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【発明の名称】 人工象牙
【発明者】 【氏名】武 永 基

【氏名】輿 田 幸 廣

【氏名】高 橋 幸 男

【氏名】笹 川 勝 好

【目的】 天然の象牙に替わり得る高級感、加工の容易さ、重量感などを有する人工象牙を提供する。
【構成】 ヒドロキシアパタイト100重量部に対して、熱硬化性樹脂10〜100重量部とを混合し、加圧成型することを特徴とする人工象牙に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ヒドロキシアパタイトと熱硬化性樹脂とを混合し、加圧成型することを特徴とする人工象牙。
【請求項2】 ヒドロキシアパタイト100重量部に対して、熱硬化性樹脂10〜100重量部である請求項1記載の人工象牙。
【請求項3】 熱硬化性樹脂が含硫ウレタン樹脂である請求項1記載の人工象牙。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、天然の象牙に替わるヒドロキシアパタイトを主成分とした新たな人工象牙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、野生動物保護の見地から天然の象牙の入手が非常に困難となって来ており、この傾向は将来ますます著しくなるものと予想される。しかしながら、天然の象牙はその高級感、加工の容易さ、重量感など、その優れた特性を活かし、印材、楽器材料、装飾品材料、娯楽遊戯品材料などに多くが使用されており、その需要は多い。
【0003】従って天然の象牙に替わり得る人工象牙の開発が強く望まれており、従来の方法としては、樹脂の中にフィラ−として水酸化アルミニウムを用いる方法(特開平3−90382)、エラストマ−微粒子を用いる方法(特開平1−177079)、またはプラスチックスのみ(特公昭63−43756)、リン酸カルシウム系結晶ガラス素材のみ(特願昭60−180933)などがある。しかしながら、これらの方法で得られた人工象牙は、高級感、加工の容易さ、重量感に天然の象牙と比較して満足の行くものではなかった。とくには、印鑑として用いた場合高級感は勿論のこと、欠け易いという致命的欠陥を有していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、天然の象牙に替わり得る高級感、加工の容易さ、重量感などを有する人工象牙を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記問題点を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、熱硬化性樹脂を特定のフィラ−であるヒドロキシアパタイトの表面にコ−ティングしたのち加圧、硬化成型したものがその目的を達成することを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明はヒドロキシアパタイトと熱硬化性樹脂とを混合し、加圧成型することを特徴とする人工象牙に関する。
【0006】以下、本発明を更に詳細に説明する。本発明に用いるヒドロキシアパタイトは、乾式合成法、湿式合成法、水熱合成法および有機溶媒法等の合成方法で得られたものを用いるが合成方法には特に限定されるものではない。
【0007】ヒドロキシアパタイトの代表的な製造方法の一つである湿式合成法は、水酸化カルシウムスラリーと燐酸液を混合、反応させて平均粒径が約1μmのヒドロキシアパタイトを得る方法、そして、水と2相を形成する有機溶媒中で、燐酸カルシウム塩と炭酸カルシウム又は水酸化カルシウムを加熱混合して平均粒径が約3μmのヒドロキシアパタイトを得る有機溶媒法がある。
【0008】本発明に用いるヒドロキシアパタイトの粒径は、100μm以下が好ましい。更に好ましくは50μm以下が好適である。粒径が100μmを越えると人工象牙中の成分が不均一になったり、強度、硬度の低下さらには角の欠けなどが見られ、好ましくない。
【0009】ヒドロキシアパタイトに用いる熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂などが用いられ、中でもウレタン樹脂は弾力性に富み、耐摩耗性、抗張性、引き裂き抵抗が高く、酸素やオゾンに強いなどの長所を有しており、本発明に関する加工性、柔軟性、角が欠け難いという特徴を有し好適であるが、吸湿性が大きいという欠点を有している。
【0010】そこで、吸湿性を改善した含硫ウレタン樹脂が開発され(特開昭63−245421)、これを用いることにより上記問題点が改善される。即ち、該含硫ウレタン樹脂は、イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と、チオール基を有するポリチオール化合物とを重合させて得られる架橋構造を有する低吸湿性含硫ウレタン樹脂である。
