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【発明の名称】 空気電池
【発明者】 【氏名】井川 享子

【氏名】堀場 達雄

【目的】 高エネルギ密度の空気電池を得る。
【構成】 負極活物質に軽量で卑の電位をもつアルカリ金属,アルカリ土類金属,アルミニウム等を用いて、有機電解液を使用する空気電池。
【特許請求の範囲】
【請求項1】空気極,セパレータ,負極、及びそれらの各部分に分布する電解液により構成される電池において、前記電解液として酸素原子を含むアニオン導電体をキャリアとする有機電解液を用いることを特徴とする空気電池。
【請求項2】請求項1において、前記負極としてリチウム,ナトリウム等のアルカリ金属、及び、アルカリ土類金属,アルミニウムを使用する空気電池。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は二次電池に係り、特に、正極活物質を空気とする空気電池に関する。
【0002】
【従来の技術】空気電池は空気中の酸素を活物質として利用する経済的かつ長期間無保守で、使用できる電源として航路標識用,各種通信用,電話機用などに用いられてきた。近年では、ナショナル テクニカル レポート 32,(5),590−596(1986)に記載されているように、ボタン型の空気電池が補聴器用電源として開発されている。一般に、亜鉛を負極とした一次電池は正極活物質に金属酸化物を用いるのに対して、空気電池は空気中の酸素を用いる。そのため、他の一次電池より大きいエネルギ密度が得られる。
【0003】空気電池の場合、放電による電池反応は以下のようになる。
【0004】
正極 1/2O2+H2O+2e~→2OH~ …(化1)
負極 Zn+2OH~→ZnO+H2O+2e~ …(化2)
全反応 Zn+1/2O2→ZnO(1.65V) …(化3)
負極において亜鉛とOHとが反応して酸化亜鉛と水が生成し、正極では酸素と水が反応してOHが生成する反応である。この反応式から判るように放電反応に寄与する物質はO2とZnのみである。O2は空気中より電池内部に取り入れるため理論的に無尽蔵であり実質的に消費される物質は亜鉛のみである。正極活物質である空気中の酸素は正極ケース底面の空気孔より電池内に取り入れられ、空気拡散紙及び癈水膜を通じて空気極に供給される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】亜鉛を負極とした空気電池の理論電圧は1.65V である。一方、負極活物質に鉄を用いる鉄−空気電池は、鉄の化学当量が27.9で亜鉛の32.7より小さい点でエネルギ密度が大きくなることが期待できるが、実際には電池電圧が低いため、エネルギ密度は小さい。高容量,高エネルギ密度の空気電池を得るためには負極活物質として、軽量でかつ卑の電位をもつアルカリ金属やアルカリ土類金属,アルミニウム等を用いるのが良いが、電解液が水溶液であるために、アルカリ金属やアルカリ土類金属,アルミニウム等と水とが反応して不活性化してしまうといった問題点があった。
【0006】本発明の目的は、負極活物質としてアルカリ金属やアルカリ土類金属,アルミニウム等を、また、これらの物質が容易に反応しない電解液を用いて、従来よりも高容量の空気電池を得ることにある。負極活物質にリチウムを用いた場合、理論起電力は2.9V 、また、理論エネルギ密度は11300Wh/kgであり、負極活物質にアルミニムを用いた場合、理論起電力は2.7V 、また、理論エネルギ密度は8100Wh/kgである。負極活物質に亜鉛を用いた場合、理論起電力は1.65V 、また、理論エネルギ密度は1400Wh/kgであるから、かなりのエネルギ密度の増加が見込める。そこで、電解液として非水系の有機電解液を用いれば、これらの活性な負極活物質を適応できると考えた。
【0007】正極で起こる反応は正極活物質として空気中の酸素を使用した反応であり、空気電池において、酸素と反応する物質が必要となる。さらに、負極において反応するための酸素原子を含むアニオン導電体を運ぶことのできるものでなければならない。
【0008】
【課題を解決するための手段】有機電解液として、アセトニトリル、γ−ブチルラクトン、ポリエチレンカーボネート、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン等の有機溶媒に、H5IO6、ZrCl4、P43,HPH22,OsCl4,VCl2O,Si(CH3)3,Ca(ClO3)2,HBF4を溶解したものを用いる。これらの化合物は空気極において、それぞれ、IO(OH)5,ZrCl2O,P46,H3PO4,OsO4,VClO2,(Si(CH3)3)2OまたはSi(OH)(CH3)3,Ca(ClO4)2,HBF3(OH)となる。これらは負極でリチウム,ナトリウム等のアルカリ金属,アルカリ土類金属,アルミニウムなどを酸化する。これらの物質のほかに、空気極で酸化されて、IrH(CO)(P(C6H5)3)3,Ir(CO)2(C5H5),Fe(CO3)(C4H4),Fe(CO)5,Na2(Fe(CO)4),FeCl(CO)2(C5H5),Fe(CO)4(C5H5)2,Ru3(CO)12,Ru(CH3)(CO)2(C5H5),Re(CO)10,ReCl(CO)5,Rh2Cl2(CO)4,Rh4(CO)12,Rh6(CO)16,Ni(CO)4,Ni(CO)2(P(C6H5)3)2,Ni2(CO)2(C5H5)2,Nb(CO)4(C5H5),Na(C6H5)2CO,Na(V(CO)6),V(CO)6 になる化合物も有効である。
【0009】
【作用】本発明の作用は、空気電池の負極活物質としてアルカリ金属やアルカリ土類金属,アルミニウム等を用い、酸素原子を含むアニオン導電体をキャリアとする有機電解液を用いることにより、従来の亜鉛−空気電池に比べてエネルギ密度を約2倍に向上させることができる。
【0010】
【実施例】本発明を空気電池に適用した実施例に基づいて説明する。
【0011】電解液として、ポリプロピレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン(体積比1:2)と1モルのHPH22を、負極活物質としてアルミニウムを使用して、IEC規格44サイズのボタン型電池を作成した。図1に負荷抵抗が620Ωの放電電圧変化を示す。従来の亜鉛−空気電池に比べ、電池電圧も高く、放電時間も長く、優れた特性を示した。
【0012】
【発明の効果】本発明によれば、負極活物質に軽量で卑の電位をもつアルカリ金属,アルカリ土類金属,アルミニウム等を用いて、有機電解液を使用することにより、高エネルギ密度の空気電池を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
【出願日】 平成4年(1992)3月13日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】小川 勝男
【公開番号】 特開平5−258782
【公開日】 平成5年(1993)10月8日
【出願番号】 特願平4−54781