| 【発明の名称】 |
時間変動の補償を含む多段エコー相殺器 |
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【氏名】ディヴィッド グッドウィン シャウ
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【特許請求の範囲】
【請求項1】 音響エコー相殺器装置であって、この装置が:受信路;送信路;および前記の受信路と送信路との間に接続された第一のエコー相殺器手段を含み、このエコー相殺器手段が第一のエラー信号を生成するため、および前記の送信路内のエコー信号を相殺するための第一のインパルス応答合成機能を持ち;この装置がさらに一つの入力と一つの出力を持つ遅延手段を含み、この入力が前記の受信路に受信路上の入り信号を遅延するために接続され;この装置がさらに少なくとも第二のエコー相殺器手段を含み、この第二のエコー相殺器手段が前記の第一のエコー相殺器手段の前記の第一のインパルス応答合成機能と比較して短い第二のインパルス応答合成機能を持ち、この第二のエコー相殺器手段が前記の遅延手段および前記の送信路に直列に接続され、前記の遅延手段と前記の少なくとも一つの第二のエコー相殺器手段の直列接続が前記の受信路と送信路との間で前記の第一のエコー相殺器手段と並列に接続され、前記の少なくとも第二のエコー相殺器手段に前記の第一のエラー信号が供給され、前記の第一のエコー相殺器と同時的に、ただし、独立して、前記の送信路内のエコー信号をさらに相殺するために、適応的に動作し、前記の遅延手段が前記の少なくとも第二のエコー相殺器手段の第二のインパルス応答合成機能を前記の第一のエコー相殺器手段の前記の第一のインパルス応答合成機能と時間的に整合させるための遅延を提供することを特徴とする音響エコー相殺器装置。 【請求項2】 前記の遅延手段が前記の少なくとも第二のエコー相殺器手段の第二のインパルス応答合成機能を前記の第一のエコー相殺器手段の前記の第一のインパルス応答合成機能に対して、所定の時間位置に整合させるための固定遅延期間を持つことを特徴とする請求項1の音響エコー相殺器装置。 【請求項3】 前記の遅延手段が零(0)の固定遅延を提供することを特徴とする請求項2の音響エコー相殺器装置。 【請求項4】 前記の第一のエコー相殺器手段が前記の送信路内のエコー信号の相対的に時間的に変動しないエコー成分の第一のエコー推定値を生成するために構成された第一の適応トランスバーサルフィルタおよび前記の送信路に供給された信号から前記の第一のエコー推定値を代数的に引くための第一の代数結合手段を含み、一方、前記の少なくとも第二のエコー相殺器手段が前記の送信路内の前記の第一のエラー信号内の時間的に変動するエコー成分の第二のエコー推定値を生成するために構成された第二のトランスバーサルフィルタおよび前記の第一のエラー信号から第二のエラー信号を得るために前記の第二のエコー推定値を代数的に引くための第二の代数結合手段を含むことを特徴とする請求項1の音響エコー相殺器装置。 【請求項5】 前記の第一のエコー相殺器手段の第一のインパルス応答合成機能が長期エコーを相殺するために相対的に長くされ、一方、前記の少なくとも第二のエコー相殺器手段の第二のインパルス応答合成機能が短期エコーを相殺するために相対的に短くされることを特徴とする請求項4の音響エコー相殺器装置。 【請求項6】 前記の第一のエコー相殺器が第一の適応トランスバーサルフィルタを含み、この第一の適応トランスバーサルフィルタの適応速度が、この第一の適応トランスバーサルフィルタが第一のエコー推定値に収束できるように相対的に緩やかにされ、一方、前記の第二のエコー相殺器が第二の適応フィルタを含み、この第二の適応フィルタの適応速度が、この第二の適応トランスバーサルフィルタが前記の第一のエラー信号内の時間的に変動するエコー成分を追跡できるように相対的に速くされることを特徴とする請求項1の音響エコー相殺器装置。 【請求項7】 前記の遅延手段が、制御可能に調節可能な遅延手段を含み、この遅延手段が遅延調節制御信号に応答して、前記の少なくとも第二のエコー相殺器の第二のインパルス応答合成機能を前記の第一のエコー相殺器の前記の第一のインパルス応答合成機能に対して時間的に整合する動作を遂行し、前記の遅延手段がさらに、前記の第一のエコー相殺器手段の第一の適応フィルタのタップ係数値に応答して、前記の遅延調節制御信号を生成するための手段を含むことを特徴とする請求項1の音響エコー相殺器装置。 