トップ :: C 化学 冶金 :: C07 有機化学




【発明の名称】 化学発光によるホスホモノエステラーゼの高感度定量法
【発明者】 【氏名】須釜 裕司

【氏名】片山 勝博

【氏名】黒岩 勝昌

【氏名】長澤 健

【目的】 簡便、高感度かつ極めて短時間でホスホモノエステラーゼを測定できる化学発光法によるホスホモノエステラーゼの定量法を提供する。
【構成】 試料中のホスホモノエステラーゼとホスホモノエステラーゼの酵素反応基質であるルミノール誘導体リン酸エステルとを反応させ、生成する遊離のルミノール誘導体を化学発光させることによる試料中のホスホモノエステラーゼの定量法において;酵素反応基質として、式(I)
【特許請求の範囲】
【請求項1】 試料中のホスホモノエステラーゼとホスホモノエステラーゼの酵素反応基質であるルミノール誘導体リン酸エステルとを反応させ、生成する遊離のルミノール誘導体を化学発光させることによる試料中のホスホモノエステラーゼの定量法において;酵素反応基質として、式(I)
【化1】

(式中、R1及びR2は、同一又は相異なり、水素又は炭素数1−4のアルキル基を表す)で示されるルミノール誘導体リン酸エステル又はその塩を用い、生成した遊離のルミノール誘導体を、過酸化水素及びペルオキシダーゼにより化学発光させることを特徴とする方法。
【請求項2】 試料中のホスホモノエステラーゼと請求項1に記載の式(I)のルミノール誘導体リン酸エステルとを反応させ、次いで過酸化水素及びペルオキシダーゼを反応させて、総発光量を測定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】 ホスホモノエステラーゼを含む試料、請求項1に記載の式(I)のルミノール誘導体リン酸エステル、過酸化水素及びペルオキシダーゼを同時に混合し、単位時間当りの発光量が一定となった後の単位時間当りの発光量を測定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】 請求項1に記載の式(I)のルミノール誘導体リン酸エステル、過酸化水素及びペルオキシダーゼを予め混合して一定時間放置することにより、不純物である遊離のルミノール誘導体を除去した後、試料中のホスホモノエステラーゼを定量することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】 ホスホモノエステラーゼが、アルカリ性ホスファターゼである請求項1に記載の方法。
【請求項6】 ペルオキシダーゼが、アルスロマイセス属又はコプリヌス属に属する真菌由来の酵素である請求項1に記載の方法。
【請求項7】 発光反応時のpHが、9から11の範囲である請求項1に記載の方法。
【請求項8】 構成試薬としてi)請求項1に記載の式(I)のルミノール誘導体リン酸エステルii)過酸化水素及びiii)ペルオキシダーゼを含む化学発光法によるホスホモノエステラーゼの定量用キット。
【請求項9】 ホスホモノエステラーゼで標識した測定対象物に対する抗原又は抗体を試料中の測定対象物と抗原−抗体反応させ;測定対象物と結合した又は結合しなかったホスホモノエステラーゼを、請求項1に記載の方法により定量することによる測定対象物の定量方法。
【請求項10】 請求項1に記載の式(I)のルミノール誘導体リン酸エステルに包含される5−n−ブチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ホスフェート(5−nBAHPP)、6−ジメチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ホスフェート(6−DMHPP)、7−ジメチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ホスフェート(7−DMHPP)、6−アミノ−3−ヒドロフタラジンオン−1−ホスフェート(6−AHPP)及び7−アミノ−3−ヒドロフタラジンオン−1−ホスフェート(7−AHPP)。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、化学発光分析法を利用したホスホモノエステラーゼの定量法に関する。更に詳しくは、簡便でしかも短時間で実施し得る高感度のホスホモノエステラーゼの定量法に関する。
【0002】
【従来の技術】化学発光分析法は、検出感度が高く、種々の超微量成分の定性・定量分析、酵素活性測定に利用されており、その例として次の方法が知られている。
【0003】A)試料中のイソルミノール誘導体に過酸化水素及びマイクロペルオキシダーゼを反応させ、化学発光を起こし、イソルミノール誘導体の量を測定する方法(メソッズ・イン・エンジモロジイ Methods in Enzymology (New York、Academic Press)、57巻、424頁、1978年)。
【0004】B)試料中のアクリジニウムエステル誘導体に過酸化水素を反応させ、化学発光させてアクリジニウムエステル誘導体を定量する方法(クリニカル・ケミストリー Clinical Chemistry、29巻、1480頁、1983年)。
【0005】C)試料中のペルオキシダーゼに、ルミノール及び過酸化水素を反応させ、化学発光させてペルオキシダーゼ活性を測定する方法(アナリティカル・バイオケミストリー Analytical Biochemistry、97巻、248頁、1979年)。
【0006】D)試料中のグルコースオキシダーゼとグルコースとを反応させて、生成する過酸化水素をルミノール及びペルオキシダーゼで化学発光させ、グルコースオキシダーゼ活性を測定する方法(クリニカル・ケミストリー Clinical Chemistry、31巻、430頁、1985年)。
【0007】E)アルカリ条件下、試料中のアルカリ性ホスファターゼに3−(2′−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(3″−スピロホスホリル)フェニル−1,2−ジオキセタン・2ナトリウム塩(AMPPD)を反応させると同時に化学発光させてアルカリ性ホスファターゼ活性を測定する方法(ジャーナル・オブ・バイオルミネッセンス・アンド・ケミルミネッセンス Journal of Bioluminescence and Chemiluminescence、4巻、99頁、1989年)。
【0008】F)試料中のアルカリ性ホスファターゼとルミノールリン酸エステルとを反応させた後、生成したルミノール誘導体をフェリシアン化カリウムにより化学発光させてアルカリ性ホスファターゼ活性を測定する方法(アナリティカル・サイエンスズ Analitical Sciences、8巻、779頁、1992年)。
【0009】ここで、本発明の測定対象又は指標となるホスホモノエステラーゼとは、リン酸モノエステルを加水分解する酵素を総称するものであり、アルカリ性側に至適pHをもつアルカリ性ホスファターゼと、酸性側に至適pHをもつ酸性ホスファターゼとに大別される。生体内では、前者は、小腸、胎盤、骨及び肝などに分布し、臨床的には、骨疾患、肝・胆道疾患、妊娠、悪性腫瘍などの診断に用いられている。また、前者は、酵素免疫測定法における標識酵素として多用されている。後者は、前立腺組織とその分泌物中に多量に含まれるが、その他赤血球、肝、腎、骨髄などに分布しており、臨床的には、前立腺癌などの診断に用いられている。
【0010】また、下記式(II)で示されるルミノールは、酸化されることにより特異な発光(蛍光)を起こす、典型的な化学発光物質であり、裁判化学の分野で有名な血液の検出(いわゆるルミノール反応)、その他の分野で広く利用されている。
【0011】
【化2】

