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【発明の名称】 腎機能測定用の放射能標識テクネチウムキレート類
【発明者】 【氏名】アラン・フリッツバーグ

【目的】 本発明は、シンチグラフィー尿路造影法を用いて腎機能を調べる分野において有用な、新規テクネチウム−99m化合物を提供する。
【構成】 本発明の新規化合物はTc−99mおよび次式:イメージ ID=000002
【特許請求の範囲】
【請求項1】 Tc−99mおよび次式:
〔式中、XはSまたはNであり;XがSである場合Y′は−Hまたは適当な保護基であり、またXがNである場合Y′は−H2 であり;そしてYは−H2 であるか、あるいはYは
(ここでR1 は−H,−CH3 ,または−CH2 CH3 であり;R2 は−H,−CH2 CO2 H,−CH2 CONH2 ,−CH2 CH2 CO2 H,−CH2 CH2 CONH2 ,−CH3 ,−CH2 CH3 ,または−CH2 OHであり;そしてZは−H,−CO2 H,−CONH2 ,−SO3 H,−SO2 NH2 ,または−CONHCH2 CO2 Hである)であり;そしてTcはTc−99mである〕で表わされるリガンドからなるキレートまたはその水溶性塩。
【請求項2】 適当な保護基Y′が−COCH3 ,−COC65 ,−CH2 NHCOCH3 ,−COCF3 ,または−COCH2 OHである請求項1記載のTc−99mおよびリガンドからなるキレート。
【請求項3】 一般式:Y′XCH2 CONHCH2 CONHCH2 CONHYのリガンド、適量の水溶性第一錫塩、および適量の交換リガンド中間体を含み、かつ適量の水溶性Tc−99m過テクネチウム酸塩を受け入れるための十分な容積を有する容器からなる、一般式:
で表わされる化合物またはその水溶性塩を製造するために使用する包装されたキットであって、上記各式中、XはSまたはNであり;Yは−Hであるか、あるいはYは
(ここでR1 は−H,−CH3 ,または−CH2 CH3 であり;R2 は−H,−CH2 CO2 H,−CH2 CONH2 ,−CH2 CH2 CO2 H,−CH2 CH2 CONH2 ,−CH3 ,−CH2 CH3 ,または−CH2 OHであり;そしてZは−H,−CO2 H,−CONH2 ,−SO3 H,−SO2 NH2 ,または−CONHCH2 CO2 Hである)であり;TcはTc−99mであり;そしてXがNであるときY′は−H2 であり、またXがSであるときY′は−Hまたは適当な保護基である、前記キット。
【請求項4】 XがSである請求項3記載の包装されたキット。
【請求項5】 適当な保護基Y′が−COCH3 ,−COC65 ,−CH2 NHCOCH3 ,−COCF3 ,−COCH2 CO2 Hまたは−COCH2 OHである請求項4記載の包装されたキット。
【請求項6】 Y′が−COC65 でありYが−CH2 CO2 Hである請求項4記載の包装されたキット。
【請求項7】 Yが−CHCH3 CO2 H;−CH(CH2 CONH2 )CO2 H;または−CH(CH2 CH2 CONH2 )COOHである請求項4記載の包装されたキット。
【請求項8】 交換リガンド中間体がアセテート、グリシン、シトレート、マロネート、グルコネート、タルトレート、マレエート、ラクテート、ヒドロキシイソブチレート、ピロホスフェート、N−メチル−N,N′−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミンまたはグルコヘプトネートである請求項4記載の包装されたキット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明はシンチグラフィー尿路造影法を用いて腎機能を調べる分野において使用する方法および化合物に関する。より詳細には、本発明はテクネチウム−99mで放射能標識したキレート類を使用することによる腎臓系のイメージング(映像形成)に関する。
【0002】
【従来の技術】人体の機能に関する基礎生理学においては体液の成分および量の調節が非常に重要である。例えば、人体では全体液量、細胞外体液の成分、体液中の酸−塩基バランス、および細胞外体液と細胞内体液の交換に影響を及ぼす各種の因子(最も顕著には、このような体液間の浸透関係に影響を与える因子)などの体液に関する変化を調節することが必要である。
【0003】腎臓は体液の組成の調節をつかさどる重要な臓器である。従って、腎臓は最終代謝産物の大部分を排泄しかつ望ましい体液成分の濃度を調節することによって生理学的に許容される範囲内に体液を維持する。
【0004】人体は膀胱を通って排泄される体液成分を含む尿を生成するための2個の腎臓を有している。腎臓の働きを行う生物学的な基本単位が“ネフロン”である。腎臓はそれぞれ約100万のネフロンで構成され、各ネフロンは他のネフロンとは無関係に体液を調節することができる。
