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【発明の名称】 ワンウェイ・クラッチ組立体
【発明者】 【氏名】ダニエル・ピー・コスティン

【目的】
【構成】
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ワンウェイ・クラッチ組立体にして、互いに駆動方向及びオーバ・ランニング方向に相対的に回転可能である駆動部材及び被動部材であって、互いに離間した関係で軸線の周りで同心状に配置されてそれらの間で環状スペースを形成する駆動部材及び被駆動部材と、前記環状スペース内に配置されていて、離間した第一の複数の窓部を有する環状の剛性なケージ部材と、前記環状スペース内に配置されていて、離間した第二の複数の窓部を有する環状の剛性なばね部材と、延伸可能な弾性部材で出来た前記環状のばね部材と、複数のスプラグ部材であって、各々が前記第一の複数の離間した窓部の一つに且つ前記第二の複数の離間した窓部の一つにそれぞれ傾動可能に配置された、複数のスプラグ部材とを備え、前記スプラグ部材が、前記環状スペース内で完全に同調されるワンウェイ・クラッチ組立体。
【請求項2】 請求項1に記載のワンウェイ・クラッチ組立体にして、前記第二の複数の離間した窓部には、タブが存在しないワンウェイ・クラッチ組立体。
【請求項3】 請求項1に記載のワンウェイ・クラッチ組立体にして、前記第二の複数の離間した窓部の各々が、少なくとも一つの付勢タブを備えるワンウェイ・クラッチ組立体。
【請求項4】 請求項1に記載のワンウェイ・クラッチ組立体にして、前記ばね部材が少なくとも50%延伸可能である材料で出来ているワンウェイ・クラッチ組立体。
【請求項5】 請求項1に記載のワンウェイ・クラッチ組立体にして、前記ばね部材が前記環状スペースの半径方向高さの少なくとも50%以下の厚さを有するワンウェイ・クラッチ組立体。
【請求項6】 請求項1に記載のワンウェイ・クラッチ組立体にして、前記スプラグ部材が、その一端に拡張したくさび止め面を有するワンウェイ・クラッチ組立体。
【請求項7】 請求項1に記載のワンウェイ・クラッチ組立体にして、前記第二の複数の離間した窓部が、前記スプラグ部材がその内部に締まり嵌め状態に配置されるような寸法であるワンウェイ・クラッチ組立体。
【請求項8】 請求項1に記載のワンウェイ・クラッチ組立体にして、前記ばね部材が、エラストマー材料で形成された単一体の成形部材であるワンウェイ・クラッチ組立体。
【請求項9】 請求項1に記載のワンウェイ・クラッチ組立体にして、前記ばね部材に設けられた摩擦締まり嵌め突起手段を更に備えるワンウェイ・クラッチ組立体。
【請求項10】 請求項1に記載のワンウェイ・クラッチ組立体にして、前記第一の複数の離間した窓部が、前記スプラグ部材の回転を制限する寸法であるワンウェイ・クラッチ組立体。
【請求項11】 請求項1に記載のワンウェイ・クラッチ組立体にして、前記第一の複数の離間した窓部及び前記第二の複数の離間した窓部が、それぞれ協働して前記スプラグ部材の回転を制限する寸法であるワンウェイ・クラッチ組立体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、駆動部材と被動部材との間のトルク経路内におけるトルクの伝達を制御すべく同心状のレース間に配置された傾動可能なスプラグ(sprag)を備えるワンウェイ・クラッチに関する。
【0002】
【従来の技術】トルクの伝達を制御すべく同心状の回転部材間に配置された傾動可能なスプラグを備えるワンウェイ・クラッチは公知である。典型的に、内側レース部材及び外側レース部材と称されるこの同心状の回転部材は、スプラグによって選択的に連結及び連結解除がなされる。これらのスプラグは、一般的に、その両端部分が内側レース及び外側レースに摩擦係合する環状の形態に配置されている。スプラグは、レースの回転により該スプラグが環状レース内で傾動されるとき、この環状レースを相互に係止し、又は解放させる働きをする。このようにして、このワンウェイ・クラッチは、レースの回転方向に応答して、ドライビング、又はオーバ・ランニングの作動状態に自動的に調節される。