【0012】
【発明が解決しようとする課題】化学発光法は、(1)測定感度が非常に高いために侠雑物の影響を受け易く(即ちノイズが大きく)ブランク値が高くなるため、測定し得る幅が狭い、(2)測定結果が出るまでの時間が長い等の共通の欠点を有している。
【0013】本発明と同じくホスホモノエステラーゼを定量又は活性測定する方法として、上記先行例E)及びF)の方法がある。E)の方法は、通常単位時間当たりの発光量を測定する方法、いわゆるレート法を採用しているが、発光開始から単位時間当たりの発光量が一定となるまでの時間が長く(およそ20分〜30分)、結果として、測定結果が出るまでに長時間を要するという欠点がある。更に、E)の方法で用いている基質(AMPPD)の合成が困難で、非常に高価である。その結果、基質の入手が容易でなく、実用上問題がある。
【0014】F)の方法は、総発光量を測定する方法、いわゆるエンドポイント法であるが、発光量が小さいので、感度が低い。更に、感度を上げようとすると、酵素−基質反応の時間を長くしなければならず(およそ30分)、測定結果がでるまでの時間が長くなる等の欠点を有する。
【0015】そこで、本発明が解決しようとする課題は、上記のような欠点を改良し、短時間かつ高感度でしかも簡便に試料中の微量のホスホモノエステラーゼを測定できる化学発光定量法を提供することである。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、化学発光による微量のホスホモノエステラーゼの定量法について鋭意検討し、基質として特定のルミノール誘導体リン酸エステルを用い、前記F)の方法で用いているフェリシアン化カリウムの代りに、過酸化水素及びペルオキシダーゼを用いることにより、短時間かつ高感度で簡便に微量のホスホモノエステラーゼを定量できることを見い出した。
【0017】さらに、ホスホモノエステラーゼと上記特定のルミノール誘導体リン酸エステルの酵素−基質反応とルミノール誘導体の発光反応を同時に進行させると、極めて短時間で、単位時間当たりの化学発光量が事実上一定となることを見い出した。そして、発光量が一定となった時点で、その発光量を測定し、単位時間当りの発光量から、ホスホモノエステラーゼの量を算出することにより、極めて短時間かつ高感度で簡便に微量のホスホモノエステラーゼを定量できることをも見い出した。
【0018】本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、本発明の第一の要旨は、試料中のホスホモノエステラーゼとホスホモノエステラーゼの酵素反応基質であるルミノール誘導体リン酸エステルとを反応させ、生成する遊離のルミノール誘導体を化学発光させることによる試料中のホスホモノエステラーゼの定量法において;酵素反応基質として、式(I)
【化3】

(式中、R1及びR2は、同一又は相異なり、水素又は炭素数1−4のアルキル基を表す)で示されるルミノール誘導体リン酸エステル又はその塩を用い、生成した遊離のルミノール誘導体を、過酸化水素及びペルオキシダーゼにより化学発光させることを特徴とする方法を提供することである。
【0019】本発明の第二の要旨は、構成試薬としてi)上記の式(I)で示されるルミノール誘導体リン酸エステルii)過酸化水素及びiii)ペルオキシダーゼを含む化学発光法によるホスホモノエステラーゼの定量用キットを提供することである。
【0020】本発明の第三の要旨は、ホスホモノエステラーゼで標識した測定対象物に対する抗原又は抗体を試料中の測定対象物と抗原−抗体反応させ;測定対象物と結合した又は結合しなかったホスホモノエステラーゼを、上記本発明の第一の要旨に係る方法で定量することによる測定対象物の定量方法を提供することである。
【0021】本発明の第四の要旨は、ホスホモノエステラーゼの基質に適する上記式(I)で示されるルミノール誘導体リン酸エステルに包含される新規化合物である5−n−ブチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ホスフェート(5−nBAHPP)、6−ジメチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ホスフェート(6−DMHPP)、7−ジメチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ホスフェート(7−DMHPP)、6−アミノ−3−ヒドロフタラジンオン−1−ホスフェート(6−AHPP)及び7−アミノ−3−ヒドロフタラジンオン−1−ホスフェート(7−AHPP)を提供することである。
【0022】以下、本発明を詳細に説明する。本発明で用いられるホスホモノエステラーゼを含む試料には、特に制限はなく、例えば、血清、血漿等の生体成分及びそれらを処理した液等が含まれる。また、本発明の第三の要旨であるホスホモノエステラーゼを指標とする酵素免疫測定法に応用する場合には、測定対象物に対する抗原又は抗体と結合したホスホモノエステラーゼを含む溶液及びそれらを処理した液等も含まれる。
【0023】本発明の方法で測定できるホスホモノエステラーゼは、IUPAC−IUBの命名法委員会でEC3.1.3.群に分類される酵素であり、基質であるリン酸エステル類を加水分解できるもの全てを含む。より具体的には、IUPAC−IUBの命名法委員会でEC3.1.3.1.群に分類されるアルカリ性ホスファターゼ及びEC3.1.3.2.群に分類される酸性ホスファターゼを例示できる。本発明の方法における化学発光反応は、アルカリ性条件下で検出されるため、アルカリ性ホスファターゼが特に好ましい。アルカリ性ホスファターゼは、小腸、胎盤、骨及び肝由来のものがあるが、いずれでも構わない。酸性ホスファターゼを測定する場合は、試料中の酸性ホスファターゼと基質とを酸性条件下で反応させた後、アルカリ性条件下で化学発光反応させるのが好ましい。
【0024】測定に供される試料の量は、通常10μl−2mlであり、好ましくは10−500μl、より好ましくは20−200μlである。
【0025】本発明で用いられるホスホモノエステラーゼの酵素基質は、下記式(I)
【化4】

