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【発明の名称】 エコー抑制器コントローラ装置、ならびにハイブリッドエコーおよびネットワークエコーを減少する方法
【発明者】 【氏名】ハーバート・エム・ケイ・チェン

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 4線式電話ループからの送信信号を2線式電話ループへ送り、前記4線式のループへの受信信号を前記2線式のループから受取るための手段と、前記受信信号および前記送信信号との間の相関のレベルを測定するための手段と、前記相関のレベルを測定する手段によって測定された前記相関のレベルに基づいて前記受信信号の一部を取除き、その結果として、取除かれた受信信号を出力するための手段と、前記相関のレベルを測定する手段によって測定された前記相関のレベルに基づいて、前記取除く手段をイネーブルおよびディスエーブルするための手段と、前記送信信号および前記取除かれた受信信号の両方が予め定められたしきい値を同時に超えると、前記取除かれた受信信号を抑制するための手段とを含む、基地局ユニットにおけるエコー抑制器コントローラ装置。
【請求項2】 前記取除かれた受信信号を抑制するための手段をイネーブルおよびディスエーブルするための手段をさらに含み、前記取除かれた受信信号を抑制するための手段をイネーブルすることと、前記受信信号の一部を取除くための手段のイネーブルとは互いに排他的である、請求項1に記載のエコー抑制器コントローラ装置。
【請求項3】 前記受信信号の一部を取除くための手段は有限インパルス応答ディジタルフィルタである、請求項1に記載のエコー抑制器コントローラ装置。
【請求項4】 前記相関のレベルを測定するための手段は、前記取除かれた信号の符号と前記送信信号の符号とを決定するための手段と、前記取除かれた信号の前記符号を前記送信信号の前記符号によって乗算し、その結果として相関のレベルを出力するための乗算器とを含む、請求項1に記載のエコー抑制器コントローラ装置。
【請求項5】 2線式ループを4線式ループに接続するハイブリッドを含み、前記ハイブリッドは近端源から第1の送信信号を受取るための第1のポートと、前記第1の送信信号を前記2線式ループへ出力し、遠端源から第2の送信信号を受取るための第2のポートと、前記第2の送信信号を前記2線式ループへ出力するための第3のポートを有し、前記2線式ループおよび前記4線式ループの間のインピーダンス不整合が、前記第3のポートを介して、前記近端源へ前記第1の送信信号を反射させ、さらに、加算入力と、前記ハイブリッドの前記第3のポートから前記出力を受取るために接続された減算入力と、残留誤差信号を出力するための出力ポートとを有する加算器/減算器と、前記第1の送信信号を受取るように接続された第1の入力ポートと、前記残留誤差信号を受取るように接続された第2の入力ポートと、イネーブルポートと、前記第1の送信信号と前記残留誤差信号との間で判断された相関に基づいて、平衡信号を出力するための出力ポートとを有する適応平衡フィルタと、前記第1の送信信号を受取るように接続された第1の入力ポートと、前記残留誤差信号を受取るように接続された第2の入力ポートとを有する非相関化制御装置とを含み、前記非相関化制御装置によって定められるように、前記第1の送信信号と前記残留誤差信号との相関のレベルに基づいて、前記適応平衡フィルタによる適応化を制御するために前記適応平衡フィルタの前記イネーブルポートへ第1の制御信号を出力し、前記第1の制御信号とは逆の極性で第2の制御信号を出力し、さらに、前記第1の送信信号と前記残留誤差信号とを受取るようにそれぞれ接続された第1および第2の音声レベル検出器を含み、前記第1および第2の音声レベル検出器は、第1および第2の音声検出レベルをそれぞれ出力し、さらに、前記第1および第2の音声レベル検出器にそれぞれ接続された第1および第2の入力を有するエコー抑制器コントローラを含み、前記エコー抑制器コントローラは、前記第2の制御信号を受取るためのイネーブル入力を有し、前記第1および第2の音声レベル検出器からそれぞれ受取られた、前記第1および第2の音声検出レベルに従って、エコー抑制制御信号を出力し、さらに、前記エコー抑制制御信号を受取るための第1の入力ポートと、前記残留誤差信号を受取るための第2の入力ポートと、前記エコー抑制器コントローラから受取られた前記エコー抑制制御信号から決定されるような減衰レベルに従って、減衰された残留誤差信号を出力するための出力ポートとを有するエコー抑制器とを含む、基地局ユニットにおけるエコー抑制器コントローラ装置。
【請求項6】 前記適応平衡フィルタは有限インパルス応答フィルタである、請求項5に記載のエコー抑制器コントローラ装置。
【請求項7】 前記相関のレベルを測定するための手段は、前記取除かれた信号の符号と前記送信信号の符号とを決定するための手段と、前記取除かれた信号の前記符号を前記送信信号の前記符号によって乗算し、その結果として相関のレベルを出力するための乗算器とを含む、請求項5に記載のエコー抑制器コントローラ装置。
【請求項8】 前記エコー抑制器コントローラは、一連の指令を前記エコー抑制器へ送って、前記エコー抑制器の前記減衰レベルを予め定められた期間にわたって一定の割合で増加するための手段を含む、請求項5に記載のエコー抑制器コントローラ装置。
【請求項9】 前記エコー抑制器コントローラがディスエーブルされた状態にあるときにのみ、前記非相関化制御装置は前記第1の制御信号を送って前記適応平衡フィルタをイネーブルし、前記適応平衡フィルタがディスエーブルされた状態にあるときにのみ、前記非相関化制御装置は前記第2の制御信号を送って前記エコー抑圧制御装置をイネーブルする、請求項5に記載のエコー抑制器コントローラ装置。
【請求項10】 前記エコー抑制器は0dBから9dBの減衰範囲を有する、請求項5に記載のエコー抑制器コントローラ装置。
【請求項11】 前記非相関化制御装置はタップ遅延線フィルタを含む、請求項5に記載のエコー抑制器コントローラ装置。
【請求項12】 前記タップ遅延線フィルタは32個のタップを含む、請求項11に記載のエコー抑制器コントローラ装置。
