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【発明の名称】 ラクトン化合物の開環重合によるポリエステル型マクロモノマーの製造方法
【発明者】 【氏名】船水 智行

【氏名】南部 洋子

【氏名】木原 伸浩

【氏名】遠藤 剛

【目的】 分子量分布が狭く、重合性官能基が確実に導入された、高機能高分子材料の原料として有用なポリエステル型マクロモノマーを容易に製造する方法を提供すること。
【構成】 本発明のラクトン化合物の開環重合によるポリエステル型マクロモノマーの製造方法は、下記〔化1〕の一般式(I)で表されるラクトン化合物を、下記〔化2〕の一般式(II)で表される重合性官能基含有シリルエーテル化合物、または下記〔化3〕の一般式(III) で表されるヘキサアルキルジシロキサン化合物および下記〔化4〕の一般式(IV)で表される重合性官能基含有アルコール化合物と反応させることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記〔化1〕の一般式(I)で表されるラクトン化合物を、下記〔化2〕の一般式(II)で表される重合性官能基含有シリルエーテル化合物、または下記〔化3〕の一般式(III) で表されるヘキサアルキルジシロキサン化合物および下記〔化4〕の一般式(IV)で表される重合性官能基含有アルコール化合物と反応させることを特徴とする、ラクトン化合物の開環重合によるポリエステル型マクロモノマーの製造方法。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【請求項2】 触媒として、アルカリ金属フッ化物塩および/またはテトラアルキルアンモニウムフルオライドを用いる請求項1記載のラクトン化合物の開環重合によるポリエステル型マクロモノマーの製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ラクトン化合物を、重合性官能基含有シリルエーテル化合物、またはヘキサアルキルジシロキサン化合物および重合性官能基含有アルコール化合物と反応させることを特徴とする、ラクトン化合物の開環重合によるマクロモノマーの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】マクロモノマーは、高分子化合物の末端に重合性官能基(重合可能な官能基)を有する高分子量モノマーであり、該マクロモノマーの単独重合により櫛形ポリマーが得られ、該マクロモノマーと一般のモノマーとの共重合によりグラフトコポリマーが得られる。また、上記マクロモノマーは、疎水性主鎖に親水性の側鎖を持つといった高機能高分子材料へ応用されている。親水性マクロモノマーとしてのラクトンポリエステルのマクロモノマーは、親水性のグラフト構造を持つグラフト共重合物の原料等として期待される。
【0003】従来、ラクトン化合物を開環重合させてラクトンポリエステルを製造する方法としては、アルカリ金属、金属アルコキサイドによるアニオン重合、金属アルキルによる配位アニオン重合、金属ハロゲン化物によるカチオン重合等の重合方法が知られている。しかし、これらの方法により得られるポリエステル化合物はいずれも分子量分布が広い。また、上記ポリエステル化合物を上述の用途に用いるには、ポリマー鎖末端に確実に重合性官能基が導入されたものを製造することが望まれる。このため、末端にヒドロキシ基を持つポリエステル化合物をアクリル酸クロライド等と反応させる方法は、上記の重合性官能基が確実に導入できない等、マクロモノマーの製造方法としては適していなかった。
【0004】従って、本発明の目的は、分子量分布が狭く、重合性官能基が確実に導入された、高機能高分子材料の原料として有用なポリエステル型マクロモノマーを容易に製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記目的を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、特定のラクトン化合物を、特定の重合性官能基含有シリルエーテル化合物、または特定のヘキサアルキルジシロキサン化合物および特定の重合性官能基含有アルコール化合物を開始剤(重合開始剤)として開環重合させることにより、容易に分子量分布の狭いポリエステル型マクロモノマーが得られ、該マクロモノマーは1分子中に1個の重合性官能基と1個のシリルエーテル基とが確実に導入されていることを知見した。
【0006】本発明は、上記知見に基づきなされたもので、下記〔化5〕(前記〔化1〕と同じ)の一般式(I)で表されるラクトン化合物を、下記〔化6〕(前記〔化2〕と同じ)の一般式(II)で表される重合性官能基含有シリルエーテル化合物、または下記〔化7〕(前記〔化3〕と同じ)の一般式(III) で表されるヘキサアルキルジシロキサン化合物および下記〔化8〕(前記〔化4〕と同じ)の一般式(IV)で表される重合性官能基含有アルコール化合物と反応させることを特徴とする、ラクトン化合物の開環重合によるポリエステル型マクロモノマーの製造方法を提供するものである。
【0007】
【化5】

