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【発明の名称】 キサンチンオキシダーゼ阻害剤
【発明者】 【氏名】三浦 靖高

【氏名】樋口 允子

【氏名】木下 靖浩

【氏名】山本 好和

【氏名】大東 肇

【氏名】小清水 弘一

【目的】 本発明の目的は、天然地衣あるいは地衣培養物から、生体内で安定なキサンチンオキシダーゼ阻害活性を有するエキス、あるいは活性物質を提供することにある。
【構成】 本発明は天然地衣あるいは地衣培養物から抽出される成分を含有することを特徴とするキサンチンオキシダーゼ阻害剤を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 天然地衣あるいは地衣培養物から抽出される成分を含有することを特徴とするキサンチンオキシダーゼ阻害剤。
【請求項2】 天然地衣が、サルオガセ科、ウメノキゴケ科、イワタケ科、ハナゴケ科、トリハダゴケ科、ツメゴケ科、モジゴケ科に属するものである請求項1記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤。
【請求項3】 地衣培養物が、モジゴケ科、ウメノキゴケ科、サルオガセ科に属するものである請求項1記載のキサンチンオキシダーゼ阻害剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、尿酸およびスーパーオキシドの生成を促進するキサンチンオキシダーゼの活性を阻害するキサンチンオキシダーゼ阻害剤及びその製造法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】地衣類はある種の菌類と藻類から成り立っている共生体であって、植物学的にも、特異な地位を占める一群の植物である。このような地衣類の代謝生産物であるいわゆる地衣成分は、多くの高等・下等植物の成分とは全く趣きを異にし、化学的に特殊な限られた一部門である。具体的には朝比奈らにより分類されている(朝比奈・柴田著地衣成分の化学河出書房(1948年))。
【0003】地衣成分の生理学的意義については、地衣類の生育が緩慢であることから、微生物の攻撃や小動物の喰害に対する防御であるとか、また他の菌類とは異なり日向に生育することから、紫外線に対する防御であるとか考えられている。そのため古来から地衣成分は、これら機能から生じた用途に使用されて来た。例えば、染料、抗生物質、香料などである。しかし、これら地衣成分の薬理作用については、ほとんど検討されていないのが実状である。
【0004】しかも、地衣類はその生育が遅いのに加えて、その生育は季節・気候・温度・緯度など自然環境や更に亜硫酸ガス濃度・ばい煙濃度など人為的環境の制約を受け易いために、栽培は非常に難しく成功していない。また地衣類は外形がよく似ていて成分の全く異なるものが多いので、材料の選別に熟練が必要であり、そのため天然からの採集は、困難である。近年、地衣成分を生産する手法として、細胞培養の研究が進められている。細胞培養は、年単位または月単位で生育する天然物に比べ、はるかに速い速度で生育するので、短時間に目的とする成分を生産することができ、また天然栽培と違って天候などの影響を受けずに、採取にも多くの人手を煩わすことなく、しかも工業的規模で計画生産することができるという利点を有する。地衣培養細胞を培養して、その細胞から地衣成分を採取する方法に関しては、先に本発明者らの出願(特開昭58−56689号公報)があるが、キサンチンオキシダーゼ阻害作用については自ら記載されていない。
【0005】キサンチンオキシダーゼはプリン化合物分解経路の最終2段階を触媒する酵素であり、ヒポキサンチンをキサンチンに、ついでキサンチンを尿酸に酸化する。この時、スーパーオキシドラジカルも生成する。
【0006】尿酸は通風の原因であり、またスーパーオキシドは、関節リュウマチなどの組織障害や、スーパーオキシドまたはそれにより生成する過酸化脂質が原因の心筋梗塞、脳卒中、白内障、シミ、ソバカスなどを起こす。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、天然地衣あるいは地衣培養物から、生体内で安定なキサンチンオキシダーゼ阻害活性を有するエキス、あるいは活性物質を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明が提供することに成功したキサンチンオキシダーゼ阻害剤は、天然地衣あるいは地衣培養物から抽出される成分を含有することを特徴とするものである。
【0009】本発明において使用される地衣培養物は、下記科に属する地衣類であればどの地衣類でも使用することができ、これから常法に従い誘導することによって得られる。例えば、特開昭58−56689号公報に開示されている方法を採用することができる。
【0010】材料にできる地衣類には、テロスキステス科、ムカダゴケ科、スミイボゴケ科、サルオガセ科、アンチゴケ科、ウメノキゴケ科、ロウソクゴケ科、チャシブゴケ科、ホウネンゴケ科、イワタケ科、ハナゴケ科、センニンゴケ科、キゴケ科、ヘリトリゴケ科、サラゴケ科、アステロチリア科、ヨロイゴケ科、ツメゴケ科、ハナビラゴケ科、カワラゴケ科、クロサビゴケ科、ヘップゴケ科、イワノリ科、リキナ科、モジゴケ科、チブサゴケ科、キッコウゴケ科、アナイボゴケ科、サネゴケ科、アオバゴケ科、サンゴゴケ科、ピンゴケ科、ヒョウンゴケ科、イワボシゴケ科、キゴウゴケ科、ニササネゴケ科、ホシゴケ科、ケットゴケ科、ホウキタケ科、マツタケ科が挙げられるが、なかでもモジゴケ科、ウメノキゴケ科、サルオガセ科に属する地衣類がキサンチンオキシダーゼ阻害活性の高い物質が得られるので望ましい。ここで、地衣培養物とは、菌細胞、藻細胞、もしくは、両者の混在した未分化共生培養組織を意味する。
