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【発明の名称】 換気用ダクト
【発明者】 【氏名】永田 幸康

【氏名】堺 正裕

【目的】 通風効率を維持しながら、水返し効果を十分発揮できる換気用ダクトを提供する。
【構成】 車両に取着される換気用ダクトAにあって、車室内空気を車外へ排出する排出口13を形成した枠体1と、この枠体1の車外側で上記排出口13に蓋をするよう設けられ、車室内外の気圧差で車外側の方向にのみ開口させる板状のフラップ2と、上記枠体1の背面車室側で筒状に形成し、上記排出口13に連通させ排出口高さaの1.2倍以上の高さを有する水返し3とを備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両に取着される換気用ダクトにあって、車室内空気を車外へ排出する排出口を形成した枠体(1)と、該枠体の車外側で上記排出口に蓋をするよう設けられ、車室内外の気圧差で車外側の方向にのみ開口させる板状のフラップ(2)と、上記枠体の背面車室側で筒状に形成し、上記排出口に連通させ排出口高さの1.2倍以上の高さを有する水返し(3)とを備えたことを特徴とする換気用ダクト。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車の走行中の車室内通風量を確保する一方、停止時等には、異物,排ガス等が車室内へ侵入しないようにする換気用ダクトに関する。
【0002】
【従来の技術】自動車の後部には、走行中の車室内の空気置換を図る換気用ダクトがある。比較的狭い車室内は人の呼吸,タバコの煙等によって汚れ易く曇り易いことから、フレッシュエアを車室前部等から取り入れ、車体後部に設けた換気用ダクトの排出口を通って集中的に車外へ排出する。上記排出口13を形成する枠体1には、フラップ2を取付け、走行中、このフラップ2が車室内,外の圧力差に応じて開き具合を変え、風量調整を行なうようにしている(図7)。ここで、換気や防曇性を鑑み、フラップ2は車室内外の圧力差ができるだけ小さい条件で開くのが望ましい。一方、斯るフラップ2は、車両の停止時等に排出口13に蓋をし、外部から車室内へ異物(埃,ゴミ等)の侵入を防止する役割を担う。更に、走行中に窓を開けた時など、車室内圧力が外圧より低くなると、フラップ2が排出口13に密着して排気吸入を防いでいる。このような換気用ダクトAは、自動車のバンパー裏,ドア,リアピラーのいずれかに取付けられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】こうしたなかで、バンパー裏へ換気用ダクトAを取着する場合には、水入りが問題となる。そのため、換気用ダクトAは枠体1の背面車室側に浸水高さ以上の筒状の水返し3を設けることによって、車室内への水の侵入を阻止している(図7)。特に、車種によっては車の浸水高さが定められており、水返し3の設置は不可欠となっている。しかるに、水返し3を設ける場合、水返し高さbを排出口高さaより低く設定する傾向にあり、ここでは図6のごとく、筒状の水返し高さbが上がるにつれて通風効率が低下することが一般的に知られている。そのため、通風効率を確保しながら、一方で水の侵入阻止を試みようとする二律背反的な問題に直面し、その結果、換気用ダクトAを一回り大きくしたり、フラップ2の構造を変更したりして活路を見出そうと苦慮していた。
【0004】本発明は上記問題点を解決するもので、通風効率を維持しながら、水返し効果を十分発揮できる換気用ダクトを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の換気用ダクトは、車両に取着される換気用ダクトにあって、車室内空気を車外へ排出する排出口を形成した枠体と、この枠体の車外側で上記排出口に蓋をするよう設けられ、車室内外の気圧差で車外側の方向にのみ開口させる板状のフラップと、上記枠体の背面車室側で筒状に形成し、上記排出口に連通させ排出口高さの1.2倍以上の高さを有する水返しとを備えたことを特徴とする。
【0006】