【0008】
【化6】

【0009】
【化7】

【0010】
【化8】

【0011】以下、本発明のラクトン化合物の開環重合によるポリエステル型マクロモノマーの製造方法について詳細に説明する。
【0012】本発明の製造方法に使用されるラクトン化合物におけるアルキレン基としては、例えば、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、ヘキサメチレン、ヘプタメチレン、オクタメチレン、ノナメチレン、デカメチレン、メチルエチレン、メチルトリメチレン、メチルテトラメチレン、エチルテトラメチレン、プロピルテトラメチレン、ジメチルテトラメチレン等の基が挙げられる。従って、上記一般式(I)で表されるラクトン化合物としては、例えば、γ- バレロラクトン、δ- バレロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−β−プロピオラクトン、β−メチル−β−プロピオラクトン、3−n−プロピル−δ−バレロラクトン、6,6−ジメチル−δ−バレロラクトン等が挙げられる。
【0013】本発明の製造方法に使用される上記一般式(II)で表される重合性官能基含有シリルエーテル化合物、上記一般式(III) で表されるヘキサアルキルジシロキサン化合物および上記一般式(IV)で表される重合性官能基含有アルコール化合物は、それぞれ上記ラクトン化合物の開環重合の開始剤として使用される。
【0014】上記重合性官能基含有シリルエーテル化合物および上記ヘキサアルキルジシロキサン化合物におけるアルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル等の基が挙げられる。
【0015】上記重合性官能基含有アルコール化合物としては、例えば、アクリル酸またはメタクリル酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、ペンチルグリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,12−ジヒドロキシラウリル等のグリコール類とのモノエステルや、グリシジルアルコール等のエポキシアルコールや、p−ビニルベンジルアルコール、p−イソプロペニルベンジルアルコールまたはそのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイド付加物や、p−ビニルフェノール、p−イソプロペニルフェノールのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
【0016】上記重合性官能基含有シリルエーテル化合物におけるアルコール残基としては、上記重合性官能基含有アルコール化合物として例示した化合物の残基等が挙げられる。
【0017】本発明の製造方法によって得られるポリエステル型マクロモノマーは、ラクトンポリエステル化合物であり、該ラクトンポリエステル化合物は、その末端にシリルエーテル基が組み込まれているときは下記〔化9〕の一般式(V)の構造をとる。
【0018】
【化9】

【0019】また、上記ラクトンポリエステル化合物は、その末端にヒドロキシル基が組み込まれているときは下記〔化10〕の一般式(VI)の構造をとる。
【0020】
【化10】

