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【発明の名称】 レンズ保持装置
【発明者】 【氏名】岸田 尚之

【目的】 研磨抵抗力に応じた保持力を得、研磨液による保持力の低下を防ぎ、安定した保持力を発生する作業性の良い保持装置を得る。
【構成】 外周部がレンズ1のコバ部1bに接し、レンズ1の軸心O0より回転方向Lに偏心量δだけズレた位置へ回転中心O1を有する押圧部5と、押圧部5へその上方より空気を吹き付けるように構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ノンブロッキング研磨加工する際にレンズを保持するレンズ保持装置において、レンズ裏面と接触してレンズを支持する受け材と、気体をレンズ裏面およびレンズのコバ部に供給する気体供給装置と、レンズのコバ部に対向して該コバ部を被うように配置した固定枠と、該固定枠とレンズのコバ部との間に介在させた回転自在な円柱状の弾性材とから構成され、該円柱状の弾性材はその回転中心が軸心からズレて設けられたことを特徴とするレンズ保持装置【請求項2】 ノンブロッキング研磨加工する際にレンズを保持するレンズ保持装置において、レンズ裏面と接触してレンズを支持する受け材と、気体をレンズ裏面およびレンズのコバ部に供給する気体供給装置と、レンズのコバ部に対向して該コバ部を被うように配置した固定枠と、該固定枠とレンズのコバ部との間に介在させた内部に熱線を有する回転自在な円柱状の弾性材とから構成され、該円柱状の弾性材はその回転中心が軸心からズレて設けられたことを特徴とするレンズ保持装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ラッピングによるレンズ研削および研磨加工工程で研磨用レンズを保持する装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、レンズ研削および研磨加工工程で用いるレンズ保持装置としては、例えば実公昭54−15351号公報記載の考案がある。上記考案は、図8および図9に示す様に、駆動軸72を備えた研磨盤73と、レンズ保持装置71を介して研磨レンズ74を押圧するとともに、レンズ保持装置71を図中左右にトラバースさせるセンター75とより構成されている。
【0003】このレンズ保持装置71は、研磨レンズ74の仕上げ済外周面(研磨済の面で、加工面の反対面)74aと同曲率をなす前面部76を有し、金属材からなる当て板77にゴム製の薄板78を貼着して位置決め面79を形成している。さらに、当て板77の背面部80の中心部には、上記センター75の受け部材81を埋設したものである。さらに、当て板77にはベークライトなどの合成樹脂よりなる把持部材82がビス83により固定されている。
【0004】把持部材82は円筒形状をなし、その円筒部84の先端部には外方に突出した突起85があり、軸方向に多数の割溝86を刻設することで、多数の把持爪84aが形成されている。また、把持爪84aはレンズ74の縁部74cに掛かるようになっている。さらに、当て板77に穿孔した雌ネジ87に、把持部材82を貫通して蝶ネジ88が螺着され、これにアルミニウムなどからなる枠体89が、把持部材82の突起85に当接可能なように構成されている。
【0005】上記構成によれば、レンズ74をゴム製の薄板79に密着させた状態で、蝶ネジ88をまわすと、把持部材82と枠体89とが締め付けられ、枠体89の先端係合部89aが把持部材82の突起85に当接する。これにより、把持爪84aの先端を内方へたわませ、レンズ74の縁部74cを把持爪84aで圧着して保持する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかるに、前記従来技術におけるレンズ保持装置では、レンズ研磨加工する際に、加工するレンズごとに蝶ネジを手で締めつける必要がある。このため、レンズを一個研磨する度にこの作業を行う必要が生じ、作業性が悪い。また、蝶ネジによる締め付けであるために、その締め付け力を研磨するレンズごとに安定的に負荷させることが困難である。
