トップ :: C 化学 冶金 :: C07 有機化学




【発明の名称】 新規なセスキテルペンアルコール及びそれを主成分と する香料
【発明者】 【氏名】橋床 泰之

【目的】
【構成】 分子量 222 、分子式 C15H26O 、無色オイル状の新規なセスキテルペンアルコール、及びこの化合物を主成分とする香料。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記の物理化学的性質を有するセスキテルペンアルコール。
(1)性状 無色オイル(2)分子量 222(3)分子式 C15H26O(4)GC−MS 204(M+-H2O, 6.3%), 189 (4.0), 161 (5.5), 123 (100),122 (31), 121 (37), 107 (34), 93 (28), 81 (57), 80 (24), 41 (23)。
(5)1H−NMR (重ベンゼン中、270MHz) 1.7-1.6 (4H, m), 1.10 (3H, s),1.05 (3H, s), 1.03 (3H, s), 1.02 (3H, s)。
(6)13C−NMR (重ベンゼン中、68MHz) 72.1 (C), 6.12 (CH), 51.9 (CH),49.1 (CH), 48.2 (CH2), 40.7 (C), 39.3 (C), 36.4 (CH2), 31.0 (CH2),30.1 (CH2), 30.0 (CH3), 28.4 (CH3), 28.3 (CH3), 26.2 (CH2),21.7 (CH3) 。
【請求項2】 請求項1記載のセスキテルペンアルコールを主成分とするハマナス葉の香りを有する香料。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、新規なセスキテルペンアルコール及びそれを用いた香料に関する。
【0002】
【従来の技術】香料化学においては、花あるいはフルーツなどから発せられる芳香成分を物質として捉え、有機化学合成によって安価な香料原料として市場に供給してきた。また、それが難しいものについては水蒸気蒸留、あるいは溶媒抽出によって天然精油を得、これを高級香料原料として供給してきた。ハマナス花油についても、ダマスカスローズ油の代用品として珍重されている。ハマナス油の成分は、リナロール、オイゲノールを中心としたC9 〜C10化合物である。北方植物の出版物などにも、ハマナスの群落に分け入るとハマナス花の強い芳香を楽しむことが出来ることを記述しているものが多い。ところが、我々が群落の散策で楽しんでいるハマナス芳香は、花の香りに加えて、葉から発せられる甘いグリーンノートが寄与していることに気付き、この香り本体を解明することから始めた。ハマナス葉の芳香は花のそれとは明らかに異なるが、芳香は花にのみ存在するという思い込みもあってか、その芳香性成分の研究は全く為されていなかった。香り本体は、熱をかけると異性化あるいは脱水分解を受けるため、従来から一般的に用いられる水蒸気蒸留法ではこれらの検出は困難であった。また、石油エーテル類等を用いる溶媒抽出法においても、多様な化合物群を含む非常に青くさいタール状コンクリートが多量に抽出されてしまうため、微量の芳香成分を特定するのは極めて難しかった。分子内に共役系を持たない化学構造をとるため、そのような溶剤抽出物からの検出が困難で、HPLCでの特定も不可能であることから、本化合物の単離精製、構造解析は手が付けられずにあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ハマナスの葉由来の新規なセスキテルペンアルコール及びそれを用いた香料を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、下記の物理化学的性質を有するセスキテルペンアルコールにある。
(1)性状 無色オイル(2)分子量 222(3)分子式 C15H26O(4)GC−MS 204(M+-H2O, 6.3%), 189 (4.0), 161 (5.5), 123 (100),122 (31), 121 (37), 107 (34), 93 (28), 81 (57), 80 (24), 41 (23)。
(5)1H−NMR (重ベンゼン中、270MHz) 1.7-1.6 (4H, m), 1.10 (3H, s),1.05 (3H, s), 1.03 (3H, s), 1.02 (3H, s)。