(式中、R1及びR2は、同一又は相異なり、水素又は炭素数1−4のアルキル基を表し、Xは、水素又はメトキシ基を表す)で示されるルミノール誘導体リン酸エステル又はその塩(以下、単に「基質」と言うことがある)である。
【0026】式(I)のルミノール誘導体リン酸エステルの塩としては、アルカリ金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等が挙げられる。具体的には、2ナトリウム塩、2カリウム塩、2アンモニウム塩、2シクロヘキシルアンモニウム塩、2シクロヘキシルアミン塩等を例示できる。
【0027】本発明の方法において、ホスホモノエステラーゼの酵素基質として式(I)のルミノール誘導体リン酸エステル又はその塩を採用した理由は、(1)この基質が非常に安定であり、長期の保存が可能なこと、(2)この基質から遊離されるルミノール誘導体の化学発光効率が非常に高く、感度及び精度の高い測定が可能となること、(3)化学発光量がプラトーに達する時間が短く、全体の測定時間を短縮できること等である。
【0028】本発明で用いる基質は、おおむね前記した先行例F)(アナリティカル・サイエンスズ Analitical Sciences、8巻、779頁、1992年)に記載の方法に沿って合成することができる。本発明で用いる基質の合成方法を下記に示す。
【0029】
【化5】