【0005】腎臓は実質的容量の血液(全拍出量の約1/5が直接腎臓へ送られる)を濾過することにより体液に対して機能し、この特定容量の血液は“腎臓画分(renal fraction)”として知られている。血液は一般成人男子の腎臓へ平均約1.2l/分の流量で流れる。血液が腎臓を通過するとき、ネフロンは不要物質、例えば最終代謝産物(尿素、クレアチニン、尿酸、硫酸塩およびフェノールなど)およびイオン性非代謝物質(過剰のナトリウム、カリウムおよび塩素イオンなど)を血漿から取り除く。
【0006】ネフロンは基本的に“糸球体”と呼ばれる毛細血管床、“管周”毛細血管(peritubular capillary)として知られる第2の毛細血管床、および“尿細管”として知られる尿生成部分からなっている。尿細管は“糸球体膜”として知られる膜によって糸球体から分離される。血液の腎臓画分が糸球体を通過するとき、糸球体膜は腎臓画分からなる血漿の少量割合(一般には20〜25%以下)を尿細管へ送る。その後この濾過体液は尿細管を通って腎臓の腔の方へ流れ、そして膀胱へと順に運ばれる。体液が尿細管を通過するとき、大部分の水、大部分の電解質、およびその他の“必要”物質は再吸収されて血液へ戻り、“不要”物質(最終代謝産物、過剰の水および電解質など)が尿として排泄されるために膀胱へ送られる。
【0007】糸球体膜を通過しない腎臓画分の残りの部分はその糸球体にとどまり、その後管周毛細血管へ入り、そこから腎臓画分の一部が一般には静脈系へ戻される。尿細管で再吸収された大量の体液も尿細管膜を通って拡散により管周毛細血管へ運ばれる。
【0008】大量の体液は尿細管から管周毛細血管へ拡散して血管系に戻るが、若干の血漿は逆方向、すなわち管周毛細血管から尿細管への拡散をおこす。例えば、尿細管膜を通って管周体液中へナトリウムイオンを能動的に運ぶことによりこの重要な電解質が失われずにすむが、一方でこのことは尿細管内に管周体液に対する実質的陰電荷を生じさせる。近位尿細管においてはこの電位差が約20ミリボルトであり、そして遠位尿細管ではこれが120ミリボルト程度に上昇しうる。
【0009】この電位差はある種の陽イオン(最も顕著にはカリウムイオン)を管周体液から尿細管へ拡散させる。電気陰性度勾配による尿細管膜を経る尿細管へのカリウムイオンの移動は“受動分泌(passive secretion)”と呼ばれる。
【0010】この受動分泌に加えて、若干のイオン性物質は尿細管の中へ“能動的”に分泌される。例えば、パラ−アミノ馬尿酸(一般にはPAHと呼ぶ)は管周体液から尿細管へ能動的に分泌され、腎臓画分の約20%のみが糸球体濾液として尿細管へ送られるにすぎないにもかかわらず、血液中のPAHはその90%近くが腎臓によって除去される。従って、PAHの約70%は尿細管への能動分泌によって血漿から除かれることになる。
【0011】時おり、腎臓が損傷を受けて、その結果血液浄化作用が低下するかあるいはその浄化作用が停止することさえあるだろう。発生した腎臓の損傷の程度と型を医師が評価するのを助けるために、各種の腎機能試験が考案された。また、これらの腎機能試験は腎臓移植手術後に腎臓が適切に働いているかどうかを調べるのに有用である。
【0012】このような腎機能試験方法の1つは静脈内シンチグラフィー尿路造影法として知られるものである(この方法はまた動的腎機能イメージング法としても普通に知られている)。この方法はもともとI−131オルト−ヨード馬尿酸塩(I−131 OIHと呼ばれる)のような放射能標識したヨウ素物質の静脈内投与をともなう。PAHと同様に、I−131 OIHは糸球体での濾過に加えて尿細管への能動分泌によって血液から迅速に除かれ、その結果投与後2,3分以内に有意量の放射能標識物質が腎臓内に濃縮される。この放射能標識物質の位置を示すことができるガンマシンチレーションカメラを使って映像を得、それにより腎臓における腎機能の本質を知ることができる。
【0013】腎機能を評価する際にI−131 OIHが重要な手段であるという事実にもかかわらず、これにはいくつかの明らかな難点が存在する。まず第一に、ヨウ素−131(I−131)が高エネルギーガンマ放射線量(364keV)を有するために、I−131 OIHの使用は空間的分解の乏しい映像をもたらす。このことは腎臓内の細部の観察を困難にし、その結果この方法によって得られる有用な情報量が制限される。
【0014】さらに、I−131 OIHの腎臓吸収率(腎臓を通過する血液から放射性薬品を取り除く能力)が約65〜80%であるにすぎず、これはかなりよい方ではあるが、さらに高い吸収率はさらに高い腎臓対基底値(バックグラウンド)比をもたらして腎機能の検出を容易にするだろう。また、I−131は放射性崩壊中にベータ粒子を放射して周囲の組織に損傷を与えるだろう。さらに、I−131OIHに付随する遊離の放射性ヨウ素は患者の甲状腺に吸収されやすいので、I−131 OIHの最大線量を一般に約200〜300マイクロキュリーに維持しなければならない。この低い投与量は放射性画像を得る場合にかなりの暴露時間を必要とし、腎機能検査中に得られた連続画像の時間的分解能を順次減少させる。