(6)13C−NMR (重ベンゼン中、68MHz) 72.1 (C), 6.12 (CH), 51.9 (CH),49.1 (CH), 48.2 (CH2), 40.7 (C), 39.3 (C), 36.4 (CH2), 31.0 (CH2),30.1 (CH2), 30.0 (CH3), 28.4 (CH3), 28.3 (CH3), 26.2 (CH2),21.7 (CH3) 。
【0005】さらに、本発明は前記セスキテルペンアルコールを主成分とするハマナス葉の香りを有する香料にある。以下、本発明を詳細に説明する。本発明者らは、ハマナスの芳香について鋭意研究をおこなった結果、ハマナス芳香は、花よりもむしろ葉から発せられる甘いグリーンノートに起因していることを見出した。
【0006】そこで、ハマナス葉を数秒間エタノールでリンスしたところ、そこで得られるほぼ無色の腺毛分泌物 (約10グラム/kg新鮮葉) に葉特有の芳香が認められた。そして、得られたこの腺毛分泌物にはクロロフイルやリピド、ステロイド、カロチノイドといった、通常の有機溶媒抽出で出てくる夾雑物を殆ど含まず、また、残渣には既に香りが無かった。このようにして、非テルペン化合物をほとんど含まない、良質のハマナス葉コンクリートを得た。これをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにかけ、まず人間の臭覚による官能試験によって香り成分の所在を追った。結果的に、目的化合物は薄層上、ほぼワンスポットとなったため (Rf 0.6ヘキサン−酢酸エチル=4:1)、これを標品として11.3kgの葉のエタノールリンス物を酢酸エチルへ転溶して得た 149グラムの分泌物 (コンクリート) から、香り本体を単離した。
【0007】単離した化合物は、ガスクロマトグラフィー[ULBON HR-52 (Chromato Packing Center社) 、50℃−230 ℃1分保持後5℃/minで昇温、24.7分に単一ピークが検出できる]で純度を検定した結果、単一ピークが得られ、単一化合物であることが判った。また、この化合物はGC−MS、NMR分析によって、その構造が三員環構造をとり、分子内二重結合を持たず、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル基と二本のブリッジヘッドのメチル基が存在することが判明した。
【0008】そして、この化合物は、次の理化学的性質を有し、文献検索の結果、構造未知の新規化合物であることが確認された。
■性状 無色オイル■GC (ULBON HR-52, 50-230℃, 5℃/min昇温) 24.7分に単一ピーク■分子量 222 (FI-MS, m/z 222, 45%)■分子式 C15H26O (GC-HR-MS, m/z 204.1880, C15H24)■UV吸収 210nm より長波長側には特徴的吸収無し。
■GC−MS 204(M+-H2O, 6.3%), 189 (4.0), 161 (5.5), 123 (100),122 (31), 121 (37), 107 (34), 93 (28), 81 (57), 80 (24), 41 (23)。
1H−NMR (重ベンゼン中、270MHz) 1.7-1.6 (4H, m), 1.10 (3H, s),1.05 (3H, s), 1.03 (3H, s), 1.02 (3H, s)。
13C−NMR (重ベンゼン中、68MHz) 72.1 (C), 6.12 (CH), 51.9 (CH),49.1 (CH), 48.2 (CH2), 40.7 (C), 39.3 (C), 36.4 (CH2), 31.0 (CH2),30.1 (CH2), 30.0 (CH3), 28.4 (CH3), 28.3 (CH3), 26.2 (CH2),21.7 (CH3) 。
【0009】この化合物は、単独で強めの木香臭、希釈またはリナロール( linalool )などと混合して非常に爽やかなみどりのハマナス香、または甘みがあるジャスミン香を呈する。この化合物は、芳香剤、香水等の香料として有用である。また、上記精製過程でシリカゲルカラムから10%ジエチルエーテル/ヘキサンで溶出して得た淡黄色レジノイドは、新鮮なハマナス葉から発せられる芳香をほぼ保持していることから、先のエタノール洗浄で得たコンクリートから高極性の化合物およびテルペン炭化水素を除いたレジノイドはハマナス葉香を有する芳香剤 (チンキあるいはアブソリュート) として使用出来る。
【0010】この香料は、ハマナスの葉の香りという点で、自然志向の向きにアピールできる。特に、リビングルームの芳香剤あるいは石鹸香料等として有用である。