【請求項13】 前記エコー抑制器コントローラは、前記第1および第2の送信信号が同時に受取られ、かつ前記第1の送信信号が前記第2の送信信号よりも大きいことを前記エコー抑制器コントローラが判断するときにのみ、エコー抑制制御信号を前記エコー抑制器へ順次送るための手段を含む、請求項5に記載のエコー抑制器コントローラ装置。
【請求項14】 前記エコー抑制器コントローラは、前記エコー抑制制御信号を前記エコー抑制器へ順次送って、前記エコー抑制器の前記減衰レベルを予め定められた期間にわたって一定の割合で変化させるための手段を含む、請求項5に記載のエコー抑制器コントローラ装置。
【請求項15】 2線式ループを4線式ループに接続するための接続手段を含み、前記接続手段は、前記4線式ループから第1の送信信号を受取るための第1のポートと、前記第1の送信信号を前記2線式ループへ出力し、前記2線式ループから第2の送信信号を受取るための第2のポートと、前記第2の送信信号を含む出力信号を前記4線式ループへ出力するための第3のポートとを有し、前記2線式ループおよび前記4線式ループの間のインピーダンス不整合が前記第1の送信信号のうちの一部を前記第3のポートを介して出力させ、かつ前記出力信号に含めさせ、さらに、前記第1の送信信号を受取るように接続された第1の入力ポートと、誤差信号を受取るように接続された第2の入力ポートと、前記第1の送信信号と前記誤差信号との間の相関に基づいて、平衡信号を出力するための出力ポートとを有する適応平衡フィルタと、前記平衡信号を前記出力信号へ加算し、その結果として前記誤差信号を出力するための手段と、前記第1の送信信号を受取るように接続された第1の入力ポートと、前記出力信号を受取るように接続された第2の入力ポートとを有し、前記第1の送信信号と前記誤差信号との相関のレベルに基づいて第1の制御信号を前記適応平衡フィルタへ出力して、前記適応平衡フィルタによって適応化を制御する非相関化制御装置と、前記第1の送信信号と前記残留誤差信号とを受取るようにそれぞれ接続された第1および第2の音声レベル検出器とを含み、前記第1および第2の音声レベル検出器は、第1および第2の音声検出レベルをそれぞれ出力し、さらに、前記第1および第2の音声レベル検出器にそれぞれ接続された第1および第2の入力を有するエコー抑制器コントローラを含み、前記エコー抑制器コントローラは、前記第1の制御信号を受取るためのイネーブル入力を有し、前記第1および第2の音声レベル検出器からそれぞれ受取られた、前記第1および第2の音声検出レベルに従って、エコー抑制制御信号を出力し、さらに、前記エコー抑制制御信号を受取るための第1の入力ポートと、前記残留誤差信号を受取るための第2の入力ポートと、前記エコー抑制器コントローラから受取られた前記エコー抑制制御信号から決定されるような減衰レベルに従って減衰された残留誤差信号を出力する出力ポートとを有するエコー抑制器を含む、基地局ユニットにおけるエコー抑制器コントローラ装置。
【請求項16】 前記適応平衡フィルタは有限インパルス応答フィルタを含む、請求項15に記載のエコー抑制器コントローラ装置。
【請求項17】 前記非相関化制御装置は、前記取除かれた信号の符号と前記送信信号の符号とを決定するための手段と、前記取除かれた信号の前記符号を前記送信信号の前記符号によって乗算し、その結果として相関のレベルを出力するための乗算器とを含む、請求項15に記載のエコー抑制器コントローラ装置。
【請求項18】 前記エコー抑制器コントローラは、前記エコー抑制制御信号を前記エコー抑制器へ順次送って、前記エコー抑制器の前記減衰レベルを予め定められた期間にわたって一定の割合で変化するための手段を含む、請求項15に記載のエコー抑制器コントローラ装置。
【請求項19】 前記制御信号は一度に第1のレベルおよび第2のレベルのうちの1つを有することができ、前記非相関化制御装置は前記第1のレベルを有する前記制御信号を前記適応平衡フィルタおよび前記エコー抑制器コントローラへ同時に送り、これによって、前記適応平衡フィルタをイネーブルし、前記エコー抑制器コントローラをディスエーブルし、前記非相関化制御装置は前記第2のレベルを有する前記制御信号を前記適応平衡フィルタおよび前記エコー抑制器コントローラへ同時に送り、これによって、前記適応平衡フィルタをディスエーブルし、前記エコー抑制器コントローラをイネーブルする、請求項15に記載のエコー抑制器コントローラ装置。
【請求項20】 前記エコー抑制器は0dBから9dBの減衰範囲を有する、請求項15に記載のエコー抑制器コントローラ装置。
【請求項21】 前記非相関化制御装置はタップ遅延線フィルタを含む、請求項15に記載のエコー抑制器コントローラ装置。
【請求項22】 前記第1および第2の送信信号が同時に受取られ、かつ前記第1の送信信号が前記第2の送信信号よりも大きいと前記エコー抑制器コントローラが判断するときにのみ、前記エコー抑制器コントローラは前記エコー抑制制御信号を前記エコー抑制器へ出力する、請求項15に記載のエコー抑制器コントローラ装置。
【請求項23】 前記エコー抑制器コントローラは、一連の指令を前記エコー抑制器へ送って、前記エコー抑制器の前記減衰レベルを予め定められた期間にわたって一定の割合で増加するための手段を含む、請求項15に記載のエコー抑制器コントローラ装置。
【請求項24】 基地局においてハイブリッドエコーおよびネットワークエコーを減少する方法であって、a) 4線式ネットワークから2線式ネットワークへ送られる近端信号を検出するステップと、b) 前記2線式ネットワークから前記4線式ネットワークへ送られる受信信号を検出するステップと、c) 前記近端信号および前記受信信号の間の相関レベルを検出するステップと、d) 前記相関レベルが予め定められたしきい値よりも上であるならば、前記受信信号の一部をキャンセルするステップと、e) 前記相関レベルが前記予め定められたしきい値よりも低く、かつ前記受信信号が前記近端信号よりも低いレベルにあるならば、前記受信信号を減衰するステップとを含む、方法。
【請求項25】 ステップd)においてキャンセルされた前記受信信号の前記一部は、前記近端信号の反射された部分に対応する、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の分野】この発明は、ディジタルコードレス電話システムにおいてエコーを制御することに関する。具体的には、この発明は、適応エコーキャンセラを適応エコー抑制器とともに用いて、持続の短いエコーと持続の長いエコーとの両方を除去することに関する。