【請求項8】 前記の遅延調節制御信号を生成するための手段が、前記の遅延調節制御信号を前記の第一のエコー相殺器手段の前記の第一の適応フィルタのタップ係数の規模に基づいて生成することを特徴とする請求項7の音響エコー相殺器装置。 【請求項9】 前記の遅延調節制御信号を生成するための手段が、前記の遅延調節制御信号を前記の第一のエコー相殺器手段の前記の第一の適応フィルタのタップ係数の最も大きな規模値に基づいて生成することを特徴とする請求項8の音響エコー相殺器装置。 【請求項10】 前記の最も大きな規模値の供給を受けて、前記の遅延調節制御信号を、前記の少なくとも第二のエコー相殺器手段の第二のインパルス応答機能の遅延位置が最も大きな規模値を持つ第一の適応フィルタタップ係数を中心として整合されるように調節するための手段がさらに含まれることを特徴とする請求項9の音響エコー相殺器装置。 【請求項11】 前記の遅延調節制御信号を生成するための手段が、前記の第一の適応フィルタのタップ係数規模値の各々に対して長期平均値を得るための手段、前記の各タップ係数規模値の長期平均値をその対応する現在の値と代数的に結合することによって前記の第一の適応フィルタのタップ係数規模値の各々に対する差値を得るための手段、前記の差値の各々に対する規模値を得るための手段、および最も大きな差値規模を前記の遅延調節制御信号の生成に使用するために選択するための手段がさらに含まれることを特徴とする請求項8の音響エコー相殺器装置。 【請求項12】 前記の最も大きな差規模値の供給を受けて、前記の遅延調節制御信号を、前記の少なくとも第二のエコー相殺器手段の第二のインパルス応答機能の遅延位置が最も大きな差規模値を持つ第一の適応フィルタのタップ係数を中心として整合されるように修正するための手段がさらに含まれることを特徴とする請求項11の音響エコー相殺器装置。 【請求項13】 前記の第一の適応フィルタのタップ係数規模値が複数のグループに配列され、さらに、前記の複数のグループと1対1ベースにて関連する前記の複数の各グループ内の第一の適応フィルタのタップ係数規模値を総和するための複数の手段、前記の複数の総和手段と1対1ベースにて関連する前記の総和された第一の適応フィルタのタップ係数規模値のグループの各々に対して長期平均値を得るための複数の手段、前記の長期平均を得るための前記の複数の手段と1対1ベースにて関連する前記の総和されたタップ係数規模値のグループの各々の長期平均値とその対応する現在値を代数的に結合することによって前記のグループの第一の適応フィルタのタップ係数規模値の各々に対する差値を得るための複数の手段、前記の差値の各々に対する規模値を得るための手段、および前記の複数のグループの差値規模の中の最も大きなものを前記の遅延調節制御信号を生成するのに使用するために選択するための手段がさらに含まれることを特徴とする請求項8の音響エコー相殺器装置。 【請求項14】 前記の最も大きな差規模値の供給を受けて、前記の最も大きな差規模値を、前記の少なくとも第二のエコー相殺器手段の第二のインパルス応答機能の遅延調節制御信号位置が前記の最も大きな差規模値を持つ第一の適応フィルタのタップ係数を中心に整合されるように修正するための手段がさらに含まれることを特徴とする請求項13の音響エコー相殺器装置。 【請求項15】 前記の差規模値を修正するための手段が、前記の選択された最も大きな差規模値を前記の複数のグループの各々の中の第一の適応フィルタのタップ係数の数を補償するために調節するための手段、および前記の調節された最も大きな差規模値を前記の少なくとも第二のエコー相殺器手段の第二のインパルス応答機能の遅延調節制御信号位置が前記の最も大きな差規模値を持つ第一の適応フィルタのタップ係数を中心に整合されるように修正するための手段がさらに含まれることを特徴とする請求項14の音響エコー相殺器装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【産業上の利用分野】本発明は通信回路および音響環境内でのエコーの相殺、より詳細には、エコーパス内の時間変動成分の補償に関する。 【0002】 【従来の技術】エコー相殺器は、通信システム内の電気的および音響的エコーの両方を補償するために一般的に使用されている。典型的なエコー相殺器は、エコーチャネルのモデムを構成する周知の適応フィルタリングアルゴリズムを使用するが、このモデルは、実際のエコーチャネルに送られたのと同一の信号によって励振される。幾つかの実例においては、エコーパスは、例えば、音響エコーの相殺が遂行されている音響環境内で人あるいは他の物体が動き回る場合のように時間的に変動することがある。