【0015】放射線による腎機能測定方法において得られる分解能を改良するために、別の放射能標識物質が熱心に探し求められている。今日では、最も望ましい放射性標識がテクネチウム−99m(Tc−99m)であると考えられ、このTc−99mはより低いエネルギー(140keV)の放射線を放射するのでI−131標識と比較した場合にかなり改良された分解特性を有している。この比較的低いエネルギーの放射線は標準的な放射線測定装置と共に使用するのによく適合する。1ミリキュリー当たりの放射線量はI−131を使用する場合よりもTc−99mの方がはるかに少ない。なぜならI−131の半減期が8日であるのに対してTc−99mの半減期は約6時間であるにすぎず、またTC−99mはその崩壊過程中にベータ粒子を放射しないからである。
【0016】Tc−99mの放射能特性は準安定性の励起された原子核が基底状態のTc−99へ遷移することに起因する。生じたTc−99は実質的に無害であるほどの長い半減期(200,000年)を有している。その結果、30,000マイクロキュリー程度のTc−99mを患者に危険を与えることなく投与し得る。従ってI−131 OIHを使用する場合よりもかなり短い暴露時間ですみ、これにより放射性薬品が腎臓を最初に通過する間に許容できる灌流映像(perfusion image)を得ることができる。
【0017】Tc−99mの上記特性は、それが標準装置と共に使用するのによく適合しかつそれを使用する患者に比較的低い放射線量を与えるので、核医療における1つの手段として理想的である。
【0018】I−131標識と比べたときのTc−99m標識の上記利点ゆえに、高い腎臓吸収率を有するTc−99m化合物の開発に対して多大の努力が払われており、多数のTc−99mで標識されたキレート類が文献中に報告されている。
【0019】Tc−99m標識化合物の1つとしてTc−99mジエチレントリアミン五酢酸(一般にTc−99m−DTPAと呼ぶ)ベンゾ、カルボキシレート、ジカルボキシレート、およびベンゾカルボキシレート類似体が合成されかつ試験された。
【0020】これらのうちで最も効率よく排泄される類似体はTc−99m−N,N′−ビス(メルカプトアセチル)−2,3−ジアミノプロパノエート(Tc−99m−CO2 −DADS)であった。都合の悪いことに、このリガンドはキレート化の際に2つの立体異性体生成物(Tc−99m−CO2 −DADS−AおよびTc−99m−CO2 −DADS−Bと呼ぶ)として存在する。さらに、Tc−99m−CO2 −DADS−B異性体はTc−99m−CO2 −DADS−A異性体よりも腎臓での吸収がはるかに低いことが見出された。これらの2つの異性体を臨床上の使用のために分離することは困難であるので、Tc−99m−CO2 −DADS−Aの商業的開発は実用的でないとわかった。
【0021】前述のことから、もし比較的高い吸収率を有しかつI−131 OIHの代替物として不適当であるような他の不利な性質を示さないTc−99m化合物が提供されるならば、それは腎機能イメージングの分野において画期的な進歩であると認めるであろう。さらに、Tc−99mはその半減期が短いために、腎機能診断法を行う直前にこの種のTc−99m化合物を簡単に製造することができるならばそれもまた著しい進歩であるだろう。この種のTc−99m化合物および方法が本明細書に開示されかつ請求される。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】本発明は放射性標識としてTc−99mを組込んだ新規放射性イメージング薬剤に関する。特に、本明細書で開示した新規イメージング薬剤は比較的高い腎臓吸収率を有し、それ故に腎機能イメージング方法を実施する際に有用である。本発明の新規Tc−99m化合物は次の一般式:
〔式中、XはSまたはNであり;Yは−Hであるかあるいは
(ここでR1 は−H,−CH3 または−CH2 CH3 であり;R2 は−H,−CH2 CO2 H,−CH2 CONH2 ,−CH2 CH2 CO2 H,−CH2 CH2CONH2 ,−CH3 ,−CH2 CH3 または−CH2 OHであり;そしてZは−H,−CO2 H,−CONH2 ,−SO3 H,−SO2 NH2 または−CONHCH2 CO2 Hである)であり;そしてTcはTc−99mである〕で表わされる化合物およびその水溶性塩であると推量される。
【0023】前記のもののうちで目下のところ好適な本発明のTc−99m化合物はTc−99m−メルカプトアセチルグリシルグリシルグリシン(Tc−99m−MAGGG)である。その他の好適化合物はTc−99m−MAGG−アラニン、Tc−99m−MAGG−グルタミン、およびTc−99m−MAGG−アスパラギンである。
【0024】本発明はまたTc−99mと反応して前記化合物を形成しうる新規キレート化剤に関する。この種の新規キレート化剤は次の一般式:
(式中、XおよびYは先に定義した通りであり;XがNであるときY′は−H2であり、またXがSであるときY′は−H,−COCH3 ,−COC65 ,−CH2 NHCOCH3 ,−COCF3 ,−COCH2 OH,−COCH2 CO2Hまたはその他の適当な保護基である)で表わされる。
【0025】従って、本発明の主な目的はシンチグラフ法において有用な新規Tc−99m化合物を提供することである。
