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【発明の名称】 防塵マスク
【発明者】 【氏名】安江 政春

【氏名】原田 俊治

【目的】 繰り返し洗濯を行っても塵の透過抑制効果が減少せず、かつ形態保持性が良好で、人間から発生する塵の透過を抑制することができ、圧力損失が少ない防塵マスクの提供。
【構成】 単繊維直径0.1〜5.0μmのメルトブロー方式によって製造されたウエッブまたはシートを一枚もしくは複数枚積層してなる繊維集合体の片面またたは両面に通気性を有するシートを接合一体化させた繊維構造物であって、超音波ウエルダーによる融着によって接合一体化されたもの。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 単繊維直径0.1〜5.0μmのメルトブロー方式によって製造されたウエブまたはシートを一枚もしくは複数枚積層してなる繊維集合体の片面または両面に通気性を有するシートを接合一体化させた繊維構造物であって、超音波ウェルダーによる融着によって接合一体化が行われていることを特徴とする防塵マスク。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は高度な防塵性を有する防塵マスクに関する。更に詳しくは、微細粒子塵埃の透過抑制に効果を発揮し、かつ圧力損失も少なく、選択を繰り返しても防塵効果の低下が少なく、かつ破損しにくい防塵マスクに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、半導体製造を頂点とし、精密機器製造、光学機器、薬品、病院関連などクリーンルームを使用している企業は増加の一途をたどると共に、その製造加工の微細化、高密度化の進行は著しいものがある。それに伴いクリーンルーム内の製造環境も清浄空間維持への要求が一層厳しくなり、作業環境に残遊する塵の問題が製品の品質管理、歩留り向上を図る意味からも重大視されている。
【0003】クリーンルーム内の作業空間自身の清浄化については適切なフィルターを用い空気の循環を配慮したクリーンルームの出現により、その目的をほぼ達成してきているが、クリーンルーム内で作業する人間から発生する塵については未だ抜本的な対策がとられていない。特にクリーンルーム用マスクについても、マスクの素材からの発塵性及びマスクの表面積を大きくすることで圧力損失を少なくするなどの考慮はされているが、微細粒子径塵埃(0.3〜0.5μm程度)に対しての透過抑制対策は殆んど考慮されていない。
【0004】又、現市販品のクリーンルーム用マスクの大半が使い捨て品、いわゆるデイスポーザブルタイプであり、その着用での効用時間も8時間〜24時間程度の短時間使用となっている。その為、マスク取替え頻度が多くなり、これにかかる費用も多大で企業にとっては大きな負担となっているのが実情である。特開昭58−203770号公報には、平均繊維径が0.1〜3.0μmの有機繊維状フィブリルと平均繊維径が3〜25μmの有機繊維を湿式抄造して製造された不織布からなるクリーンルーム用マスクが開示されている。湿式不織布は、強度を上げるために抄造時に添加されたバインダーで繊維同志が結合されているため、その分、通気抵抗が大きくなる。また、洗濯に対する耐久性については十分な考慮が払われていない。
【0005】特開昭58−124639号公報には、メルトブロー方式で製造されたシートの両面に、低融点繊維を含む不織布を配置し、エンボスロールと超音波発生ホーンとにより結合してえられるシートからなる耐洗濯性に優れた防塵マスクが開示されている。このシートは、低融点繊維の溶融により、結合されているだけであるから、洗濯を繰り返すと、低融点繊維が含まれていないメルトブローシートが層内剥離をはじめるおそれがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこの様な塵の残遊に厳しい作業空間で作業する人間の口から発生する塵を高性能なフィルター効果を有する繊維構造物で構成されたマスクにより除去し、清浄な空気のみを放出することを特徴とすると共に、洗濯に対しても充分な耐久性を有するマスクを提供するものである。
【0007】即ち、本発明の目的は、従来の一般市販クリーンルーム用マスクでは満足し得なかった、微細粒子径塵埃の透過抑制が可能なマスクを提供すると共に、洗濯による耐久性を有することで、マスクにかかる経費の大巾削減が期待出来るマスクを提供するにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、単繊維直径0.1〜5.0μmのメルトブロー方式によって製造されたウエブまたはシートを一枚もしくは複数枚積層してなる繊維集合体の片面または両面に通気性を有するシートを接合一体化させた繊維構造物であって、超音波ウエルダーによる融着によって接合一体化が行われていることを特徴とする防塵マスク、である。
【0009】本発明では必要に応じて帯電防止を図るようにも出来る。即ち、着用作業時の摩擦等によって発生する静電気による製品の不良発生を防止する目的及び静電気の帯電により空気中に浮遊する塵の吸塵を防止する目的から、導電糸を織編込んだ織編物を使用するか又は、制電物質を繊維集合体に付与させるか又は、帯電防止剤を少なくとも片面に付与することにより、温度20℃、湿度40%の条件下で摩擦帯電圧が1000V以下、望ましくは500V以下の性能をもたせるようにしてもよい。
【0010】以下、本発明について詳細に説明する。メルトブロー方式で製造されたウエブまたはシート目付、厚みが均一であり、ピンホールが発生しにくい。このウエブまたはシートは1枚又は複数枚積層して用いることができる。上記ウエブまたはシートに用いられる単繊維の直径は0.1〜5.0μmであることが必要である。単繊維直径が0.1μm未満では洗濯耐久性が劣ると共に圧力損失が増加する。単繊維直径が5.0μmを越えると塵の透過抑制効果が低下し、防塵マスクとしての性能が劣る。
【0011】ウエブまたはシートの目付、厚みは特に限定されないが、通常、目付は20〜80g/m2 、厚みは0.1〜1.0mmが好ましい。即ち、防塵効果から考えれば単繊維直径はより細く、目付は大きく、厚みは厚い方が効果がより発揮されるが、着用感の不適正、圧力損失の増大、作業性の低下、耐選択性の低下などが起こりやすい為、上記の範囲が好ましい。
【0012】メルトブロー方式によって製造されたシートまたはウエブに用いられる繊維としては、例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリオレフィン系繊維等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。寸法安定性、耐洗濯性などの点から、ポリエステル系繊維が好ましい。通気性を有するシートとは、通気性3cc./cm2 /秒(JIS1096、フラジール法)以上を有するものをいい、布帛、穴あきフィルム等が本発明に適したものであるが、それ自体塵を発生させないものが望まれることは云うまでもない。
【0013】ここに用いる布帛とは、全ての繊維素材からなる織物、編物、不織布に適用されるがそれ自体塵の発生しにくいものが望まれる。布帛の糸使い、目付等はその使用場所、作業環境に合せ適宜選択されるものであるが糸使いとしては10〜150d、好ましくは15〜100dでり、目付は10〜200g/m2 、好ましくは20〜100g/m2 の布帛が適当である。この通気性を有するシートを用いないウエブ又はシート状の繊維構造体は積層された構成繊維が交絡しているにもかかわらず、外部からの圧力により形態変化が容易に起こり防塵効果を損なうばかりでなく、洗濯による耐久性も不足することとなる。
【0014】メルトブロー方式で製造されたウエブまたはシートと通気性を有するシートとの接合一体化は、超音波ウェルダーで行うことが必要である。超音波ウェルダーにより、積層体が融着され不離一体に接合される。融着部位は限定されるものではなく、必要に応じて任意の箇所を選ぶことが出来る。例えば、小さな融着部をマスク全面に均一に配置したり、等間隔に設けた融着部の列を格子模様に配置する等が挙げられる。
【0015】このように、本発明のマスクは、超音波ウエルダーにより融着されているため、繰り返し多数回洗濯してもウエブまたはシート間の剥離(層間剥離)やウエブまたはシート自体の剥離(層内剥離)が極めて起こりにくい。本発明の防塵マスクは、高性能なフィルター効果を有する繊維構造物で構成されたマスクであり、微細粒子径塵埃の残遊量が厳しく制限されているクリーンルーム内や、病院で手術用などに使用したとき、清浄な空気のみを放出することができ、人間の口から発生する塵の透過抑制に極めて効果がある。
【0016】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
【0017】
【実施例1】メルトブロー方式により製造された単繊維直径0.9μmを主体とするポリエステル長繊維ウエブ(目付30g/m2 )を繊維集合体とし、ポリエステルトリコット編地(20d、目付35g/m2 )を繊維集合体の両面に配置し、超音波ウェルダーで、マスク全面に等間隔で微小な融着部を形成させた。
【0018】
【比較例1】単繊維直径12μmのポリエステル長繊維シート(30g/m2 )を繊維集合体とし、以下実施例1と同じくしたものを比較例1とし用いる。一般市販品のクリーンルーム用マスクの中より次の2種を比較例2、3として用いる。又一般市販のガーゼを10枚重ね合わせたマスクを比較例4として用いる。
【0019】
【比較例2】再生繊維主体の不織布2枚の間にポリエステル不織布を重ね合わせたデイスポーザブルタイプのマスク(目付88g/m2 、厚み0.39mm)を比較例2として用いる。
【0020】
【比較例3】ポリエステル繊維使い不織布(目付38g/m2 、厚み0.24mm)を9枚重ね合わせた微粒子防止マスクを比較例3として用いる。
【0021】
【比較例4】錦糸使いガーゼ(番手48/−、目付34g/m2 、厚み0.2mm、経10本/cm×緯10本/cmメッシュ)を10枚重ね合わせたマスクを比較例4として用いる。以上の実施例、比較例について塵の防塵性、圧力損失を評価した結果を表1に示す。尚、実施例1及び比較例1については、洗濯による耐久性が充分あることから洗濯50回後の塵の防塵性と圧力損失を評価し表1に示す。又、比較例2、3、4、はデイスポーザブルタイプ及び洗濯の耐久性を有していないことより洗濯50回後では破損した為評価出来なかった。
【0022】
【表1】