このような状況においては、通常、エコー相殺器内で使用される適応フィルタリングアルゴリズムの収束速度を改善するために大きな適応ステップサイズが使用される。ただし、大きなステップサイズの使用は、エコー相殺器の全体としての性能および結果としての残留エコーに悪影響を与え、また、不安定なエコー相殺器となる傾向がある。音響エコーを効果的に相殺するためには、さらに、典型的な部屋その他内に見られるエコー期間をモデル化するために“長期(long)”インパルス応答を持つエコー相殺器を採用することが必要である。長期インパルス応答合成機能を持つ“長期”エコー相殺器は、通常、エコー相殺器内に緩やかな収束時間を持つ適応フィルタリングアルゴリズムを使用する。このために、部屋内部で移動が起こった場合、あるいはエコーパスのインパルス応答が変動した場合、エコー相殺器内で使用されるこのタイプの適応フィルタリングアルゴリズムは、新たなエコーパスインパルス応答に“再収束(reconverging)”するが困難となる。 【0003】エコーパスの変動から回復するための一つの技法においては、再帰更新アルゴリズムが使用されるが、このアルゴリズムは、従来のLMS技法と比べて速く収束することが知られている。V.A.Margoらによる論文”Multiple Short-Length Adaptive Filters For Time-Varying Echo Cancellatio”、1993 IEEE International Conference on Acoustics,Speech,and Signal Processing、April 27-30、1993、pages I-161-I-164において開示されている装置は、エコーパスに沿って時間的に離散された複数の別個のエコー相殺器を採用することによって疎らなエコーパス応答を扱う。ただし、残念なことに、音響エコーは、一般的には、疎らなインパルス応答を持つものとみなすことはできない。さらに、使用される適応フィルタリングアルゴリズムの大きな係数上に大きなステップサイズを使用し、小さな係数上に小さなステップサイズを使用する方法、ならびに、幾つかの他のバリエーションが提案されている。 【0004】 【課題を解決するための手段】本発明人は、音響システムにおいては、エコーパスインパルス応答内の殆どの変動は、そのシステム内で使用されるマイクロホンあるいは拡声器付近の移動の結果として発生することを発見した。つまり、エコーパスインパルス応答の最も大きな変動は、エコーパスインパルス応答全体の長さと比較して相対的に短い時間期間内に発生し、エコーパスインパルス応答の殆どの残りの部分は、実質的に固定されたままにとどまることを発見した。従って、エコーパスインパルス応答を、一つの実質的に固定的な部分と、もう一つのダイナミックな、つまり、時間的に変動する部分から成る二つの別個のインパルス応答として扱えば、二つの別個のエコー相殺器をインパルス応答の各部分を個別に扱うために使用できることとなる。 【0005】こうして、従来の技術による音響エコー相殺器の問題および制約が、第一のエコー相殺器と、少なくとも第二のエコー相殺器を採用することによって克服される。第一のエコー相殺器は、相対的に長い第一のインパルス応答合成機能を持ち、送信路と受信路との間に接続され、第一のエラー信号を生成するため、および送信路内のエコー信号を相殺するために使用される。少なくとも第二のエコー相殺器は、相対的に短い第二のインパルス応答合成機能を持ち、遅延ユニットと直列に接続される。この直列接続は、送信路と受信路との間に第一のエコー相殺器と並列に接続される。第二のエコー相殺器は、第一のエコー相殺器から第一のエラー信号を供給され、これに応答して、第一のエコー相殺器と同時的に、ただし独立して、送信路内のエコーをさらに適応的に相殺する動作を遂行する。 【0006】より具体的には、第一のエコー相殺器は、エコーパスインパルス応答の実質的に固定的な成分および緩やかに変動する成分を捕捉することを意図され、一方、第二のエコー相殺器は、エコーパスインパルス応答のより時間変動的な、つまり、ダイナミックに変動する要素を捕捉することを意図される。第二のエコー相殺器は、第一のエコー相殺器と比べて短いインパルス応答合成機能を持つために、これは、第一のエコー相殺器よりもかなり速く適応でき、従って、これは、エコーパスインパルス応答の時間変動のより大きな成分を捕捉することができる。 【0007】本発明人は、さらに、幾つかのアプリケーションにおいては、エコーパスインパルス応答の時間的変動のより大きな成分は、相対的に短い時間期間内に存在することを発見した。