該中央部羽根の先端部に欠肉が生じ易い。また、これを完全に充満させるには高い押圧荷重が必要となるため、大容量のプレスでなければ成形できず、かつ金型に大きな負荷がかかり耐用寿命を低下させることが問題となる。一方、上記後者の型鍛造方法(特開平5-337586号)では、高さの均一なスクロール羽根を成形できるものの、形成されるスクロール羽根の先端部に所定の背圧を加えつつ、高いプレス圧力を加えて成形するので金型に大きな負荷がかかり、また、その背圧を制御するための機構が必要となり、金型およびプレス装置の構成が複雑になるという問題がある【0007】本発明は、上記従来技術の問題点を解決すべくなされたもので、背圧等を加えることなく成形に際するスクロール羽根の成長を揃えることができ、よって押圧荷重を比較的低く抑えてなお、単純形状の素材から1工程で成形することが可能なスクロール部品の型鍛造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成とされている。すなわち、請求項1記載の発明に係るスクロール部品の型鍛造方法は、フランジ部の片面に薄肉渦巻状のスクロール羽根を形成してなるスクロール部品を型鍛造するに際し、用いる金型の前記スクロール羽根を成形するインプレッション部の基端部コーナRを含む側面の面粗度を、該スクロール羽根の成形時での成長速度の遅い中央部羽根を成形する部位で細かくし、逆に成長速度の早い外周部羽根を成形する部位で粗くして型鍛造することを特徴とする。
【0009】請求項2記載の発明に係るスクロール部品の型鍛造方法は、フランジ部の片面に薄肉渦巻状のスクロール羽根を形成してなるスクロール部品を型鍛造するに際し、用いる金型の前記スクロール羽根を成形するインプレッション部の基端部コーナRを、該スクロール羽根の成形時での成長速度の遅い中央部羽根を成形する部位で他の部位よりも大きくして型鍛造することを特徴とする。
【0010】
【作用】前述したように、ブランクを金型内で加圧し、該金型に設けた渦巻状のインプレッション部に材料を流入させてスクロール羽根を成形すると、そのスクロール羽根の成長が不揃いとなり、特にその先端部に背圧負荷等の規制を加えない限り、一般に、中心部側の羽根成長は遅く、外側寄りの羽根成長は速くなる。また、このとき上記インプレッション部に進入する材料は、該インプレッション部の側面との摩擦抵抗を受けながら充満成長するので、特に薄肉のスクロール羽根では該インプレッション部の両側面の抵抗が、その成長に大きな影響を及ぼす。一方、金型の面粗度を変えると、その金型面に沿って流れる材料の該面における摩擦の状態が変わり、〔図5〕のグラフに示すように、その面粗度が粗ければ摩擦応力が大きくなり、逆に細かくすれば摩擦応力は小さくなる。例えば、金型面粗度がRa値で 1.0μm の場合、その面での摩擦抵抗はクーロン摩擦係数で0.41であるに対して、同Ra値で0.05μm の場合、同摩擦係数で0.21と大幅に小さくなる。従って、スクロール羽根を成形するインプレッションの面粗度を部位によって変えると、面粗度を粗くした部位では、材料の流れに対する面抵抗が大きくなるので羽根の成長が遅くなり、逆に細かくした部位では、面抵抗が低下して材料の流れが促進され羽根の成長が速くなる。すなわち、金型のインプレッションの表面粗さにより、成形するスクロール羽根の成長速度の制御が可能となる。
【0011】請求項1の発明はこれらの点に着目して完成されたものであって、金型のスクロール羽根を成形するインプレッション部の基端部コーナRを含む側面の面粗度を、該スクロール羽根の成形時での成長速度の遅い中央部羽根を成形する部位で細かくし、逆に成長速度の早い外周部羽根を成形する部位で粗くして型鍛造することで、そのままでは成長速度の遅い中央部での羽根成長を促進させる一方、成長速度の早い外周部での羽根成長を抑制し、前記従来技術のように背圧等を加えることなく、成形に際するスクロール羽根の成長を揃えることができる。また、このことにより押圧荷重を比較的低く抑えてなお、単純形状の素材から薄肉渦巻状のスクロール羽根を有するスクロール部品を1工程で成形することができる。