【0011】イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン及びリジンイソシアネート−β−イソシアネートエチルエステルなどの脂肪族または脂環族ポリイソシアネート、トリジンイソシアネート、トリフェニルメタンイソシアネートなどの脂肪族に直接イソシアネート基が結合したポリイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ビス(α,α−ジメチルイソシアネートメチル)ベンゼンなどの芳香族にイソシアナートメテン基の状態が結合したポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0012】また、チオール基を有するポリチオール化合物としては、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、1,2−エタンジオール、1,4−ブタンジオール、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(2−メルカプトアセテート)、4−メチル−1,2−ジメルカプトベンゼン、3,6−ジクロロ−1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3,5−トリス(3−メルカプトプロピル)イソソアヌレートなどが挙げられる。
【0013】また、ポリイソシアネートとポリチオールのウレタン化重合反応を促進するために、ジブチルチンジラウレートやジメチルチンクロライドなどの重合触媒を加えてもよい。さらに、必要に応じ内部添加型離型剤を加えてもよい。また、熱硬化性樹脂としては、未硬化状態又はある程度硬化状態にあっても液状のものが好適に使用される。これは、粉末であるヒドロキシアパタイトとの混合性に好都合であるためである。
【0014】本発明のヒドロキシアパタイトに対する熱硬化性樹脂の混合割合は、ヒドロキシアパタイト100重量部に対して、熱硬化性樹脂10〜100重量部が好ましいが、更に好ましくは、20〜60重量部が好適である。上記割合で混合すれば、ヒドロキシアパタイトの表面に熱硬化性樹脂が均一にコ−ティングされ、加圧、成型を行うことができる。
【0015】ヒドロキシアパタイト100重量部に対して熱硬化性樹脂の混合割合が、10重量部未満では、ヒドロキシアパタイトの表面に充分にコ−ティングされず、強度、硬度の低下および角の欠けなどが見られ不都合である。また、100重量部を越える場合は、高級感が損なわれ、印鑑としたときの加工性が劣るなどの不都合が生じる。
【0016】本発明はヒドロキシアパタイトに熱硬化性樹脂を混合した後、加圧、成型を行う。加圧、成型は(1) 金型を用いて加熱加圧成型する。(2) トランスファ−成型機により加熱加圧成型する。(3) 射出成型機により加熱加圧成型することにより、天然の象牙に替わり得る高級感、加工の容易さ、重量感などを有する人工象牙を得ることができる。
【0017】加圧、硬化成型は上記のように加圧成型時に加熱しても良いが、加圧成型後に加熱乾燥してもかまわない。加熱加圧成型する際の温度は、用いる熱硬化性樹脂の種類にもよるが30〜120℃が好ましい。また、加圧成型後の加熱乾燥温度は70〜150℃が好ましい。
【0018】加圧、硬化成型する際の圧力は、100〜10,000kg/cm2が好ましい。象牙の主成分は、ヒドロキシアパタイトであり、これにコラ−ゲン、他数種の蛋白質よりなっており、比重は1.8 〜1.9と言われており、これが象牙独特の重量感を与えている。また、天然物由来の象牙は象の種類、象牙の部位などにより微妙に異なった色感、質感を有することが知られている。
【0019】よって、本発明のヒドロキシアパタイトと熱硬化性樹脂の配合割合にも好適な範囲を有するものである。その結果、本発明による成型前の成型材料の粘性は、粉末状のものから、粘土状のものまで含まれる。成型材料の粘性により最適な成型方法が異なり、粉末状のものは、金型による加熱加圧成型が適しており、粘土状のものは、金型による加熱加圧成型、トランスファ−成型、射出成型が適している。
【0020】本発明の成型材料には、必要に応じて天然の象牙の特性を損ねない範囲で、着色材、安定剤、離型剤、補強材などを加えることも可能である。
【0021】本発明において、ヒドロキシアパタイトと熱硬化性樹脂の混合方法は特には限定するものではなく、成型材料の粘性により最適な常法を用いる。本発明において硬化成型方法は特には限定するものではなく、成型体の比重が1.8〜1.9を満足し、かつ成型材料の粘性により最適な常法を用いる。
【0022】
【実施例】以下本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0023】実施例1イソホロンジイソシアネ−ト10gに重合触媒および離型剤をそれぞれ0.1g、0.02gを混合し、これにペンタエリスリト−ルテトラキス(3メルカプトプロピオネ−ト)11gを加え良く混合し、含硫ウレタン樹脂を得た。
【0024】ヒドロキシアパタイト70gを万能混合機に仕込み、撹拌しながら前述の樹脂混合液を加え10分間混合した。次いでこの混合物の適量をステンレス製の金型(直径15mm×高さ100mm)に入れ、油圧プレス機を用いて3tの荷重をかけて成型した。得られた成型体は、直径15mm×高さ60mmであった。これを、熱風乾燥機中で120℃、2時間加熱し硬化体を得た。重量は19gであった。得られた硬化体の比重は、1.8であった。この硬化体を印鑑に加工し、5万回の捺印テストを行ったが欠けなどのトラブルは見られず、感触、重量感も天然の象牙と同等であった。
