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【発明の名称】 半凝固金属の製造方法
【発明者】 【氏名】新出 司

【氏名】難波 明彦

【氏名】内村 光雄

【氏名】廣中 一聡

【氏名】高橋 広芳

【目的】 横軸円筒胴よりなる抜熱能を有する攪拌用回転子と固定壁との間に溶融金属を供給して半凝固金属を製造する方法において、固相率が均一で良好な品質の半凝固金属を連続的に安定して排出できるようにする。
【構成】 熱伝導率の小さい耐熱鋼製攪拌用回転子円筒胴を用いてその胴周面上に付着する凝固殻の成長を低減する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 横軸円筒胴よりなり抜熱能を有する攪拌用回転子と、該回転子の円筒胴周面に面して下せばまりの凹曲面からなる固定壁との間に溶融金属を連続的に供給して冷却し、凝固を生起させながら攪拌用回転子の回転に基づくせん断力によって粒子の細かい非樹枝状晶が懸濁した半凝固金属を製造して、攪拌用回転子の円筒胴周面上に付着成長する凝固殻を削剥治具で切削しながら攪拌用回転子と固定壁との間の下方のすき間に連なる排出口から半凝固金属を連続的に排出する半凝固金属の製造方法において、熱伝導率の小さい耐熱鋼製攪拌用回転子円筒胴を用い、その胴周面上に付着する凝固殻の成長を低減することを特徴とする半凝固金属の製造方法。
【請求項2】 熱伝導率の小さい耐熱鋼が、マルテンサイト系ステンレス鋼であることを特徴とする請求項1に記載の半凝固金属の製造方法。
【請求項3】 熱伝導率の小さい耐熱鋼が、フェライト系ステンレス鋼であることを特徴とする請求項1に記載の半凝固金属の製造方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、良好な品質の非樹枝状初晶が金属(一般には合金)液体中に分散した固体−液体金属混合物(以下単に半凝固金属という)を連続的に安定して製造・排出する半凝固金属の製造方法を提案するものである。
【0002】半凝固金属は、下流の加工工程における加工装置の熱的負荷を低減させたり、そのまま棒状又は板状などの半製品として凝固させることにより内部品質の良好な加工用素材が得られるなど、その有用性から半凝固金属の安定した工業的生産技術の開発が望まれている。
【0003】
【従来の技術】半凝固金属を連続的に製造する手段としては、例えば、特公昭56−20944 号公報(非樹枝状初晶固体分を含む合金を連続的に形成する為の装置)に開示されているように、一定温度の溶融金属を、円筒状の冷却槽の内面と高速回転する攪拌子とのすき間に導き、強い攪拌作用を加えつつ冷却し、得られた半凝固金属を、その底部から連続的に排出させる機械攪拌方式のものが知られている。
【0004】一般に、半凝固金属は溶融金属を冷却しながら激しく攪拌することによって、融体中に生成しつつある樹枝状晶の枝部が消失ないしは縮小して丸みを帯びた形態に変換されて形成される。そして、この半凝固金属の非樹枝状初晶は粒径の小さなものほど特性が優れ、そのためには溶融金属の冷却速度を大きくする必要がある。一方、強冷却された半凝固金属はその固相率の増大とともに見かけ粘性が非常に大きくなり流動性が低下する。
【0005】したがって、上記手段は、強攪拌をしようとして攪拌子の回転数を上げれば上げるほど、遠心力による半凝固金属の冷却槽内面への圧力が増大し排出能を低下させること、強冷却すると冷却槽抜熱面に生成付着する凝固殻の成長が激しく、非出速度の低下ないしはすき間が閉塞してしまうおそれや、凝固殻の成長にともなう伝熱抵抗の増加により抜熱速度が低下することなどがあって、一定品質の粒径の小さな初晶を含む高固相率の半凝固金属の連続排出が困難になるという問題があった。