【0003】トルクが一方向に向けてクラッチに伝達されるとき、レースがフライ・ホイール回転をし、伝達されるトルクの量は、無視し得る程度である。トルクの伝達方向が逆になると、スプラグは傾動して、レースとくさび止め係合し、レースの相対的な回転を略防止して、トルクの伝達に対応する。
【0004】このワンウェイ・クラッチの円滑な作動を期すためには、スプラグ間で駆動負荷を等しく分担しなければならない。一部のスプラグにだけ荷重が伝達されるならば、「ロールオーバ(rollover)」として知られる状態が生じる。この状況のとき、ドライビング・トルクが一又は複数のスプラグを付勢して偏心状態にし、その結果、スプラグ又はレースの何れかの破損するか、または、恒久的な変形が生ずる。
【0005】回避すべきもう一つの状態は、「ポップアウト(popout)」又は「ポッピング(popping)」として知られるものであり、この状態になると、荷重が加わったばねは、突然にレース面の一つに対する静止接触力を失い、その結果、スプラグが急激に回転して、極端なオーバ・ランニング(overrunning)の位置となる。「ポップアウト」は、荷重、振動が急激に解放されること、即ち、低摩擦状態に起因する。「ポップアウト」が生じたならば、衝撃による損傷のため、逆回転を開始した時に、一又は複数のスプラグはかみ合うことが出来ない。
【0006】ポッピングに起因するロールオーバを防止し且つその損傷を少なくするため、ある型式のワンウェイ・クラッチは、全てのスプラグを略等しい角度位置に保つため、内側ケージ及び外側ケージを備えている。これらのクラッチは、完全に同調されていると言われる。
【0007】傾動可能なスプラグを備えるワンウェイ・クラッチ機構は、改良されたクラッチ装置を提供すべく各種のレース、ケージ及びばねの形態にて設計されている。例えば、ロジック及びその他(Rojic et al.)の米国特許第3,324,980号において、スプラグは、単一のエラストマー・ケージにより付勢指状体と係合可能な位置に配置されている。スプラグに接触するのは、該付勢指状体だけであるから、スプラグの同調はなされない。スプラグが独立的に回転自在であり、また、同調されないようにした、その他の特許は、例えば、トロエンドリー及びその他(Troendly et al.)の米国特許第2,753,027号、トロエンドリー及びその他の米国特許第2,824,635号、メッセージ(Message)の米国特許第4,880,093号に記載されている。これらの三つの特許に記載された装置において、スプラグを分離させるため、単一の金属ケージが使用され、また、スプラグを傾動させ且つ偏倚させるため、金属製平形ばねがケージに近接する位置に配置されている。
【0008】その他の単一ケージのワンウェイ・クラッチは、ハーティグ(Hartig)の米国特許第4,867,292号及びレッツ(Leitz)の米国特許第5,335,761号に記載されている。ハーティグの特許には、各スプラグ毎に独立的な付勢ばねが設けられた単一のケージを備えるクラッチが開示されている。これら独立的なばねは、スプラグを同調させない。レッツの特許において、クラッチは、単一のケージと、該ケージの半径方向外方に配置された金属製の平形ばねとを備えている。レッツの特許では、スプラグの同調は確保されてはいるが、金属の平形ばねは、比較的弱体であり、クラッチの耐久性に影響を与える。
【0009】二重プラスチック製ケージのクラッチ機構が、フェリス(Feris)の米国特許第4,998,605号に記載されている。このクラッチは、プラスチック製の内側ケージと、プラスチック製の外側ケージとを備えており、そのケージの一方に付勢指状体が設けられている。これら二つのケージは、スプラグを同調させる働きをするが、この構造体は、製造が難しく、また、多量の材料を使用する。また、プラスチック材料は、ばねとして使用したとき、耐久性は十分ではない。更に、スプラグの外側のくさび止め面は、ケージの外側窓部に嵌合し得るようするため寸法が節減され、このため、そのくさび止め面が小さくなり、クラッチのトルク性能が低下する。
