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【発明の名称】 光学活性エポキシアルコール誘導体の製造方法
【発明者】 【氏名】ウイルフレッド ポーサム シャム

【目的】
【構成】 水溶性の光学活性エポキシアルコールの水溶液を有機ハロゲン化スルホニル、特にC−C10アルキル基あるいはニトロ基で置換されていてもよいベンゼンスルホニルクロライド、と、第三アミンの存在下に、有機スルホネート誘導体を形成するのに効果的な時間および温度で接触させることから成る、水溶性の光学活性エポキシアルコールの有機スルホネート誘導体の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 水溶性の光学活性エポキシアルコールの水溶液を有機ハロゲン化スルホニルと、第三アミンの存在下に、有機スルホネート誘導体を形成するのに効果的な時間および温度で接触させることから成る、水溶性の光学活性エポキシアルコールの有機スルホネート誘導体の製造方法。
【請求項2】 有機スルホネート誘導体を有機相中に抽出することをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項3】 有機スルホネート誘導体を溶液から沈殿させることをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項4】 水溶性の光学活性エポキシアルコールが(R)−グリシドール、(S)−グリシドール、(R)−2−メチルグリシドール、(S)−2−メチルグリシドール、(R)−3−メチルグリシドール、(S)−3−メチルグリシドール、およびこれらの鏡像異性体濃縮混合物より成る群から選ばれる、請求項1の方法。
【請求項5】 有機ハロゲン化スルホニルが次の一般構造式,化1【化1】

〔式中、XおよびYは同一であるかまたは異なり、水素、C1 −C10アルキル、およびニトロから選ばれる〕を有する、請求項1の方法。
【請求項6】 前記水溶液が水溶性の光学活性エポキシアルコールと水不混和性有機溶媒から成る不斉エポキシ化反応混合物を水で抽出することにより得られる、請求項1の方法。
【請求項7】 水溶性の光学活性エポキシアルコールと有機ハロゲン化スルホニルのモル比が0.5:1から1:0.5までである、請求項1の方法。
【請求項8】 有機ハロゲン化スルホニルと第三アミンのモル比が0.7:1から1:0.7までである、請求項1の方法。
【請求項9】 水溶性の光学活性エポキシアルコールが水溶液中に5〜50重量%の濃度で存在する、請求項1の方法。
【請求項10】 温度が−20℃〜50℃である、請求項1の方法。
【請求項11】 光学活性グリシドールの水溶液を一般構造XSO2R〔式中、XはClまたはBrであり、RはC1 −C10アルキル、C7 −C20アリールアルキル、およびC6 −C20アリールから選ばれる〕を有する有機ハロゲン化スルホニルと、第三アミンの存在下に、−20℃〜50℃の温度で有機スルホネート誘導体を形成するのに効果的な時間にわたり接触させることから成る、光学活性グリシドールの有機スルホネート誘導体の製造方法。
【請求項12】 前記有機スルホネート誘導体を有機相中に抽出することをさらに含む、請求項11の方法。
【請求項13】 有機スルホネート誘導体を溶液から沈殿させることをさらに含む、請求項11の方法。
【請求項14】 XがClであり、Rがメチルフェニル、4−ニトロフェニル、3−ニトロフェニル、4−クロロフェニル、4−クロロ−3−ニトロフェニル、4−ブロモフェニル、2,4,5−トリクロロフェニル、2,4,6−トリイソプロピルフェニル、4−メトキシフェニル、2−ナフチル、2,4−ジニトロフェニル、2−メシチル、1−ナフチル、2−ブロモフェニル、および3−ブロモフェニルから選ばれるC6 −C20アリール基である、請求項11の方法。
【請求項15】 前記水溶液が光学活性グリシドールと水不混和性有機溶媒から成る不斉エポキシ化反応混合物を水で抽出することにより得られる、請求項11の方法。
【請求項16】 前記水溶液が光学活性グリシドールと水不混和性有機溶媒から成る酵素反応速度論的分割反応混合物を水で抽出することにより得られる、請求項11の方法。