【0007】さらに、レンズの締め付け力が最初に設定されてしまうため、研磨加工中における研磨抵抗力の変化に応じて、その保持力を調整変化させることができないとともに、レンズのコバ部(保持部)にかかる研磨液により保持している摩擦力が小さくなるため、レンズが変形を生じるような大きな力で締め付け保持する必要が生じる。
【0008】因って、本発明は前記従来技術における欠点に鑑みて開発されたもので、研磨液による保持力の低下がなく、研磨抵抗力に応じて安定した保持力が得られると同時に、作業性の良いレンズ保持装置を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段および作用】本発明は、ノンブロッキング研磨加工する際にレンズを保持するレンズ保持装置において、レンズ裏面と接触してレンズを支持する受け材と、気体をレンズ裏面およびレンズのコバ部に供給する気体供給装置と、レンズのコバ部に対向して該コバ部を被うように配置した固定枠と、該固定枠とレンズのコバ部との間に介在させた回転自在な円柱状の弾性材とから構成され、該円柱状の弾性材はその回転中心が軸心からズレて設けられたものである。
【0010】また、ノンブロッキング研磨加工する際にレンズを保持するレンズ保持装置において、レンズ裏面と接触してレンズを支持する受け材と、気体をレンズ裏面およびレンズのコバ部に供給する気体供給装置と、レンズのコバ部に対向して該コバ部を被うように配置した固定枠と、該固定枠とレンズのコバ部との間に介在させた内部に熱線を有する回転自在な円柱状の弾性材とから構成され、該円柱状の弾性材はその回転中心が軸心からズレて設けられたものである。
【0011】図1および図2は本発明を示す概念図である。図1に示すように、外周部がレンズ1のコバ部1bに接し、軸心O0より偏心量δ、すなわち円盤の中心O0となる点より、レンズ1の回転方向Lより偏心量δだけスレた位置に回転中心O1を有するように構成した円盤状の押圧部5と、図2に示すように、前記押圧部5とコバ部1bの接触部に、押圧部5の上方より空気16を吹き付けるように構成したレンズ保持装置である。
【0012】上記構成によれば、まずレンズ1を保持具内に、押圧部5がレンズ1のコバ部1bと接点1cにより接触するように挿入する。次に前記状態でレンズ1を研磨加工すると、研磨によるレンズ1と工具(図示省略)の間に生じる研磨加工抵抗により、レンズ1が回転方向Lに回転を生じる。すると接点1cには、レンズ1と押圧部5との間の摩擦力Fによる回転トルクが生じる。これにより押圧部5は、回転自在に支持されている回転中心O1を中心に、回転方向θに回転する。
【0013】押圧部5が回転方向θに回転中心O1を中心に回転すると、回転中心O1は押圧部5の軸心O0から偏心量δの分だけ偏心しているため、図1の破線で示すように、移動量hを有した状態で回転を行おうとする。すなわち、移動量hの分だけ、押圧部5はレンズ1のコバ部1bを押し付ける力を発生する。この押し付け力を利用してレンズ1を保持することができる。
【0014】このときの締め付け力となる回転トルクの大きさは、接点1cと回転中心O1の距離および摩擦力Fにより決まることは明らかである。つまり、押圧部5の回転中心O1と接点1cとの距離が長いほど大きく、また押圧部5の摩擦係数が大きいほどその押し付け力は大きくなり、保持力が大きくなる。ここで接点1cには、図2に示すように押圧部5の上方により空気16が吹き付けられているため、研磨加工中の研磨液が接点1cにかかることがなく、常に乾いた状態を維持できる。よって、接点1cの摩擦係数を大きく維持することができ、より高い保持力を得ることができる。
【0015】
【実施例1】図3〜図5は本実施例を示し、図3は半裁断面図、図4はレンズとゴムローラーとの関係を示す平面図、図5は受け台の部分平面図である。本実施例の保持装置では、レンズ1はその裏面1aと外周部であるコバ部1bとの2箇所により保持されている。レンズ裏面1aは、裏面1aと同じ曲率半径を有したゴムあるいは樹脂で構成されたシート2と、このシート2を接着により支える受け台8とにより保持されている。受け台8は、ステンレスあるいは真鍮などの金属で構成され、図5に示すようにシート2の接着面の反対面には、空気が流れる溝状の流路15を有している。