【0002】
【関連技術の説明】この明細書中の発明と、引用により援用される米国特許第5,014,263号、第5,134,658号、および第5,075,687号に開示され、かつクレームに記載された発明とは一般に、ディジタル技術を用いて、ノイズをキャンセルし、エコーを抑制することに関する。
【0003】図1はディジタル式ヨーロッパコードレス電話(DECT)システムの基本的な接続図を示す。DECT基地局ユニット30の一方端は、2線式電話ループ45を経て中央局または交換局85に接続される。中央局または交換局85はハイブリッドHEX80を含む。DECT基地局ユニット30の他方端は4線式電話ループ(図示せず)に接続され、これは無線によってDECT移動ユニット送受器から信号を受取る。
【0004】DECT基地局ユニット30の重要な構成要素はハイブリッド(H)10である。ハイブリッドH10は、2線式から4線式への変換、または4線式から2線式への変換のためのインタフェースとして機能する装置である。ハイブリッドH10は、2線式システムおよび4線式システムの間で信号を送受信するための手段として作用する。
【0005】DECTシステムを用いて通話する間には、ハイブリッドエコーおよびネットワークエコーという、2つの主要なタイプのエコーがある。第3のタイプのエコー、すなわち音響エコーもあり、これは電話の送話口および受話口の両方に入る信号のために起こる。しかしながら、このエコーは、典型的には他の2つのタイプのエコーほど大して問題ではない。
【0006】ハイブリッドエコーは、DECT基地局のハイブリッドH10でのインピーダンス不整合を原因とするエコーである。なぜなら、ハイブリッドH10は2線式から4線式への変換、または4線式から2線式への変換が行なわれる場所だからである。再び図1を参照すると、近端源(DECT移動ユニット5)からの送信信号X20は、4線式ループから、ハイブリッドH10を介して、2線式ループ45に送られ、最終的に遠端源FES50に達する。近端源は、典型的にはDECT基地局ユニット30に相対的に近い源であり、遠端源は、典型的にはDECT基地局ユニット30から遠く離れた源である。
【0007】DECT基地局のハイブリッドH10でのインピーダンス不整合は、近端送信信号X20の一部を近端源5へ反射させて戻す。これは、反射された信号XREFL40として図1に示される。したがって、近端送信信号X20の全体が遠端源50に達するわけではない。より重要なことには、反射して戻った信号XREFL40は、近端源5でノイズ問題と他の不所望な干渉問題とを引き起こす。これに対応して、ハイブリッドエコーを減らし、および/または除去する技術が確立されている。ハイブリッドエコーについての最悪の事態は、2線式ループ45がハイブリッドH10に接続されない開ループ状況である。開ループの場合、近端送信信号X20の全体が近端源5へ反射して戻るということが起こる。
【0008】ハイブリッドエコーを除去する従来の方法は、適応エコーキャンセラの使用を含む。適応エコーキャンセラの1つのタイプは、適応、有限インパルス応答(FIR)ディジタルフィルタ、または平衡フィルタB90であり、ハイブリッドエコーの遅延パターンに一致したインパルス応答を有する。
【0009】適応平衡フィルタB90はその係数を連続的に調節して、その伝達機能を最適化する。適応させる特徴がなければ、ユーザは、最も一般的に見られるハイブリッドエコーの特性に合わせてフィルタ係数を計算し、そして、望ましい特定の接続に適した、最も近い組の係数を選択しなければならない。選択された組は、一般にほとんどの状況の下では最良のエコーキャンセルをもたらさず、2線式および/または4線式ループのインピーダンスが時間の経過とともに変化するならば、一般にこれは効果的でない。
【0010】これに反して、適応平衡フィルタB90では、ユーザは計算を行なう必要が少しもない。結果として、ユーザが得るのは、変化する回線および/または通話特性に対応できる、連続的に更新されるエコーキャンセル機能である。適応平衡フィルタB90は近端送信信号X20および残留誤差信号E190の両方を受取り、これら2つの信号に基づいてフィルタ特性を調節して、残留誤差信号E190の近端送信信号成分を除去する。
【0011】ハイブリッドエコーは、典型的に持続時間が0ミリ秒から4ミリ秒のオーダである。エコーがこの長さであると、適応平衡フィルタはエコーをキャンセルするのに極めて良く働いて、ノイズのない送信および受信を近端源5および遠端源50の間でもたらす。
【0012】ネットワークエコーと称される、別のタイプのエコーは二次エコーであり、約4ミリ秒から200ミリ秒またはそれ以上の持続時間を有する。ネットワークエコーは長い遅延エコーなので、多数のフィルタタップを必要とする、適応平衡フィルタを用いるような適応エコーキャンセル技術では、ネットワークエコーをキャンセルしようと試みる場合は経済的でない。
【0013】遠端ハイブリッドHFE60でのインピーダンス不整合の結果であるネットワークエコー経路が、図1に示される。遠端ハイブリッドHFE60に付帯的な近端送信信号XNET 70の一部が、DECT基地局ユニット30へ反射して戻り、この反射された信号は信号XNETREFL 70として図1に示される。ネットワークエコーが長い遅延時間を有するのは、DECT基地局ユニット30と、最終的にはDECT移動送受器5とへ戻るために、エコーが進行しなければならないさまざまな送信媒体のためである。
【0014】適応FIRフィルタは理論上、100ミリ秒以長のネットワークエコーを除去できるが、このために、(ほぼ8kHzの典型的なサンプリング速度を仮定して)少なくとも約800個のタップがFIRフィルタにおいて必要とされるであろう。これによって、このような多タップFIRフィルタを有するDECT基地局ユニット30では、多大な費用および複雑さが生じる。