【0026】本発明の他の目的は、腎臓によって迅速かつ効率よく吸収されるために、腎機能イメージングの分野において有用であるところの新規Tc−99m化合物を提供することである。
【0027】本発明のさらに他の目的は、Tc−99m化合物をイメージング薬剤として使用する直前にこの化合物を製造するための方法を提供することである。
【0028】本発明のこれらの化合物および特徴ならびに他の化合物および特徴は、特許請求の範囲および以下の説明からさらに明らかになるであろう。
【0029】
【課題を解決するための手段】本発明は腎臓の尿細管の中へ能動的に分泌され、それ故放射能尿路造影法のような腎機能試験に使用しうる新規Tc−99m化合物に関する。
【0030】より詳細には、本発明はTc−99m−メルカプトアセチル−トリアミノ酸化合物(N3 S系)、特に次の一般式:
〔式中、Yは−Hであるか、あるいは
(ここでR1 は−H,−CH3 または−CH2 CH3 であり;R2 は−H,−CH2 CO2 H,−CH2 CONH2 ,−CH2 CH2 CO2 H,−CH2 CH2CONH2 ,−CH3 ,−CH2 CH3 または−CH2 OHであり;そしてZは−H,−CO2 H,−CONH2 ,−SO3 H,−SO2 NH2 または−CONHCH2 CO2 Hである)である〕で表わされるTc−99m−メルカプトアセチルグリシルグリシル−アミノ酸化合物に関する。
【0031】また、本発明は上記の一般式に類似するTc−99m化合物を包含し、ただしこの化合物は次式:
(式中、Yは先に定義した通りである)で表わされるように硫黄が窒素で置換されている。
【0032】前述のものに加えて、本発明は次の一般式:
(式中、XはSまたはNであり;Yは先に定義した通りであり;そしてa〜fはそれぞれ2個の水素原子または二重結合で結合した酸素原子を表わす:ただしXがSである場合、aは2個の水素原子であり、b〜fのうち少なくとも2つは二重結合で結合した酸素原子であり、そして残りは2個の水素原子である;またXがNである場合、a〜fのうち少なくとも2つは二重結合で結合した酸素原子であり、そして残りは2個の水素原子である)で表わされるTc−99m化合物も提供する。
【0033】先に示した化合物に加えて本発明はそれらの水溶性塩を包含する。
【0034】さらに本発明はTc−99mと反応して前記化合物を形成しうる新規キレート化剤に関する。この種の新規キレート化剤は次の一般式:
(式中、XおよびYは先に定義した通りであり;XがNであるときY′は−H2であり、またXがSであるときY′は−H,−COCH3 ,−COC65 ,−CH2 NHCOCH3 ,−COCF3 ,−COCH2 OH,−COCH2 CO2H,またはその他の適当な保護基である)で表わされる。XがSであってY′が−H以外の前記基のうちの1つであるとき、Y′の使用は硫黄を酸化から保護するのに役立つ。XがNである場合にはこの種の保護を必要としない。
【0035】本発明の新規Tc−99m化合物の好適な合成方法を以下の反応式(ここでは特にTc−99m−メルカプトアセチルグリシルグリシルグリシン(Tc−99m−MAGGG)の合成方法を示す)で説明する。
【0036】

上記反応式では、グリシルグリシルグリシン(化合物I)を塩化クロルアセチルと反応させてクロルアセチルグリシルグリシルグリシン(化合物II)を製造する。次に化合物IIをチオ安息香酸ナトリウムと反応させてベンゾイルメルカプトアセチルグリシルグリシルグリシン(化合物III)を生成する。最後に化合物III を適当な還元剤の存在下に過テクネチウム酸ナトリウムと反応させてTc−99m−MAGGG(化合物IV)を製造する。上記と同じ合成経路を使用しかつ別の出発リガンドを用いることにより本発明の範囲内の他のTc−99m化合物を製造し得ることが理解されるであろう。
【0037】本発明の新規Tc−99m化合物は、これを患者に静脈内注射で投与し、続いてガンマシンチレーションカメラを使って患者の腎臓の映像を記録することによって、シンチグラフィー尿路造影法において使用される。先に述べたように、30,000マイクロキュリー程度の用量でTc−99mを投与することが可能であり、このような高用量の場合は短い暴露時間が可能であるのでこれは腎機能の動的試験を行う際に極めて有利である。
【0038】本発明の新規Tc−99m化合物は腎臓の尿細管へ能動的に分泌されて著しく高い吸収率を示し、それ故I−131 OIHの代替物として役立ち得ることが見出された。さらに、上記の構造式から明らかなように本化合物は立体異性体として存在しないので、より容易に実用に供されるだろう(しかし、Y基の選択によってはジアステレオマーが存在しうる)。
【0039】前述のごとく、Tc−99mの半減期は約6時間にすぎない。この短い半減期のために、Tc−99m−キレートを臨床上の使用に備えて包装することは実際的でない。本発明の重要な特徴は、放射性医薬品として使用する直前にTc−99m−キレートを容易に製造しうるキットの形で試薬類を包装できることである。
【0040】従って、実験室ではメルカプトアセチルグリシルグリシルグリシンとTc−99m過テクネチウム酸塩とを亜二チオン酸塩還元剤の存在下に反応させることが実際的であるが、Tc−99mおよび亜二チオン酸塩は双方とも作りおきができず新しく製造しなければならない。