【請求項17】 光学活性グリシドールと有機ハロゲン化スルホニルのモル比が0.5:1から1:0.5までであり、そして有機ハロゲン化スルホニルと第三アミンのモル比が0.7:1から1:0.7までである、請求項11の方法。
【請求項18】 光学活性グリシドールが水溶液中に5〜50重量%の濃度で存在する、請求項11の方法。
【請求項19】 水不混和性有機溶媒を前記接触の間さらに存在させ、そして形成された有機スルホネート誘導体を該水不混和性有機溶媒中に抽出する、請求項11の方法。
【請求項20】 有機スルホネート誘導体を結晶化によって水不混和性有機溶媒から回収する、請求項19の方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、グリシドールのような水溶性の光学活性エポキシアルコールの有機誘導体の簡便な製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】(R)−および(S)−グリシドールのような光学活性(非ラセミ)エポキシアルコールの有機スルホネート誘導体は、キラル薬物およびβ−遮断剤のような高度の生理活性を有する他の化合物を合成する際の非常に有用で用途の広い中間体である。かかる誘導体の合成装置が、Hanson, Chemical Reviews 91(4), 437-473 (1991)において検討されている。
【0003】これらの有用な有機スルホネート誘導体の当分野で知られた製造法の1つは、予め純粋な形態で単離しておいた光学活性エポキシアルコールと有機ハロゲン化スルホニルとを、発生したハロゲン化水素を吸収する第三アミンの存在下で、反応させることである。このような方法は、例えば Klunder et al., Org. Chem.54, 1295-1304 (1989); Nakabayashi et al., Bull Chem. Soc. Jpn. 39, 413 (1966);および Chautemps et al., C.R. Seances Acad. Sci., Ser. C, February26, 1968, pp. 622-624に記載されている。この方法の実施には、望ましくない副反応が起こるのを最小限に抑えかつ有機スルホネート誘導体のその後の精製を容易にするように十分な純度で、反応すべき光学活性エポキシアルコールを最初に得なければならないという欠点が伴う。しかしながら、この方法での光学活性エポキシアルコールの前単離は、このタイプの化合物の多くが不安定で反応性であるという事実のために、簡単には達成されない。これらの物質の精製中に、重合、開環(例えば加水分解またはアルコーリシス)、酸触媒分解または熱分解などのために、かなりの減量にしばしば直面する。グリシドールのような非晶質水溶性エポキシアルコールは高収率で回収するのが特に困難である。
【0004】この問題のもう1つの解決法として、不斉エポキシ化反応の直後に(エポキシアルコールを単離することなく)その場 (in situ)で光学活性エポキシアルコールを有機ハロゲン化スルホニルで誘導体化することが提案されている〔例えば、Gao et al., J. Am. Chem. Soc. 109, 5765 (1987)を参照されたい〕。ところが、この誘導体化法は、エポキシアルコールと有機ハロゲン化スルホニルの化学量論比が約1:1であるとき、単離された所望のスルホネート誘導体の収率が比較的低いという難点を有する。提案されたこの合成法には、誘導体化反応の前後に多くの煩雑な精製または処理工程が依然として必要であるという別の欠点もある。理論によって拘束されることを望まないが、これらの問題は、少なくとも一部分において、有機ハロゲン化スルホニルと、未反応のアリル系アルコール、未反応の有機ヒドロペルオキシド、有機ヒドロペルオキシドから誘導されたアルコールといった不斉エポキシ化反応混合物中の他のプロトン性化学種との競合反応によるものと考えられる。in situ 誘導体化法に伴う他の問題は、存在する未反応の有機ヒドロペルオキシドを、トリアルキルホスフェートのような試薬を使って、最初に還元しなければならない点である。