【0015】上述のように、ネットワークエコーが起こるのは、インピーダンス不整合のために遠端ハイブリッドHFE60で反射されて戻る近端信号XNETREFL 70が、DECT基地局ユニット30に達するまでに進行しなければならない距離の結果としてである。たとえば、DECT基地局ユニット30が人工衛星(図示せず)を媒体として遠端のユーザ50と通信するならば、地表の遠端ハイブリッドHFE60から、地表よりほぼ22,300マイル上方に位置する静止衛星へと進行し、さらに地表のDECT基地局ユニット30へ戻らなくてはならない反射された信号XNETREFL 70から生じる遅延が、近端および遠端の両方の通話者にとって非常に不快であり得る。さらに、このエンドツーエンド信号によって引き起こされるどのエコーも、近端のユーザおよび遠端のユーザの間の通信を厄介に、かつノイズの混じったものにする。
【0016】エコーキャンセル技術はネットワークエコーを除去するのにはあまり魅力的ではないので、エコー抑制技術がネットワークエコーの影響を減少するために用いられている。従来のエコー抑制器は米国特許第5,075,687号に詳細に記述されている。
【0017】従来のDECT基地局ユニットは、持続の短いハイブリッドエコーと持続の長いネットワークエコーとの両方を適切に扱うことができない。適応ディジタル平衡フィルタは持続の短いエコーをキャンセルするのにうまく働くが、これが持続の長いエコーをキャンセルするように設計されるのであれば、極めて複雑かつ高価になる。同様に、エコー抑制器は持続の長いエコーを抑制するのにうまく働くが、持続の短いエコーを取消すのにはあまりうまく作用しない。
【0018】
【発明の概要】したがって、この発明の目的は、ハイブリッドエコーおよびネットワークエコーの両方を効果的かつ経済的に減らすことのできる装置を提供することである。
【0019】この目的に従って、この発明により、DECTシステムのための電話基地局装置が提供される。この発明に従う装置は、2線式電話ループを4線式電話ループに接続するためのハイブリッドを含む。ハイブリッドは、4線式ループから近端送信信号を受取る第1のポートと、2線式ループから遠端送信信号を受取る第2のポートと、出力信号を4線式ループに出力する第3のポートとを有する。出力信号は、第1の量の遠端送信信号と第2の量の近端送信信号とを含む。第1および第2の量は、ハイブリッドでの2線式ループおよび4線式ループとの間のインピーダンス不整合に基づいて決定される。
【0020】この発明に従う装置は、近端送信信号を受取る第1の入力ポートと、第2の入力ポートと、ハイブリッドエコーキャンセル信号を出力する出力ポートとを備えた適応平衡フィルタをさらに含む。この発明に従う装置はまた、適応平衡フィルタの出力ポートに接続された加算ポートと、ハイブリッドの第3のポートに接続された減算ポートと、ハイブリッドエコーキャンセル信号から出力信号を引いた値に従った残留誤差信号を出力する出力ポートとを有する加算器を含む。残留誤差信号は適応平衡フィルタの第2の入力ポートに接続され、適応平衡フィルタはその内部係数を調節して、近端送信信号の反射された量を含む部分の出力信号を除去する。
【0021】この発明に従う装置は、適応ディジタルフィルタと並列に接続された非相関化制御装置をさらに含む。非相関化制御装置は、近端送信信号を受取る第1の入力ポートと、残留誤差信号を受取るように接続された第2の入力ポートと、近端送信信号および残留誤差信号の間の相関の量に従って、イネーブル/ディスエーブル信号を適応ディジタルフィルタへ出力する出力ポートとを有する。
【0022】この発明に従う装置はまた、近端送信信号および残留誤差信号を受取るようにそれぞれ接続され、第1および第2の検出結果をそれぞれ出力する第1および第2の音声レベル検出器を含む。この発明に従う装置はさらに、第1および第2の検出結果と、インバータを介して、反転された信号としてのイネーブル/ディスエーブル信号とを受取るように接続されたエコー抑制器コントローラを含む。この発明に従う装置はまた、加算器の出力ポートに接続され、かつエコー抑制器コントローラから制御信号を受取るように接続されたエコー抑制器を含み、ここで、エコー抑制器は、制御信号に従って、加算器から受取られる残留誤差信号に減衰量を加える。
【0023】
【好ましい実施例の詳細な説明】この発明は前掲の特許請求の範囲に詳細に記述される。この発明とそのさらなる目的および利点とは、添付の図面と関連して以下の説明を参照することによって最も良く理解されるであろう。
【0024】この発明に従うDECT基地局ユニット30が図2に示される。DECT基地局ユニット30はハイブリッド(H)10、平衡フィルタ(B)90、加算器(S)100、非相関化制御装置(DCR)110、第1の音声レベル検出器(VLD1)120および第2の音声レベル検出器(VLD2)130、エコー抑制器コントローラ(ESC)140、ならびにエコー抑制器(ES)150を含む。これらの装置と、これらの装置との送信、受信信号とに基づいて、ハイブリッドエコーおよびネットワークエコーの両方がDECT基地局ユニット30で効果的に制御できる。
【0025】ハイブリッドH10は、遠端源50に接続する2線式ループ45と、無線による信号の送信および受信によって近端源5に接続する4線式ループ180、182との間をインタフェースする構成要素である。
【0026】ハイブリッドH10はそのポートのうちの1つへ、4線式ループの回線182から近端送信信号X20を受取り、2線式ループ45への別のポートで、その信号を遠端源50へ出力する。2線式ループおよび4線式ループの間のインピーダンス不整合のために、近端送信信号X20の一部が近端源5へ反射して戻る。これは、反射された信号XREFL40として図2に示される。遠端受信信号XFE160がハイブリッドH10で受取られ、ハイブリッドH10の1つのポートを介して、4線式ループの回線180を通る信号Y198として近端源5へ送られる。これによって、DECT基地局ユニット30は、近端源5および遠端源50の間の双方向の通信を認める。
【0027】適応平衡フィルタB90は、近端送信信号X20を受取るように、4線式ループの1つの回線182に接続され、残留誤差信号E190を受取るように、4線式ループの別の回線180に接続される。
【0028】この発明に従って用いることができる適応平衡フィルタB90は、有限インパルス応答(FIR)ディジタルフィルタとして図3に示される。近端送信信号X20および残留誤差信号E190に基づいて、適応平衡フィルタB90はそのタップ係数、h0 ,h1 ,・・・,hn を以下の等式に従って調節する。
【0029】
