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【発明の名称】 発酵法によるバニリンおよびその関連化合物の製造法
【発明者】 【氏名】鷲巣 幸夫

【氏名】合田 哲史

【氏名】橋本 直美

【氏名】蟹沢 恒好

【目的】
【構成】 シュウドモナス属に属する変異株を、オイゲノールの存在下に培養し、培地中にバニリン並びにその関連化合物であるコニフェリルアルコール、コニフェリルアルデヒド、フェルラ酸またはバニリルアルコールの中から選ばれる一種以上の化合物を生成、蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする発酵法によるバニリンおよびその関連化合物の製造法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シュウドモナス属に属し、唯一の炭素源としてオイゲノールで生育でき、バニリン、バニリン酸、またはバニリルアルコールでは生育できないかあるいは極めて生育が悪く、かつオイゲノールを酸化分解してバニリン、コニフェリルアルコール、コニフェリルアルデヒド、フェルラ酸、およびバニリルアルコールの中から選ばれる一種以上の化合物を生産する性質を有する変異株を、オイゲノールの存在下に培養し、培地中にバニリン、コニフェリルアルコール、コニフェリルアルデヒド、フェルラ酸、およびバニリルアルコールの中から選ばれる一種以上の化合物を生成、蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする発酵法によるバニリン、コニフェリルアルコール、コニフェリルアルデヒド、フェルラ酸、およびバニリルアルコールの中から選ばれる一種以上の化合物の製造法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、シュウドモナス属に属する変異株を用いる発酵法によるバニリン並びにその関連化合物であるコニフェリルアルコール、コニフェリルアルデヒド、フェルラ酸およびバニリルアルコールの中から選ばれる一種以上の化合物の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】バニリンは、食品香料に大量に用いられている他、医薬品原料としても有用な化合物である。コニフェリルアルコール、コニフェリルアルデヒドおよびバニリルアルコールも香料またはその原料として使用され、フェルラ酸は医薬品原料などに使用されている。
【0003】これらの化合物は天然に存在するが、天然物からの抽出では費用がかかりすぎるため、工業的規模では、化学的合成手段によって製造されているのが現状である。従来より知られている微生物を用いる発酵法による製造法としては、セレイシア属、クレブシレア属、またはエンテロバクター属に属する微生物を利用してオイゲノールおよび/またはイソオイゲノールからバニリンを得る方法(特開平3−30683号公報)、シュウドモナス属に属する特定の微生物を利用してスチレン誘導体からバニリンなどのアルデヒド類を得る方法(特開平2−200192号公報)、アースロバクター・グロビホルミスを利用してn−オイゲノールからコニフェリルアルデヒドを得る方法(特開昭62−190092号公報)が開示されている。また、K.Tadasaらは、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属に属する微生物およびシュウドモナス(Pseudomonas) 属に属する微生物が、オイゲノールを酸化的に分解すること、さらに、その分解過程は、式1に示したようにオイゲノールからコニフェリルアルコール、コニフェリルアルデヒド、フェルラ酸、バニリン、バニリン酸、プロトカテキュ酸を順に経るものであることを報告している〔Agric.Biol.Chem., 41巻 (6) 925〜929 頁 (1977) およびAgric.Biol.Chem., 47巻 (11) 2639〜2640頁 (1983) 〕。
【0004】
【化1】

【0005】本発明者は、K.Tadasaらが報告した2種類の菌株のうちオイゲノールを資化する能力がより強い菌株であるシュウドモナス属に属する微生物を、上記文献に記載されている方法で土壌から分離、確認し、得られた菌株によるオイゲノールの変換を高速液体クロマトグラフィー(HPLCと略す)で経時的に測定した。この結果、上記経路を確認することができたが、この変換速度は非常に早く、大部分がコニフェリルアルコールからバニリン酸にまで直ちに変換してしまい、分解過程にあるバニリン等の有用化合物を得ることはできなかった。また、この菌株は、オイゲノール0.2%以上の存在下では生育できず、生成物を多量に得るために原料であるオイゲノールの量を増加することができないという欠点を有していた。