【0041】より一層便利な合成法が発見され、この方法はアセテート、タルトレート、マレエート、ラクテート、ヒドロキシイソブチレート、シトレート、グルコヘプトネート、グルコネート、ピロホスフェート、N−メチルN,N′−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミンまたはグリシンのような適当な交換リガンド中間体と錯化した第一錫イオンを使用する。この第一錫イオンは上記反応式の化合物III のようなリガンドと過テクネチウム酸ナトリウムとの反応を誘発して、化合物IVのようなTc−99m化合物を生成し得ることがわかった。
【0042】第一錫イオンは亜二チオン酸塩のように溶液中で不安定でない。従って、第一錫イオンを使用する方法は、一方のバイアル中の第一錫イオン(および交換リガンド中間体)とTc−99mへ結合されるべきリガンド(長期保存が可能である)、ならびに他方のバイアル中の過テクネチウム酸ナトリウムの2つの部分から成るキットの形で容易に包装可能である。一般に、過テクネチウム酸ナトリウムはTc−99mの半減期が短いために入手しやすいMo−99/Tc−99m発生剤からその場で製造されるだろう。
【0043】2,3の代表的な実施例は本発明の理解に役立つだろう。実施例1および2はそれぞれメルカプトアセチルグリシルグリシルグリシンおよびTc−99m−MAGGGの好適な合成方法を示す。
【0044】
【実施例】
実施例1ベンゾイルメルカプトアセチルグリシルグリシルグリシンの合成ベンゾイルメルカプトアセチルグリシルグリシルグリシンの合成は、500mlフラスコ内の1.0N水酸化ナトリウム75mlにグリシルグリシルグリシン2.5gを窒素雰囲気下0℃で溶解することにより多段方法で開始した。
【0045】次にグリシルグリシルグリシン溶液を連続撹拌しながら、この溶液にエーテル100ml中塩化クロルアセチル13.0g含有溶液を第1の添加漏斗から滴下し、同時に1.0N水酸化ナトリウム100mlを第2の添加漏斗から滴下した。塩化クロルアセチルと水酸化ナトリウムの滴下完了後、この反応混合物を0℃に保ってさらに1.5時間撹拌した。
【0046】その後濃塩酸を加えることにより反応混合物を約pH2へと酸性化した。さらに30分撹拌後、反応混合物を40℃に暖めて1/3の容量になるまで減圧化に濃縮した。
【0047】この濃縮混合物は次いで氷浴中で冷却してクロルアセチルグリシルグリシルグリシンを析出させた。水で2回洗浄後、クロルアセチルグリシルグリシルグリシン2.75g(出発混合物中に溶解したグリシルグリシルグリシンの量に基づいて収率78.5%)を得た。
【0048】次に、窒素雰囲気下で粗クロルアセチルグリシルグリシルグリシン1gを無水メタノール300mlに溶解した。このフラスコにチオ安息香酸ナトリウム含有溶液(メタノール中のナトリウム175mgにチオ安息香酸1.1gを添加して調製したもの)50mlを加え、この反応混合物を1.5時間還流した。
【0049】その後溶媒を減圧下に除去した。得られた固体を濾過により単離し、クロロホルムで洗った。メタノールから結晶化させてベンゾイルメルカプトアセチルグリシルグリシルグリシン1.25g(90%)を回収した。
【0050】メタノールからの結晶化で得られた生成物がベンゾイルメルカプトアセチルグリシルグリシルグリシンであることを証明するために元素分析を行った。ベンゾイルメルカプトアセチルグリシルグリシルグリシンを構成する炭素、水素、窒素および硫黄の計算した理論値(%)はそれぞれ56.56,4.92,5.74および13.11である。元素分析の結果はそれぞれ56.50,5.06,5.67および13.27であった。理論値と実測値とが実質的一致したことにより、この反応順序の生成物がベンゾイルメルカプトアセチルグリシルグリシルグリシンであると判明した。
【0051】実施例2Tc−99mメルカプトアセチルグリシルグリシルグリシンの合成先に述べたように、本発明の1つの重要な特徴は意図するイメージング薬剤の前駆体をキットの形で包装できることである。この実施例はイメージング薬剤としてのTc−99m−MAGGGに関係するこの種のキットの製造について示す。
【0052】例えば、約100個のキットを作る場合には、1.25M交換リガンド中間体(アセテート、グリシン、シトレート、マロネート、グルコネート、グルコヘプトネート、ピロホスフェート、タルトレート、マレエート、ラクテート、ヒドロキシイソブチレート、またはN−メチルN,N′−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミンなど)80mlを約pH5.5に調節し、次に窒素ガスを散布することによって脱酸素した。その後ベンゾイルメルカプトアセチルグリシルグリシルグリシン100mgを加え、透明溶液が得られるまで撹拌した。