例えば、音響エコーの相殺においては、エコーパスインパルス応答内の殆どの時間変動は、マイクロホンあるいは拡声器近傍の物体および/あるいは人の移動に起因する。この移動は、エコーパスインパルス応答の早期部分に大きな変動を与える。第二のエコー相殺器のタップ係数をエコーパスインパルス応答のこの早期部分と整合させることによって、第一のエコー相殺器のみによって達成可能なそれよりも著しく改善されたエコー相殺性能を得ることができる。これは、“短い”固定遅延を第二のエコー相殺器への受信路信号と直列に挿入することによって達成される。 【0008】他の幾つのかアプリケーションとして、エコーパスインパルス応答の時間変動成分が比較的短い時間期間内に存在するが、ただし、エコーパスインパルス応答全体と時間変動成分との関係が、時間と共に変動したり、あるいは事前に知ることができない場合がある。このような状況下においては、第二のエコー相殺器の係数をエコーパスインパルス応答に対して動的に整合することが必要とされる。これは、第二のエコー相殺器への受信路と直列に動的に調節可能な遅延を挿入することによって達成される。一つの実施例においては、この遅延値は、第一のエコー相殺器のタップ係数値に応答して動的に生成される。 【0009】もう一つの実施例においては、遅延が、第二のエコー相殺器の所定のタップ係数、例えば、中央のタップ係数が最も大きな値を持つ第一のエコー相殺器タップ係数と実質的に整合されるような値に動的に設定される。 【0010】さらにもう一つの実施例においては、第一のエコー相殺器のタップ係数値のどれが最も変動するかに関する決定がなされる。次に、第二のエコー相殺器と直列に挿入された遅延が第二のエコー相殺器の所定のタップ係数、例えば、中央のタップ係数が最も大きな値を持つ第一のエコー相殺器タップ係数と実質的に整合されるような値に動的に調節される。 【0011】さらにもう一つの実施例においては、第一のエコー相殺器のタップ係数が、各々が所定の数のタップ係数を持つグループに分割される。次に、各グループ内のタップ係数値の変動特性を使用して、第二のエコー相殺器のタップ係数の位置を第一のエコー相殺器のタップ係数に対して整合するための動的遅延調節量が決定される。 【0012】 【実施例】図1はエコー相殺器装置を含む本発明の一つの実施例を略ブロック図の形式にて示すが、このエコー相殺装置は、フルバンド用途においても、あるいは複数のサブバンドの一つに使用することもできる。より具体的には、受信信号x(k)は受信入力101に供給され、次に、受信路102を介して固定遅延要素103、エコー相殺器104、および拡声器105に供給される。エコー相殺器106は、固定遅延要素103と直列に接続される。エコー相殺器104と106は、当分野において周知の任意の一つであり得る。エコー相殺器104と106、および固定遅延要素103内で処理される信号はデジタルであることに注意する。それぞれ受信路102および送信路112内に必要とされるデジタル/アナログ(D/A)およびアナログ/デジタル(A/D)変換器は、図示されていない。この実施例においては、エコー相殺器104および106は、それぞれ、適応トランスバーサルフィルタ107および108を含むが、これらは、合衆国特許第3,500,000号において開示されており、また、D.L.Duttweilerによる論文、“A Twelve-Channel Digital Echo Canceler”、IEEE Transactions on Communications、VOL.COM-26、No.5、May 1978、Pages 647-653 において説明されている広く知られているタイプである。簡単に説明すると、エコー相殺器104は、適応トランスバーサルフィルタ107と代数結合ユニット109を含む。同様に、エコー相殺器106は、適応トランスバーサルフィルタ108と代数結合ユニット110を含む。上で説明されたように、図1に示される本発明のエコー相殺器装置は、複数のサブバンドを持つサブバンドエコー相殺器内に採用することができるが、図1の実施例は、XおよびY分析フィルタ(図示なし)およびE分析フィルタ(これも図示なし)を持つ一つのサブバンドエコー相殺器を示す。これらフィルタの構成は、上に述べた、Duttweiler U.S.patent application Serial No.08/368,687およびShaw U.S.patent application Serial No.08/368,684において示されているのでそれらを参照されたい。 