【0010】もう一つの二重ケージのクラッチの設計は、トロエンドリー及びその他の米国特許第2,824,636号に記載されている。この特許は、スプラグが内側レース及び外側レースにより完全に同調される、極めて満足し得る二重ケージのスプラグ・クラッチを開示している。これらのケージは、特別設計の窓部を有して、金属で形成されており、スプラグを偏倚させるため二つのケージの間に平形ばねが置されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明の一つの目的は、駆動部材と被動部材との間のトルク経路内におけるトルクの伝達を制御すべく同心状のレース間に配置された傾動可能なスプラグを備えるワンウェイ・クラッチを提供することである。また、本発明の目的は、公知の単一ケージのワンウェイ・クラッチの改良として、単一ケージのクラッチ機構を提供することである。
【0012】本発明のもう一つの目的は、スプラグ間で完全な同調を実現し、公知の二重ケージのワンウェイ・クラッチよりも経済的で且つ製造が容易なワンウェイ・クラッチを提供することである。本発明の更に別の目的は、独立的な付勢ばねを使用せず、公知の金属製平形ばねよりも耐久性があるばね機構を備える、ワンウェイ・クラッチを提供することである。
【0013】本発明の更に別の目的は、レース間で使用する材料の量が最小であり、レースにトルクを伝達すべくくさび止め面が完全に相補的であり、延伸性材料で出来た細い環状ばねであって、製造が容易であり且つ上記の公知のクラッチ機構と組み立てることが容易な環状ばねを備えるワンウェイ・クラッチ機構を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明によるワンウェイ・クラッチ組立体は、互いに駆動方向及びオーバ・ランニング方向に相対的に回転可能である駆動部材及び被動部材であって、互いに離間した関係で軸線の周りで同心状に配置されてそれらの間で環状スペースを形成する駆動部材及び被駆動部材と、前記環状スペース内に配置されていて、離間した第一の複数の窓部を有する環状の剛性なケージ部材と、前記環状スペース内に配置されていて、離間した第二の複数の窓部を有する環状の剛性なばね部材と、延伸可能な弾性部材で出来た前記環状のばね部材と、複数のスプラグ部材であって、各々が前記第一の複数の離間した窓部の一つに且つ前記第二の複数の離間した窓部の一つにそれぞれ傾動可能に配置された、複数のスプラグ部材とを備え、前記スプラグ部材が、前記環状スペース内で完全に同調されるように構成されている。
【0015】本発明は、公知のクラッチ機構に伴う問題点を解決し且つ上述の目的及び利点を実現する傾動可能なスプラグを備えるワンウェイ・クラッチ機構を提供するものである。本発明によれば、内側レース及び外側レース内に配置された単一のケージ部材と、該ケージとレースの一つとの間に配置された、延伸可能な可撓性のばね部材とを備える、ワンウェイ・クラッチ機構が提供される。該ばね部材は、レースの間に連続的な環状部材を形成し、また、このばね部材は、スプラグを配置するための離間した窓部を複数、備えている。また、該ばね部材は、好ましくは、少なくとも50%程度の弾性伸び率の延伸性を有し、また、好ましくは、エラストマー材料で出来たものとする。
【0016】ばね部材に形成された窓部は、一又は複数のタブを備え、又はタブが存在しないようにしてよい。また、該ばね部材は、細くする、即ち、その厚さがスプラグの高さの50%以下の厚さであるようにする。該ばね部材は、成形による単一部材として、又は環状部材を形成し得るように共に結合された細長の板状体として形成することが出来る。また、該ばね部材は、内側ケージと外側レースとの間に配置し、又は外側ケージと内側レースとの間に配置することも可能である。