しかし、このタイプの還元はきわめて発熱的である。制御された条件下でさえも、わずかではあるが有意な量のエポキシアルコールの損失を、特に大規模製造では、避けがたい。さらに、過剰の還元剤を使用しないように注意する必要がある。なんとなれば、ハロゲン化スルホニルや目的の有機スルホネート誘導体が還元されて、有意な副生物としてのスルフィネートエステルの製造へ導くことがあるからである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】かくして、光学活性グリシドールまたは類似の化合物の有機スルホネート誘導体が高収率で、しかも高い光学純度および化学純度で得られる改良法の開発は相当に価値があるだろう。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、水溶性の光学活性エポキシアルコールの水溶液を有機ハロゲン化スルホニルと、第三アミンの存在下に、有機スルホネート誘導体を形成するのに効果的な時間および温度で接触させることから成る、水溶性の光学活性エポキシアルコールの有機スルホネート誘導体の製造方法を提供する。
【0007】本発明の方法は、大過剰の有機ハロゲン化スルホニルを使用せずに、また、誘導体化およびその後の単離工程の間に光学純度が有意に低下せずに、スルホネート誘導体を高収量で効率よく生成する。本方法の実施により得られた有益な結果は、有機ハロゲン化スルホニルが一般に水感受性で、すぐに加水分解されて対応するスルホン酸を生じることを考慮すると、まったく意外であった。例えば、Mesnard らは、C.R. Acad. Sci., pp. 2999-3001 (1963年11月13日) において、無水条件下で塩化p−トルエンスルホニル(塩化トシル)を一価アルコールおよびピリジンと接触させた後の反応混合物中に存在する未反応の塩化トシルが、水を加えたとき、容易に加水分解されると報じている。
【0008】かくして、エポキシアルコールの水溶液を有機ハロゲン化スルホニルと接触させると、スルホン酸ではなくスルホン酸エステルが優先的に得られるという発見は、一般に該溶液中には水がエポキシアルコールに対して大過剰モル量で存在するので、まったく予想外のことであった。さらに、予想に反して、エポキシアルコールのエポキシド環は完全な状態で残り、有機ハロゲン化スルホニルによる誘導体化の間、水と塩基(第三アミン)の両方が存在するにもかかわらず、加水分解されない。
【0009】本発明の方法を用いて誘導体化され得る光学活性エポキシアルコールには、ヒドロキシル基とエポキシド(オキシラン)基の両方およびキラル中心を含みかつ水溶性または水混和性である有機化合物類のクラスが含まれる。好ましくは、このような化合物は25℃において少なくとも5%の水溶解度を有するものである。代表的な光学活性エポキシアルコールとしては、グリシドール(オキシランメタノールとしても知られている)、2−メチルグリシドール(2−メチルオキシランメタノール)、3−メチルグリシドール(3−メチルオキシランメタノール)などの光学異性体(鏡像体)が挙げられる。かかる化合物は一般構造,化2【0010】
【化2】

【0011】〔式中、R1 、R2 およびR3 の1つはメチルで、残りのR基は水素であるか、またはR1 、R2 およびR3 はそれぞれ水素である〕に相当する。光学活性エポキシアルコールはRおよびS異性体の鏡像異性体濃縮混合物(一方の異性体が主要量を占めるもの)であってもよく、また本質的に光学的に純粋なもの(すなわち、単一異性体のみを含むもの)であってもよい。好ましくは、混合物を用いる場合、該混合物は少なくとも50%e.e.(enantiomeric excess; 鏡像異性体過剰) の光学純度を有し、少なくとも70%e.e.の光学純度をもつことがより好ましい。有機スルホネート誘導体のいくつかはより高い光学純度へ結晶化されるので、本質的に単一の立体異性体のみを含む最終誘導体生成物を得るために、極めて高い光学純度のエポキシアルコールから出発することが常に必要であるとは限らない。