【0012】ここで、スクロール羽根を成形するインプレッション部の面粗度は、より鏡面に近い細かな面粗度にするほど羽根成長を促進でき、逆に粗くするほど羽根成長を抑制できるきるが、本発明では各部位での面粗度を変え、その相対的な面粗度の差によって羽根成長の差を制御して揃えることが要旨であるので、その面粗度は、細かくする部位では、通常の研磨で得られるRa値=0.01μm 程度、粗くする部位では、製品の表面品質への影響を考慮してRa値= 2.0μm 程度を限度として各部位の面粗度を選定する。好ましくは、粗度を細かくする中央部側では、Ra値で0.01〜 0.5μm の範囲内、粗くする外周部側では、Ra値 1.0〜 2.0μm の範囲内であって要求表面品質を勘案した値に設定する。
【0013】ブランクを金型内で加圧し、該金型に設けた渦巻状のインプレッション部に材料を流入させてスクロール羽根を成形する場合、このインプレッション部の基端部コーナRの大きさが材料の流入状態に大きく影響し、該インプレッション部で成形されるスクロール羽根の成長速度を左右する。すなわち、スクロール羽根を成形するインプレッション部の基端部コーナRが大きいと、材料が円滑に流入して羽根成長が促進される。従って、該インプレッション部の基端部コーナの特定部位のコーナRを他の部位よりも大きくすることで、特定部位での羽根成長の遅れを解消して全体の羽根成長を揃えることができる。
【0014】請求項2の発明はこれらの点に着目して完成されたものであって、金型の前記スクロール羽根を成形するインプレッション部の基端部コーナRを、該スクロール羽根の成形時での成長速度の遅い中央部羽根を成形する部位で他の部位よりも大きくして型鍛造することで、そのままでは成長速度の遅い中央部での羽根成長を促進させ、前記従来技術のように背圧等を加えることなく、成形に際するスクロール羽根の成長を揃えることができる。また、このことにより押圧荷重を比較的低く抑えてなお、単純形状の素材から薄肉渦巻状のスクロール羽根を有するスクロール部品を1工程で成形することができる。
【0015】ここで、成形するスクロール羽根のある部位の羽根成長速度をv0 としたとき、最も速い羽根成長速度をvmax に対して、v=v0 +vmax と定める。そして例えば、最も小さなコーナRが 0.5mmである場合を例にすると、このvを用いて、その羽根部位に対応するインプレッション部の基端部両コーナのコーナRは、定数c1 、c2 を用いた次式を目安として決定することができる。
R=c1 /v+c2 (但し、c1 =1.0 、c2 =−0.5 )
なお、スクロール羽根の機械加工代としてより大きなコーナRが許容される場合にはc2 をより大きな値に設定することもできる。
【0016】
【実施例】以下、本発明のスクロール部品の型鍛造の実施例を図面を参照して説明する。〔図1〕は、本発明の第1実施例の説明図であって、 (a)図は成形対象とするスクロール部品の仕上鍛造形状を示す斜視図、 (b)図は用いたブランクの形状を示す斜視図、 (c)図は用いた金型の概要構成を示す正断面図である。
【0017】まず〔図1〕の (a)図により、本実施例で成形対象とするスクロール部品について説明すると、このスクロール部品(10)は、Al4032合金からなり、円盤状のフランジ部(12)の片方の面に薄肉螺旋状のスクロール羽根(11)を形成すると共に、他の一方の面の中央部にボス部(13)を突設させたものである。
【0018】次いで本実施例で用いた金型の概要構成を同 (c)図により説明すると、本実施例の金型(1) は、熱間金型用合金鋼(JIS;SKD61)からなり、筒状のダイインサート(2) と、このダイインサート(2) 内で対向して摺動移動可能に配された上ポンチ(3) および下型(4) とで構成されている。また、上ポンチ(3) の下面の中央部に上記ボス部(13)を成形するボス成形インプレッション部(Ib)設ける一方、下型(4) の上面に上記スクロール羽根(11)を成形する螺旋状の羽根成形インプレッション部(Is)を設け、それらで区成される内部に上記スクロール部品(10)の形状に対応するインプレッション(Io)を形成せしめるものとされている。また、この金型(1) の上ポンチ(3) は、図示省略のプレス本体の駆動手段によって昇降する圧下メインラム(5) に取付けられ、その圧下メインラム(5) により、同プレス本体の下アンビル(6) 上に固定配置されたダイインサート(2) の内下部に配された下型(4) に向けて圧下させられる。一方、ダイインサート(2) 内に配された下型(4) は、下アンビル(6) 側に設けられ、図示省略の駆動手段によって昇降するノックアウトラム(6a)により単独で上昇可能とされている。