【0011】本発明で使用される地衣類には、天然の前述の地衣類が挙げられるが、特にサルオガセ科、ウメノキゴケ科、イワタケ科、ハナゴケ科、トリハダゴケ科、ツメゴケ科、モジゴケ科に属するものが望ましい。
【0012】本発明で使用される培地は、何ら限定されるものではなく、通常は地衣の培養物に用いられる培地あるいはその培地組成を改変して用いる。通常用いられる培地は、炭素源、窒素源、無機イオン源、ビタミン類等の微量有機物を含有している。ここで炭素源としては、スクロースやマンニトール等の炭水化物またはその誘導体が例示される。窒素源としては、通常アンモニウムイオン、硝酸イオン、アミノ酸またはペプトンのような複雑なタンパク質の分解物等の窒素含有化合物が例示される。無機イオン源としては、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、鉄イオン等のカチオンと、硫酸イオン、リン酸イオン、塩素イオン等のアニオンとから構成される無機塩類、例えば、塩化カルシウムや硫酸マグネシウムが挙げられる。ビタミン類としては、チアミン、ピリドキシン、ニコチン酸、イノシトロール等が例示される。その他微量有機物として、植物ホルモン(2,4−ジクロロフェノキシ酢酸、ナフタレン酢酸等のオーキシン類、カイネチン、ベンジルアデニン等のサイトカイニン類)等を添加してもよい。本発明に利用される培地として具体的には、リリー・バーネット培地や、ハマダ培地、麦芽酵母エキス培地の改変培地等があり、これら培地をpH6前後に調整して用いられる。
【0013】培養は、通常3週間から6ケ月間上述した固体培地あるいは液体培地を用いて行い、培養温度は、地衣培養物によって変化するが、10〜30℃、好ましくは15〜20℃の一定温度条件下で行う。
【0014】天然地衣あるいは地衣培養物からキサンチンオキシダーゼ除去活性物質を採取するには、培養を終えた地衣培養物あるいは天然から採集した地衣を直接溶媒浸漬、あるいは一端凍結乾燥などの乾燥手段を講じた後に溶媒浸漬する。浸漬は、1時間から24時間で低温(0〜15℃)で行う。これはキサンチンオキシダーゼ除去活性物質の安定性による。浸漬する溶媒は、水、極性有機溶媒、非極性有機溶媒のいずれでもよいが、好ましくは、アルコールやケトン、エステルなどの極性溶媒、特にアセトンが抽出効率からみて望ましい。
【0015】浸漬液を瀘過後、得られた抽出液の溶媒を留去し、キサンチンオキシダーゼ活性阻害物質を得る。
【0016】キサンチンオキシダーゼ活性阻害物質の有効投与量は成人1日10〜100mg、好ましくは80〜100mgであるが、特にこれに限定されない。
【0017】本発明のキサンチンオキシダーゼ阻害剤は種々形態で投与することができる。一般的には経口剤あるいは外用剤として使用するが、化粧品等に配合して用いてもよい。これら薬剤の剤形は全て公知である。
【0018】
【発明の効果】天然地衣あるいは地衣培養物から抽出されて得られる成分を特徴とするキサンチンオキシダーゼ阻害剤は、極めて安定であり、過剰の尿酸に起因する通風の予防および治療、あるいは過剰のスーパーオキシドに起因する疾病、例えば虚血性心疾患などの予防ないし治療のための医薬品、あるいは酸素障害の防止のための化粧品に利用可能な、きわめて有用なものである。
【0019】
【実施例】以下に実験例および実施例を示すが、これら実施例に限定されない。
【0020】キサンチンオキシダーゼ阻害活性の測定0.4mMキサンチン、0.24mMニトロブルーテトラゾリウムを含む0.1Mリン酸緩衝液0.5mlに、キサンチンオキシダーゼ0.049U/mlを含む0.1Mリン酸緩衝液0.5ml、0.05mlスーパーオキサイドディスムターゼ水溶液(1000unit/ml)、0.002mlカタラーゼ水溶液(0.93unit/ml)およびサンプル(エキス10mgに対し1%トリトン−x水溶液を加えたもの)0.05mlを加え、37℃で1時間反応させた後、90℃で30分間加温することにより、キサンチンオキシダーゼとカラターゼの活性を完全に失活させた。反応溶液を冷却後、遠心により生成したジホルマザンを取り除いた。次にUricase−TOOS法により生成した尿酸の量を測定し、コントロールの値と比較し、阻害率を算出した。
【0021】(実施例)20種類の地衣培養物を凍結乾燥後、200mgに対し10mlのアセトンを加え、4℃で1昼夜抽出した。濾過後、溶媒を留去し、得られたエキス10mgに対し1ml1%トリトン−X水溶液を加えてサンプルとし、キサンチンオキシダーゼ活性阻害率を測定した。
【0022】その結果、天然地衣体としてはウスネア ロンギシマが57.6%、パルメリアメキシカーナが63.1%、ウンビリカリア リギダ34.7%、クラドニアミチスが67.4%、オクロラリア パレツーラが62.7%、ペルチゲラ コリナが23.6%、グラフィス ハンデリが28.5%、地衣培養物としてはウスネアビスモレスクラ43.1%、グラフィス スクリプタが74.5%、パルメリアスカブロサが76.5%の阻害活性を示し、その活性はサンプル長期保存後も極めて安定であった。
【出願人】 【識別番号】000230054
【氏名又は名称】日本ペイント株式会社
【出願日】 平成4年(1992)3月7日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆 (外2名)
【公開番号】 特開平5−244963
【公開日】 平成5年(1993)9月24日
【出願番号】 特願平4−84691