【0006】さらに、本発明者は、自然界に存在する他のいくつかの微生物についてもオイゲノールを資化する能力を検索したが、いずれの微生物も、上記のシュウドモナス属に属する微生物と同じくオイゲノールが直ちにバニリン酸あるいはプロトカテキュ酸にまで変換されるか、もしくは、ベンゼン環が開環してしまい、バニリン等を効率よく蓄積する微生物を見出すことはできなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、オイゲノールを酸化分解してバニリン並びにその関連化合物であるコニフェリルアルコール、コニフェリルアルデヒド、フェルラ酸およびバニリルアルコールを効率よく生成、蓄積し得る変異株を調製し、得られた変異株を用いる発酵法によって、オイゲノールを原料としてバニリンおよびその関連化合物を製造する方法の提供を課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者は、かかる課題を解決するために鋭意検討をした結果、上記のK.Tadasaら記載の文献に従い土壌から分離、確認したシュウドモナス属に属する微生物を親株とし、これに変異誘導操作を施すことにより所望の性質を有する変異株を調製し、当該変異株を用いる発酵法を採用することにより上記課題を解決し得ることを見出した。
【0009】すなわち本発明は、シュウドモナス属に属し、唯一の炭素源としてオイゲノールで生育でき、バニリン、バニリン酸、またはバニリルアルコールでは生育できないかあるいは極めて生育が悪く、かつオイゲノールを酸化分解して、バニリン、コニフェリルアルコール、コニフェリルアルデヒド、フェルラ酸、およびバニリルアルコールの中から選ばれる一種以上の化合物を生産する性質を有する変異株を、オイゲノールの存在下に培養し、培地中にバニリン、コニフェリルアルコール、コニフェリルアルデヒド、フェルラ酸、およびバニリルアルコールの中から選ばれる一種以上の化合物を生成、蓄積せしめ、これを採取することを特徴とする発酵法によるバニリン、コニフェリルアルコール、コニフェリルアルデヒド、フェルラ酸、およびバニリルアルコールの中から選ばれる一種以上の化合物の製造法を提供するものである。
【0010】本発明において使用される変異株は、上記のごとくシュウドモナス属に属し、唯一の炭素源としてオイゲノールで生育でき、バニリン、バニリン酸、またはバニリルアルコールでは生育できないかあるいは極めて生育が悪く、かつ、オイゲノールを酸化分解してバニリン並びにその関連化合物であるコニフェリルアルコール、コニフェリルアルデヒド、フェルラ酸およびバニリルアルコールの中から選ばれる一種以上の化合物を生産する性質を有する。そしてさらに、以下のような菌学的性質を有する。
(a)形態(1)細胞の形および大きさ:桿菌、0.6 ×1.1 μm(2)鞭毛:なし(3)グラム染色性:陰性(b)生理学的性質(1)硝酸塩の還元:陽性(2)インドールの生成:陰性(3)グルコースの酸性化:陰性(4)ウレアーゼ:陽性(5)オキシダーゼ:陽性(6)アルギニンジヒドラーゼ:陽性(7)β−グルコシダーゼ:陰性(8)プロテアーゼ:陽性(9)β−ガラクトシダーゼ:陰性(c)炭素化合物の資化性(1)L−アラビノース :−(2)D−グルコース :+(3)D−マンノース :−(4)D−マンニット :+(5)N−アセチル−D−グルコサミン:+(6)マルトース :−(7)グルコン酸カリウム :+(8)n−カプリン酸 :+(9)アジピン酸 :+(10)dl−リンゴ酸 :+(11)クエン酸ナトリウム :+(12)酢酸フェニル :−この変異株は、前に示したK.Tadasaらの方法〔Agric.Biol.Chem., 41巻 (6) 925〜929 頁 (1977) およびAgric.Biol.Chem., 47巻 (11) 2639〜2640頁 (1983)〕に従い、土壌から分離、確認されるオイゲノールを資化するシュウドモナス属に属する微生物を親株として変異誘導を行うことによって得ることができる。この親株を分離し得る土壌は、特に限定されるものでなく、ごく一般の土壌でよいが、オイゲノールを含有する植物、例えばチョウジ(Syzygium aromaticum )などが生えている土壌であれば、目的とする親株が高い確率で分離される。