【0012】水溶性エポキシアルコールの水溶液は、一般に5〜50重量%のエポキシアルコールを含み、残部は主として水であろう。少量の他の有機化学種、例えばアルコールやヒドロペルオキシドが存在してもよいが、このような化学種(特に活性水素をもつもの)の濃度は最小限(全体の5重量%未満)にとどめることが好ましい。本発明に従って処理しようとする水溶液は、この種の混合物を生成するための当分野で知られた通常の技法によって得られるだろう。
【0013】かかる方法の1つに、金属で錯化されたキラルリガンドを有する遷移金属触媒および有機溶媒の存在下での有機ヒドロペルオキシドとアリル系アルコールとの反応と、これに続く抽出剤として水を用いた水相中へのエポキシアルコールの抽出が挙げられる。有機ヒドロペルオキシドは、代表的には、第二または第三脂肪族または芳香族ヒドロペルオキシドで、例えばt−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、エチルベンゼンヒドロペルオキシド、シクロヘキシルヒドロペルオキシド、トリフェニルメチルヒドロペルオキシドなどである。アリル系アルコールはエポキシ化の際にそれが所望の水溶性光学活性エポキシアルコールを生成するようなものを選択し、かくしてアリルアルコール、メタリルアルコール(2−メチル−2−プロペン−1−オール)、3−ブテン−1−オールなどであり得る。触媒中の遷移金属は、好ましくはチタン、モリブデン、ジルコニウム、バナジウム、タンタルおよびタングステンから選ばれ、キラルリガンドと錯化させたときの比較的高い活性と立体選択性のためにチタンが好ましい。キラルカルビノールは特に好ましいクラスのキラルリガンドであり、酒石酸のエステルおよびアミド誘導体のようなキラル(不斉)グリコール(ジヒドロキシ化合物)を含む。有機溶媒はアリル系アルコールの光学活性エポキシアルコールへの迅速な立体選択的変換をもたらすように選ばれる。使用するのに特に適した溶媒として、ハロゲン化炭化水素(例えば、塩化メチレン、ジクロロエタン、四塩化炭素など)、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサン、イソオクタン、シクロヘキサンなど)、そして芳香族炭化水素(例えば、トルエン、エチルベンゼンおよびクメン)が挙げられる。不斉エポキシ化法は次の刊行物に詳細に記載されており、そのすべてを参照によりそのままここに組み入れるものとする:Sheldon, Aspects Homogeneous Catal. 4, 3(1981); Jorgensen, Chem. Dev. 89, 431(1989);米国特許第 4,471,130号 (Katsuki ら);米国特許第 4,764,628号 (Shum);米国特許第 4,594,439号 (Katsuki ら);ヨーロッパ特許公開第 197,766号; ヨーロッパ特許公開第 70,618 号; ヨーロッパ特許公開第 255,379号; Pfenninger, Synthesis 89(1986); Gav et al., J. Am. Chem. Soc.109, 5765(1987); Katsuki et al., J. Am. Chem. Soc. 102, 5974(1980); Finnらの Asymmetric Synthesis, Morrison 編集, アカデミックプレス, ニューヨーク (1985年), 5巻, 8 章, 247 頁; Rossiterらの Asymmetric Synthesis, Morrison 編集, アカデミックプレス, ニューヨーク (1985年), 5巻, 7 章, 193 頁。不斉エポキシ化反応混合物からの水による水溶性エポキシアルコールの抽出は、ヨーロッパ特許公開第 308,188号に詳細に記載されており、その開示内容を参照によりそのままここに組み入れるものとする。