【0016】さらに、受け台8は円筒状でその下端部が開放され、内部が空洞に構成された保持枠9の内部に、ネジ13により螺着されている。保持枠9の上端は、凹面状の溝を介して先端部に球部を有するカンザシ10を受けており、その側面には、カンザシ10の球部が保持枠9から抜けないように、凹面状の溝幅が球部の外径より狭くなるように、ピン11が圧入されている。
【0017】カンザシ10と保持枠9とにはゴムより成るジャバラ12がそれぞれ圧入されている。また、カンザシ10,保持枠9,受け材8およびシート2の内部には、レンズ1の裏面1aに通じる導管用孔が設けられている。カンザシ10の導管用孔には導管3aが接続され、導管3aは圧縮空気を供給するコンプレッサー4aに接続されている。同様に、カンザシ10および保持枠9には、前記導管3aの外周部に同様な導管3bが設けてあり、受け台8の流路15につながっている。また導管3bもコンプレッサー4bに接続されている。
【0018】レンズ1のコバ部1bと対向する位置にはポリウレタンなど摩擦係数の大きなゴムローラー5が、保持枠9の外周の外部と内部の空洞に貫通して設けられた空洞部14に固定ピン6を介して挿入されている。固定ピン6とゴムローラー5とは接着剤などによって強力に固着されている。また固定ピン6は、潤滑油を含有した含油メタルなどの軸受7を介して、E型止め輪8により保持枠9に回転自在に装着されている。
【0019】以上の構成から成るレンズ保持装置は、図4に示す様に、レンズ1を研磨加工する前では、ゴムローラー5はレンズ1のコバ部1bにあたる外径Dと接する位置にある。また、各コンプレッサー4a,4bは停止しており、圧縮空気は供給されていない。
【0020】レンズ1を研磨すると、レンズ1は工具との研磨加工抵抗により回転方向Lに回転力を生じ、さらにコバ部1bと接していたゴムローラー5が、レンズ1との摩擦力により、レンズ1とは逆の回転方向θに回転しようとする。このとき、ゴムローラー5の回転軸にあたる固定ピン6は、レンズ1とゴムローラー5との接点1cよりもレンズ1が回転する方向L側に設置されているため、破線で示すゴムローラー5′の位置に回転しようとする。
【0021】すなわち、ゴムローラー5が摩擦力により生じる回転モーメントによってゴムローラー5′の位置に移動しようとすることで、ゴムローラー5とレンズ1との接点1cで創成する円が、破線で示す移動径D′の位置になろうとする。ところが実際には、レンズ1の外径Dは変化しないため、この移動しようとする移動量hに応じた力でゴムローラー5がレンズ1を押さえることになる。
【0022】この時、コンプレッサー4aは停止しており、圧縮空気は供給されない。コンプレッサー4bは作動し、圧縮空気が導管3bおよび流路15を介してコバ部1bとゴムローラー5との接触部に供給される。これにより、前記両者の接触部には、常に圧縮空気が上方より供給されるため、研磨における研磨液がこの接触部にかかることを防げる。加工終了後は、コンプレッサー4bを停止し、圧縮空気の供給を停止する。
【0023】以上によりゴムローラー5を配置する数は、多ければ多いほど高い保持力が得られることは明らかであり、同時に、多くのゴムローラー5で各ゴムローラー5どうしを対向して配置すれば、押圧力によるレンズ1の変形も小さくすることができる。また、レンズ1を挿入する際に、裏面1aがシート2と密着するまで十分な力で押すことは当然であり、レンズ1をシート2に密着させることにより、より高い保持力を得るとともに、研磨荷重によるレンズ1の変形をも防ぐのである。
【0024】レンズ1を保持装置から離脱させるには、導管3aに接続されたコンプレッサー4aより圧縮空気を供給することにより、レンズ1の裏面1aを押し、その押圧力がゴムローラー5の摩擦力より大きくなったとき、レンズ1を離脱することができる。また、レンズ1自体を回転方向Lとは逆方向に回転させれば、より簡単に外すことができることは明らかである。