kj=hk-1j+Δ*符号|Ek |*符号|Xk-j |ここで、hkj、j=0,・・・,nは適応平衡フィルタB90のn個のタップの重みに対応し、Δ310は適応化ステップの大きさ(たとえば、Δ=0.00025)に対応し、Ek は残留誤差信号E190のk番目のサンプルに対応し、Xk-j は近端送信信号X20のk−j番目のサンプルに対応し、符号|Z|は値Zの符号に対応し、すなわち、符号|5|=+1、符号|−3|=−1である。適応平衡フィルタB90は「符号」アルゴリズムを用いてそのタップの重みを調節する。これは当業者には周知の手順である。この発明の教示内にある限り、各タップでX20のサンプルとE190のサンプルとを従来通り振幅乗算するような、適応を行なう他の方法が用いられ得る。
【0030】近端送信信号X20は、図3における適応平衡フィルタB90のn個のタップのうちの最も左のタップ320で受取られる。信号X20はXk として示される。用語Xk は、近端送信信号X20のk番目のサンプルを意味する。n個のタップの各々が、送信信号X20のそれぞれ異なる瞬間のサンプルを保持する。Xkと称される、X20の現在のサンプル(この場合、X20のk番目のサンプル)が最も左のタップ320へ入力される。次のサンプル瞬間、すなわち(k+1)番目のサンプル瞬間に、サンプルXk は適応平衡フィルタB90の最も左のタップ320のすぐ右にあるタップ330へ送られ、サンプルXk+1 が最も左のタップ320へ送られる。この手順は、n個のタップすべてについて「バケツリレー」式に行なわれる。結果として、(X20のn個のサンプルがフィルタB90のn個のタップへ読込まれた後で)適応平衡フィルタB90は、そのn個のタップに送信信号X20の短期「履歴」を保持する。制限ではなく一例として、この発明に従って用いられるように図2に示された適応平衡フィルタB90は、近端送信信号X20の最新の32個のサンプル、Xk ,Xk-1 ,Xk-2 ,・・・,Xk-31をそれぞれ保持する、32個のタップを有する。
【0031】適応平衡フィルタB90は、それぞれの32個のタップの各々で、X20の最新の32個のサンプルの各符号を残留誤差信号E190の符号によって乗算する。次に、各タップでの符号乗算の結果は、適応化ステップの大きさに対応するΔ310によって乗算される。次に、この結果は、z-1遅延素子340および加算器350によって示されるように、最新のタップの重みに加算される。次に、32個のタップの各々について計算される、結果として生じるタップの重みhk が、対応するXk によって乗算器360で乗算され、加算器/乗算器ADSUB370のそれぞれの減算ポートへ送られる。これら32個のタップの出力値とともに、DECTハイブリッドH10から受取られた信号Y198の最新のサンプルYk がそこに加算されて残留誤差信号Ek (すなわち、サンプル瞬間kでのE190の値)に達する。
【0032】適応平衡フィルタB90の各タップで、回線182からのX20と回線180からのE190との2つの信号の符号を乗算すると、これら2つの信号の間の相関の量が与えられる。相関の基礎をなす基本的な理論は、2つの信号が完全に非相関であるならば、ある期間にわたって2つの信号の乗算結果を合計したものが0になるということである。2つの信号の符号を乗算した合計が0に接近するならば、この2つの信号はほぼ非相関化しているとも言える。
【0033】一般に、符号乗算計算は振幅計算よりもはるかに容易に行なうことができ、十分に長い期間にわたって合計が積分されるならば同じ効果を有する。したがって、図3に示されるようなFIR適応平衡フィルタB90は符号アルゴリズムを用いて、近端送信信号X20および復帰信号E190の間の相関の量を検出する。適応平衡フィルタB90は、そのフィルタ係数またはタップの重みh0 ,h1 ,・・・,hn を調節することによって、復帰信号E190から残留エコーを非相関化する。
【0034】戻って図2を参照すると、残留誤差信号E190は理想的には遠端受信信号XFE160だけを表わすべきである。遠端受信信号XFE160および近端送信信号X20は2つの異なった源から生じるので、これらは互いに依存しないはずである。したがって、残留誤差信号E190が遠端受信信号XFE160のみから構成されるならば、適応平衡フィルタB90によって行なわれるプロセスには平衡化があったとしても、これはほとんど行なわれないはずである。
【0035】しかしながら、ハイブリッドH10でのインピーダンス不整合の結果として、残留誤差信号E190が、反射された近端信号XREFL40だけを含むならば、または残留誤差信号E190がハイブリッドエコーの結果として、いくらかの近端通話X20と、遠端通話XFE160とを含むならば、適応平衡フィルタB90によって何らかの適応平衡化が行なわれるであろう。この適応平衡化は、反射された近端通話要素XREFL40を残留誤差信号E190から除去するか、または減少させる。
【0036】必要とされる平衡化の量は、残留誤差信号E190および近端送信信号X20の間の相関に基づく。これら2つの信号の間に高い相関性があれば、適応平衡フィルタB90は多量の残留誤差信号E190を除去する。残留誤差信号E190の相関した部分はハイブリッドエコーであり、4線式ループの回線180で得られる信号Y198の、不所望な、反射した、近端信号要素である。
【0037】再び図3を参照すると、適応平衡フィルタB90によって用いられる典型的な値は、たとえば32タップであり、8kHzのサンプリング速度である。8kHzのサンプリング速度は、近端送信信号X20が8kHzまたは1/8000=125ミリ秒毎にサンプリングされることを意味する。近端送信信号X20の32個のサンプル(すなわち、タップの数)がどんな所与の時間でも適応平衡フィルタB90に記憶されるので、適応平衡フィルタB90が125ミリ秒*32=4ミリ秒以短のエコーをキャンセルする性能を有することを意味する。典型的に、4ミリ秒はディジタル電話にみられるハイブリッドエコーの最長の持続時間である。