【0006】一方、同じ機械的な攪拌方法で、横軸のまわりに回転する横軸回転円筒胴よりなる攪拌用回転子と該攪拌用回転子の胴周に沿う凹曲面からなる固定壁との間で形成したすき間に溶融金属を連続的に供給し、該すき間内にて強制冷却による凝固を生起させながら、回転子の回転に基づくせん断力によって粒子の細かい非樹枝状晶が懸濁した半凝固金属を製造する手段が、特開平3−142040号公報(連続的に半凝固金属を製造する方法とその装置)及び特開平4−238645号公報(半凝固金属の製造方法及び装置)に提案開示されている。これらの手段は、攪拌用回転子の直径と回転数の選択により、十分な冷却速度とせん断ひずみ効果を与えることが可能であり、かつ半凝固金属の排出方向に攪拌用回転子を回転させるため、粘性の高い半凝固金属の排出を推進して連続排出を容易にするという利点を有している。
【0007】しかしながら、特開平3−142040号公報の手段は、抜熱能を有する固定壁(冷却壁)を用いるものであるが、その冷却抜熱面に凝固殻が付着成長し、そため半凝固金属が通過するすき間が狭くなって、排出速度の低下ないしはすき間の閉塞を生じてしまうおそれや、凝固殻成長による伝熱抵抗の増加に伴う抜熱速度の低下などの問題があった。
【0008】また、特開平4−238645号公報の手段は、抜熱能を有する攪拌用回転子を用い、抜熱速度、せん断ひずみ速度、排出速度及び排出される半凝固金属の固相率を安定させるために、攪拌用回転子の円筒胴周面に付着凝固する凝固殻を剥離治具により掻き落すようにするものである。ところがこの掻き落される凝固殻は排出される半凝固金属中に混入するため、攪拌用回転子の胴周面に付着する凝固殻が厚くなると掻き落される凝固殻片がフレーク状になり、かつその量も増加し半凝固金属の品質を著しく劣化させるという問題があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】したがって、この発明は、横軸円筒胴よりなる抜熱能を有する攪拌用回転子を用いる半凝固金属の製造方法における前記問題点を有利に解決しようとするものであり、攪拌用回転子の円筒胴周面上に付着する凝固殻の成長を低減して品質の良好な半凝固金属を安定して排出できる半凝固金属の製造方法を提案することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】この発明の要旨は以下の通りである。横軸円筒胴よりなり抜熱能を有する攪拌用回転子と、該回転子の円筒胴周面に面して下せばまりの凹曲面からなる固定壁との間に溶融金属を連続的に供給して冷却し、凝固を生起させながら攪拌用回転子の回転に基づくせん断力によって粒子の細かい非樹枝状晶が懸濁した半凝固金属を製造して、攪拌用回転子の円筒胴周面上に付着成長する凝固殻を削剥治具で切削しながら攪拌用回転子と固定壁との間の下方のすき間に連なる排出口から半凝固金属を連続的に排出する半凝固金属の製造方法において、熱伝導率の小さい耐熱鋼製攪拌用回転子円筒胴を用い、その胴周面上に付着する凝固殻の成長を低減することを特徴とする半凝固金属の製造方法であり、【0011】上記において、熱伝導率の小さい耐熱鋼をマルテンサイト系ステンレス鋼、又はフェライト系ステンレス鋼とするものである。
【0012】
【作用】この発明に至った経緯とあわせてこの発明の作用について述べる。図1は横軸円筒胴よりなる抜熱能を有する攪拌用回転子と固定壁とからなる連続式半凝固金属製造装置の説明図である。
【0013】こ装置において半凝固金属19は、タンディッシュ14及び注入ノズル15を介して攪拌用回転子1と固定壁4との間で形成する冷却・攪拌室18に溶融金属16を連続的に供給し、攪拌用回転子1によって冷却しながらその回転により激しく攪拌することによって、融体中に生成しつつある樹枝状晶の枝部が消失ないしは縮小して丸みを帯びた形態に変換されて形成され、下方の排出口12から連続的に排出される。一方、攪拌用回転子1の円筒胴周面に付着成長する凝固殻17は削剥治具10により切削され、その切削された凝固殻片は半凝固金属19に混入して排出口12からの排出される。