【0025】実施例2イソホロンジイソシアネ−ト20gに、ペンタエリスリト−ルテトラキス(3メルカプトプロピオネ−ト)22gに各々増量し、さらに、重合触媒および離型剤をそれぞれ0.2g、0.04gに変更した以外は、実施例1と同様な操作を行った。その結果、重量は19gであった。得られた硬化体の比重は、1.8であった。この硬化体を印鑑に加工し、5万回の捺印テストを行ったが欠けなどのトラブルは見られず、感触、重量感も天然の象牙と同等であった。
【0026】実施例3α、α’−ジイソシアネ−ト−m−キシレン10gに重合触媒および離型剤をそれぞれ0.01g、0.02gを 混合し、これにペンタエリスリト−ルテトラキス(3メルカプトプロピオネ−ト)13gを加え良く混合し、含硫ウレタン樹脂を得た。
【0027】ヒドロキシアパタイト70gを万能混合機に仕込み、撹拌しながら前述の樹脂混合液を加え10分間混合した。次いでこの混合物の適量をステンレス製の金型(直径15mm×高さ100mm)に入れ、油圧プレス機を用いて6tの荷重をかけて成型した。得られた成型体は、直径15mm×60mmであった。これを、熱風乾燥機中で120℃、2時間加熱し硬化体を得た。重量は20gであった。得られた硬化体の比重は、1.9であった。この硬化体を印鑑に加工し、5万回の捺印テストを行ったが欠けなどのトラブルは見られず、感触、重量感も天然の象牙と同等であった。
【0028】実施例41,3,5−トリス(6−イソシアナトヘキシル)−1 3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン10gに重合触媒および離型剤をそれぞれ0.04g、0.02gを混合し、これにペンタエリスリト−ルテトラキス(3−メルカプトプロピオネ−ト)7.2gを加え良く混合し、含硫ウレタン樹脂を得た。
【0029】ヒドロキシアパタイト70gを万能混合機に仕込み、撹拌しながら前述の樹脂混合液を加え10分間混合した。次いでこの混合物の適量をステンレス製の金型(直径15mm×100mm)に入れ、油圧プレス機を用いて3tの荷重をかけて成型した。得られた成型体は、直径15mm×60mmであった。これを、熱風乾燥機中で120℃、2時間加熱し硬化体を得た。重量は19gであった。得られた硬化体の比重は、1.8であった。この硬化体を印鑑に加工し、5万回の捺印テストを行ったが欠けなどのトラブルは見られず、感触、重量感も天然の象牙と同等であった。
【0030】比較例1実施例1と同様のモノマーを使用し、含硫ウレタン樹脂とヒドロキシアパタイトの比率を変えて、実施例1の方法で硬化体を得た。即ち、イソホロンジイソシアネ−ト40gに重合触媒および離型剤をそれぞれ0.4g、0.08gを混合し、これにペンタエリスリト−ルテトラキス(3−メルカプトプロピオネ−ト)44gを加え良く混合し、含硫ウレタン樹脂を得、ヒドロキシアパタイト70gと混合し、実施例1の方法で硬化体を得た。得られた硬化体の重量は17.5gであり、比重は1.7であった。この硬化体を印鑑に加工した時加工性が劣り、感触、重量感も劣り人工象牙には不適であった。
【0031】比較例2実施例1と同様のモノマーを使用し、含硫ウレタン樹脂とヒドロキシアパタイトの比率を変えて、実施例1の方法で硬化体を得た。即ち、イソホロンジイソシアネ−ト5gに重合触媒および離型剤をそれぞれ0.05g、0.01gを混合し、これにペンタエリスリト−ルテトラキス(3メルカプトプロピオネ−ト)5.5gを加え良く混合し、含硫ウレタン樹脂を得、ヒドロキシアパタイト70gと混合し、実施例1の方法で硬化体を得た。得られた硬化体の重量は19.5gであり、比重は1.85であった。この硬化体を印鑑に加工し、5万回の捺印テストを行ったが欠けが見られ、感触、重量感も劣り人工象牙には不適であった。
【0032】比較例3実施例1の配合で、ヒドロキシアパタイトを水酸化アルミニウムに代えて同様な操作で成型体を得た。 得られた硬化体の比重は、1.6であった。この硬化体を印鑑に加工し、5万回の捺印テストを行ったが欠けが見られ、感触、重量感も劣り人工象牙には不適であった。
【0033】
【発明の効果】本発明の人工象牙は、ヒドロキシアパタイトと熱硬化性樹脂とを特定の割合で混合し、加圧成型することによって得られ、天然の象牙に酷似しており、その優れた特性を活かし、印材、楽器材料、装飾品材料、娯楽遊戯品材料等の材料として使用が可能である。
【0034】即ち、本発明の範囲外である比較例においては、天然の象牙に匹敵する性能が得られず、印鑑に加工し、捺印テストを行った結果、欠けが見られ、感触、重量感も劣り人工象牙には不適であった。これに対し、本発明の範囲内である実施例は、これらの性能がすべて優れていることが明らかであり、本発明の意義は大きい。
【出願人】 【識別番号】000003126
【氏名又は名称】三井東圧化学株式会社
【出願日】 平成3年(1991)10月28日
【代理人】
【公開番号】 特開平5−271431
【公開日】 平成5年(1993)10月19日
【出願番号】 特願平3−281267