【0025】本実施例によれば、レンズ1を研磨する際に生じる研磨抵抗力に応じてレンズ1のコバ部1bを保持し、空気圧力によりレンズ1を排出するため、研磨するレンズを装着するたびに保持力を調整する手間や、装着および排出のための作業を必要とせず、連続して多数のレンズを研磨加工する際の自動化を図るのに好都合である。
【0026】また、研磨抵抗力により生じる回転モーメントによってレンズ1のコバ部1bを保持することから、保持すべきレンズ1に応じてゴムローラー5の数や摩擦係数、あるいはゴムローラー5の回転軸とレンズ1の接点1cとの距離を変えることで、多くの保持力を得ることもできると同時に、レンズ1のコバ部1bとゴムローラー5の接触部に圧縮空気を供給することで、常に両者の接触面を乾いた状態に維持できるため、高い摩擦力を得ることができる。
【0027】さらに、レンズ1と接触する部分にゴムローラー5を用いているため、レンズ1を装着・排出しても、バリやカケなどの外観上の不良を発生することはない。また、カンザシ10の先端球部は保持枠9に圧入されたピン11により保持枠9と係合されているため、カンザシ10をレンズ1の自動搬送のために上下動させても、レンズ1および保持装置全体が合わせて上下動をするため、容易に自動化が行える。
【0028】
【実施例2】図6および図7は本実施例を示し、図6は半裁断面図、図7は受け台の部分平面図である。本実施例では、前記実施例1と同様な構成部分には同一番号を付してその説明を省略する。本実施例の特徴は、ゴムローラー5の内部をニクロム線16などにより加熱する構成とした点である。
【0029】本実施例では、コバ部1bを保持するゴムローラー5の内部にニクロム線16を埋め、保持枠9に埋めこまれたブラシ17を介してニクロム線16と電源18を流路15に設けた電線19により接続してある。ここで流路15は、電線19をカンザシ10の中心穴に導くために、図7に示すように、受け台8の中心まで設けてある。
【0030】上記構成のレンズ保持装置は、レンズ1を取り付ける前の段階とレンズ1の加工中は、圧縮空気の供給が停止されている。レンズ1と砥石とを分離した後、レンズ1を受ける準備(人手またはロボットハンドによる搬出準備)が完了した時点でコンプレッサー4aを作動し、圧縮空気を供給してレンズ1を取り出す。
【0031】また、レンズ1の加工中は、電源18によりニクロム線16に電流が供給されてゴムローラー5がニクロム線16の発する熱により加熱される。これにより、研磨液によるゴムローラー5の冷却を防げ、ゴムローラー5を温かい状態に維持できることから大きな摩擦係数を得られる。さらに、ゴムローラー5が加熱されているため、表面にかかる研磨液(水)の蒸発が早くなり、表面を乾いた状態に維持できることからも大きな摩擦係数を得られる。また、熱膨張を生じて体積が増加するため、コバ部1bを押圧する圧力が大きくなり、より大きな摩擦力を発生する。
【0032】本実施例によれば、前記実施例1と同様な効果が得られることはもちろん、空気の吹き出し圧力により保持部を乾燥させないため、研磨加工面への研磨液の供給を防げることがなく安定した研磨加工を行うことができる。
【0033】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明に係るレンズ保持装置によれば、研磨抵抗力に応じた保持力が得られると同時に、研磨液による保持力の低下を防ぎ、安定した保持力を発生する作業性の良い保持装置を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス光学工業株式会社
【出願日】 平成5年(1993)5月21日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 武
【公開番号】 特開平6−328356
【公開日】 平成6年(1994)11月29日
【出願番号】 特願平5−142767