【0021】本発明の製造方法においては、触媒として、アルカリ金属フッ化物塩および/またはテトラアルキルアンモニウムフルオライド(以下、両者を総称して「フッ化物触媒」という)を用いることが好ましく、該触媒を用いることによって反応が著しく促進され、短時間でかつ温和な条件下に目的のポリエステル型マクロモノマーである上記ラクトンポリエステル化合物を得ることができる。
【0022】上記フッ化物触媒のうち、アルカリ金属フッ化物塩としては、例えば、リチウムフルオライド、ナトリウムフルオライド、カリウムフルオライド、セシウムフルオライド等が挙げられ、テトラアルキルアンモニウムフルオライドとしては、例えば、テトラブチルアンモニウムフルオライド等が挙げられる。
【0023】上記フッ化物触媒の使用量は、特に制限を受けないが、通常、上記ラクトン化合物に対して、0.01〜20モル%が好ましく、0.1〜10モル%が更に好ましい。上記使用量が0.01モル%未満であると、触媒の添加効果が認められず、また、20モル%を超えても反応時間の短縮効果は小さくなる傾向にある。
【0024】本発明の製造方法において、開始剤として、上記重合性官能基含有アルコール化合物および上記ヘキサアルキルジシロキサン化合物を使用する場合、両者の使用割合(重合性官能基含有アルコール化合物に対するヘキサアルキルジシロキサン化合物の使用割合)としては、特に制限を受けないが、重合性官能基含有アルコール化合物の50モル%のヘキサアルキルジシロキサン化合物(当量)を用いることが好ましい。上記ヘキサアルキルジシロキサン化合物を過剰に用いても、上記アルコール化合物を過剰に用いても、何れの場合も、本発明の製造方法には特に問題はないが、過剰に用いた成分は廃棄物となるので、両者を当量用いることが好ましい。
【0025】また、本発明の製造方法における上記開始剤の使用量は、目的物であるポリエステル型マクロモノマー(ラクトンポリエステル化合物)の重合度によって任意に変化させることができ、上記開始剤の使用量を多くすると比較的低重合度のマクロモノマーが得られ、上記開始剤の使用量を少なくすると比較的高重合度のマクロモノマーが得られるので、用いるラクトン化合物に対して同当量以下であるのが好ましいが、上記開始剤は、通常、上記ラクトン化合物に対して0.0001当量以上、好ましくは0.001〜1当量で用いられる。
【0026】本発明の製造方法における反応温度は、0〜150℃が好ましく、また、溶媒は、使用する必要はないが、上記反応温度の制御等を目的として各種の有機溶媒、例えば、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、ジアルキルエーテル、脂環式エーテル、アルキルアミド、ジアルキルスルホキシド等を用いることもできる。
【0027】本発明の製造方法における反応時間は、反応温度、重合度、触媒の有無、溶媒の有無と種類により異なるが、通常、数十分〜20時間である。
【0028】本発明の製造方法で得られるポリエステル型マクロモノマーである上記ラクトンポリエステル化合物は、分子量分布が狭く、重合性基を含有しており、櫛形ポリマー、親水性のグラフト構造を持つグラフトコポリマー等の機能性高分子材料の原料として有用である。
【0029】
【実施例】以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例によって何ら制限を受けるものではない。
【0030】実施例1重合管にセシウムフルオライド0.76g(5ミルモル)をとり、アルゴン気流下にしながら、これにεーカプロラクトン11.4g(0.1モル)、4−ヒドロキシブチルメタクリレート0.32g(2ミリモル)およびヘキサメチルジシロキサン0.16g(1ミリモル)を加え、この重合管内を脱気した後、封管した。この後、激しく撹拌しながら60℃で5時間反応させた後、反応を終了し、管内の触媒(セシウムフルオライド)をろ別して反応液を得た。得られた反応液を約50mlのテトラヒドロフランに溶解させ、これに約1000mlのヘキサンを加えることにより再沈澱操作を行なった。得られた沈澱物をろ過した後、減圧乾燥して、白色粉末の重合物11.0g〔カプロラクトンの変換率(以下、単に変換率という)92%〕を得た。
【0031】得られた重合物の分析結果は下記の通りであり、該重合物が目的物のポリエステル型マクロモノマーであるラクトンポリエステル化合物であることを確認した。
【0032】IR分析:1735cm-1(エステル)
1HNMR(CCl4)分析(δ, ppm) :0.10(s,OSi(CH3)3), 1.10-2.05(m,(CH2)3,(CH2)2,CH3-C=),2.28(t,CH2COO),3.56(t,CH2OSi), 4.04(t,CH2OCO), 5.30-6.02(CH2=C)ゲルパーミェーション(GPC)分析(溶媒テトラヒドロフラン):数平均分子量(Mn)=6120(ポリスチレン換算)
分子量分布:重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)=1.12【0033】実施例2〜5セシウムフルオライドの使用量(ミリモル)、4−ヒドロキシブチルメタクリレートの使用量(ミリモル)およびヘキサメチルジシロキサンの使用量(ミリモル)を各々下記〔表1〕に示す使用量(ミリモル)に代えて、実施例1と同様の操作により触媒をろ別し、得られた反応液から未反応のε−カプロラクトンを減圧下に留去して、無色液体を得た。得られた無色液体をそれぞれIRおよび 1HNMRにより、分析したところ、所望のスペクトルを示した。また、上記無色液体について、それぞれ収量、変換率、数平均分子量およびMw/Mn(分子量分布)を求め、それらの結果を実施例1の結果を含めて下記〔表1〕に示す。この結果より、上記無色液体がそれぞれ目的物のポリエステル型マクロモノマーであるラクトンポリエステル化合物であることを確認した。
【0034】
【表1】

【0035】実施例64−ヒドロキシブチルメタクリレート0.80g(5ミリモル)をグリシジルアルコール0.37g(5ミリモル)に代えた以外は実施例2と同様の操作を行い、白色粉末の重合物11.2g(変換率91%)を得た。得られた重合物のGPC分析によるMnは3700であり、Mw/Mnは1.57であった。その他の分析結果は以下の通りであり、上記重合物が目的物のポリエステル型マクロモノマーであるラクトンポリエステル化合物であることを確認した。
【0036】IR分析:1735cm-1(エステル)
1HNMR(CCl4)分析(δ, ppm) :下記〔化11〕に示す。
【0037】
【化11】