【0017】特に、低廉で且つ小規模用の代替的な実施例において、延伸可能なばね部材は、それ自体で、即ち、ケージ部材を伴わずに、内側及び外側レース部材の間に配置することが出来る。
【0018】本発明は、公知の単一ケージのスプラグ・クラッチ機構では得られない、完全な同調及び十分な耐久性を備える、単一ケージのスプラグ・クラッチ機構を提供することである。また、本発明は、その機械的な簡略性、高トルク付与機能及び低コストにより、完全な同調を実現し、二重ケージのスプラグ・クラッチ機構の改良を実現するものである。
【0019】
【発明の実施の形態】本発明の上記及びその他の利点、特徴及び有利な点は、添付図面に関する本発明の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0020】本発明によるクラッチ機構は、図1乃至図3に示してあり、全体として参照符号20で示してある。該クラッチ機構は、外側レース即ち回転可能な部材22と、同心状の内側レース即ち回転可能な部材24とを備えている。これらの同心状レースは、軸線Cの周りにその中心がある。内側レースと外側レースとの間の環状スペース内に複数のスプラグ25が配置されている。また、内側レースと外側レースとの間に、環状のケージ部材26及び環状のばね部材28も配置されており、これらの部材は、スプラグを所定位置に保持する働きをする。
【0021】本発明による一方向クラッチ即ちワンウェイ・クラッチ機構は、当業者に周知であるように、種々の環境にて使用することが出来る。図1及び図2に示した環境において、該クラッチ機構は、車両の変速機の一部として使用し得るようにしてある。この点に関し、外側レース22は、平滑な円筒状内面30と、外周又は円周上に設けられた複数のスプライン歯32とを備えている。同様に、内側レース24は、平滑な円筒状外面34と、複数のスプライン歯36が形成された内面とを備えている。内側レースは、クラッチに対するハブとして機能し、該内側レースは、図2に仮想線で示した変速機シャフト38に取り付けられている。軸受(図示せず)が円筒状のレース面を実質的に略同心状に保つ働きをする。
【0022】スプラグ25は、略骨状の形状をしたクランプ要素であり、ばね部材28の開口部即ち窓部40に、及びケージ部材26の開口部即ち窓部42を通じて配置されている。該スプラグ25の両端は、円筒状の係合面30(外側レースの面)と係合面34(内側レースの面)と摩擦接触状態に配置されている。
【0023】スプラグ25は、図4及び図5に示すように、湾曲した係合内面44と、湾曲した係合外面46と、及び狭小な中央くびれ領域48とを備えている。これらの湾曲した係合面44、46は、所望の適用例に応じて、各種の形態又は外形が可能である。この点に関し、その内容を引用して本明細書に含めた米国特許第2,824,636号に、スプラグ部材25の好適な寸法及び形状が記載されている。本発明に従って使用可能であるその他のスプラグ部材は、その開示内容を引用して本明細書に含めた、米国特許第5,335,761号に記載されている。
【0024】内面と外面との間の環状スペース内に該スプラグを取り付けたとき、これらのスプラグは、図4に示すように、該スプラグを貫通する半径線Rから角度Aにて傾斜されている。レースが矢印50、52(図4)で示した方向に動くことにより、スプラグ25がその中央部分を中心として時計方向に傾動したとき、クラッチは、フライ・ホイールの回転状態となる。スプラグ25が図4に示した位置から図5に示した位置に反時計方向に傾動したとき、スプラグの端部は二つの同心状レース22、24の間にくさび止め係合する。図5に示すように、外側レース22、及び内側レース24は、それぞれ矢印54、56の方向に回転する。これは、二つのレースを共にトルク伝達可能な関係に接続する。
