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【発明の名称】 積層セラミックコンデンサの製造方法
【発明者】 【氏名】安保 多美子

【氏名】大槻 悦夫

【目的】 セラミック層と内部電極層との界面、及びコンデンサ素子と外部電極との界面における進行性の剥離、脱粒に起因する絶縁性劣化のない積層セラミックコンデンサの製造方法を供する。
【構成】 外部電極を構成する外部電極中間層をNi(Cの分解反応を利用して形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 誘電体セラミック層と低抵抗金属からなる内部電極層とを交互に積層して積層体を形成し、該積層体の側面に、前記内部電極層に接続する下地層と、その上の中間層と、一番外側の最外層とからなる外部電極を設けた構造の積層セラミックコンデンサの製造方法において、前記外部電極の中間層として、ニッケルカルボニル[Ni(Co)4]の分解反応により金属ニッケル層を形成する工程を含むことを特徴とする積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項2】 請求項1記載の積層セラミックコンデンサの製造方法において、ニッケルカルボニルの分解反応により形成される金属ニッケル層を、ニッケルカルボニルを塗布した後、50〜250℃で加熱して形成することを特徴とする積層セラミックコンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、積層セラミックコンデンサの製造方法に係り、特に、その外部電極の形成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】積層セラミックコンデンサは、小型大容量、半永久的寿命、高周波低インピーダンス等の優れた特性を有することから、広範囲に使用されており、特に、交換機や電源等に多く用いられている。
【0003】図1に示すように、通常の積層セラミックコンデンサは、誘電体セラミック層1と低抵抗金属からなる内部電極層2とが交互に積層された積層体(コンデンサ素子)6と、内部電極2を一層おきに引き出して接続した外部電極7からなり、必要により外部電極の外部回路との接続部を除いて、外周全面に絶縁処理が施された構造である。外部電極7は、その一番内側に、銀電極等が外部電極下地層3としてコンデンサ素子6に焼き付けられ、その上に電解メッキ法等により、外部電極中間層4と、更に、その上に、外部電極最外層5が半田メッキにより形成されている。この外部電極中間層4は、通常、ニッケル等の金属が用いられており、積層セラミックコンデンサチップを基板上のプリント回路等に取り付ける際、外部電極の強度や、耐熱性に優れた安定した半田付け特性を持たせるために有効なものである。
【0004】従来、電解メッキ法により外部電極中間層を形成した積層セラミックコンデンサにおいては、製品完成後、誘電体セラミック層1と内部電極層2との界面、及びコンデンサ素子6と外部電極7との界面において、進行性の層間剥離、及び脱粒が数カ月に渡って発生し、その結果、コンデンサの絶縁性劣化を引き起こし、コンデンサの機能が失われるという問題があった。これは、コンデンサをメッキ液に浸漬させて電解を行う際、メッキ液がコンデンサ内部まで浸入して、残留することにより、使用環境における温度やセラミックが有する圧電振動性が引き起こす応力付加に伴い、積層セラミックコンデンサの内部において、腐食が進行することが原因ではないかと推定されている。又、電解メッキの際、外部電極上で電着反応の副生成物として、水素が発生することがあるが、内部電極層に用いられるパラジウムは、水素を取り込みやすい性質を持つため、水素を吸蔵して体積が膨張することにより、熱や応力の付加により、層間剥離を引き起こすとも考えられている。これらのことが原因となって、電解メッキ法を用いて作製されたセラミックコンデンサの信頼性は、低くならざるを得なかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、進行性の層間剥離による絶縁劣化の問題を解決すべく、外部電極中間層の製造工程でメッキ液等の異物の混入がなく、耐久性のよい、積層セラミックコンデンサが供給できる製造方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記の課題を解決すべくなされたものであり、外部電極の中間層の形成方法を検討した結果、緻密で均一な金属層が形成でき、半田付け特性が良好で、進行性の不良発生のない製造方法を見いだした。即ち、外部電極下地層を形成したコンデンサ素子を、ニッケルカルボニルの液体に浸漬させ、その後、50℃から250℃の熱処理を5分から60分施すことにより、ニッケルカルボニルが容易に分解して、外部電極下地層上に1μmから3μmの厚みのニッケルの金属被膜を形成することができる。