【0014】ここで図1に示す連続的半凝固金属の製造装置は、抜熱能を有する横軸円筒胴よりなる攪拌用回転子1、攪拌用回転子1を水冷するための冷却水2、攪拌用回転子1の回転駆動装置3、固定壁4、固定壁4を断熱するためのヒーター5、ヒーターホルダー6、攪拌用回転子1との間隔を調整するための固定壁4の移動用駆動装置7、固定壁4の下方端に設けたせき板8、せき板8のしゅう動駆動装置9、攪拌用回転子1の円筒胴周面に付着成長する凝固殻17を切削するための削剥治具10、攪拌用回転子1との間隔を調整するための削剥治具10の移動用駆動装置11、排出口12及び排出される半凝固金属19の固相率センサー13から成り、攪拌用回転子1と固定壁4とで冷却・攪拌室18を形成させる。
【0015】この図1に示す連続式半凝固金属製造装置を用いて、高融点合金(Cu合金等)の半凝固属製造実験を行い、攪拌用回転子1の抜熱速度変化による排出された半凝固金属の品質等について種々調査・検討を行った。この実験例を以下に述べる。
【0016】攪拌用回転子1の抜熱速度を変えるため、その円筒胴の材質として、Cu−Cr合金、S35C鋼及びSUS403マルテンサイト系ステンレス鋼を選定し、それぞれの攪拌用回転子1を用いて半凝金属の製造を試みた。
【0017】まず、Cu−Cr合金製円筒胴の攪拌用回転子1を使用した場合、抜熱速度が大きいため円筒胴周面上で成長する凝固殻17が厚くなり、それが削剥治具10で切削されると、切削された凝固殻片はほとんどフレーク状になり、これらが排出される半凝固金属19スラリー中に多量に混入され半凝固金属の品質を著しく劣化させるという問題が生じた。
【0018】つぎに、Cu−Cr合金よりも熱伝導率の小さいS35C鋼製円筒胴の攪拌用回転子1を使用した場合、熱膨張係数が比較的に大きいこと、耐熱性が劣ること(熱伝導率が小さい分高温になる)などから、円筒胴が変形し太鼓状に胴の中央部がふくれた形状になり、せき板8とのすき間が幅方向で変化するため排出される半凝固金属の固相率が幅方向で不均一になるという問題が生じた。
【0019】さらに、熱伝導率が小さく、かつ熱膨張係数も比較的小さい耐熱鋼としてSUS403ステンレス鋼製円筒胴の攪拌子1を使用した場合、円筒胴の変形はほとんどなく、かつ円筒胴周面上で成長する凝固殻17が薄いため削剥治具10で切削された凝固殻片はフレーク状のものが少なく、したがって、幅方向の固相率がほぼ一定でしかもフレーク状凝固殻片の少ない流動性のよい品質の良好な半凝固金属19を排出できた。
【0020】これらの結果より、熱伝導率の小さい耐熱鋼製円筒胴よりなる攪拌用回転子1を用いることにより、高固相率で品質の良好な半凝固金属を連続して長時間安定排出することが可能になる。
【0021】なお、上記耐熱鋼としては、熱膨張係数が小さいことも重要であり、マルテンサイト系ステンレス鋼及びフェライト系ステンレス鋼などが有利に適用できる。
【0022】
【実施例】図1に示した連続式半凝固金属製造装置を用い、攪拌用回転子1の材質を変えて、Cu−8mass%Sn合金(液相線:1030℃、固相線:851 ℃)の半凝固金属500kg をそれぞれ連続して製造した。
【0023】ここで、上記で用いた攪拌用回転子1の説明図を図2に示す。この図2において、攪拌用回転子1の円筒胴1′は、スパイラル状の溝21をつけたSUS304製の攪拌用回転子軸20に組み込まれ、スパイラル状溝21に冷却水2を流すことにより冷却される構造になっている。この円筒胴1′の寸法は、厚さ:15mm、外径:400mm 、幅:135mm である。また、半凝固金属の製造にあっては冷却水2は流速:4m/s 、流量:1.3 ×10-3 m3/s として流した。