【0025】本発明によるケージ部材は、図6に示してある。該ケージ部材26は、鋼のような薄い金属材料片で出来ており且つ図示した形状及び形態にて打ち抜き又はその他の方法で機械加工されている。また、該ケージ部材は、プラスチック材料で形成してもよい。また、該ケージ部材には、一連の開口部即ち窓部42が形成されている。
【0026】図1乃至図5に示すように、ケージ部材は、内側ケージ部材26として位置決めすることが出来る、即ち、内側レース部材24に隣接する位置に配置される。また、図14に示した代替的な実施例に関して以下に説明するように、ケージ部材は、外側ケージ部材として、即ち、外側レース22に隣接する位置にて、ワンウェイ・クラッチ機構内に配置することも出来る。
【0027】ばね部材28は、付勢リングばねであり、ケージ部材26と外側レース部材22との間に配置されることが好ましい。該付勢ばね28は、スプラグ25をレース22、24の間で周方向に保持し且つ離間させ、また、スプラグ25を偏倚させてくさび止め係合状態にする。該ばね部材28は、図1乃至図5に示すように、環状又はリング状の形態をしている。また、該ばね部材は、傾動可能なスプラグ25を受け入れ得るように、その外周の周りで均一に離間された一連の開口部即ち窓部40を備えている。
【0028】ケージ部材26及びばね部材28の組み合わせにより、スプラグ25はレースの間の環状スペース内で完全に同調する。ケージ及びばね部材の各々には、等しい数の窓部が設けられ、係合する対の窓部内の各々にスプラグが配置される。
【0029】付勢ばね28は、可撓性で且つ延伸可能な材料、即ち、破断したり、又は恒久的に変形せずに約50%以上の伸び可能である材料で出来たものであることが好ましい。この点に関し、延伸可能な付勢リングばねに好適な材料は、エラストマー材料であり、その好適な伸び率の範囲は、約50%乃至300%である。エラストマー材料は、定義上、変形力を除去した後、室温にてその寸法及び形状を回復する。この点に関し、熱硬化性及び熱可塑性材料のような殆どのプラスチック材料は、本発明への採用には、不適当である。
【0030】上述したように、本発明によるリングばね部材に使用される材料は、破断歪み率が50乃至100%以上である架橋結合(cross−linked)ポリマーのようなエラストマーであることが好ましい。また、この型式のエラストマー及びその他の材料は、振動の減衰機能もあり、その結果、より静粛なクラッチ機構が得られる。ばね部材に好適なエラストマー材料は、ビトン(Viton)のようなふっ素エラストマーである一方、その他の採用可能な材料はポリアクリレート及びエチレン・アクリレートである。
【0031】クラッチ組立体の材料コストを最小に保つため、ばね部材28の厚さT(図2に図示)は、最小値に保つことが好ましい。厚さTは、高さHの50%以下(図2に図示するように)、又は好ましくは、内側レース24、外側レース22間の環状スペースの約20%とする。例えば、ある種の公知のワンウェイ・クラッチ機構の場合、該環状スペースの高さHは、約8.3mmである。かかる環状スペースのばね部材28に対する好適な厚さTは、約1.5mm(又は高さHの約18%)である。
【0032】延伸可能な付勢リングばね28は、任意の公知の方法、即ち、従来の方法で形成することが出来る。例えば、ばね部材28は、図1乃至図5に示した形状及び形態にて射出成形し、又は圧縮成形することが可能である。これらの成形方法は、一般に、エラストマー材料に使用されるものである。更に、ばね部材27は、図13に図示するように、平坦な板として形成し且つ互いに結合し、又は接着してもよい。この点に関して、板の両端間の接続部の接合強度を増すため、端部29は、図示するような留め継ぎ状態即ち45°の角度の切り込み又は形状とすることが好ましい。