[反応式中、R1及びR2は、前記定義の通りであり、Bnは、ベンジル基を示す。]
【0030】なお、上記反応式中の式(III)で示されるルミノール誘導体は、次のような方法で合成することができる。例えば、3−n−ブチルアミノフタルヒドラジドであれば、ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(Journal of the American Chemical Society、94巻、7536ページ、1972年)記載の方法により、また、4−ジメチルアミノフタルヒドラジドであれば、ケミッシェ・ベリヒテ(Chemishe Berichte、95巻、2018ヘ゜ーシ゛、1962年)記載の方法により合成することができる。
【0031】式(I)で示されるルミノール誘導体リン酸エステルのうち、好ましい基質として、5−アミノ−3−ヒドロフタラジンオン−1−ホスフェート(5−AHPP)、6−アミノ−3−ヒドロフタラジンオン−1−ホスフェート(6−AHPP)、7−アミノ−3−ヒドロフタラジンオン−1−ホスフェート(7−AHPP)、6−ジメチルアミノ−3−ヒドロフタラジンオン−1−ホスフェート(6−DMHPP)、7−ジメチルアミノ−3−ヒドロフタラジンオン−1−ホスフェート(7−DMHPP)及び5−n−ブチルアミノ−3−ヒドロフタラジンオン−1−ホスフェート(5−nBAHPP)が挙げられる。
【0032】また、これらの基質のうち、5−n−ブチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ホスフェート(5−nBAHPP)、6−ジメチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ホスフェート(6−DMHPP)、7−ジメチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ホスフェート(7−DMHPP)、6−アミノ−3−ヒドロフタラジンオン−1−ホスフェート(6−AHPP)及び7−アミノ−3−ヒドロフタラジンオン−1−ホスフェート(7−AHPP)は、文献未記載の新規化合物である。
【0033】本発明の方法で使用する基質の量は、試料50μlに対し、通常濃度0.01−100mMのもので1μl−10ml、好ましくは0.1−10mMのもので10μl−2ml、より好ましくは0.5−5mMのもので50μl−1mlである。
【0034】本発明で用いられるペルオキシダーゼは、過酸化水素の存在下に遊離のルミノール誘導体を化学発光させることができるものであれば特に制限はない。具体的には、アルスロマイセス(Arythromyces)属及びコプリヌス(Coprinus)属に属する菌類由来ものを例示できる。更に詳しくは、アルスロマイセス・ラモスス(Arythromyces ramosus)菌由来のもの及びコプリヌス・エイネレウス(Coprinuseinereus )菌由来のものが挙げられる。これらのうち容易に入手できるものとしては、シグマ社製のコードM4974のアルスロマイセス・ラモスス(Arythromyces ramosus)菌由来のものが挙げられる。
【0035】また、ペルオキシダーゼには、遺伝子工学により製造されたものも含まれる。さらに、天然由来のペルオキシダーゼを、蛋白質分解酵素等により、その構造の一部を加水分解等して得られたもの、又は化学修飾により得られたものであってペルオキシダーゼ活性を持つものも含まれる。
【0036】本発明の方法で用いるペルオキシダーゼの量は、測定の様式によって異なり、総発光量を測定する場合では、試料50μlに対し、通常濃度0.1−100U/mlのもので5μl−1mlであり、好ましくは0.5−50U/mlのもので10−200μlである。
【0037】単位時間当りの発光量を測定する場合では、使用するペルオキシダーゼの量は、試料50μlに対し、通常濃度0.1−10U/mlのもので10−500μlであり、好ましくは1.0−5.0U/mlのもので20−300μlである。
【0038】なお、後述する遊離のルミノール誘導体を除去するための前処理操作を行う場合や反応中にペルオキシダーゼ活性が低下する場合には、上記した濃度よりも希釈したペルオキシダーゼ溶液を、2回以上に分けて反応系に加えてもかまわない。
【0039】本発明の方法で用いる過酸化水素の量も、測定の様式によって異なり総発光量を測定する場合では、試料50μlに対し、通常濃度0.1−1000mMのもので5μl−1mlであり、好ましくは0.5−500mMのもので10−500μlあり、より好ましくは1−200mMのもので20−300μlである。単位時間当りの発光量を測定する場合では、使用する過酸化水素の量は、試料50μlに対し、通常濃度0.2−2.0mMのもので10−500μlであり、好ましくは0.5−1.5mMのもので20−300μlである。
【0040】なお、後述する前処理操作を行う場合や反応中にペルオキシダーゼ活性が低下する場合は、ペルオキシダーゼと同様に、上記した濃度より希釈した過酸化水素水を、2回以上に分けて反応系に加えてもかまわない。
【0041】次に、本発明の方法の反応条件について説明する。ホスホモノエステラーゼと式(I)で示されるルミノール誘導体リン酸エステルによる酵素−基質反応の温度は、通常10−60℃、好ましくは15−50℃、より好ましくは20−45℃である。
【0042】酵素−基質反応により生成する遊離のルミノール誘導体の発光反応の温度は通常10−60℃、好ましくは15−50℃、より好ましくは20−45℃である。
【0043】ホスホモノエステラーゼが、アルカリ性ホスファターゼである場合、酵素−基質反応及び発光反応はアルカリ性条件下で実施し、反応液のpHは通常7−13、好ましくは8−12、より好ましくは9−11である。
【0044】また、ホスホモノエステラーゼが、酸性ホスファターゼである場合、酵素−基質反応は、酸性条件下で実施し、反応液のpHは、通常2−7、好ましくは3−7、より好ましくは4−6であり、発光反応はアルカリ性条件下で実施し、反応液のpHは、通常7−13、好ましくは8−12、より好ましくは9−11である。
【0045】酸性ホスファターゼを測定する場合は、上記のように液性を変化させなければならないが、その手段としては、例えば、酸性緩衝液中で酵素−基質反応を行った後、反応液の一部を抜取り、アルカリ性緩衝液中に添加するか、又は、反応液中にアルカリ性緩衝液又は炭酸ナトリウム水溶液などのアルカリ性溶液を添加する。
【0046】酵素−基質反応及び発光反応に用いることができる緩衝液としては、有機アミン類、アミノアルコール類、無機塩、弱酸塩又はそれら複数を含む水溶液等を例示できる。具体的には、エタノールアミン類、塩化カリウム、塩化マグネシウム又はそれら複数を含む緩衝液を例示できる。緩衝液の濃度は、通常1−1000mMであり、好ましくは10−500mM、より好ましくは50−300mMである。
【0047】なお、ホスホモノエステラーゼが、アルカリ性ホスファターゼである場合には、同一の緩衝液を酵素−基質反応及び発光反応に用いることができるが、ホスホモノエステラーゼが、酸性ホスファターゼである場合には、上記のように酵素−基質反応及び発光反応のそれぞれの反応時のpHが異なり、酵素−基質反応に用いる緩衝液と発光反応に用いる緩衝液が異なっている必要がある場合もある。
【0048】本発明の方法で用いることができる緩衝液であって、アルカリ性条件下の反応に用いることができるものの具体例としては、1mM塩化マグネシウム及び0.1%牛血清アルブミン含有0.1Mジエタノールアミン溶液(pH9.8)、0.5Mm塩化マグネシウム含有50mM硼酸、50mM塩化カリウム溶液(pH10.0)、0.5mM塩化マグネシウム含有0.2M2−エチルアミノエタノール溶液(pH9.8)、0.5mM塩化マグネシウム含有100mM炭酸ナトリウム水溶液(pH10.0)、0.5mM塩化マグネシウム含有50mM炭酸水素ナトリウム水溶液(pH10.0)等が挙げられる。また、測定対象が酸性ホスファターゼであり、酸性条件下の酵素−基質反応に用いることができるものの具体例としては、100mMクエン酸水溶液(pH5.4)、50mMコハク酸水溶液(pH6.0)等が挙げられる。
【0049】反応によって発生した光の測定は、光電子倍増管等の発光測定装置によって測定される。このような装置として、スリーエム薬品社製のルマック/3M バイオカウンターM2010型ルミノメーター、アロカ社製のルミネッセンスリーダー BLR−201型ルミノメーター及びラボサイエンス社製のルミホトメーター TD−4000型ルミノメーター等を例示できる。
【0050】以下に、本発明の方法のうち、試料中のホスホモノエステラーゼと式(I)のルミノール誘導体リン酸エステル又はその塩とを反応させ、次いで過酸化水素及びペルオキシダーゼを反応させて、総発光量を測定する方法(いわゆるエンドポイント法)について説明する。
【0051】本方法においては、基質であるルミノール誘導体リン酸エステルの溶液を反応槽(例えば、試験管)に入れ、ここにホスホモノエステラーゼを含有する試料を加えて酵素−基質反応させた後、ペルオキシダーゼ溶液及び過酸化水素水を加え、化学発光を開始させ一定時間の総発光量を測定する。また、試料の代わりに、緩衝液を使い、上記と同様の方法で総発光量を測定し、ブランク値とする。発光量とブランク値との差を試料の実際上のデータとする。
【0052】酵素−基質反応の時間は、通常1−120分、好ましくは3−60分、より好ましくは5−30分である。発光反応の時間は、通常0.1−30分、好ましくは0.1−20分、より好ましくは0.1−10分である。
【0053】次に、本発明の方法のうち、ホスホモノエステラーゼを含む試料、式(I)のルミノール誘導体リン酸エステル又はその塩、過酸化水素及びペルオキシダーゼを同時に混合し、単位時間当りの発光量が一定になった後の単位時間当りの発光量を測定する方法(いわゆるレート法)について説明する。
【0054】本方法においては、基質溶液、ペルオキシダーゼ溶液、過酸化水素水及びホスホモノエステラーゼを含有する試料を反応槽(例えば、試験管)に入れ、化学発光を開始させる。一定時間反応させると、やがて、単位時間当たりの発光量が実質上一定となる。発光量が実質上一定となる時間を予め設定しておき、化学発光開始からその設定した時間の経過後、新たに発光する一定時間当たりの発光量を測定する。また、試料の代わりに、緩衝液を用い、上記と同様の方法で単位時間当りの発光量を測定しブランク値とする。測定した単位時間当りの発光量とブランク値との差を試料の実際上のデータとする。
【0055】この方法では、酵素−基質反応と発光反応が同時に行われるので、反応溶液はアルカリ性であるのが特に好ましい。その理由は、前述したように、発光反応がアルカリ性条件下で検出されるからである。従って、測定されるホスホモノエステラーゼは、酵素−基質反応もアルカリ性条件下で進行するアルカリ性ホスファターゼであることが特に好ましい。
【0056】本方法によれば、単位時間当たりの発光量が実質上一定となるまでの時間が、通常3−5分と非常に短いので、測定時間が顕著に短縮される。
【0057】なお、上記2つの方法において、基質溶液の中に微量混入している不純物である遊離のルミノール誘導体は、測定結果のノイズを大きくする原因となるので、試料を添加する前に、基質であるルミノール誘導体リン酸エステルの溶液を反応槽(例えば、試験管)に入れ、ペルオキシダーゼ溶液及び過酸化水素水を加え、基質溶液中に混入している遊離のルミノール誘導体を予め、発光反応させて除去することにより、ノイズを小さくしてより精度の高い測定を行うことができる。この様な前処理を行うことにより、ノイズとなる遊離のルミノール誘導体による発光量が、データに反映されないようにし、シグナル/ノイズ比をより大きくすること、即ち測定感度をより高くすることができる。
【0058】本発明の第二の要旨であるホスホモノエステラーゼの定量用キットは、上述した本発明の定量方法から明らかなように、構成試薬としてi)式(I)で示されるルミノール誘導体リン酸エステル又はその塩ii)過酸化水素及びiii)ペルオキシダーゼを含む。これらの構成試薬は、上記の定量方法で詳細に説明した通りのものであり、キット中の形態は、溶液状でも凍結乾燥状でもいずれでも良い。
【0059】これらの構成試薬の他に、ホスホモノエステラーゼの活性を高めるため、塩化マグネシウム、保存剤としてアジ化ナトリウム、安定化剤としてトレハロース、スクロース、マルトースなどの糖類、また必要に応じて界面活性剤等を加えてもよい。
【0060】
【実施例】以下、合成例、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明する。
【0061】合成例1:5−アミノ−3−ヒドロフタラジンオン−1−ホスフェート・2シクロヘキシルアミン塩(以下、5−AHPPと略す)の合成【化6】