【0014】エポキシアルコールの適当な水溶液を得るためのもう1つの方法は、有機溶媒中での立体選択的酵素により触媒される不斉変換と、その後に光学活性エポキシアルコールを取り出すための反応混合物の水洗浄を行うことである。例えば、イソプロペニルとビニルエステルはラセミ体グリシドールのリパーゼで触媒される立体選択的アシル化に有用であり、鏡像異性体的に濃縮されたグリシドールと鏡像異性体的に濃縮されたグリシドールエステルの混合物をもたらすことが見いだされた〔Wang et al., J. Am. Chem. Soc. 110, 7200-7205(1988) を参照されたい〕。別の既知方法は、米国特許第 4,732,853号 (Whitesidesら) に記載されるように、エポキシアルコールのラセミ体カルボン酸エステルを加水分解酵素で鏡像異性選択的に加水分解して、キラルなエポキシアルコール(水を用いて反応混合物から水相中へ抽出される)とキラルな非加水分解エステルを得ることである。また、適当なエポキシアルコール水溶液は、例えばヨーロッパ特許公開第 464,905号に記載されるように、R−およびS−グリシドールのラセミ混合物を適当な鏡像異性体選択的酸化酵素(例えば、アルコールデヒドロゲナーゼ)の作用にさらすことによっても得ることができる。
【0015】本発明の方法において出発物質として使用するのに適した光学活性エポキシアルコールの水溶液を得るためのさらに別の方法は、例えば PCT出願第 WO90-06996 号 (Lopez ら) 、米国特許第 4,800,162号 (Matson) 、および米国特許第 4,795,704号 (Matson) に記載されるようなメンブラン技法の使用である。
【0016】水溶性光学活性エポキシアルコールの水溶液は、目的の有機スルホネート誘導体を形成させるのに効果的な条件下で、有機ハロゲン化スルホニルと接触させる。用いる有機ハロゲン化スルホニルの選択は限定的なものではなく、有機スルホネート誘導体に希望の性質を付与するように選択されるだろう。例えば、ハロゲン化スルホニル官能基に結合される有機置換基は、アルコキシドやフェノキシドとの求核反応のような後続の工程において誘導体中に形成されたスルホネート基の置換を容易にするように、電子吸引性の部分を含んでいてもよい。また、光学活性グリシドールのある種の有機スルホネート誘導体は、より高い光学純度へ再結晶されるという望ましい性質を備えていることが公知であり、このような誘導体にはグリシジル4−クロロベンゼンスルホネート、グリシジルトシレート、グリシジル3−ニトロベンゼンスルホネート、およびグリシジル4−クロロ−3−ニトロベンゼンスルホネートが含まれる(米国特許第 5,153,338号および同第 4,946,974号を参照されたい)。特に有用なクラスの有機ハロゲン化スルホニルは一般構造XSO2Rに相当し、ここでXはCl(塩素)またはBr(臭素)であり、RはC1 −C10アルキル(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、シクロヘキシルなど、およびハロゲン化アルキル基を含むこれらの置換誘導体)、C7−C20アリールアルキル(例えば、ベンジル、フェネチルなど、およびこれらの置換誘導体)、およびC6 −C20アリール(例えば、フェニル、ナフチルなど、およびハロゲン化、アルキル化、ニトロ化およびシアノ化誘導体を含むこれらの置換誘導体)から選ばれる。特に、一般構造式,化3【0017】
【化3】

【0018】〔式中、XおよびYは同一であるかまたは異なり、水素、C1 −C10アルキル(特にメチル)、ハロ(特にCl、FおよびBr)、およびニトロ(NO2)から選ばれる〕を有する有機ハロゲン化スルホニルを使用することが好ましい。このような化合物の具体的な例としては、塩化2,4,6−トリメチルベンゼンスルホニル、塩化メタンスルホニル、塩化トリフルオロメタンスルホニル、塩化トリクロロメタンスルホニル、塩化トシル、塩化4−ニトロベンゼンスルホニル、塩化3−ニトロベンゼンスルホニル、塩化2−ニトロベンゼンスルホニル、塩化4−クロロベンゼンスルホニル、塩化4−クロロ−3−ニトロベンゼンスルホニル、塩化4−ブロモベンゼンスルホニル、塩化2,4,5−トリクロロベンゼンスルホニル、塩化2,4,6−トリイソプロピルベンゼンスルホニル、塩化4−メトキシベンゼンスルホニル、塩化2−ナフタレンスルホニル、塩化1−ナフタレンスルホニル、塩化2,4−ジニトロベンゼンスルホニル、塩化2−ブロモベンゼンスルホニル、および塩化3−ブロモベンゼンスルホニルが含まれるが、これらに限定されない。