【0033】上述したように、本発明は、従来のスプラグを使用することが出来る。本発明に従い、金属製の平形ばね等により付勢され且つ従来のワンウェイ・クラッチに使用される任意のスプラグが延伸可能な励起リングばね28と共に使用可能である。また、本発明のクラッチ機構は、薄いケージ部材及び細いばね部材をそれぞれ一つしか使用しないから、レースの間により広いスペースが確保され、スプラグに大きいくさび止め面が得られる。この型式のスプラグ部材60は、図16に示してある。図示するように、スプラグ部材60は、クラッチに対して大きいトルク伝達性を付与する大きいくさび止め面46′を備えている。
【0034】延伸可能なばね部材28の開口部即ち窓部40は、矩形の形状であることが好ましい。これは、図7に示してある。これと代替的に、ばね部材に形成された窓部が、一又は複数の付勢タブを備え、該付勢タブがばねによりスプラグ部材に付与される付勢力の程度に影響を与え、又はその程度を制御するようにしてもよい。例えば、図8において、該付勢ばね70は、窓部74の各々に設けられた付勢タブ72を備えている。スプラグに作用する付勢力の程度を制御し得るように、タブ72の長さ、幅及び厚さは、所望通りに変更可能である。
【0035】図9に図示するように、付勢タブ76を多数、備えることも可能である。図9に示した実施例において、リングばね部材80は、窓部78の各々に二つのタブ部材76を備えている。更に、図10に示すように、ばね部材82は、窓部86の各々に形状の異なるタブ84を備えることが出来る。
【0036】該付勢タブは、所望に応じて、スプラグ部材の何れか一方の一側部に設け、又はスプラグ部材の両側部に設けることが可能であることが理解される。利用されるタブ部材の形状及び数、又は基本的にタブ部材を利用すべきか否かは、スプラグ部材に望まれる付勢力の大きさ、及びクラッチ機構の使用状態に依存する。スプラグ部材の間のばね部材の面積が必要な可撓性及び弾性を提供するのに十分となる点で、本発明によれば、タブ無しの開口部即ち窓部とすることが好ましい。
【0037】多くのスプラグ・クラッチ機構において、スプラグは、レースの一つに関して回転しないよう保持しなければならない。かかる慣性制御方法は、典型的に、高性能の適用例に採用される。例えば、多くの公知の自動車の適用例において、スプラグ部材は、摩擦により外側レースに対して保持され、外側レースと共に回転し、又は外側レースに沿って回転しない。この目的のため、必須の摩擦接続部を提供するため、外側ケージと外側レースとの間には、慣性接触、又は締まり接触が提供される。本発明による延伸可能なリングばね部材28により、同一の機能が得られる。これを具体化する実施例は、図11及び図12に示してある。
【0038】図11において、ばね部材92に設けられた複数の半径方向出っ張り即ち突起90がばね部材92と外側レースとを締まり係合させ、摩擦接続部を提供する。半径方向突起90は、図示するように、対にて提供することが好ましく、複数対の突起が、ばね部材の周縁又は外周の周りで均一に離間した位置に設けられることが好ましい。
【0039】図12に図示するように、ばね部材96上で軸方向又は長手方向に配置された突起又は張出し部94を使用して、クラッチ機構又は関連する機構の側壁又はその他の部材(図示せず)との摩擦接続部を形成することが出来る。軸方向突起94も対を成して設けられ、また、ばね部材の外周に沿って均一な位置に離間させることが好ましい。クラッチ機構を軸方向に保持し又は収容する側壁は、外側レースに接続されて、該外側レースに対する同等の摩擦接続部を提供することが多い。
【0040】内側ケージ26及び延伸可能なリングばね28の組み合わせにより、スプラグ25の同調が可能となり、また、該スプラグの回転を制限することが出来る。スプラグが内側ケージから回転して外に出ないようにしなければならないから、スプラグの回転を制限することは重要である。スプラグが「ポップ」する間、スプラグは、急速に荷重を失い、回転して、図4に示すフライ・ホイール回転位置のような位置になる。
【0041】スプラグ部材の回転を制限する二つの方法がある。その第一の方法は、図4に図示するように、内側ケージ26の窓部42の縁部が回転制限面を提供し且つスプラグ25が矢印43の方向に回転するのを制限する寸法とすることである。