【0019】そしてまた、この金型(1) のインプレッション(Io)面は、総体的には、Ra値で0.8μm 程度の面粗度に仕上げ、更に、下型(4) の羽根成形インプレッション部(Is)については、スクロール羽根(11)の中央部羽根を成形する部位(図中で破線で示す)の基端部コーナRを含む両側面を、Ra値で0.05μm の面粗度に研磨仕上げすると共に、外周部羽根を成形する部位(図中で鋸歯状に示す)の基端部コーナRを含む両側面を、Ra値で 1.0μm と粗い面粗度に仕上げている。
【0020】上記構成の金型を用いて、前記スクロール部品(10)をプレス型鍛造した。また比較のために、下型(4) の羽根成形インプレッション部(Is)を含む全インプレッション(Io)面を、Ra値で 0.8μm 程度の面粗度に仕上げた金型を用いて、同スクロール部品(10)をプレス型鍛造した。
【0021】また、本実施例では、Al4032合金棒材を切断して、 (b)図に示すように円盤状とされ、かつ、金型(1) のダイインサート(2) 内に僅少の間隙をもって挿入できる外径寸法とされたブランク(B) を用い、そのブランク(B) の加熱温度を 450℃、金型(1) の保持温度を 150℃とすると共に、圧下メインラム(5) の圧下速度を200mm/secとする条件でプレス型鍛造した。
【0022】そして、型鍛造後のスクロール部品について、各断面の状態を調べると共に、有限要素解析にて材料の型内流動および充満状態を調べたところ、比較例のものは、その有限要素解析による材料の解析フロー断面図である〔図2〕の (b)図に示すように、スクロール羽根の中央部羽根が外周部羽根よりも成長が遅れ、その上端が欠肉状態となった。これに対して、本実施例のものは、 (a)図に示すように、スクロール羽根の中央部羽根の成長が促進されて、羽根全体の成長が揃っており、かつ、面粗度を粗くした部位の製品表面に肌荒れや亀裂等の欠陥がなく、要求品質を十分満足できるものであった。
【0023】〔図3〕は、本発明の第2実施例の説明図であって、 (a)図は用いた金型の要部構成の説明図、 (b)図は本例の型鍛造による材料の解析フロー断面図である。なお、本実施例は、金型の一部構成が異なる点を除いて、前記第1実施例と同じであるので、ここでは要部のみを図示して、その差異点を要約して説明するものとする。
【0024】本実施例では、前記第1実施例と同様に、金型(1) のインプレッション(Io)面は、総体的には、Ra値で 0.8μm 程度の面粗度に仕上げる一方、下型(4')の羽根成形インプレッション部(Is)の基端部コーナRを含む両側面については、その平面図である (a)図に示す中央部のA領域をRa値で0.05μm の面粗度に、続くB領域をRa値で 0.2μm の面粗度に研磨仕上げし、その外周部のC領域をRa値で 1.0μm 面粗度に仕上げている。そして、この金型を用いて、第1実施例と同じスクロール部品を同条件のもとでプレス型鍛造し、得られたスクロール部品について、第1実施例と同様に、各断面の状態を調べると共に、有限要素解析にて材料の型内流動および充満状態を調べたところ、その有限要素解析による材料の解析フロー断面図である (b)図に示すように、スクロール羽根全体の羽根成長が揃って型内に完全に充満しており、かつ、製品表面に肌荒れや亀裂等の欠陥がなく、要求品質を十分満足できるものであった。
【0025】以上の2実施例の結果より、スクロール羽根を成形するインプレッション部の各部位での面粗度を変えるという実用上適用の容易な構成でもって、前記従来技術にように背圧等を加えることなく、成形に際するスクロール羽根の成長を揃えることができ、よって押圧荷重を比較的低く抑えてなお、単純形状の素材から1工程で成形できるという本発明の優れた効果を確認することができた。
【0026】なお、上記2実施例における金型の構成は一例であって、スクロール羽根を成形するインプレッション部の各部位での面粗度を変え、その相対的な面粗度の差によって羽根成長の差を制御して揃える本発明の要旨を逸脱しない限り、例えば、圧下側である上ポンチにスクロール羽根を成形するインプレッション部を設ける等、他の構成の金型が用いられ良いことは言うまでもない。また、該インプレッション部の面粗度についても、より鏡面に近い細かな面粗度にするほど羽根成長を促進でき、逆に粗くするほど羽根成長を抑制できるきるが、その適用に際する面粗度は、細かくする中央部側では、通常の研磨で得られるRa値=0.01μm 、粗くする外周部側では製品の表面品質への影響を考慮してRa値= 2.0μm 程度を限度として各部位の面粗度を選定し、好ましくは、粗度を細かくする部位では、Ra値で0.01〜 0.5μm の範囲内、粗くする部位では、Ra値 1.0〜 2.0μm の範囲内であって要求表面品質を勘案した値に設定されることを推奨する。