【0019】光学活性エポキシアルコールと有機ハロゲン化スルホニルのモル比は0.5:1から1:0.5の範囲が好ましく、わずかに過剰(例えば5〜20%)の有機ハロゲン化スルホニルを使用することが最も好ましい。
【0020】エポキシアルコールと有機ハロゲン化スルホニルとの反応においては、反応中に発生するハロゲン化水素と化合するように第三アミンを存在させ、これにより反応混合物の酸性度を最小限に抑えかつ目的の誘導体化を比較的低い温度で生起させてエポキシアルコールや有機スルホネート誘導体の望ましくない分解を避けるようにする。従って、第三アミンは本発明の方法では触媒または促進剤として作用すると考えられる。適当な第三アミンには、アンモニアの3個の水素原子をすべて炭化水素基で置換することにより誘導されるような、1個以上の第三アミン基を含んでいてもよい窒素の有機化合物のクラスが含まれる。第三アミンはモノマー、オリゴマーまたはポリマーの形態であり得る。本発明の方法において有用な第三アミンの例として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、トリフェニルアミン、1,4−ジアザビシクロ〔2.2.2〕オクタン(DABCO)、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンなどを挙げることができるが、これらに限定されない。また、第三アミン基を含むイオン交換樹脂、例えば市販されている「アンバーライト (Amberlite)」、「アンバーリスト (Amberlyst)」および「ダウエックス (Dowex)」のいくつかも使用に適している。本発明の1つの実施態様では、誘導体化の間に形成されたアミンのハロゲン化水素塩が水溶性であって、水で洗うことにより有機スルホネート誘導体(一般には水に不溶性)から容易に分離されるように第三アミンを選択する。
【0021】用いる第三アミンの量は、モル基準で、有機ハロゲン化スルホニルの量にほぼ等しくなるように調整することが有利であるが、過剰の第三アミンも所望により存在し得るだろう。一般的には、0.7:1から1:0.7までの有機ハロゲン化スルホニルと第三アミンのモル比で十分である。
【0022】有機ハロゲン化スルホニルは、ハロゲン化スルホニルからハロゲンを置換するようにエポキシアルコールのヒドロキシ基と反応させることにより目的の有機スルホネート誘導体を形成するのに効果的な時間および温度で、エポキシアルコールと接触させる。正確な時間および使用温度は限定的ではなく、他の要因もあるが、反応成分の反応性および濃度に応じて変化するだろう。しかし、一般的には、1分〜12時間の接触時間および−20℃〜50℃の温度で十分である。反応温度は存在する水が凍結するほど低くても、望ましくない副生物が形成されるほど高くてもいけない。
【0023】本発明の方法は、反応成分を混合しかつ希望の反応温度を維持することができる適当な大きさおよび形状の容器内でバッチ式、半バッチ式、連続的または半連続的に行うことができる。1つの好ましい実施態様では、最初に、有機ハロゲン化スルホニルと第三アミンを合わせ、次いでエポキシアルコールの水溶液を、混合物を十分に攪拌しながら、漸増的に加えていく。他の実施態様では、有機ハロゲン化スルホニルをエポキシアルコール水溶液と第三アミンの混合物に添加する。有機ハロゲン化スルホニルが水不溶性であるか、または反応温度において固体である場合は、有機ハロゲン化スルホニルを芳香族炭化水素、ハロゲン化脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素、エーテルなどの適当な非反応性溶媒中に溶解することが好ましい。