そして、得られた親株に通常の変異誘導操作、例えば、紫外線照射、あるいは、N−メチル−N´−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTGと略す)、ヘミ硫酸プロフラビン、硫酸ジメチルなどの化学薬剤処理を単独に、または適宜組み合わせて施すことにより所望の性質を有する変異株を誘導することができる。さらに、サイト−スペシフィックミュータジェネシス(Site-Specific Mutagenesis) [Proc.Natl.Acad., 82巻, 5662-5666頁(1984)]等の遺伝子工学的手法を駆使して親株の遺伝子の特定部位を改変することにより、当該変異株を誘導することも可能である。そして、上記変異処理を施した菌体に所望する変異株の性質に応じた選択圧をかけることにより本発明方法に使用する変異株を得ることができる。かかる選択圧は、可能な限り当該変異株を分離するのに確実かつ効率的であることが好ましいのはもちろんである。例えば、変異処理した菌体を唯一の炭素源としてオイゲノールを含む最少培地上で培養し、唯一の炭素源として各々オイゲノールまたはバニリンを含む最少培地上にレプリカする。次いで、唯一の炭素源としてオイゲノールでは生育できるが、バニリンでは生育できないかあるいは極めて生育が悪いコロニーを分離することによって、当該変異株を得ることができる。本例示方法においては、最少培地に含む唯一の炭素源としてバニリンの他に、バニリン酸、フェルラ酸またはバニリルアルコールであってもよい。これらの炭素源は、最終的に製造を企図する化合物がバニリンおよびその関連化合物のうちの何れであるかによって選択するべきである。また、唯一の炭素源として、コニフェリルアルコール、コニフェリルアルデヒドを用いることもできるが、これらの化合物は非常に高価であるので、上記した他の化合物を用いる方が好ましい。
【0011】次に本発明で使用する変異株の変異誘導法を以下の実験例にて具体的に示す。
[実験例]
(1)本発明者は、前記K.Tadasaら記載の文献に開示された方法により、一般土壌からオイゲノールを酸化的にバニリン酸にまで即時分解するシュウドモナス属に属する微生物を分離し、当該微生物を本発明に使用する変異株の親株とした。なお、この親株TK−1112は、工業技術院微生物工業技術研究所に微工研菌寄第12776号(FERN P−12776)として寄託されている。この親株を、唯一の炭素源としてオイゲノールを含む最少寒天平板培地で培養し、生育した菌体を集めて無菌水に懸濁し、シャーレ上に105〜106個/mlの菌体を含むように調整した後、攪拌しながら、約255nmの殺菌灯から23cm離して20秒間紫外線照射を行った。照射後、菌体懸濁液40μlを、唯一の炭素源としてオイゲノールを含む最少寒天平板培地に塗布し、30℃で2日間培養した。出現したコロニーを、唯一の炭素源としてオイゲノール、バニリン、バニリン酸、またはバニリルアルコールを各々に含む最少寒天平板培地にレプリカした。30℃で2日間培養後、オイゲノール含有最少寒天平板培地に生育し他の最少培地には生育しなかったコロニーを選択・分離した。なお、本実験例において用いた最少寒天平板培地の組成を表1に示す。
【0012】
表 1 最少寒天平板培地の組成(1リットル当たり)
──────────────────────────────── リン酸一カリウム 2.0 g 硫酸アンモニウム 1.0 g 硫酸マグネシウム(7水塩) 0.05g 硫酸第一鉄(7水塩) 0.01g オイゲノール(またはバニリン、バニリン酸、 1.0 ml バニリルアルコール)
アガロースHGS(ナカライテスク株式会社製のもの) 7.5g ────────────────────────────────以上の組成物を蒸留水1リットルに溶解し、水酸化ナトリウムでpH7.2〜7.3に調整した後、121℃で10分間殺菌して用いた。
【0013】上記紫外線照射処理を3回繰り返した後、次の処理工程(2)に付した。