【0042】第二の方法は、延伸可能なリングばね28をケージと調和させて使用して、スプラグの回転を制限する方法である。図17に図示するように、ばね部材28は、内側ケージ部材26に対して半径方向に十分、近接した位置に配置される。二つの部材、及びスプラグ部材の構造及び寸法のため、スプラグ部材25の側部45により半径方向下方に付勢されたばね部材28は、スプラグ部材25が回転してケージから外に出る前に、内側ケージ26に接触する。スプラグが所望の程度、傾動した場合、スプラグ25の上方(半径方向外方)部分45は、ばね部材28に接触する一方、該ばね部材は、スプラグの下方(半径方向内方)部分47がケージ部材の開口部又は窓部42を通じて付勢される前に、一点にて内側ケージ26に接触する。
【0043】また、可撓性の延伸可能なエラストマーばね部材28も「ポップ」の衝撃力に対する減衰作用がある。これは、衝撃エネルギを吸収し、内側ケージを損傷しないように保護する。また、レース部材間で、外側ケージ即ち第二のケージを省くことにより追加のスペースが得られるため、内側ケージを僅かにより半径方向外方の半径方向位置に配置することが可能となる。このことは、同様に図17に図示するように、スプラグがより広い範囲で回転することを可能にする。
【0044】上述したように、本発明に従って、ワンウェイ・クラッチ機構20′に対して延伸可能なリングばね部材28′を設けることも可能であるが、この場合、ケージ部材26′は、リングばね部材の半径方向外方の位置に配置される。この代替的な実施例は、図14に示してある。本発明のこの実施例は、スプラグの内端を共に内側レースにて近接する位置に配置することが出来るため、従来のスプラグにて高トルク性能を得ることが出来る。また、内側レースにて大きいくさび止め面を有するスプラグを使用して、高トルク性能を持たせることも可能である。
【0045】本発明のもう一つの実施例が、図15[A]に示してある。この実施例は、内側レース24と外側レース22との間に配置された延伸可能なリングばね部材100のみを使用するものである。ケージ部材は、一切、利用しない。この実施例は、クラッチ機構に要求される性能が比較的小さい低廉な適用例にも採用可能である。この実施例の場合、ばね部材100は、上述の実施例と同一の材料で形成し、また、同一の性質を有することが好ましい。
【0046】また、本発明に従って使用されるばね部材の厚さは、スプラグ部材の長手方向長さの50%以下、又は内側レースと外側レースとの間の環状スペースの半径方向距離(図2のH)の50%以下とする必要がある。この点に関し、ばね部材の厚さTは、環状スペースの半径方向高さHの20%以下であることが好ましい。厚さTが薄く又は狭小なばね部材を提供することにより、本発明のばねの設計は、環状のエラストマーばね部材を備える公知のクラッチの場合よりも使用する材料が少なくて済む。
【0047】また、図15[A]に示した実施例において、ばね部材100は、成形による連続的な単一体としてのばね部材であり、付勢タブ又は指状体が存在しない、均一に離間した窓部を複数、備えることが好ましい(図7参照)。しかしながら、窓部40′の周方向寸法は、スプラグ部材の外形と相俟って、窓部40′の一つの側部の少なくとも一つの縁部39がスプラグ部材の外面と均一な状態で接触しているようなものにする必要がある。これは、図15[B]に示してある。
【0048】
【発明の効果】上述したように、本発明は、スプラグの完全な同調を可能にし、また、公知の二重ケージ・クラッチ機構よりも低コストで且つより低廉に製造し且つ組み立てることの出来る、単一ケージのワンウェイ・クラッチ機構を提供するものである。また、第二のケージを不要にする結果、スプラグは、より大きいくさび止め面を備えることが可能となり、このため、二重ケージのスプラグ・クラッチ機構よりもトルク性能が増したクラッチ機構を実現することが可能となる。当該技術分野で公知のある種のクラッチの設計のスプラグ部材のくさび止め外面は、剛性な外側ケージの窓部に嵌まり得るように、幅Wが制限される(図2参照)。本発明のスプラグの場合、かかる制限はない。