【0013】実施において、マイクロホン111は、部屋、包囲された領域、その他の内側で話している誰かからの必要とされる音声信号を拾うが、ただし、不可避的に、拡声器105から出力される音響も拾う。概念的には、マイクロホンによって拾われる音響信号は、二つの音響エコーパス成分を持つ。第一のエコーパス成分は、第一のエコー相殺器104が捕捉することを意図する成分、つまり、エコーパスインパルス応答の実質的に固定的な成分と緩やかに変動する成分であり、もう一方の成分(第二の成分)は、第二のエコー相殺器106が、遅延要素103との協力して捕捉することを意図する成分、つまり、エコーパスインパルス応答のより変動の速い、つまり、ダイナミックに変動する要素である。第二のエコー相殺器106のトランスバーサルフィルタ108は、第一のエコー相殺器104のトランスバーサルフィルタ107よりも“短い”インパルス応答合成能力を持つために、これは、第一のエコー相殺器104のトランスバーサルフィルタ107より遥かに速く適応でき、このために、これは、エコーパスインパルス応答の時間的変動がより速い成分を捕捉することができる。緩やかに変動する成分は、数秒から数分の間隔で変動し、一方、時間的により速く変動する成分は、数十から数百ミリ秒の間隔で変動する。一つの実施例においては、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではないが、“長期(long)”エコー相殺器104の適応フィルタ107は、5ミリ秒間隔の39個のタップ係数を含み、従って、195ミリ秒の合成機能を持ち、一方、“短期(short) ”エコー相殺器106の適応フィルタ108は、(各フルバンドエコー相殺器あるいはサブバンド音響エコー相殺器の一つのサブバンド内に)、それぞれ、5ミリ秒間隔の8個のタップ係数を含み、従って、それぞれ、40ミリ秒の合成機能を持つ。エコーパスインパルス応答の時間変動は、部屋内部の反射エコー成分、並びに部屋内での物体および/あるいは人の移動に起因することに注意する。 【0014】この実施例においては、第一のエコー相殺器104は、主として、エコーパスインパルス応答の実質的に固定されたエコー成分と緩やかに変動するエコー成分を合成することを意図される。これを達成するために、エコー相殺器104の適応トランスバーサルフィルタ107は、相対的に“長く(long)”され、つまり、エコー相殺器106の適応フィルタ108より遥かに多数のタップ係数を持ち、相対的に緩やかに適応するように構成され、これによって、このフィルタがエコーパスインパルス応答の実質的に固定された成分および緩やかに変動する成分の合成において満足できる性能を達成できるようにされる。この緩やかな適応は、エコーパスインパルス応答の実質的に固定された成分および緩やかに変動する成分が存在する環境下で、第一のエコー推定値に正しく収束するために必要とされる。適応速度が速すぎる場合は、結果として、誤った第一のエコー推定値が得られる可能性があるためである。マイクロホン111からの信号y(k)は、送信路112を介して代数結合ユニット109に供給され、エコーパスインパルス応答の実質的に固定された成分と緩やかに変動する成分の第一のエコー推定値が、エコー相殺器104の適応トランスバーサルフィルタ107によって合成され、この信号y(k)から第一のエコー推定値が引かれ、第一のエラー信号u(k)が生成される。この説明の目的においては、送信路112は、マイクロホンから出力端子に到る経路であると想定される。第一のエラー信号u(k)は、適応フィルタ107に供給され、ここでこれは受信信号x(k)と共に、周知の方法にて第一のエコー推定値を合成するために使用される。第一のエラー信号u(k)は、エコー相殺器106の代数結合ユニット110の一つの入力に供給される。エコー相殺器106の適応トランスバーサルフィルタ108は、エコーパスインパルス応答の時間的に変動する成分の第二のエコー推定値を合成する。これを達成するために、適応トランスバーサルフィルタ108は、高速に適応できるように構成される。加えて、この実施例においては、適応フィルタ108は、適応フィルタ107と比較して、遥かに少数のタップ係数を持つために、遅延要素103が挿入され、この遅延値が、適応フィルタ108のタップ係数の位置が、エコーパスインパルス応答との時間的な関係において、適応フィルタ107のインパルス応答の最も時間変動の大きなエコーパス応答成分が位置するタップ係数を中心として整合されるように選択されることに注意する。