【作用】従来のように水返し高さbが排出口高さaより低い範囲では、図7のごとく、上側のフラップ2は開くが、下側のフラップ2が偏流の影響を受け、風の流れは悪くなる。そのため、水返し3を高くすればする程、フラップ2の開きかげんに偏りがみられ、通風効率(通風量)が下がる傾向を示す。ところが、水返し高さbが排出口高さaの1.2倍以上になると、水返し3自体が煙突形状になり、今度は整流作用を備えていき、図8のごとくフラップ2の夫々の開きが偏りもなく良くなっていく。そして、空気の流れが均一化して通風効率(通風量)を高めると同時に、水返し効果も十分発揮し得るようになる。
【0007】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいて詳述する。
(1)換気用ダクトの構成図1は本発明に係る換気用ダクトの全体斜視図、図2は図1の縦断面図である。符号1は、傾斜壁11と、この傾斜壁11の下縁に連設される水平壁15と、傾斜壁11の上端及び水平壁15の内端で連設される垂直壁12とで構成される枠体を示す。傾斜壁11には、四角形の排出口13が上下に二個形成される。排出口13は、車室内空気を車外へ逃がす役割を担う。ここで、排出口高さa(a=a1+a2)は50mm、排出口13の幅Wは60mmである。排出口13を約60度の傾斜角とする傾斜壁11が取り囲んでいる。傾斜壁11は、その大部分が後述のフラップ2との当接面になる。枠体1の垂直壁12には、車体Sへ装着する取付孔14を各角部の4箇所に設けている。
【0008】符号2は、排出口13より一回り大きくして、車外側でこれに蓋をするよう設けられたフラップを示す。フラップ2は、排出口13周縁の傾斜壁11に載置されるように設けられる。フラップ2は四角の板状体で、その上端部を枠体1に熱溶着又はビス5等で固定する。尚、これに代え、傾斜壁11の上縁付近に孔を設け、フラップ2をこの孔で吊設するように係止片を設けてもよい。そして、フラップ2を可撓性のエチレンプロピレンジエン共重合ゴム(JISA硬度は50度)で作り、揺動可能状態としている。自動車走行時等で、車室内圧が車外圧より高くなる場合に、比較的小さな気圧差であってもフラップ2が排出口13から離れ、排出口13を開くようにするためである(図2)。フラップ2は、車室内空気が車外側へ向かう排出時のみ開き、通常は自重により排出口13を蓋する構成にある。また、車室内圧が車外圧より低くなった時も、排出口13周りの傾斜壁11にフラップ2は密着して蓋をする。ここで、フラップ2は、走行中における傾斜壁11との当り面でのおどり対策からフェライトを配合して、磁性体を取着した(又は磁性化した)傾斜壁11との密着保持機能を高めるのが好適となる。これに代え、フラップ材料に充填材を入れて重くするのもよい。
【0009】符号3は、枠体1とで形成した水返しを示す。水返し3は、枠体1の背面車室側で排出口13を包囲してこれに連通させる一方、他端は折曲後、垂直上方向に延ばし、上面に車室内空気を取込む流入口31を形成する(図2)。水返し高さbは110mmで、排出口高さa(50mm)の2倍以上としている。所望の通風効率(66%)を得ながら、水切り効果を確かなものにして、排出口13から車室内への水の侵入を防ぐためである。流入口31の開口面積は約29cm2である。尚、上記枠体1と水返し3は、ポリプロピレン樹脂で一体的に造られている。こうして、換気用ダクトAは、取付孔14を利用して車体Sに固定され、車室前部等からの新鮮空気を取入れることによって車室内気圧が高まると、車室内外の圧力差でフラップ2が排出口13から離れる。そして、車室内空気は流入口31を通って排出口13のみから集中的に車外へ排出されるようになっている。
【0010】(2)性能試験と評価本発明に係る換気用ダクトAにつき、通風性能に及ぼす水返し高さbの影響を調べるため、以下のような試験を行なった。
■通風効率試験本試験は、前記換気用ダクトAの形状,大きさを採用して、水返し高さbのみ変化させることによって、水返し高さbと通風効率Eとの関係を調べたものである。排出口高さa=50mmを一定とし、水返し高さbを0〜190mmの範囲で変化させている。その試験装置を図4に示す。同装置4は装置本体41の対向側面に開口42,43を設け、一方にファン44を装着し、他方に試験される換気用ダクトAを取着するものである。