(2)紫外線照射処理を3回繰り返した菌体を前記(1)と同様にして、105〜106 個/mlの菌体を含むように調製し、この菌体懸濁液1mlに50〜200μg/mlの数段階の濃度になるようにNTG水溶液を加え、室温で各々30〜60分間保持した。このNTG処理を行った菌体をよく水洗した後、蒸留水1mlに懸濁させ、このうち50μlを、唯一の炭素源としてオイゲノールを含む(1)と同じ最少寒天平板培地に塗布し、30℃で2日間培養した。出現したコロニーから(1)と同様にしてオイゲノール含有最少培地に生育し他の最少培地には生育しないものを選択した。このNTG処理を2回繰り返した後、さらにNTGに代えて硫酸ジメチルを用いた以外は上記と同様の硫酸ジメチル処理を1回行い、さらに(1)の紫外線照射処理を2回行った。そして、得られた変異株を唯一の炭素源としてオイゲノールを含む最少培地に坂口フラスコを用いて振盪培養し、得られた変異株によるオイゲノールの変換をHPLCで経時的に測定して、バニリン酸への変換速度が遅く、バニリン並びにその関連化合物であるコニフェリルアルコール、コニフェリルアルデヒド、フェルラ酸およびバニリルアルコールを生成、蓄積する菌株を選択した。
【0014】このうち最も高濃度のオイゲノールを資化することができ、かつ、バニリン生産能の高い菌株TK−2102を選んだ。本菌株は、工業技術院微生物工業技術研究所に微工研菌寄第12689号(FERM P−12689)として寄託されている。本菌株によるオイゲノールの変換をHPLCで経時的に測定した結果を図1に示す。また、比較例として親株によるオイゲノールの変換を同様にして測定した結果を図2に示す。
【0015】図2においては、親株がオイゲノールを消費するのに同期して培地中のコニフェニルアルコールは一時的に増加するものの、バニリンはもちろん、他の有用な関連化合物であるコニフェリルアルデヒド、フェルラ酸、およびバニリルアルコールをHPLCで検出することができず(図示せず)、相当量のバニリン酸と微量のプロトカテク酸が検出されたのみであった。これに対して変異株を用いた図1においては、オイゲノールの消費に同期してコニフェニルアルコールはもちろん、バニリン、コニフェリルアルデヒド、及びフェルラ酸を相当量HPLCで検出することができた。
【0016】この結果より、変異誘導操作により、バニリン並びにその関連化合物であるコニフェリルアルコール、コニフェリルアルデヒド、フェルラ酸およびバニリルアルコールの中から選ばれる一種以上の化合物を生成、蓄積する変異株が得られたことが明らかになった。本発明のバニリンおよびその関連化合物の製造法は、このようにして得られた変異株を、オイゲノールの存在下に培養し、培地中に目的化合物を生成、蓄積せしめ、これを採取することにより実施される。
【0017】好適には、培地は、炭素源としてオイゲノールを含有し、さらに窒素源、無機塩類、その他必要に応じてアミノ酸、ビタミン、核酸等の有機微量栄養素を含有する栄養培地を使用する。炭素源としては、オイゲノールの他に、グルコースのような糖類、酢酸のような有機酸類、エタノールのようなアルコール類を併用することもできるが、オイゲノールを資化する能力を最大とするためには、オイゲノールのみを炭素源とするのが好ましい。オイゲノールの培地への添加濃度は、1.5重量%程度の高濃度でも可能であるが、バニリンおよびその関連化合物の収率を考慮した場合、約0.1〜0.8重量%とするのが好ましい。
【0018】窒素源としては、例えばアンモニウム塩類、硝酸塩類のような無機窒素源あるいは尿素のような有機窒素源が使用される。無機塩類としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムまたは鉄の塩類が使用できる。培養条件は充分な通気下とし、温度は15〜45℃、特に好適には25〜40℃、培地のpHは5.5〜7.5の範囲とし、回転または往復振盪装置中、あるいは、攪拌及び通気装置付きの発酵装置で行うのが好ましい。培養はバッチ式、半連続式、あるいは連続的のいずれでも実施することができる。また、その他の公知の方法、例えば天然高分子などによって包括した固定化菌体を用いることによっても培養することができる。培養時間は、バニリン並びにその関連化合物であるコニフェリルアルコール、コニフェリルアルデヒド、フェルラ酸およびバニリルアルコールのうち目的とする化合物が最大量に達する時間を選べばよく、例えばバニリンが最大量に達するまでの時間は、培養条件、特にオイゲノールの量および培養温度によって異なるが、バッチ式の場合培養開始から8〜100時間である。
【0019】培養液からバニリンおよびその関連化合物を採取する方法は、公知の方法に従って行えばよく、培養液から菌体を分離、除去した後、例えば酢酸エチルのような有機溶剤で抽出して、化学分割による酸性化合物と中性化合物の分離、さらにシリカゲルカラムクロマトグラフィーによる各化合物の分離によって行うことができる。また、培養液を直接吸着樹脂を通して吸着させた後、有機溶剤および水によって分離させれば容易に採取することができる。
【0020】