【0053】次に、0.1N塩酸1ml中のSnCl2 ・2H2 Oの新しく調製した10mg/ml溶液0.2mlをこの混合物に窒素雰囲気下で加えた。最後に、得られた混合物は0.1N HClまたはNaOHの適量を加えることによって約pH5に調節し、全容量を100mlとするように希釈し、そして窒素雰囲気を保ちながら0.2ミクロンのフィルターを通過させて滅菌した。10mlのアリコートを無菌技術を用いてバイアルに分配し、個々のアリコートは保存のために凍結または凍結乾燥した。場合によっては、第一錫イオン安定剤(ゲンチシン酸またはアスコルビン酸など)を加えてもよい。
【0054】Mo−99/Tc−99m発生剤から所望レベルの放射能を有する塩水中のTc−99m過テクネチウム酸塩約1〜3mlを生成し、前述のようにして調製した反応剤を含むバイアルの1つに添加した。混合後、Tc−99m−MAGGGを生成させるためにこのバイアルを沸騰水浴中に5分間入れた。この調製物が冷却し、これ以上の処理を行うことなく使用した。
【0055】実施例3分析方法所望ならば、Tc−99m−MAGGGの日常分析が、ミシガン州アンアーバーのゲルマン社(Gelman,Inc.)から入手できるようなITLC−SGシリカゲル含浸ガラスファイバーストリップでの薄層クロマトグラフィーを用いて有利に行われる。
【0056】可溶性の非結合Tc−99m過テクネチウム酸塩の量は、メチルエチルケトンで展開したストリップの溶媒先端の放射能を測定することにより得られる。不溶性Tc−99mの量は、塩水で展開したストリップの原点画分から放射能を測定することにより得られる。結合Tc−99mの百分率は次の式:%結合=100−%非結合−%不溶性に従って計算する。
【0057】キレート化Tc−99m−MAGGG生成物の分析は、5ミクロンのODSカラムと共に5%エタノール:95%0.01M燐酸塩(pH6)からなる溶媒系を使用する高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて行うこともできる。Tc−99m−MAGGGは1.0ml/分の流速の場合約4分で主要ピークとなる。観察しうる他の成分は約2.5分でのTc−99m過テクネチウム酸塩である。
【0058】実施例4正常マウスにおけるTc−99m−MAGGGの腎臓による取込み1群6匹のマウス2群にTc−99m−MAGGGとI−131 OIH(標準対照)とを同時に投与した。各マウスには0.5マイクロキュリーのTc−99m−MAGGGおよび0.2マイクロキュリーのI−131 OIHを含有する調製物0.1mlを静脈内注射し、その後排泄された尿を回収できる代謝ゲージの中に入れた。
【0059】注射の10分後に各マウスの尿道を結び、そしてクロロホルム蒸気によってマウスを殺した。次に、放射能標識した物質の生物分布を調べるために種々のサンプルを採取した。これらのサンプルの結果を表Iに示す。注射の120分後に第2群のマウスに対して同様の測定を行い、その結果を表IIに示す。
【0060】
【表1】
表 I 10分後の正常マウスにおける生物分布 (数字は最初に注射した放射性薬剤の百分率として表わされる)
薬 剤 血液 肝臓 腎臓 尿 Tc−99m−MAGGG 2.6 2.9 3.5 0.1 1.1 79.9 I−131 OIH 4.1 1.8 2.2 0.5 1.0 74.4 【表2】
表 II 120分後の正常マウスにおける生物分布 (数字は最初に注射した放射性薬剤の百分率として表わされる)
薬 剤 血液 肝臓 腎臓 尿 Tc−99m−MAGGG 0.03 0.08 0.06 0.02 1.2 98.5 I−131 OIH 0.14 0.11 0.06 0.98 0.16 96.5 表Iおよび表IIはTc−99m−MAGGGが腎臓によって迅速にかつ選択的に除去され、ほんの微量が他の主要臓器に取込まれたにすぎないことを示している。このことはイメージング薬剤の重要な性質であり、こうして放射性標識によって放射された放射線から生体組織への損傷を回避し、かつ適当な映像を得るのに必要とされる放射性医薬品の投与量を最小限に抑えることができる。
【0061】また、これらの表から明らかなように、Tc−99m−MAGGGはI−131 OIHよりもかなり迅速に腎臓から排泄される。10分および120分での尿中のTc−99m−MAGGGのレベルはI−131 OIHの対応するレベルの107.3%および102.6%に等しかった。従ってTc−99mはI−131よりも組織への損傷が少なくてすむので、これらの結果はTc−99m−MAGGGの方がI−131 OIHよりも使用上より安全であることを示している。
【0062】実施例5プロベニシド処理マウスにおけるTc−99m−MAGGGの腎臓による取込み尿細管輸送を阻害したマウスにおいてTc−99m−MAGGGの生物分布を試験するために、6匹のマウスに体重1kg当たりプロベニシド(probenicid)50mgの割合でプロベニシド溶液を注射した。10分後、各マウスに0.5マイクロキュリーのTc−99m−MAGGGおよび0.2マイクロキュリーのI−131 OIHを含有する溶液0.1mlを注射した。さらに10分後、各マウスを殺して放射性物質の生物分布を調べるために種々のサンプルを採取した。これらのサンプルの結果を表III に示す。
【0063】
【表3】
表 III 10分後のプロベニシド処理マウスにおける生物分布 (数字は最初に注射した放射性薬剤の百分率として表わされる)