【0038】再び図2を参照すると、適応平衡フィルタB90の出力は加算器S100の加算(+)ポートに与えられる。4線式ループの回線180に接続されたDECTハイブリッドH10の第3のポートは信号Y198を出力する。これはDECTハイブリッドH10でのインピーダンス不整合のために、遠端受信信号XFE160の一部または全部と近端信号X20の一部とを含み得る。この信号Y198は加算器S100の減算(−)ポートへ入力される。加算器S100の出力は残留誤差信号E190に対応し、これはフィードバックループ構造で適応平衡フィルタB90へ入力されて、近端送信信号X20と相関する部分の受信信号Y198を除去するか、または減少する。
【0039】本質的に、適応平衡フィルタB90および加算器S100は、近端送信信号X20と相関する部分の受信信号Y198を取除くための手段としてともに作用する。
【0040】この発明に従うDECT基地局ユニット30の別の特徴は、非相関化制御装置DCR110である。DCR110は、近端送信信号X20および残留誤差信号E190の間の相関を検出することによって適応平衡フィルタB90を制御する。DCR110は図4に詳細に説明される。
【0041】DCR110は符号レジスタ450、符号相関器452、量子化器456、低域フィルタ458、絶対値抽出器460、および比較器462から構成される。DCR110は2つの入力、すなわち近端送信信号X20および残留誤差信号E190を受取る。DCR110の出力は、適応平衡フィルタのON/OFF指示で、適応平衡フィルタB90へ与えられ、これによって適応平衡フィルタB90の活性化または不活性化が制御される。反転された形状の同じ信号がエコー抑制器コントローラESC140へも与えられて、適切な瞬間にその機能をターンオンまたはターンオフする。この構成によって、エコー抑制器コントローラESC140および適応平衡フィルタB90は互いに排他的な時間間隔でイネーブルされ、同時にイネーブル状態にあることができない。
【0042】DCR110およびフィルタB90はともに、非相関化マシンとしてみなされ得る。この非相関化マシンは、残留誤差信号190および近端送信信号X20の間の相関のレベルに基づいて適応平衡フィルタB90のタップの重みを調節することによって、DECTハイブリッドH10から受取られた信号Y198からハイブリッド残留エコーを非相関化するために適応制御を用いる。遠端信号XFE160および近端送信信号X20は2つの別個の源から生じるので、これらは恐らく互いに対して非相関であるだろう。
【0043】DCR110は、近端源から生じる、現在のサンプルとn個前までのサンプルとの符号(プラスまたはマイナス)を記憶する符号レジスタ450を含む。図4に示されるような好ましい実施例では、nは32に対応するので、符号レジスタ450には32個の遅延素子T465がある。これらの遅延素子T465は、たとえばクロックされたフリップフロップのような、当業者には周知の標準的なディジタル方法によって実現される。
【0044】近端送信信号の符号、すなわち+1または−1は最初に符号抽出器477によって抽出され、レジスタ450に記憶される。時間が経過するにつれて、符号ビットはサンプルクロックTごとに一回シフトダウンされる。この先入れ先出しシフトの結果として、符号レジスタ450は、最新のn個のサンプルx(k),x(k−T),x(k−T−T),・・・,x(k−nT)の符号を常に記憶する。次に、符号レジスタ450のn個の出力は符号相関器452の入力に接続され、ここで、nは好ましい実施例では32と等しい。もちろん、この発明の範疇内にある限り、nはどのタップ数にも設定できる。
【0045】DCR110の符号相関器452は、入力が符号レジスタ450と現在の残留エコーEK の符号抽出器479とから生じる、n個の排他的論理和ゲート(XOR)463のアレイを含む。次に、n個のXORゲート463の出力は加算器464で合計されて、符号相関器出力を形成する。機能上、符号相関器452は、現在の残留エコーサンプルの符号と最新のn個の近端送信サンプルの符号とに基づいて相関検出を行なう。これは以下の等式によって示される。
【0046】
【数1】

【0047】DCR110の符号相関器452は−32から+32の間で相関値を出力する。量子化器456は符号相関器452の出力を受取り、これを符号相関出力の符号に依存して−1または+1の値に量子化する。好ましい実施例では、0の相関値は+1の量子化された値になるが、この発明の教示内にある限り、これは−1に設定されてもよい。
【0048】このような量子化は、200Hzから500Hzで変化する入力通話信号で、均一で正確な検出を保証するために必要である。なぜなら、低周波数信号は高周波数信号よりも長い期間に同じ符号を有する傾向があるからである。
【0049】DCR110のディジタル低域フィルタ458は量子化器456から量子化された出力を受取り、量子化器456からの、量子化された連続する+1および−1を短期的に積分する。ディジタル低域フィルタ458は出力を平滑化し、短期的に平均された相関値をもたらす。次に、ディジタル低域フィルタ458には絶対値抽出器460が続き、これは低域フィルタ458の出力から符号を取除き、符号のない値を比較器462に与える。
【0050】ヒステリシスを特徴とする比較器462がDCR110に含まれて、平均された相関値を予め定められたしきい値に対して比較する。次に、相関の状態を示す、比較器462の出力が、適応平衡フィルタB90およびエコー抑制器コントローラESC140の両方に与えられて、これら2つの構成要素を活性化または不活性化する。非相関化の結果に基づいて、DCR110は、図2に見られるようにイネーブル信号またはディスエーブル信号を平衡フィルタB90に送る。DCRがイネーブル信号を平衡フィルタB90に送るならば、同時にディスエーブル信号をエコー抑制器コントローラESC140に送る。DCR110がディスエーブル信号を平衡フィルタB90に送るならば、同時にイネーブル信号をエコー抑制器コントローラESC140に送る。したがって、DCR110は制御信号をエコー抑制器コントローラESC140および平衡フィルタB90へ送って、これらが残留誤差信号E190に対して同時に動作しないことを確実にする。これによって、平衡フィルタB90が収束した後にのみ、エコー抑制器コントローラESC140が活性化されることが確実となる。