【0023】なお、防塵率、及び圧力損失は、JIS Z−8901試験用ダスト13種B法の0.3μm平均のステアリン酸エアゾルのダスト捕集効率測定及び圧力損失測定により評価した。又、洗濯は家庭洗濯機法(浴比1:50、洗剤ニュービーズ2g/l、本洗い5分、すすぎ10分、脱水30秒、自然乾燥を一回分の条件とする)により実施した。
【0024】表1からもわかるように本発明による防塵マスクは従来品に比べ微細粒子径塵埃の防塵性が格段に優れていることがわかる。又、洗濯50回後においてもその性能に大きな変化がないことがわかる。即ち、清浄空間内で作業する人間の口から発生する微細粒子径塵埃の透過抑制効果が格別優れているという事は、製品収率の向上が期待できるばかりでなく空調費の削減にも寄与し、又、洗濯して繰り返し使用が可能であることよりマスクにかかる経費の大幅な削減も期待されるものである。
【0025】
【発明の効果】本発明の防塵マスクは、微細粒子径塵埃の残遊量が厳しく制限されているクリーンルーム内や、病院で手術用などに使用したとき、人間から発生する塵の透過抑制に極めて効果がある。しかも、繰り返し洗濯を行っても塵の透過抑制効果が減少せず、マスクの形態保持性が良好である。
【出願人】 【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成工業株式会社
【出願日】 昭和59年(1984)7月18日
【代理人】
【公開番号】 特開平6−339542
【公開日】 平成6年(1994)12月13日
【出願番号】 特願平6−81882