典型的には、適応フィルタ108の中央タップ係数が、適応フィルタ107の最も大きな時間変動成分がそこで発生することが知られているタップ係数を中心として整合される。ただし、適応フィルタ108のタップ係数のセンタリングにおいて、これら係数の幾つかが、そのエコーパスインパルス応答上の零(0)時間において、適応フィルタ107のエコーパス係数の零(0)時間以下となるように整合することは無意味であり、このような場合は、適応フィルタ108の第一のタップ係数が、適応フィルタ107の第一のタップ係数と整合されることに注意する。さらに、幾つかのアプリケーションにおいては、固定遅延要素103の遅延期間が零(0)に選択される。加えて、幾つかのアプリケーションにおいては、適応トランスバーサルフィルタ108のタップ係数が中央タップ係数に対してどちらかの方向に傾斜させることが要求される。 【0015】適応トランスバーサルフィルタ108によって合成された第二のエコー推定値が、代数結合ユニット110によって第一のエラー信号u(k)から代数的に引かれ、第二のエラー信号e(k)が得られる。第二のエラー信号e(k)は、遠隔受信器に送信されるべき要望される出力として、出力端子に供給される。第二のエラー信号e(k)は、また、適応トランスバーサルフィルタ108に供給され、ここでこれは、周知の方法にて遅延された入力信号x(k)と共に第二のエコー推定値を適応させるために使用される。 【0016】図2は本発明の一つの実施例において使用される第一と第二のエコー相殺器を含む音響システムの詳細を略ブロック図形式にて示すが、これは、第二のエコー相殺器と直列に接続された動的に調節が可能な遅延要素を含む。図2に示される実施例の要素のうち、構造と機能の点で図1に示される要素と同一の要素には、同一の参照番号が与えられ、ここでは詳細に説明されない。 【0017】具体的には、調節可能な遅延要素201が示されるが、これは、受信路102とエコー相殺器106との間に直列に接続され、さらにエコー相殺器内において適応トランスバーサルフィルタ108に接続される。さらに、遅延調節信号発生器202が示されるが、これには、エコー相殺器104の適応トランスバーサルフィルタ107からのタップ係数値、つまり、タップ係数C0 、C1 からCN が供給される。遅延調節信号発生器202は、タップ係数C0 、C1 からCN を使用して、遅延調節値ΔDを生成するが、これは、調節可能遅延要素201に供給され、適応フィルタ108のタップ係数の位置を、適応フィルタ107のタップ係数に対して、エコーパスインパルス応答の時間的により速く変動する成分を相殺する目的で、調節するために使用される。幾つかのアプリケーションにおいては、第二の適応フィルタ108のタップ係数を、(通常は整数サンプルカウントである)遅延調節値ΔDが変動したとき、シフトすることが要求される。こうして、遅延調節値ΔDがある値から別の値に変動したとき、好ましくは、第二の適応フィルタ108のタップ係数が、第一の適応フィルタ107のタップ係数との相対的な整合を維持し、遅延調節値ΔDの変動を補償するためにシフトされる。図3−5に遅延調節発生器202の幾つかの実施例が示されるが、以下にこれらについて説明される。 【0018】図3には、図2の実施例内で使用することができる遅延調節信号発生器202の一つの実施例の詳細が略ブロック図形式にて示される。より具体的には、規模ユニット301−0から301−Nが示されるが、これに、適応トランスバーサルフィルタ107(図2)からのタップ係数C0 、C1 −CN が、それらの対応する規模を得るために供給される。最大値セレクタ302は、最も大きな規模を持つタップ係数を選択する。その後、代数結合ユニット303によって、最も大きな規模値を持つ選択されたタップ係数から所定の値、この実施例においてはM/2を引くことにより、適応フィルタ108のタップ係数を適応トランスバーサルフィルタ107の最も大きな規模を持つタップ係数を中心として整合するための遅延調節値ΔDが生成される。この遅延調節値ΔDが調節可能遅延要素201に供給され、ここで、これは、エコー相殺器106と直列に接続された遅延要素を調節するために使用される。この遅延要素の調節の結果として、適応トランスバーサルフィルタ108のタップ係数を、適応トランスバーサルフィルタ107の最も大きな規模を持つタップ係数を中心として整合するための要求される動作が達成される。典型的には、適応フィルタ108の中央タップ係数は、適応フィルタ107の最も大きな時間変動がそこで発生するタップ係数上にセンタリングされる。