【0062】(1) 3−ニトロフタルヒドラジド・ナトリウム塩の合成3−ニトロフタルヒドラジド(アルドリッチ社製)50.0gに、等量の水酸化ナトリウム水溶液1000ccを加え、加熱溶解した。この溶液を濃縮し、アセトンを加えて結晶化させた。結晶を濾取し、五酸化二リン上で乾燥し、さらに60℃で6時間、120℃で8時間減圧乾燥し、3−ニトロフタルヒドラジド・ナトリウム塩54.80gを得た(収率99.1%)。
【0063】(2) 5−ニトロ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ジベンジルホスフェートの合成N−クロロコハク酸イミド(和光純薬社製)29.3gを四塩化炭素400ccに懸濁し、ここに亜リン酸ジベンジル(東京化成社製)63.2gを四塩化炭素100ccに溶解した溶液を滴下し、30〜35℃で3時間反応させた後、不溶物を濾去し、リン酸ジベンジルクロライドの四塩化炭素溶液を得た。
【0064】一方、上記(1)で得られた3−ニトロフタルヒドラジド・ナトリウム塩50.0gをテトラヒドロフラン(THF)1000ccに懸濁し、そこへリン酸ジベンジルクロライドの四塩化炭素溶液を滴下した。水浴により反応液を60℃に加熱し、8時間反応させた。反応液を、室温まで冷却した後、クロロホルム2000cc中に注ぎ、不溶物を濾去した。濾液を飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮した。得られた濃縮液を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒クロロホルム:メタノール=150:1)、次いで薄層クロマトグラフィー(溶出溶媒 クロロホルム:メタノール=20:1)にかけ、5−ニトロ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ジベンジルホスフェートを純粋に含む画分(Rf:0.56)を集めて濃縮し、クロロホルム−n−ヘキサンで結晶化した。得られた結晶を、五酸化二リン上で乾燥し、5−ニトロ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ジベンジルホスフェート7.04g(収率:6.9%)を得た。
【0065】元素分析 C221837P計算値 C:56.54 H:3.88 N:8.99測定値 C:56.88 H:4.17 N:8.81mp 135−138℃【0066】(3) 5−AHPPの合成上記(2)で得られた5−ニトロ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ジベンジルホスフェート3.6gをジメチルホルムアミド500ccに溶解し、パラジウム黒(和光純薬社製)1.0gを加え、水素ガスを通じ、3時間接触還元を行った。パラジウム黒を濾去後、濾液に2当量のシクロヘキシルアミン0.93ccを加えた。しばらくすると、白色結晶が析出した。この結晶を濾取し、五酸化二リン上で減圧乾燥し、目的の5−AHPP 1.05g(収率:90.0%)を得た。
【0067】
元素分析 C203455P・9/2H2O計算値 C:44.77 H:8.07 N:13.05測定値 C:44.79 H:7.45 N:13.11mp 156−159℃【0068】以下の合成例2〜4のルミノール誘導体リン酸エステルは、文献未記載の新規化合物である。
【0069】合成例2:5−n−ブチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ホスフェート・2シクロヘキシルアミン塩(以下、5−nBHPPと略す)の合成【化7】