薬 剤 血液 肝臓 腎臓 尿 Tc−99m−MAGGG 6.0 5.9 5.4 0.24 1.6 64.7 I−131 OIH 7.0 3.7 3.6 0.75 2.0 59.2 表III は機能的に劣った腎臓であってもなおI−131 OIHよりTc−99m−MAGGGを多量に除去できることを示している。I−131は他の放射性医薬品を測定する場合の目下の標準であるから、これらの結果はTc−99m−MAGGGが腎機能の診断方法において使用するための優れた化合物であることを示している。
【0064】実施例6および7ヒトにおけるTc−99m−MAGGGの腎臓による排ヒトでのTc−99m−MAGGGの腎臓排泄は正常な志願者による実験に基づいて得られた。比較のために、Tc−99m−MAGGGを使用する試験の直前または直後にI−131 OIHを使用する試験も行った。
【0065】実施例6では、実施例2に記載の方法と類似した第一錫還元(交換リガンド中間体としてはグルコヘプトネートを使用)によりTc−99m−MAGGGを製造した。実施例7では、第一錫還元を使用する代わりに還元剤として亜二チオン酸塩を使用した。両実施例ともHPLCカラムで同じ主要ピークを有するTc−99m−MAGGGを与えた。
【0066】両実施例において、被験者には約15ミリキュリーのTc−99m−MAGGGを含む用量を注射した。I−131 OIHを利用する比較試験では約300マイクロキュリーのI−131 OIHを投与した。両方の場合とも、約30分間にわたって腎臓、尿管および血液プールのイメージングを行い、続いて膀胱での計数率を測定した。
【0067】その後膀胱を空にして、残留放射能の存在を検出するために追加の映像をとり、こうして30分での尿放射能の百分率を測定した。3時間でも同様の測定を行った。これらの試験の結果を表IVに示す。
【0068】
【表4】
表 IV (数字は最初に注射した放射性薬剤の百分率として表わされる)
薬 剤 30分 3時間 Tc−99m−MAGGG 71.8±4.2 98.6±1.6 I−131 OIH 65.5±6.3 93.5±3.2表IVはTc−99m−MAGGGがヒトの場合にも高い腎臓吸収率を有し、しかもI−131 OIHよりかなり優れていることを明確に示している。このことはTc−99m−MAGGGがシンチグラフィー尿路造影法用の傑出したイメージング薬剤であることを示す。これとは対照的に、本発明以前のTc−99m化合物は最も効率よく排泄されるものであってもI−131 OIHより20%近くもその排泄率が劣っていた。
【0069】実施例8Tc−99m−MAGGGの合成および腎臓での取込みTc−99m−MAGGGの合成に関して前記反応式ならびに実施例1および2で説明した一般的合成工程に従って、Tc−99m−メルカプトアセチルグリシルグリシルグリシルグリシン(Tc−99m−MAGGGG)を製造した。これは実施例1のグリシルグリシルグリシンの代わりにグリシルグリシルグリシルグリシンを用いて達成した。
【0070】次いで、実施例4に記載の方法と類似した方法を用いてTc−99m−MAGGGGをマウスに投与した。注射の10分後および120分後に生物分布の測定を行った。これらの測定結果を表Vに示す。
【0071】
【表5】
表 V Tc−99m−MAGGGGの生物分布 (数字は最初に注射した放射性薬剤の百分率として表わされる)
時間(分) 血液 肝 臓 腎 臓 尿 10 2.7 9.9 3.3 0.2 10.3 58.4 120 0.04 1.1 0.2 0.05 16.0 82.510分および120分でのTc−99m−MAGGGGの尿中レベルはそれぞれI−131 OIHの対応レベルの86.7%および87.6%に等しく、この化合物がI−131 OIHの代替物になり得ることを示している。しかし、腸の放射能によって示されるような肝胆汁性排泄の増加は特異性の低下を示している。
【0072】実施例9Tc−99m−MAGG−アラニンの合成および腎臓による取込み前記反応式、実施例1および2に記載の一般合成工程に従い、かつ実施例1のグリシルグリシルグリシンの代わりにグリシルグリシルアラニンを用いて、Tc−99m−メルカプトアセチルグリシルグリシルアラニンを製造した。
【0073】その後、実施例4に記載の方法と類似した方法によりTc−99m−MAGG−アラニンをマウスに投与した。注射の10分後および120分後に生物分布を測定した。これらの測定結果を表VIに示す。
【0074】
【表6】
表 VI Tc−99m−MAGGの生物分布 (数字は最初に注射した放射性薬剤の百分率として表わされる)
時間(分) 血 液 肝 臓 腎 臓 尿 10 2.6 2.6 5.2 0.2 1.6 75.1 120 0.2 0.1 0.3 0.2 2.2 96.010分および120分でのTc−99m−MAGG−アラニンの尿中レベルはそれぞれI−131 OIHの対応レベルの106.4%および102.2%に等しく、この化合物がシンチグラフィー尿路造影法での使用においてI−131OIHの代替物として優れていることを示している。