ただし、適応フィルタ108のタップ係数を、これらが、エコーパスインパルス応答上の零(0)時間において適応フィルタ107のエコーパス係数の零(0)時間以下となるように整合することは無意味であり、この場合は、適応フィルタ108の第一のタップ係数は、適応フィルタ107の第一のタップ係数と整合されることに注意する。加えて、幾つかのアプリケーションにおいては、適応トランスバーサルフィルタ108のタップ係数を中央タップ係数に対してどちらかの方向に傾斜することが要求される。 【0019】図4は図2の実施例において使用することができる遅延調節信号発生器202のもう一つの実施例の詳細を略ブロック図の形式にて示す。より具体的には、規模ユニット401−0から401−Nが示されるが、これに、適応トランスバーサルフィルタ107(図2)からのタップ係数C0 、C1 からCN までがそれらの対応する規模を得るために供給される。タップ係数C0 、C1 からCN までの規模の長期平均は、低域フィルタ(LPF)402−0、402−1から402−Nまでおよび、それぞれ、関連する代数結合ユニット403−0、403−1から403−Nまでを介して得られる。図示されるように、各LPF402からの出力が、代数結合ユニット403を介して関連するタップ係数に対するユニット401からの対応する規模値の現在の値から代数的に引かれ、差値ΔC0 、ΔC1 からΔCN までが得られる。次に、差値ΔC0 、ΔC1 からΔCN までの規模が、規模ユニット404−0、404−1から404−Nまでを介して得られる。最大値セレクタ405は、ΔC0 、ΔC1 からΔCN までの中の最も大きな差規模値を持つ長期平均タップ係数を選択する。その後、代数結合ユニット306によって、最も大きな規模値を持つ選択されたタップ係数から所定の値、この実施例においてはM/2を引くことによって、適応フィルタ108(図2)のタップ係数を適応トランスバーサルフィルタ107の最も大きな差規模を持つタップ係数を中心に整合するための遅延調節値ΔDが生成される。この遅延調節値ΔDが、調節可能遅延要素201(図2)に供給され、ここで、これが、エコー相殺器106と直列に接続された遅延要素を調節するために使用され、この調節の結果として、要求される適応トランスバーサルフィルタ108のタップ係数を適応トランスバーサルフィルタ107の最も大きな差規模を持つタップ係数を中心として整合する動作が達成される。典型的には、適応フィルタ108の中央タップ係数は、適応フィルタ107の最も大きな時間変動がそこで発生するタップ係数上に整合される。ただし、適応フィルタ108のタップ係数を、これらが、エコーパスインパルス応答上の零(0)時間において適応フィルタ107のエコーパス係数の零(0)時間以下となるように整合することは無意味であり、この場合は、適応フィルタ108の第一のタップ係数が、適応フィルタ107の第一のタップ係数と整合されることに注意する。加えて、幾つかのアプリケーションにおいては、適応トランスバーサルフィルタ108のタップ係数を中央タップ係数に対してどちらかの方向に傾斜することが要求される。 【0020】図5は、図2の実施例において使用することができる遅延調節信号発生器202のさらにもう一つの実施例の詳細を略ブロック図の形式にて示す。より具体的には、遅延調節信号発生器202のこの実施例においては、適応フィルタ107(図2)からのタップ係数が所定のグループに配列される。この実施例においては、各グループは、同数のタップ係数を持つが、ただし、幾つかのアプリケーションにおいては、同数でないこともあり得る。こうして、示されるように、第一のグループは、タップ係数C0 、C1 からCL-1 までを含み、第二のグループは、タップ係数CL 、CL+1 からC2L-1までを含み、最後のグループは、タップ係数CXL、CXL+1 から CXL+l-1までを含む。さらに、規模ユニット501−0、501−1から501−L−1までが示されるが、これに、それぞれ、適応トランスバーサルフィルタ107(図2)からのタップ係数C0 、C1 からCl-1 までがそれらの対応する規模を得るために供給される。規模ユニット501−L、501−L+1から501−2L−1までには、それぞれ、タップ係数Cl 、Cl+1 からC2l-1までがそれらの対応する規模を得るために供給される。最後に、規模ユニット501−XL、501−XL+1から501−XL+L−1までには、それぞれ、タップ係数CXL,CXL+1からCXL+L-1までがそれらの対応する規模を得るために供給される。各グループに対して規模ユニット501からの係数規模値出力は、対応する代数結合ユニットに供給される。