【0007】即ち、本発明は、誘電体セラミック層と低抵抗金属からなる内部電極層とを交互に積層し、その端部に、内部電極層を一層おきに引き出して接続する下地層と、その上の中間層と、一番外側の最外層とからなる外部電極を設けた構造の積層セラミックコンデンサの製造方法において、ニッケルカルボニルの分解反応により形成される金属ニッケル層を外部電極の中間層とする工程を含むことを特徴とする積層セラミックコンデンサの製造方法である。
【0008】
【作用】本発明のニッケルカルボニルの分解反応により金属ニッケル層を形成する方法によれば、外部電極中間層形成の際、絶縁性の劣化を引き起こし、ショートの要因となるような異物の侵入がない。又、比較的低温でもニッケルカルボニルの分解反応が進行するため、温度負荷の少ない条件で中間層を形成することが可能である。但し、ニッケルカルボニルは室温でも分解して金属ニッケルを析出するが、反応温度が低すぎると、十分に純金属にならないため、分解温度は50℃以上にするのがよい。又、反応温度を250℃より上げた場合でも、同様に、不良発生率が増加する。従って、ニッケルカルボニルの分解温度は、50℃〜250℃の範囲が適当であると考えられる。この温度範囲で形成されたニッケル層は、緻密で、均一な構造の膜である。そして、従来の電解メッキ法でみられていた進行性の絶縁不良の発生は、この方法で作製した試料においては見られなくなる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例について、図面を参照して説明する。
【0010】図1は、本発明の実施例により作製した積層セラミックコンデンサの断面図である。本実施例では、誘電体セラミック層1として、鉛系複合ペロブスカイト粉末を使用し、内部電極層2にはAg−Pd系合金を用いた。これらを図1に示すように積層した構造を持つコンデンサ素子6とし、その両端に交互に引き出された内部電極層2を外部に引き出すため、ガラス粉入り銀ペーストを塗布、焼成して、外部電極下地層3が加工されている。このようにして形成したコンデンサ素子の外部電極下地層3をニッケルカルボニルの液体に浸漬し、40℃〜300℃で5分〜60分加熱し、カルボニルを分解し、1μm〜3μmの金属ニッケル層を外部電極中間層4として形成した。なお、形成されたニッケル層中には、未分解成分として炭素を8〜0.02wt%含有していた。なお、比較例として、従来の電解メッキ法により外部電極中間層を形成した試料も作製した。更に、これらの試料に外部電極最外層5として、半田メッキ層を形成し、各々の試料を作製した。
【0011】上記の実施例によって作製した試料について、ショート不良の発生状況を調査した。試料数nは、各条件について30個〜40個である。図2は、ニッケルカルボニル分解の際の加熱温度とショート不良発生率の関係を示す。図2は、加熱温度が40℃の場合、不良率が著しく増加することを示している。分解温度40℃で形成したニッケル中の炭素含有率は、6%を越えるものが多くあり、カルボニルの分解が不完全であることがショート不良の発生に関係していると思われる。一方、加熱温度が250℃より高い場合も、ショート不良は増加した。従って、加熱温度は、50℃〜250℃の範囲が適当である。なお、150℃〜200℃で加熱を行った場合は、不良発生率が0%に抑えられていることから、この温度範囲で加熱することがより望ましい。
【0012】上記実施例の試料中、50℃〜250℃の分解温度で作製され、上記の初期状態においてショート不良検査に合格した試料、及び比較例の試料、各50個について、環境温度85℃、湿度85%、電圧25Vの条件下で、1000時間、加速試験を行った。絶縁劣化によるショート不良個数は、比較例として示した従来の電解メッキ法により作製した試料では、18個であった。これに対して、実施例の試料の場合は、絶縁性劣化がなく、ショート不良は発生しなかった。
【0013】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、ニッケルカルボニル分解反応で外部電極中間層を形成することで、従来の誘電体セラミック層1と内部電極層2との界面、及びコンデンサ素子6と外部電極7との界面等における進行性の剥離、脱粒等がなくなり、積層セラミックコンデンサの進行性の絶縁劣化は減少し、耐久性のある積層セラミックコンデンサを提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000134257
【氏名又は名称】株式会社トーキン
【出願日】 平成6年(1994)6月23日
【代理人】
【公開番号】 特開平8−8138
【公開日】 平成8年(1996)1月12日
【出願番号】 特願平6−165879