【0027】〔図4〕は、本発明の第3実施例の説明図であって、 (a)図は用いた金型の概要構成を示す正断面図、 (b)図は同金型の要部構成の説明図、 (c)図は本例の型鍛造による材料の解析フロー断面図である。なお、本実施例の金型は、その一部の構成が異なる点を除いて、前記第1実施例と主要部の構成が同じであるので、ここでは〔図1〕と等価な各部に同符号を付して説明を省略し、その差異点のみを要約して説明するものとする。
【0028】本実施例では、金型(1) のインプレッション(Io)面は、下型(4")の羽根成形インプレッション部(Is)を含み、Ra値で 0.5μm 程度の面粗度に研磨仕上げしている。そして、その下型(4")の羽根成形インプレッション部(Is)の基端部コーナRを、その平面図である (b)図に示す中心側端部のA領域で半径 2.0mmのR、続く中心部のB領域で半径 1.0mmのRとし、更に最外周側端部のC領域で半径 1.0mmのR、その他の外周部で半径 0.5mmのRとしている。
【0029】上記構成の金型を用いて、第1実施例と同じスクロール部品を同条件のもとでプレス型鍛造し、得られたスクロール部品について、第1実施例と同様に、各断面の状態を調べると共に、有限要素解析にて材料の型内流動および充満状態を調べたところ、その有限要素解析による材料の解析フロー断面図である (c)図に示すように、スクロール羽根全体の羽根成長が揃って型内に完全に充満しており、かつ、製品表面に肌荒れや亀裂等の欠陥がなく、要求品質を十分満足できるものであった。
【0030】上記実施例の結果より、スクロール羽根を成形するインプレッション部の特定部位でのコーナRを他の部位よりも大きくするという実用上適用の容易な構成でもって、前記従来技術にように背圧等を加えることなく、成形に際するスクロール羽根の成長を揃えることができ、よって押圧荷重を比較的低く抑えてなお、単純形状の素材から1工程で成形できるという本発明の優れた効果を確認することができた。
【0031】なお、上記実施例における金型の構成は一例であって、スクロール羽根を成形するインプレッション部の基端部両コーナの特定部位でのコーナRを他の部位よりも大きくすることで、羽根成長の遅れを解消して全体の羽根成長を揃える本発明の要旨を逸脱しない限り、例えば、圧下側である上ポンチにスクロール羽根を成形するインプレッション部を設ける等、他の構成の金型が用いられ良いことは言うまでもない。また、成形するスクロール羽根の成長の遅れる部位のインプレッション部のコーナRの設定は、まず、その部位の羽根成長速度をv0 としたとき、最も速い羽根成長速度をvmax に対して、v=v0 +vmax と定め、そして例えば、最も小さなコーナRが 0.5mmである場合を例にすると、このvを用いて、その羽根部位に対応するインプレッション部の基端部両コーナのコーナRは、定数c1 、c2 を用いた次式を目安として決定することができる。
R=c1 /v+c2 (但し、c1 =1.0 、c2 =−0.5 )
また、スクロール羽根の機械加工代としてより大きなコーナRが許容される場合にはc2 をより大きな値に設定することもできる。
【0032】なお、以上の3実施例では、Al4032合金からなるスクロール部品の型鍛造を例にして述べたが、本発明方法は、これに限定されるものではなく、例えば、Ti合金等の他の金属材料からなるスクロール部品の型鍛造に適用して同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0033】
【発明の効果】以上に述べたように、本発明に係る型鍛造方法によれば、従来技術のように背圧等を加えることなく、成形に際するスクロール羽根の成長を揃えることができ、よって押圧荷重を比較的低く抑えてなお、単純形状の素材から1工程で所定のスクロール部品を効率良く成形することができる。
【出願人】 【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
【出願日】 平成7年(1995)6月12日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】明田 莞
【公開番号】 特開平9−1280
【公開日】 平成9年(1997)1月7日
【出願番号】 特願平7−144597