【0024】光学活性エポキシアルコールの有機スルホネート誘導体の回収、単離および更なる精製はどのような適当な方法によっても達成されるが、その方法は該誘導体の性質(例えば溶解性、融点)により変わるだろう。一般には、有機スルホネート誘導体は水不溶性であるため、水または他の水性抽出剤で洗うことにより生成したアミンハロゲン化水素塩および未反応のエポキシアルコールから容易に分離できるだろう。有機スルホネート誘導体が水不溶性であるが、水不混和性有機溶媒に可溶である場合は、アミンハロゲン化水素塩と未反応のエポキシアルコールを水相中に残留させるべく有機溶媒を用いて有機相中に該誘導体を抽出することができる。このようにして得られた有機相をさらに水洗し、減圧蒸留により有機溶媒を除去すると、有機スルホネート誘導体が得られる。有機スルホネート誘導体が周囲温度以上の融点をもつならば、それを適当な溶媒から再結晶してもよい。また、有機溶媒は、それが有機相と水相の分離に際しては有機スルホネート誘導体を溶解する溶媒として作用するが、分離した有機相の濃縮および冷却に際しては再結晶媒体としても作用するように選択することもできる。有機スルホネート誘導体をあまり溶解しない第二の有機溶媒を加えて、結晶化工程での該誘導体の回収率を高めることもできる。有利には、誘導体化反応の間、水不混和性の有機溶媒を存在させる。その結果として、該誘導体が生成されるにつれて、エポキシアルコールの水溶液とは別個の相を形成する該有機溶媒中に該誘導体が抽出される。本発明のこの実施態様では、驚いたことに、目的の誘導体化と抽出を同時に達成するために、相間移動剤または触媒を添加する必要のないことが判明した。また、反応混合物中の有機スルホネート誘導体の溶解性は、それが形成されるにつれて溶液から沈殿するようなものであり得る。沈殿物(結晶形でありうる)は、濾過のような適当な方法で、沈殿形態のまま回収されるか、あるいは再結晶および/または洗浄用の適当な溶媒中に抽出もしくは溶解される。上記目的に適する水不混和性の有機溶媒として、例えば芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クロロベンゼンなど)、脂肪族炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、石油エーテル、イソオクタン、シクロヘキサン、塩化メチレン、クロロホルム、テトラクロロエチレンなど)、エステル(例えば、酢酸エチル)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル)、ケトン(例えば、ジエチルケトン)などが挙げられる。有機スルホネート誘導体が室温で液体であるならば、分別蒸留、抽出、吸着または分取クロマトグラフィーのような精製法を用いることができる。
【0025】当業者ならば、これ以上詳しく述べなくとも、上記説明により、本発明を最大限に利用できると考える。かくして、以下の実施例は単なる例示と解され、いかなる場合も特許請求の範囲の制限または開示内容の残余と解されるべきでない。
【0026】
【実施例】
実施例1工業級の塩化3−ニトロベンゼンスルホニル(10g)をトルエン(60g)に溶解した。不溶性の褐色固体が存在し、これを濾過により除いた。この有機塩化スルホニル溶液に5℃でトリエチルアミン(4.6g)を加え、次いでアリルアルコールの不斉エポキシ化とその後のエポキシ化反応混合物の水抽出により得られた光学活性グリシドールの水溶液(16.65g;20重量%グリシドール)を加えた。5℃で2時間、25℃で2時間攪拌した後、誘導体化反応混合物を追加量のトルエン(33g)と混合して、沈殿したグリシジル3−ニトロベンゼンスルホネートの全量を溶解し、その後水(50g)で洗った。相分離を行った後、有機スルホネート誘導体を含有する上部有機相を無水硫酸マグネシウム(10g)で乾燥し、濾過した。有機相の一部(88g)を約55℃で真空蒸留し、残留物の重さが約16gになるまでトルエンを除いた。この時点で、グリシジル3−ニトロベンゼンスルホネートの結晶化が観察された。その後無水エタノール(20g)を加え、結晶化を室温で攪拌せずに続けた。湿った氷上でさらに30分間5℃に冷却して、結晶化を完結させた。結晶質の生成物を濾過により集め、少量のヘキサン(5〜10g)で洗い、自然乾燥させて、58〜60℃の融点および少なくとも96%e.e.の鏡像異性体過剰を有するグリシジル3−ニトロベンゼンスルホネート7.18gを得た。全収率は61%であった。