つまり、規模ユニット501−0から501−L−1までからの出力は、総和ユニット502−B1に供給され、規模ユニット501−Lから501−2L−1までからの出力は、総和ユニット502−B2に供給され、最後に、規模ユニット501−XLから501−XL+L−1までからの出力は、総和ユニット502−BXに供給される。第一のグループと最後のグループとの間の中間グループからの係数規模出力は、対応する総和ユニット502に供給されることに注意する。各総和ユニット502からのタップ係数の総和された規模の長期平均値が、総和ユニット502−B1、502−B2から502−BXまでからの総和された値を、それぞれ、LPF503−B1、503−B2から503−BXまでに、および、それぞれ、代数結合ユニット504−B1、504−B2から504−BXまでに供給することによって得られる。つまり、代数結合ユニットの所で、これらが、それぞれ、LPF503−B1、503−B2から503−BXまでからの出力から引かれ、差値ΔCB1、ΔCB2からΔCBXまでが得られる。次に、差値ΔCB1、ΔCB2からΔCBXまでの規模が規模ユニット505−B1、505−B2から505−BXまでを介して得られる。最大値セレクタ506は、ΔCB1、ΔCB2からΔCBXまでの最も大きな長期平均タップ係数差規模値を選択する。次に、掛算ユニット507が選択された差規模値に、各グループ内のタップ係数の数、つまり、Lを掛ける。その後、代数結合ユニット508によって、掛算ユニット507からの出力から所定の値、この実施例においてはM/2を引くことによって、適応フィルタ(図2)のタップ係数を適応トランスバーサルフィルタ107の最も大きな差規模値を持つタップ係数を中心としてセンタリングするための遅延調節値ΔDが生成される。この遅延調節値ΔDが調節可能遅延要素201(図2)に供給され、ここで、これは、エコー相殺器106と直列に接続された遅延要素を調節するために使用され、この調節の結果として、要求される適応トランスバーサルフィルタ108のタップ係数を適応トランスバーサルフィルタ107の最も大きな差規模値を持つタップ係数を中心にセンタリングする動作が達成される。典型的には、適応フィルタ108の中央タップ係数は、適応フィルタ107の最も大きな時間変動がそこで発生するタップ係数上に整合される。ただし、適応フィルタ108のタップ係数を、これらが、エコーパスインパルス応答上の零(0)時間において適応フィルタ107のエコーパス係数の零(0)時間以下となるように整合することは無意味であり、この場合は、適応フィルタ108の第一のタップ係数が、適応フィルタ107の第一のタップ係数と整合されることに注意する。加えて、幾つかのアプリケーションにおいては、適応トランスバーサルフィルタ108のタップ係数を中央タップ係数に対してどちらかの方向に傾斜することが要求される。 【0021】第二の適応フィルタのタップ係数を第一の適応フィルタのタップ係数との関係で整合するため、および遅延調節信号ΔDを生成するための幾つかの構成について説明されたが、当業者においては、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、他の構成も使用できることは明白である。例えば、いわゆる重心技法を第二の適応フィルタのタップ係数を第一の適応フィルタのタップ係数に対して整合するために使用することも可能である。また、遅延調節信号ΔDを生成するために使用される第一の適応フィルタのタップ係数のグループは、グループごとに異なる数のタップ係数を持つこともできる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】390035493 【氏名又は名称】エイ・ティ・アンド・ティ・コーポレーション 【氏名又は名称原語表記】AT&T CORP.
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| 【出願日】 |
平成8年(1996)5月31日 |
| 【代理人】 |
【弁理士】 【氏名又は名称】岡部 正夫 (外2名)
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| 【公開番号】 |
特開平8−331022 |
| 【公開日】 |
平成8年(1996)12月13日 |
| 【出願番号】 |
特願平8−137335 |
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