【0011】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例によりその技術的範囲が限定されるものではない。
(実施例1)ハマナス葉 800グラム (7月上旬採集) を計3リットルのエタノールで数秒間洗浄し、エタノールを濾過後濃縮して約10グラムの無色シラップ状物質を得た。これをノルマルヘキサン転溶したところヘキサン可溶部に香り成分が移って来たため、約2グラムのヘキサン可溶物をシリカゲルカラムで分離し、香りの強かったフラクション (5%酢酸エチル/ヘキサン溶出部) を得た。これを再カラムクロマトグラフィー (酢酸エチル/ベンゼン溶出) で分離し、薄層上ほぼ単一なスポットとして得た。これを標品として、大量のハマナス葉から香り成分の単離、構造決定を行なった。ハマナス葉11.3kg (1992年6月下旬採集) を50リットルのエタノールで数秒間3回リンスし、エタノール相を濃縮し、 148.8グラムの黄褐色シラップ (コンクリート) を得た。これを酢酸エチルに転溶して得た約140 グラムの粗抽出物をシリカゲルカラム(750グラムSiO2) に通して10%ジエチルエーテル/ヘキサン2リットルで溶出した21.7グラムの低極性成分 (レジノイド、淡黄色オイル) をシリカゲルカラム(450グラム) で再分画した。2%, 5%, 10%, 20%, 30%とジエチルエーテルの比率を高めて行き (各溶媒系について200ml×4フラクション) を取った。目的物である強い芳香は30%ジエチルエーテル/ヘキサン溶出画分に認められた (約1グラムの淡黄色オイル:テルペン炭化水素を含んでいない、精製の進んだレジノイド) 。これは多量のカロタ−1, 4−ジエン酸を含んでいたため、20%飽和重炭酸ソーダ溶液を含む50%メタノール液とノルマルヘキサンで分配し、酸性成分を除いた後、高速液体クロマトグラフィー(Inertsil Prep SIL, 5% EtOAc/hexane, UV 230nm) で精製した。末端吸収領域に近い230nm 波長では、非共役オレフィンやカルボニルを持つ化合物も弱いながらもピークとして検出されるため、得られるピークをその強弱に拘らず分取した。その結果、エポキシダウセナールのやや先に検出される、小さいピークに対応したフラクションに強い芳香が認められた。これを精製不十分な段階で 1H−NMRにかけ、予備実験で得られた活性画分のチャートと比較し、これらに共通する成分として、セキステルペン様の化合物を見出した。さらに繰り返しHPLC精製を繰り返し、ほぼ単一の無色オイル状の化合物を得た。本化合物は、酢酸エチルやメタノール、ヘキサンなど、水以外の有機溶媒には良く溶けた。本化合物の理化学的性質は、前記の通りである。またこの化合物は、 1H−NMR (重ベンゼン中) で四本のシングレットメチルが1.0−1.1ppm に検出され、13C−NMRで一個の水酸基およびC、C−二重結合を持たない三員環構造を確認した。GC−MS分析によって、m/z 204 (M+-H2O、6.3%) が、またFI−MSで分子イオン (m/z 222、45%) が検出され、この化合物は2位がヒドロキシル化されたイソプロピル基 (1−メチル−1−ヒドロキシエチル基) を持ったセスキテルペンアルコールと判明した。
【0012】(実施例2)アルコール100ml に本発明の化合物 20 g を混合し熟成して香水を得た。
(実施例3)この香料を用いた化粧石鹸の例を示す。
界面活性剤 55〜75%炭酸ナトリウム 20〜40%着色料 0.5%香料(本発明の化合物) 0.5%【0013】
【発明の効果】ハマナス葉の芳香成分である新規なセスキテルペンアルコールを提供する。この化合物は、単独で強めの木香臭、希釈またはリナロール( linalool )などと混合して非常に爽やかなみどりのハマナス香、または甘みがあるジャスミン香を呈するものであるから、香りの基調をなすフラグランスとして有用である。したがって、この化合物は芳香剤、香水等の香料として使用できる。そして、この香料は、ハマナスの葉の香りという点で、自然志向の向きにアピールできる。特に、リビングルームの芳香剤あるいは石鹸香料等として有用である。
【出願人】 【識別番号】390014535
【氏名又は名称】新技術事業団
【出願日】 平成4年(1992)12月21日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
【公開番号】 特開平6−184182
【公開日】 平成6年(1994)7月5日
【出願番号】 特願平4−340214