【0051】近端送信信号X20および残留誤差信号E190の間の相関が、予め定められたしきい値レベルよりも上であるとDCR110が判断すると、適応平衡フィルタB90はそのタップの重みを調節させられて、残留誤差信号E190の反射された送信信号部分XREFL40を除去する。適応ハイブリッドエコーをキャンセルする間、エコー抑制器ES150はイネーブルされるべきではない。このことを確実にするために、DCR110はディスエーブル信号をエコー抑制器コントローラESC140へ出力し、イネーブル信号を平衡フィルタB90へ出力する。
【0052】この手順のために、平衡フィルタB90は安定した収束点に効果的に達させられる。近端送信信号X20および残留誤差信号E190の間の相関が、予め定められたしきい値レベルよりも下にあるとDCR110が判断すると、適応平衡フィルタB90は、残留誤差信号E190からいかなるハイブリッドエコーをも除去することについて収束点に達している。この場合、平衡フィルタB90の係数をこれ以上適応化しても、ハイブリッドエコーは残留誤差信号E190から測定可能な程度には減少しない。全部でなくとも、ほとんどのハイブリッドエコーが残留誤差信号E190から除去されているので、残留誤差信号E190からさらなるエコーノイズを除去する唯一の方法は、この信号を減衰するか、または抑制することである。
【0053】DCR110は、遠端源50および近端源5の両方から通話が同時に届く二重通話の事態を効果的に扱う。DCR110のような制御装置がなければ、適応平衡フィルタB90は恐らく誤った点に収束し、ことによると、二重通話状況の間に発散するかもしれない。これらの事態のどちらかが不所望であろう。なぜなら、適応平衡フィルタB90は、キャンセルされるべきでない遠端受信信号XFE160部分を除去するように作用し得るからである。適応平衡フィルタB90がその最適な平衡点に一旦達すると、DCR110がそれにディスエーブル信号を送るように、DCR110はDECT基地局ユニット30を制御する。これは、残留誤差信号E190および近端送信信号X20の間に相関があったとしても、恐らくほとんどないからである。適応平衡フィルタB90の適応化プロセスを停止するのに正確な瞬間を選択することが、ハイブリッドエコーを効果的にキャンセルするために重要であり、DCR110は上述のような相関しきい値方法によって、この機能を効果的に行なう。
【0054】図2を参照すると、この発明に従って、エコー抑制器コントローラESC140は音声レベル検出器VLD1 120から、近端送信信号X20に対応する音声検出NES信号111を受取る。ESC140は音声レベル検出器VLD2130から、残留誤差信号E190に対応する音声検出FES信号も受取る。これら2つの信号に基づいて、ESC140は残留誤差信号E190に、何らかの抑制または減衰を適用するべきか否かを判断する。この発明に従って、音声レベル検出器VLD1 120、VLD2 130として用いられ得る通話検出器のブロック図が図5に示される。この発明に従う通話検出器は絶対値回路510、第1の増幅器520、第2の増幅器530、比較器540、加算器550、および遅延回路560を含む。通話検出器は通話信号X20を入力し、以下の等式に基づいて、検出された信号YDET 580を出力する。
【0055】YK+1 =AK+1 *b+(1−b)*YKここで、A>Bであればb=0.25であり、B>Aであればb=0.002である。値Bは比較器540の1つの入力でとられる。
【0056】ESC150は、たとえば米国特許第5,075,687号に記述されるようなハンドフリー制御装置回路654であり、これは図6に示される。ハンドフリー制御装置回路654は、送信通話検出器660および受信通話検出器662から、送信および受信信号レベルのスケーリングされたサンプルと、通話またはノイズ信号タイプの指示とを受取る。この情報に基づいて、ハンドフリー制御装置回路654は、さまざまな減衰器630、632、650、652の中で損失または抑制の割当を決定する。
【0057】電話の所望の状態、すなわちアイドル、送信、または受信に基づいて、適切な損失の量が各減衰器630、632、650、652に適用される。送信の安定した状態では、送信経路の減衰器630および632は0デシベルの損失に設定されるが、受信経路の減衰器650および652はプログラム可能な最大の損失に設定される。このように、ハンドフリー制御装置回路654は出ていく送信信号を少しの損失もなしで通過させるが、同時に受取られる、どの入ってくる信号も可能な最大の程度に抑制される。
【0058】受信の安定した状態では、送信経路の減衰器630および632はプログラム可能な最大の損失に設定されるが、減衰器650および652は0デシベルの損失に設定される。
【0059】アイドルの安定した状態では、各減衰器630、632、650、652はプログラム可能な最大の損失の半分に設定され、これによって、送信(出ていく)信号および受信(入ってくる)信号に応答するようにエコー抑制装置を均等に配置させる。
【0060】遷移状態がハンドフリー制御装置回路654によって確立されて、3つの安定した状態の中で円滑に遷移することを確実にする。ある状態から別の状態へと遷移する間、各減衰器630、632、650、652の損失は適切に増分されるか、または減分されて、状態の遷移を安定化する。たとえば、一連の1.5デシベルのステップが15ミリ秒の間隔で用いられ得ることができて、時間t0での0dBの損失から、時間t0+15msでの1.5dBの損失へ、時間t0+30msでの3.0dBの損失へ、...、時間t0+90msでの9.0dBの損失へと減衰器を遷移させる。これらの遷移ステップの各々の間、アナログ減衰器630およびアナログ減衰器650の損失は常にある定数になり、これはたまたまプログラム可能な最大損失の値である。同じことがディジタル減衰器632および652の損失に当てはまる。この一定した状況が音声切換動作の間で安定性を保証する。
【0061】この多ステップ遷移プロセスはソフト抑制としても既知であり、ここでは、減衰が段階的に適切な値に進んで新しい遷移状態に対処する。このプロセスは、通常の通話の間に送信され、かつ受信される通話信号においてどんな不所望なクリッピング効果をも防ぐ。
【0062】ソフト抑制を行なうこの方法は、たとえば、適切な多数ビット指令をES150に連続的に送って所望の結果を達成する、ESC140の内部のマイクロプロセッサのようなさまざまな態様によって行なわれ得る。図6のハンドフリー制御装置回路654は、減衰器632、652に入る受信信号および送信信号にソフト抑制を行なうために、このような手段を備える。好ましい実施例のES150は減衰器632、652のうちの1つに対応する。