【0070】(1) 3−n−ブチルアミノフタルヒドラジド・ナトリウム塩の合成出発原料として、3−n−ブチルアミノフタルヒドラジド(Brundrett, R. B., et al., 94, 7536 (1972)に記載の方法により合成した。)32.0gを用いた以外は合成例1の(1)と同様に処理し、3−n−ブチルアミノフタルヒドラジド・ナトリウム塩31.01g(収率:93.5%)を得た。
【0071】(2) 5−n−ブチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ジベンジルホスフェートの合成N−クロロコハク酸イミド16.16g、亜リン酸ジベンジル39.90g及び上記(1)で得られた3−n−ブチルアミノフタルヒドラジド・ナトリウム塩31.00gを用いた以外は合成例1の(2)と同様に処理して、5−n−ブチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ジベンジルホスフェート9.01g(収率:36.5%)を得た。
【0072】mp 110−111℃【0073】(3) 5−nBHPPの合成上記(2)で得られた5−n−ブチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ジベンジルホスフェート9.01gを用いた以外は合成例1の(3)と同様に処理して、5−nBHPP 8.99g(収率:96.1%)を得た。
【0074】
元素分析 C244255P・7/5H2O計算値 C:53.70 H:8.41 N:13.05測定値 C:53.39 H:8.38 N:12.87mp 179−181℃【0075】合成例3:6−ジメチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ホスフェート・2シクロヘキシルアミン塩(以下、6−DMHPPと略す)の合【化8】

【0076】(1) 4 or 5−ジメチルアミノフタルヒドラジド・ナトリウム塩の合成4 or 5−ジメチルアミノフタルヒドラジド(Gunderman, K. D. et al., 95,2018 (1962)に記載の方法により合成した。)26.4gを用いた以外は合成例1の(1)と同様に処理して、4 or 5−ジメチルアミノフタルヒドラジド・ナトリウム塩23.05g(収率:78.1%)を得た。ここで得られたものは、4位、又は5位にジメチルアミノ基が置換したものの混合物である。
【0077】(2) 6 or 7−ジメチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ジベンジルホスフェートの合成N−クロロコハク酸イミド9.35gを、四塩化炭素120ccに懸濁し、ここに亜リン酸ジベンジル20.2gを四塩化炭素30ccに溶解した溶液を滴下した。30〜35℃で3時間反応させた後、不溶物を濾去し、リン酸ジベンジルクロライドの四塩化炭素溶液を得た。
【0078】一方、上記(1)で得られた4 or 5−ジメチルアミノフタルヒドラジド・ナトリウム塩20.2gを、クロロホルム200ccに懸濁させ、そこへリン酸ジベンジルクロライドの四塩化炭素溶液を滴下した。反応液を水浴により、60℃に加熱し、8時間反応させた。反応液を室温まで冷却した後、不溶物を濾去し、飽和食塩水500ccで洗浄した。有機層を、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、濃縮した。この濃縮液を、セファデックスLH−20(溶出溶媒 メタノール)でゲル濾過し、次いで薄層クロマトグラフィー(溶出溶媒 クロロホルム:メタノール:酢酸:水=80:20:2.5:5)にかけ、6 or 7−ジメチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ジベンジルホスフェートを純粋に含む画分(Rf:0.75)を集めて濃縮し、酢酸エチル−n−ヘキサンで結晶化した。得られた結晶を、五酸化二リン上で減圧乾燥し、6 or 7−ジメチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ジベンジルホスフェート18.51g(収率:56.8%)を得た。ここで得られた結晶は、6位、又は7位にジメチルアミノ基が置換したものの混合物である。
【0079】(3) 6−ジメチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ジベンジルホスフェートの合成上記(2)で得られた6 or 7−ジメチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ジベンジルホスフェート18.51gを、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒 クロロホルム:メタノール=100:1)にかけ、6位置換体のみを分離精製し、薄層クロマトグラフィー(溶出溶媒 クロロホルム:メタノール=50:1)により、6−ジメチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ジベンジルホスフェートを純粋に含む画分(Rf:0.25)を集めて濃縮し、酢酸エチル−n−ヘキサンで結晶化した。得られた結晶を、五酸化二リン上で減圧乾燥し、6−ジメチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ジベンジルホスフェート4.46g(収率:24.1%)を得た。
【0080】元素分析 C242435P計算値 C:61.93 H:5.20 N:9.03測定値 C:62.01 H:5.66 N:8.88mp 169−172℃【0081】(4) 6−DMHPPの合成上記(3)で得られた6−ジメチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ジベンジルホスフェート2.0gを、ジオキサン:ジメチルホルムアミド=3:1の混合溶媒200ccに溶解し、パラジウム黒1.0gを加え、水素ガスを通じ、3時間接触還元を行った。パラジウム黒を濾去後、濾液に2当量のシクロヘキシルアミン1.04ccを加えた。しばらくすると、白色結晶が析出した。この結晶を濾取し、五酸化二リン上で減圧乾燥し、目的の6−DMHPP 1.76g(収率:84.9%)を得た。
【0082】元素分析 C223855P・3H2O計算値 C:49.15 H:8.24 N:13.02測定値 C:48.91 H:8.66 N:12.88mp 143−148℃ (分解)
【0083】合成例4:7−ジメチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ホスフェート・2シクロヘキシルアミン塩(以下、7−DMHPPと略す)の合【化9】