【0011】ファン44をカバーするようにして筒管45が装置本体41に固定され、この筒管45にはノズル451が設けられる。そして、ノズル451とマノメータ46とをチューブ47で連結することで、筒管45内の静圧P2を測定できるようにしている。また、装置本体41上部にもノズル411を設け、チューブ48を介して結ばれたマノメータ49で装置本体41内の静圧P1 が測れるようにしてある。
【0012】上記装置を用いて、次のような通風抵抗の測定を行なった。まず、所定の水返し高さbを有する換気用ダクトAを開口43に装着した(図4)。次いで、ファン44を起動させ、外部(筒管45の一方の吸入口)から空気を装置本体41内へ吹き込み、換気用ダクトAから排出するよう通風させた。マノメータ46で静圧を測定し、換算表(ベルマウス圧VS風量)から通風量を求めた。一方、通風抵抗(P1−P0)は、マノメータ49の静圧P1の測定値から外圧P0を差し引いて求めた。ファン44の通風量調整を行なって、通風量が50,60,70m3/hの三つのケースについて、水返し高さbを種々変化させ、図5のような水返し高さbに対する通風効率の曲線を得た。
【0013】図5で、通風効率Eは、以下の式で求めたものである。
E[%]={F0/F}×100ここで、F0 次のようにして求められる。
0={(ρ/2)×(1/0.36)2/(P1−P0)}1/2×Vaa は通風量[m3/h]である。
また、ρ=1.293/{(1+0.00367t)×9.8}である。
tは温度[℃]を示す。
一方、上記Fは換気用ダクトAの実開口面積(投影面積)を採用する。すなわち、F=a×W=(a1+a2)×Wで表わしたものである(図1,図3)。
【0014】■試験結果と効果図5から水返し高さbが排出口高さaの1.2倍になるまでは、従来から知られたごとく、水返し高さbが高くなればなるほど通風効率Eが低下していくことが判った。しかるに、排出口高さaに対する水返し高さb、即ちb/aは1.2を境にして、これを超えると通風効率Eが上昇に転じ、所望の通風量を簡単に得ることができることが判明した。例えば、水返し高さbを40mmとして通風効率E=55%を確保していた換気用ダクトAは、バンパー等に換気用ダクトAを取付ける場合、水返し高さbを90mmにすることによって、所望の通風効率Eを得ながら水返し効果を十分発揮することができる(図5の破線図示部分)。図5は、必要ならば水返し高さbを更に高くすることによって、車室内への水の侵入阻止を図れるだけでなく、通風効率Eも上昇させることが可能であることを示す。好適値は、水返し高さbを110mmとした場合であった(図5)。b/a=2.2までは通風効率Eが上昇するが、それ以上になると殆ど変化せず、一方、これ位の水返し高さbがあれば水の侵入防止を十分果たせるからである。このように、b/aが1.2以上とした換気用ダクトAは、水返し高さbを高くすることによって、車室内への水の侵入がなくなるばかりか、通風効率Eも上昇し、車室内の換気,防曇等に貢献する。
【0015】尚、本発明においては、前記実施例に示すものに限られず、目的,用途等に応じて本発明の範囲で種々変更できる。例えば、枠体1,フラップ2,水返し3,排出口13の大きさ,形状等は本実施例に限定するものでなく、目的等に応じて種々変更が可能である。
【0016】
【発明の効果】以上のごとく、本発明に係る換気用ダクトは、所望の通風量を確保しながら水返し効果を十分発揮でき、車室内の快適性確保に優れた効を奏する。
【出願人】 【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
【出願日】 平成5年(1993)12月18日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】小林 宜延
【公開番号】 特開平7−172151
【公開日】 平成7年(1995)7月11日
【出願番号】 特願平5−344176