【実施例】次に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。
【0021】
【実施例1】容量500mlの坂口フラスコに蒸留水100ml、オイゲノール0.1ml(培地中のオイゲノールの濃度0.1v/v%、オイゲノールの比重=1.066より換算して約0.11w/v%)、硫酸アンモニウム0.1g、リン酸一カリウム0.2g、硫酸マグネシウム0.005gおよび硫酸第一鉄0.001gを加え、水酸化ナトリウムでpH7.2〜7.3に調整した後、121℃で10分間殺菌した。冷却後、変異株TK−2102を接種し、37℃、150回/分に設定した往復振盪装置で培養した。培養液中のバニリン含有量をHPLCで経時的に測定して、培養後9時間後にバニリン318mg/リットル、バニリルアルコール102mg/リットル、フェルラ酸51mg/リットルが生成していることを確認した。このようにして得られたバニリンなどを含む培養液1リットルを、遠心分離によって菌体除去した後、50gの吸着樹脂DAIAION HP20(三菱化成株式会社製)を充填したカラムに流し入れた。フェルラ酸は吸着せずにそのまま流出した。次いで蒸留水1リットルで洗浄した後、10%エタノール水溶液を1リットル流し、バニリルアルコールを回収した。さらに30%エタノール水溶液を1.5リットル流し、バニリンを回収した。尚、各化合物を回収した後の樹脂は、日本薬局方規定のエタノール1リットルと蒸留水1リットルで洗浄し、繰り返し使用した。各化合物を回収した溶液は、各々エタノールと水を除去して、バニリン280mg、バニリルアルコール100mg、フェルラ酸48mgを得た。
【0022】
【実施例2】容量2リットルの坂口フラスコに蒸留水500ml、オイゲノール1.5ml(培地中のオイゲノールの濃度0.3v/v%、オイゲノールの比重=1.066より換算して約0.32w/v%)、硝酸アンモニウム0.5g、リン酸一カリウム0.5g、リン酸二ナトリウム5.0g、硫酸マグネシウム0.1g、塩化カルシウム0.05g、硫酸第一鉄0.05g、硫酸マンガン0.3mgおよびモリブデン酸ナトリウム0.3mgを加え、水酸化ナトリウムでpH7.2〜7.3に調整した後、121℃で10分間殺菌した。冷却後、変異株TK−2102を接種し、37℃、150回/分に設定した往復振盪装置で培養した。培養液中のバニリン含有量をHPLCで経時的に測定して、培養後72時間後にコニフェリルアルコール1050mg/リットル、バニリン460mg/リットル、バニリルアルコール440mg/リットル、コニフェリルアルデヒド270mg/リットルが生成していることを確認した。このようにして得られたバニリンなどを含む培養液1リットルを、遠心分離によって菌体除去した後、酢酸エチル1リットルで抽出し、炭酸水素ナトリウム水溶液(pH8)100mlで洗浄後、酢酸エチル層を濃縮した。濃縮液をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、展開溶媒としてペンタン:エーテル=7:3(容量比)の混合液100mlを流した後、エーテル200mlを流して粗バニリン溶液を得た。エーテル除去後、少量のエタノールに溶解し、徐々に冷却してバニリンの結晶350mgを得た。バニリンの結晶を除去したエタノール溶液を、50gの吸着樹脂DAIAION HP20(三菱化成株式会社製)を充填したカラムに流し入れた。このものに5%エタノール水溶液を1リットル流し、バニリルアルコールを回収した。次いで25%エタノール水溶液を1リットル流し、コニフェリルアルコールを回収し、さらに、40%エタノール水溶液を1リットル流し、コニフェリルアルデヒドを回収した。各化合物を回収した溶液は、各々エタノールと水を除去して、コニフェリルアルコール780mg、バニリルアルコール320mg、コニフェリルアルデヒド190mgを得た。
【0023】
【発明の効果】本発明の方法によれば、オイゲノールを原料としてバニリン並びにその関連化合物であるコニフェリルアルコール、コニフェリルアルデヒド、フェルラ酸およびバニリルアルコールの中から選ばれる一種以上の化合物を効率よく製造することができる。
【出願人】 【識別番号】000169466
【氏名又は名称】高砂香料工業株式会社
【出願日】 平成4年(1992)2月21日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔 (外2名)
【公開番号】 特開平5−227980
【公開日】 平成5年(1993)9月7日
【出願番号】 特願平4−35338