【0084】(1) 7−ジメチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ジベンジルホスフェートの合成上記合成例3の(2)で得られた6 or 7−ジメチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ジベンジルホスフェート18.5gを、合成例3の(3)と同様に精製を行い、7−ジメチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ジベンジルホスフェートを純粋に含む画分(RF:0.22)を集めて濃縮し、酢酸エチル−n−ヘキサンで結晶化した。得られた結晶を、五酸化二リン上で減圧乾燥し、7−ジメチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ジベンジルホスフェート4.93g(収率:26.6%)を得た。
【0085】元素分析 C243835P計算値 C:61.93 H:5.20 N:9.03測定値 C:61.84 H:5.43 N:8.86mp 166−168℃【0086】(2) 7−DMHPPの合成上記(1)により得られた7−ジメチルアミノ−3−ヒドロ−4−フタラジンオン−1−ジベンジルホスフェート2.0gを用いた以外は合成例3の(4)と同様に処理し、7−DMHPP 1.27g(収率:61.0%)を得た。
【0087】
元素分析 C243855P・5/4H2O計算値 C:53.07 H:8.02 N:14.06測定値 C:53.26 H:8.57 N:13.80mp 256−261℃ (分解)
【0088】なお、以下の実施例4以外の実施例及び比較例において、基質は、上記合成例1で合成した5−AHPPを用い、以下の全ての実施例及び比較例において、発光測定装置は、アロカ社製のルミネッセンスリーダーBLR−201を用いた。
比較例1:酵素と基質とを10分間反応させた後、フェリシアン化カリウムで発光させたときのアルカリ性ホスファタ−ゼ活性検出感度の測定[先行例F)記載の方法との比較]緩衝液は、1mM塩化マグネシウム及び0.1%牛血清アルブミンを含む0.1Mジエタノ−ルアミン溶液(pH9.8)を用いた。アルカリ性ホスファタ−ゼ(以下、「ALP」という)は、ベ−リンガ−マンハイム社製のコ−ド567744のものを前記の緩衝液にて調製して用いた。フェリシアン化カリウムは、和光純薬社製のコ−ド167−03722を精製水にて調製して用いた。
【0089】種々の濃度のALP溶液50μlに、それぞれ緩衝液200μlを加え、37℃で5分間放置した後、1.0mMの基質溶液50μlを加え、酵素と基質とを37℃で10分間反応させた。次いで、反応液に0.01Mエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム溶液100μlを加え、1分放置した後、0.3mMフェリシアン化カリウム溶液100μlを加え、37℃で発光反応を開始させた。発光反応開始から10分間の総発光量を測定した。また、ALP溶液の代りに緩衝液を用いて、上記と同様にしてブランク値を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】表中、S/N比とは、シグナル/ノイズ比を表し、次式により算出した値である。
S/N比=(ALP溶液の発光量)/(ブランク値)
なお、S/N比が、通常2未満だと測定誤差が大き過ぎて、即ちノイズが大き過ぎて、測定結果の信頼性が疑われる。従って、実用上S/N比が2以上となるホスホモノエステラーゼの濃度範囲でなければ測定法として利用できない。
【0092】表1の結果から、本測定方法では、ALP濃度が、少なくとも10U/l以下の試料では、測定結果に信頼性がない(S/N比<2)ことがわかる。
【0093】比較例2:酵素と基質とを30分間反応させた後、フェリシアン化カリウムで発光させたときのALP活性検出感度の測定[先行例F)記載の方法との比較]酵素と基質とを30分間反応させた以外は、比較例1と同様の方法で、発光反応開始から1分間の総発光量を測定した。また、ALP溶液の代りに緩衝液を用い、上記と同様にしてブランク値を求めた。得られた結果を表2に示す。
【0094】
【表2】

【0095】表2の結果から、本測定方法では、ALP濃度が、5U/l未満の試料では、測定結果に信頼性がない(S/N比<2)ことがわかる。本方法では、測定結果を得るまでに少なくとも30分の時間を必要とする。
【0096】実施例1:酵素と基質とを10分間反応させた後、過酸化水素とペルオキシダ−ゼで発光させたときの(ALP)活性検出感度の測定[本発明のエンドポイント法]ALP溶液は、比較例1と同様のALPを使用し、緩衝液として、0.5mM塩化マグネシウムを含む50mM硼酸、50mM塩化カリウム溶液(pH10.0)を用いて調製した。過酸化水素は、和光純薬社製のコ−ド085−04056を精製水により調製して用いた。ペルオキシタ−ゼは、シグマ社製のコ−ドM−6756を前記の緩衝液にて調製して用いた。
【0097】0.1mM基質溶液50μlに、5μMペルオキシダ−ゼ25μlと2mM過酸化水素水25μlを混和し、25℃で30分間放置した。この溶液100μlに緩衝液100μlを加え、30℃で1分間放置した後、種々の濃度に調製したALP溶液50μlずつを加え、37℃で10分間反応させた。反応液に緩衝液2mlを加え、そこから100μlを抜き取り、緩衝液100μlと1μMペルオキシダーゼ溶液100μlとを混和した。そこへ100mM過酸化水素水100μlを加え、発光反応を開始させ、発光反応開始から37℃1分間の総発光量を測定した。また、ALP溶液の代りに緩衝液を用い、上記と同様にしてブランク値を求めた。得られた結果を表3に示す。
【0098】
【表3】

【0099】表3の結果から、本方法によれば、ALP濃度2.5U/l以上の試料であれば、測定結果が信頼できる(S/N比≧2)ことがわかる。なお、本方法では、試料添加から測定結果を得るまでの時間は、10〜15分程度と極めて短時間である。
【0100】実施例2:酵素−基質反応及び発光反応を同時に進行させたときの単位時間当りの発光量の経時的変化の測定基質溶液及びALP溶液は、緩衝液として、0.5mM塩化マグネシウムを含む0.2M 2−エチルアミノエタノール溶液(pH9.8)を用いた以外は、比較例1と同様に調製した。ペルオキシダーゼ溶液は、シグマ社製のコ−ドP−4794を前記の緩衝液により調製して用いた。過酸化水素水は、実施例1と同様に調製した。
【0101】2.0mM基質溶液200μlに、2.0U/mlペルオキシダ−ゼ溶液100μlと0.85mM過酸化水素水100μlを加え、30℃にて5分間放置した。そこへ、10.0U/l ALP溶液50μlを添加し、ALP溶液添加から10分間、30℃1分間毎の発光量を測定した。また、ALP溶液の代りに緩衝液を用い、上記と同様にしてブランク値を求めた。
【0102】得られた結果を図1に示す。図1から、本法では、ALP溶液を添加し、酵素反応の開始と同時に発光が開始され、反応開始から約4分後に1分間当りの発光量が一定となることがわかる。
【0103】実施例3:酵素−基質反応及び発光反応を同時に進行させたときの単位時間あたりの発光量測定によるALP活性検出感度の測定[本発明のレート法]緩衝液、ALP溶液、基質溶液、ペルオキシダーゼ溶液及び過酸化水素水は、実施例2と同様に調製したものを用いた。
【0104】2.0mM基質溶液(pH10.0)200μlに、2.0U/mlペルオキシダーゼ溶液100μl及び0.85mM過酸化水素水100μlを加え、37℃にて5分間放置した。そこへ、種々の濃度に調製したALP溶液を添加し、添加5分後からの30℃1分間当りの発光量を測定した。また、ALP溶液の代りに緩衝液を用い、上記と同様にしてブランク値を求めた。得られた結果を表4に示す。
【0105】
【表4】