【0063】この発明に従うESC140は、以下の表によって制御信号をエコー抑制器へ出力する。
【0064】
【表1】

【0065】近端および遠端通話状況のこれら4つの起こり得る状態の各々は、ESC140によって監視されなければならないエコー抑制状況に対応する。ESC140によって判断されるような通話レベルは適した期間、たとえば140ミリ秒にわたって積分される。第1の音声レベル検出器VLD1 120および第2の音声レベル検出器VLD2 130から受取る入力のためにESC140によって判断されるような現在のエコー抑制状況に基づいて、ESC140は適切な制御信号をエコー抑制器ES150へ送って、適切な量の抑制がエコー抑制器ES150によって残留誤差信号E190に確実に適用されるようにする。
【0066】上の表に示されるさまざまな状況は、VLD1 120が予め定められたしきい値の上に近端通話を検出し、VLD2が予め定められたしきい値の上に遠端通話を検出し、かつ近端通話が遠端通話よりも大きいときに、ESC140がエコー抑制器ES150へ制御信号のみを送って、残留誤差信号E190でエコーを抑制することを意味する。次に図2を参照すると、この状況では、第1の音声レベル検出器VLD1 120および第2の音声レベル検出器VLD2 130はともに信号の存在を検出している。この場合、以下のような2つの可能性がある。
【0067】ケース1. エコー遅延の長い単一通話この明細書中に上述されたように、平衡フィルタB90が長いネットワークエコーをキャンセルできないので、ネットワークエコーは少しも減衰されずに加算器S100を通過し、これによって、高いFES信号112が第2の音声レベル検出器VLD2 130によって検出される。同時に、第1の音声レベル検出器VLT1 120もまた、近端通話の減衰時間が長いために、高いNES信号111を検出する。この場合、ネットワークエコーが元の近端送信信号を決して超えないので、近端通話が遠端通話よりも大きくなければならないという条件の下で、エコー抑制器ES150は抑制を行なうべきである。
【0068】ケース2. 二重通話FES信号112がNES信号111よりも大きければ、近端源5および遠端源50の両方が同時に通話している可能性が高い。この場合、エコー抑制器ES150は、受信遠端通話XFE160を減衰するのを回避するように、抑止されるべきである。
【0069】たとえば、エコー抑制器ES150が9dBの減衰に設定されるべき状況をESC140が検出すると、これは段階的に行なわれる。たとえば、ESC140が一連の制御信号を送ることができて、時間t0でエコー抑制器を1.5dBの減衰に、時間t0+15msecでエコー抑制器を3.3dBに、時間t0+30msecでエコー抑制器を4.5dBに、...、時間t0+90msecでエコー抑制器を9.0dBに設定する。本質的に、エコー抑制器ES150の減衰はESC140によって指令されて、15ミリ秒ごとに1.5dBの増分で0dBから9dBまで進む。このタイプの段階的な抑制は復帰通話においてどんな不所望のクリッピングをも除去し、復帰通話信号においてより良い忠実度をもたらす。
【0070】このタイプの「ソフト抑制」は、当業者には既知であるように、アナログ手段またはディジタル手段のどちらかによって行なわれ得る。ソフト抑制をもたらすために、ESC140は上述のように段階的な抑制指令をエコー抑制器へ送る。
【0071】エコー抑制器ES150が9dBの抑制から0dBの抑制へ変化されるべきであると、同じ段階的な減衰の変化がもたらされて、クリッピングが起こらないことを確実にする。減衰レベルを変化させるための時間は、ネットワークエコーが起こり得る、ほぼ最大の時間であることに留意されたい。これは、ESC140からES150へと送られる制御信号の重要な特徴である。次に、ES150の出力は無線によって、好ましい実施例ではDECT移動送受器ユニット5である近端源5へ送られる。近端源5によって受取られる信号は、どんな持続の長いエコーもどんな持続の短いエコーもDECT基地局ユニット30によって取除かれている。
【0072】図7は、図2に示されるようなこの発明の実施例を用いたテスト結果を示す。テストは、4線式ループおよび2線式ループへ挿入されるさまざまなノイズのタイプおよびレベルで行なわれた。入ってくる信号のレベルは、−5dBm0のステップ、−10dBm0のステップ、−20dBm0のステップ、および−30dBm0のステップにおいて変化した。これらの励振信号のレベルに基づいて、近端源によって受取られるノイズの量がこれらの近端送信信号レベルに対して測定された。
【0073】ノイズは、通話に類似した重み付きノイズである1)G.227電話ノイズ(中帯域)、2)鳴音リタンロス(SRL)−低帯域(200−500Hz)、および3)SRL−高帯域(2500−3400Hz)のいずれかとして入力された。終結ループ条件は、1)600ohmインピーダンス、2)EIA3ループ標準、および3)EIA5ループ標準であった。終結ループ条件の各々で行なわれた、これらノイズの各々の場合に対する結果は図7に一覧表となっており、ノイズレベルは常に励振信号レベルよりも少なくとも23dB下であったことを明らかにする。
【0074】この発明の実施例がこの明細書において説明されているが、この発明の教示に従うと、前掲の特許請求の範囲に記述された、この発明の範疇から逸脱せずに、上述の実施例の変形例が当業者には明らかになるであろう。
【出願人】 【識別番号】591016172
【氏名又は名称】アドバンスト・マイクロ・ディバイシズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ADVANCED MICRO DEVICES INCORPORATED
【出願日】 平成8年(1996)2月16日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】深見 久郎 (外3名)
【公開番号】 特開平8−331021
【公開日】 平成8年(1996)12月13日
【出願番号】 特願平8−29279