【0049】また、該延伸可能なばね部材は、スプラグの完全な同調を保つのを助ける働きをし、また、これと同時に、スプラグの「ポッピング」を防止し且つ「ポップ」したスプラグがその通常の位置に戻るのを助ける弾性及び偏倚力を提供する。また、このばね部材は、「ポップ」により生じた力を吸収して、変形したり、又は損傷しないように金属製の単一ケージの部材を保護する。このことは、より耐久性のあるクラッチ機構とし、また、その寿命を引き延ばすことになる。
【0050】環状リングばね部材は、ある点では、外側ケージ部材と同様に作用するが、第二のケージ部材の幾つかの欠点はなく、また、従来の二重ケージ・クラッチ機構よりも有利なクラッチ機構を提供する。例えば、ばね部材は、同調実行するのに十分に剛性であるが、独立的な金属製外側ケージ部材よりも低廉である。更に、環状リングばね部材の使用により、二重ケージ・クラッチ機構に使用される平形ばね又は個々のスプラグばね等が不要となる。また、剛性な第二のケージ部材が不要となることは、一端に大きいくさび止め面を有するスプラグの使用を可能にする。
【0051】ばね部材28に形成された開口部即ち窓部40の周方向幅は、スプラグ部材25の外側面と、僅かに締まり嵌めするような寸法とすることが好ましい。このような寸法としたばねは、スプラグを確実に保持し、また、時間の経過と共に材料が弛緩することを可能にする。
【0052】内側(又は外側)ケージ部材は、鋼のような金属部材で出来たものであることが好ましいが、スプラグを軸方向に整合させるのに十分に剛性である剛性なプラスチック材料又はその他の任意の材料で形成してもよい。上述したように、弾性的なリングばね部材は、スプラグに対して付勢力を提供し、ケージ及びリングの複合作用がスプラグの完全な同調を可能にする。
【0053】本発明によるば部材の弾性は、係合中のばねを更に減衰させる。これは、クラッチ機構の騒音及び振動を軽減する。更に、本発明によるばね部材は、延伸可能なばね部材材料が破断する迄の許容可能な変形度が大きいから、二重ケージ・クラッチ機構に使用される金属製の平形ばねのようなばねよりもその疲労寿命が長い。
【0054】更に、弾性的なばね材料の耐久性及び延伸性のため、本発明によるスプラグは、自動的な組み立て工程にて、ケージ及びばね内に挿入可能である。二重ケージ・クラッチ機構の自動的な組み立ては、ばねを損傷させずに行うことは難しい。
【0055】本発明は、金属製の付勢ばねを利用する全てのクラッチ機構を改良するものである。該スプラグ部材は、フライ・ホイール回転モードから係合モードに移行するとき、係合する前に短時間(通常、0.01秒以下)スキッド(skid)する。このスキッド動作は、接触面が交互に滑り及び固着することにより発生され、また、駆動チェーンのような外部の振動発生源に起因する、高振動数の振動を特徴とする。振動が減衰されるまで、スプラグには、荷重が加わらない。可撓性の延伸性エラストマー材料で出来た本発明によるリング部材は、振動を減衰して、全てのスプラグ部材に対しより静粛で且つより均一な係合状態を実現する。
【0056】本発明を実施する最良の形態について詳細に説明したが、本発明の当業者には、特許請求の範囲に記載した本発明を実施するため、各種の代替的な設計及び実施例が認識されよう。
【出願人】 【識別番号】591001709
【氏名又は名称】ボーグ−ワーナー・オートモーティブ・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】BORG−WARNER AUTOMOTIVE INCORPORATED
【出願日】 平成8年(1996)1月8日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 恭三 (外6名)
【公開番号】 特開平8−247175
【公開日】 平成8年(1996)9月24日
【出願番号】 特願平8−608