【0027】実施例2実施例1で得られた有機相の別の88g部分を、硫酸マグネシウム処理を省いた以外は実施例1に記載した方法と同じ方法で処理した。メタノールの添加後、2相混合物から5℃で結晶化を開始させた。目的の有機スルホネート誘導体の全収率は55%(6.50g)であった。
【0028】実施例3この実施例は、触媒としてリパーゼを用いたエステル化により反応速度論的に分割されたグリシドール水溶液を本発明の方法において使用して、高い光学純度を有するグリシジル3−ニトロベンゼンスルホネートを製造し得ることを実証するものである。
【0029】ラセミ体グリシドール(20g)、酢酸ビニル(18.5g)、リパーゼPS(2g;シュードモナス種に由来するエステルヒドロラーゼで、Amana から供給されたもの)、およびシクロヘキサン(200mL)を含有する混合物を23℃で攪拌した。エステル化をガスクロマトグラフィーでモニターした。65%のグリシドール転化率で、反応混合物中に残存するグリシドールは、シクロデキストリンをベースにした毛管GCカラムで測定して、52%のe.e.を有していた。リパーゼを濾過により除き、濾液を水(25mL)で洗って分割グリシドールを抽出した。その後、グリシドールの水抽出液は(S)−グリシジル3−ニトロベンゼンスルホネートの合成において次のように使用した。
【0030】工業級の塩化3−ニトロベンゼンスルホニル(20g)をトルエン(120g)に溶解した。不溶性の不純物を濾過により除いた。トルエン溶液を5℃に冷却し、その後トリエチルアミン(9.2g)と上記のように得られたグリシドール水溶液(約20重量%グリシドール)をトルエン溶液に同時に加えた。5℃で2時間、25℃で2時間攪拌した後、反応混合物を実施例1に記載したように後処理した。濃縮した反応混合物からの有機スルホネート誘導体の結晶化を、(S)−グリシジル3−ニトロベンゼンスルホネートの96%e.e.種結晶(0.2g)の添加により促進させた。結晶化を5℃で完結させた後、結晶質の生成物を濾過により集めた。(S)−グリシジル3−ニトロベンゼンスルホネートは58〜60℃の融点および96%のe.e.を有し、これは反応速度論的に分割されたグリシドール出発物質と比べて光学純度の実質的増加を示している。
【0031】実施例4〜14塩化3−ニトロベンゼンスルホニルの代わりに次の量の種々の有機ハロゲン化スルホニルを用いて、表1に示す実施例1の方法を繰り返す。
【0032】
【表1】
実施例 有機ハロゲン化スルホニル 量(g) 予測される生成物 4 塩化4−クロロベンゼン 9.5 グリシジル4−クロロ スルホニル ベンゼン スルホネート 5 塩化4−メチルベンゼン 8.6 グリシジル4−メチル スルホニル ベンゼン スルホネート 6 塩化4−ニトロベンゼン 10 グリシジル4−ニトロ スルホニル ベンゼン スルホネート 7 塩化4−クロロ−3−ニト 11.5 グリシジル4−クロロ−3− ロベンゼン スルホニル ニトロベンゼン スルホネート 8 塩化4−ブロモベンゼン 11.5 グリシジル4−ブロモベンゼン スルホニル スルホネート 9 塩化2,4,5−トリクロロ 12.6 グリシジル2,4,5−トリク ベンゼン スルホニル ロロベンゼン スルホネート10 塩化2,4,6−トリイソプ 13.7 グリシジル2,4,6−トリ ロピルベンゼン スルホニル イソプロピルベンゼン スルホネート 11 塩化4−メトキシベンゼン 9.3 グリシジル4−メトキシ スルホニル ベンゼン スルホネート12 塩化2−ナフタレン 10.2 グリシジル2−ナフタレン スルホニル スルホネート13 塩化1−ナフタレン 10.2 グリシジル1−ナフタレン スルホニル スルホネート14 塩化2,4−ジニトロ 12.0 グリシジル2,4−ジニトロ ベンゼン スルホニル ベンゼン スルホネート
【出願人】 【識別番号】592037848
【氏名又は名称】アルコ ケミカル テクノロジー エルピー
【出願日】 平成6年(1994)1月20日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】秋沢 政光 (外1名)
【公開番号】 特開平6−306067
【公開日】 平成6年(1994)11月1日
【出願番号】 特願平6−18799