【0038】実施例74−ヒドロキシブチルメタクリレート0.80g(5ミリモル)をp−(4−ヒドロキシブチルオキシ)メチルスチレン1.39g(5ミリモル)に代えた以外は実施例2と同様の操作を行い、白色粉末の重合物12.4g(変換率93%)を得た。得られた重合物のGPC分析によるMnは4540であり、Mw/Mnは1.42であった。その他の分析結果は以下の通りであり、上記重合物が目的物のポリエステル型マクロモノマーであるラクトンポリエステル化合物であることを確認した。
【0039】IR分析:1735cm-1(エステル)
1HNMR(CCl4)分析(δ, ppm) :0.10(s,OSi(CH3)3), 1.10-1.95((CH2)3 ), 2.28(t,CH2COO),3.3-3.75(m,OCH2), 4.05(t,CH2OCO), 4.30-4.52(Ar-CH2-O),5.00-5.90(CH2=C), 6.30-6.90(Ar-CH=), 7.05-7.30(Ar)【0040】実施例84−ヒドロキシブチルメタクリレート0.80g(5ミリモル)およびヘキサメチルジシロキサン0.40g(2.5ミリモル)を、4−トリメチルシロキシブチルメタクリレート1.20g(5ミリモル)に代えた以外は実施例2と同様の操作を行い、無色液体の重合物11.8g(変換率93%)を得た。得られた重合物のGPC分析によるMnは3520であり、Mw/Mnは1.15であった。その他の分析結果は以下の通りであり、上記重合物が目的物のポリエステル型マクロモノマーであるラクトンポリエステル化合物であることを確認した。
【0041】IR分析:1735cm-1(エステル)
1HNMR(CCl4)分析(δ, ppm) :0.10(s,OSi(CH3)3), 1.10-2.05(m,(CH2)3,(CH2)2,CH3-C=),2.28(t,CH2COO), 3.56(t,CH2OSi), 4.04(t,CH2OCO), 5.30-6.02(CH2=C)【0042】実施例94−ヒドロキシブチルメタクリレート0.80g(5ミリモル)を2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.65g(5ミリモル)に代えた以外は実施例2と同様の操作を行い、無色液体の重合物11.5g(変換率92%)を得た。得られた重合物のGPC分析によるMnは3460であり、Mw/Mnは1.33であった。その他の分析結果は以下の通りであり、上記重合物が目的物のポリエステル型マクロモノマーであるラクトンポリエステル化合物であることを確認した。
【0043】IR分析:1735cm-1(エステル)
1HNMR(CCl4)分析(δ, ppm) :0.10(s,OSi(CH3)3), 1.10-2.05(m,(CH2)3,CH3-C=), 2.28(t,CH2COO),3.56(t,CH2OSi), 4.04(t,CH2OCO), 5.30-6.02(CH2=C)【0044】上記実施例1〜9の結果から明らかなように、上記一般式(I)で表される重合性官能基含有シリルエーテル化合物、または上記一般式(II)で表されるヘキサアルキルジシロキサン化合物および上記一般式(III) で表される重合性官能基含有アルコール化合物を開始剤として、ラクトン化合物を開環重合させる本発明の製造方法によって、重合性官能基を1分子毎に確実に導入されたラクトンポリエステル化合物(ポリエステル型マクロモノマー)を、温和な条件下、短時間の反応で高収率で製造することができる。さらに、この製造方法によって得られたポリエステル型マクロモノマーは、重合性基の反対側に反応性に富むシリルエーテル基を持つので、反応性基を持つ櫛形ポリマーやグラフトポリマー等の高機能高分子材料の原料として有用である。
【0045】
【発明の効果】本発明の製造方法によれば、分子量分布が狭く、重合性官能基が確実に導入された、高機能高分子材料の原料として有用なポリエステル型マクロモノマーを容易に製造することができる(請求項1)。また、本発明の製造方法において、特定のフッ化物触媒を用いることにより、反応が著しく促進され、短時間でかつ温和な条件下に上記ポリエステル型マクロモノマーを製造することができる(請求項2)。
【出願人】 【識別番号】000000387
【氏名又は名称】旭電化工業株式会社
【出願日】 平成6年(1994)4月26日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
【公開番号】 特開平7−292086
【公開日】 平成7年(1995)11月7日
【出願番号】 特願平6−88912