【0106】表4から明らかなように、本法によれば、ALP濃度が少なくとも0.7U/l以上の試料であれば測定結果が信頼できる(S/N≧2)ことがわかる。なお、本方法では、試料添加から測定結果を得るまでの時間は、約10分程度と極めて短時間である。
【0107】実施例4:種々の基質の反応性についての検討式(I)で示されるルミノール誘導体リン酸エステルに包含される代表的な基質である5−アミノ−3−ヒドロフタラジンオン−1−ホスフェート(5−AHPP)、6−アミノ−3−ヒドロフタラジンオン−1−ホスフェート(6−AHPP)、7−アミノ−3−ヒドロフタラジンオン−1−ホスフェート(7−AHPP)、6−ジメチルアミノ−3−ヒドロフタラジンオン−1−ホスフェート(6−DMHPP)、7−ジメチルアミノ−3−ヒドロフタラジンオン−1−ホスフェート(7−DMHPP)及び5−n−ブチルアミノ−3−ヒドロフタラジンオン−1−ホスフェート(5−nBAHPP)を用い、緩衝液として、50mM硼酸、50mM塩化カリウム、50mM塩化マグネシウム溶液(pH10.0)にて、それぞれ2.0mM基質溶液を調製した。各基質溶液200μlに2.0U/mlペルオキシダーゼ溶液100μl、0.85mM過酸化水素水100μlを加え、37℃で5分間放置した。そこへ実施例1と同様に調製した10.0U/l ALP溶液50μlを添加し、添加5分後から、30℃1分間の発光量を測定した。また、ALP溶液の代りに生理食塩水を用い、上記と同様にブランク値を求めた。得られた結果を表5に示す。
【0108】
【表5】

【0109】基質としては、発光効率の高いルミノール誘導体を遊離し、S/N比が大きいものが好ましく、このような基質を用いれば、より感度及び精度の高いホスホモノエステラーゼの定量が可能となる。従って、表5の結果から、5−AHPPが、最も好適であることがわかる。
【0110】実施例5:ALP標識抗前立腺由来酸性ホスファターゼ(抗PAP)を用いた前立腺由来酸性ホスファターゼ(PAP)活性の測定ALPで標識された前立腺由来酸性ホスファターゼ(以下、「PAP」という)に対するマウスモノクローナル抗体IgG(以下、「抗PAP−I」という)と、抗PAP−Iとは異なる抗原決定基を認識するマウスモノクローナル抗体IgG(以下、「抗PAP−II」という)で感作したビーズ(固相)を用い、いわゆる免疫学的サンドイッチ法により、(ALP)−(抗PAP−I)−(PAP)−(抗PAP−II)−(ビーズ)複合体を形成し、PAP活性の指標となるALP活性を本発明の化学発光定量法により測定した。
【0111】洗浄用緩衝液として、1.5M塩化ナトリウム及び0.5%ツイン20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)を含む0.1Mトリス緩衝液(pH7.4)を精製水にて10倍希釈して用いた。PAP溶液は、PAP23.4ng/ml及びPAP3.0ng/mlを含むヒト血漿をPAPを含有しないヒト血漿で希釈して、種々の濃度に調製したものを用いた。ALP活性の測定は、実施例3記載の方法に沿って行った。
【0112】反応チューブに各濃度に調製したPAP溶液100μl、標識抗体(ALP−抗PAP−I)溶液100μl及び抗体感作ビーズ(抗PAP−II−ビーズ)1個を入れ、室温で2時間抗原−抗体反応させた。ビーズを洗浄用緩衝液1mlで3回洗浄した後、2.0U/mlペルオキシダーゼ溶液200μl、0.85mM過酸化水素水100μl及び2.0mM基質溶液100μlを加え、30℃にて5分間放置した後、30℃1分間当りの発光量を測定した。得られた結果を表6に示す。
【0113】
【表6】

【0114】表6の結果から、PAP濃度が、少なくとも0.60ng/ml以上の試料であれば、測定結果に信頼性がある(S/N比≧2)ことがわかる。感度が極めて高い免疫化学反応に、ホスホモノエステラーゼの化学発光法による定量法を組合せることにより、極めて微量のPAPの定量が可能である。
【0115】
【発明の効果】本発明によれば、簡便、高感度かつ極めて短時間でホスホモノエステラーゼを測定できる方法及びキットが提供された。さらに、本ホスホモノエステラーゼの定量法を酵素免疫測定法と組合せることにより、ホスホモノエステラーゼを指標として、簡便、高感度かつ極めて短時間で、種々の微量物質が定量できる方法が提供された。
【出願人】 【識別番号】000003975
【氏名又は名称】日東紡績株式会社
【出願日】 平成5年(1993)8月10日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】中村 静男 (外2名)
【公開番号】 特開平7−53525
【公開日】 平成7年(1995)2月28日
【出願番号】 特願平5−198306