【0024】そしてこの攪拌用回転子1の円筒胴1′の材質に、Cu−Cr合金(比較例)、S35C(比較例)、SUS403(適合例)及びSUS430(適合例)の4種類をそれぞれ用た。
【0025】このような装置による半凝固金属19の製造は、Arガス雰囲気中で温度:1070℃の上記合金の溶融金属16を取鍋14からノズル15を介して、回転数:300rpmで回転する攪拌用回転子1とヒーター5によって1100℃まで予熱した耐火物製固定壁4とで形成する冷却・攪拌室18に供給し、攪拌用回転子1と削剥治具10との間隔を1.0mm と一定にし、さらに攪拌用回転子1とせき板8との間隔を10〜2mm(せん断ひずみ速度:600/s)の範囲で変化させて排出速度を調整し、排出口12から半凝固金属19を連続して排出されることにより行った。
【0026】このような条件のもとで、攪拌用回転子1の抜熱速度、排出される半凝固金属19の品質及び幅方向の固相率の分布などについて調査した。
【0027】これらの調査結果を以下に順に述べる。図3は攪拌用回転子円筒胴の材質とその抜熱速度の関係を示すグラフである。ここに、攪拌用回転子1の抜熱速度は攪拌用回転子1の冷却水の入側と出側の温度を測定し、次式により計算した。
q=Cp ×(T1 −T2 )×V×ρ/Aここで、q :抜熱速度 (Kcal/m2 ・h )Cp :水の比熱 (Kcal/kg ・℃)T1 :冷却水入側温度(℃)
2 :冷却水出側温度(℃)
V :冷却水流量(m3/h)ρ :水の密度(kg/m3)A :円筒胴冷却面積(m2)図3から明らかなように、Cu−Cr合金製円筒胴1′を使用した場合抜熱速度は約800 万Kcal/m2 ・h となるが、SUS403、SUS430及びS35Cを使用することで抜熱速度は半減していて、円筒胴周面に付着する凝固殻の生長を低減できることを示している。
【0028】図4は攪拌用回転子円筒胴の材質と排出された半凝固金属中のフレーク状凝固殻片の含有割合との関係を示すグラフである。図4から明らかなようにCu−Cr合金製円筒胴1′を使用した場合排出された反凝固金属19中には約90%の切削されたフレーク状の凝固殻片が混在しているのに対し、SUS403、 SUS430 及びS35C製円筒胴1′を使用した場合のそれは10%以下と激減している。
【0029】図5は攪拌用回転子円筒胴の材質をパラメータとする攪拌用回転子幅方行位置と排出される半凝固金属の固相率との関係を示すグラフである。図5から明らかなように、S35C製円筒胴1′を使用した場合、円筒胴1′が大きく変形したため排出された半凝固金属の固相率が攪拌用回転子1の幅方向で大きく異なっているのに対し、SUS403及びSUS430製円筒胴1′を使用した場合のそれはほぼ同様の固相率となっている。
【0030】以上より、SUS403及びSUS430など熱伝導率の小さい耐熱鋼製円筒胴1′を使用することで、幅方向の固相率が均一で良好な品質の半凝固金属19を連続的に安定して排出することができる。
【0031】
【発明の効果】この発明は、横軸円筒胴よりなる抜熱能を有する攪拌用回転子と固定壁との間に溶融金属を供給して半凝固金属を製造するにあたり、熱伝導率の小さい耐熱鋼製攪拌用回転子円筒胴を用い、その胴周面上に付着する凝固殻の成長を低減するようにするものであり、この発明によれば、攪拌用回転子の幅方向で固相率が均一で良好な品質の半凝固金属を連続的に安定して排出できるようになり、次工程への安定供給ができるとともに、半凝固金属の工業化に大きく貢献することができる。
【出願人】 【識別番号】390014432
【氏名又は名称】株式会社レオテック
【出願日】 平成5年(1993)10月1日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 暁秀 (外5名)
【公開番号】 特開平7−100590
【公開日】 平成7年(1995)4月18日
【出願番号】 特願平5−246869