【0075】実施例10Tc−99m−MAGG−アスパラギン酸の合成および腎臓による取込み前記反応式、実施例1および2に記載の一般合成工程に従いかつ実施例1のグリシルグリシルグリシンの代わりにグリシルグリシルアスパラギン酸を用いて、Tc−99m−メルカプトアセチルグリシルグリシルアスパラギン酸を製造した。
【0076】その後、Tc−99m−MAGG−アスパラギン酸を実施例4に記載の方法と類似した方法を用いてマウスに投与した。生物分布の測定結果を表VII に示す。
【表7】
表 VII Tc−99m−MAGG−アスパラギン酸の生物分布 (数字は最初に注射した放射性薬剤の百分率として表わされる)
時間(分) 血 液 肝臓 腎 臓 尿 10 6.6 6.51 4.7 0.4 2.7 50.1 120 0.3 1.5 0.2 0.3 6.2 87.410分および120分でのTc−99m−MAGG−アスパラギン酸の尿中レベルはそれぞれI−131 OIHの対応レベルの64.2%および94.1%に等しかった。10分での低い排泄からすると、I−131 OIHの代替物としてのこの化合物の適合性は疑わしい。
【0077】実施例11Tc−99m−MAGG−グルタミンの合成および腎臓による取込み前記反応式ならびに実施例1および2に記載の一般合成工程に従いかつ実施例1のグリシルグリシルグリシンの代わりにグリシルグリシルグルタミンを使用して、Tc−99m−MAGG−グルタミンを製造した。
【0078】その後、Tc−99m−MAGG−グルタミンを実施例4に記載の方法と類似した方法を用いてマウスに投与した。生物分布の測定結果を表VIIIに示す。
【0079】
【表8】
表 VIII Tc−99m−MAGG−グルタミンの生物分布 (数字は最初に注射した放射性薬剤の百分率として表わされる)
時間(分) 血液 肝 臓 腎 臓 尿 10 3.2 4.5 4.2 0.2 0.9 70.7 120 0.04 0.8 0.1 0.04 1.0 95.910分および120分でのTc−99m−MAGG−グルタミンの尿中レベルはそれぞれI−131 OIHの対応レベルの97.6%および103.4%に等しく、この化合物がシンチグラフィー尿路造影法での使用においてI−131OIHの代替物として優れていることを示している。
【0080】実施例12Tc−99m−MAGG−フェニルアラニンの合成および腎臓による取込み前記反応式および実施例1および2に記載の一般合成工程に従ってTc−99m−MAGG−フェニルアラニンを製造した。ただし実施例1のグリシルグリシルグリシンの代わりにグリシルグリシルフェニルアラニンを使用した。
【0081】Tc−99m−MAGG−フェニルアラニンは2つの分離可能なジアステレオマー(記号−Aおよび−Bで区別する)として存在する。ジアステレオマーTc−99m−MAGG−フェニルアラニン−AとTc−99m−MAGG−フェニルアラニン−Bとを分離して、実施例4に記載の方法と類似した方法を用いてマウスに投与した。これら2つの化合物に対する生物分布の測定結果をそれぞれ表IXおよびXに示す。
【0082】
【表9】
表 IX Tc−99m−MAGG−フェニルアラニン−Aの生物分布 (数字は最初に注射した放射性薬剤の百分率として表わされる)
時間(分) 血 液 肝 臓 腎 臓 尿 10 9.7 22.16 7.6 0.4 7.7 32.3 120 0.2 2.3 0.2 0.3 26.1 69.5【表10】
表 X Tc−99m−MAGG−フェニルアラニン−Bの生物分布 (数字は最初に注射した放射性薬剤の百分率として表わされる)
時間(分) 血液 肝臓 腎 臓 尿 10 19.4 14.7 5.3 1.0 14.9 16.2 120 0.8 3.0 0.4 0.9 41.7 48.610分および120分でのTc−99m−MAGG−フェニルアラニン−Aの尿中レベルはそれぞれI−131 OIHの対応レベルの43.9%および73.5%に等しかった。10分および120分でのTc−99m−MAGG−フェニルアラニン−Bの尿中レベルはそれぞれI−131 OIHの対応レベルの22.0%および52.3%に等しかった。これらの低い百分率は、これらの化合物の有意量が種々の組織に組込まれたことを示す生物分布の測定結果と共に、Tc−99m−MAGG−フェニルアラニンが一般のシンチグラフィー尿路造影法での日常使用に適さないことを示している。
【0083】実施例13Tc−99m−MAGG−アスパラギンの合成および腎臓による組込みTc−99m−MAGG−アスパラギンは前記反応式ならびに実施例1および2に記載の一般合成工程に従って製造した。ただし実施例1のグリシルグリシルグリシンの代わりにグリシルグリシルアスパラギンを使用した。
【0084】Tc−99m−MAGG−アスパラギンは2つの分離可能なジアステレオマー(記号−Aおよび−Bで区別する)として存在する。これらのジアステレオマーTc−99m−MAGG−アスパラギン−AおよびTc−99m−MAGG−アスパラギン−Bを分離して、実施例4に記載の方法と類似した方法を用いてマウスに投与した。これらの2つの化合物に関する生物分布の測定結果をそれぞれ表XIおよび表XII に示す。
【0085】
【表11】
表 XI Tc−99m−MAGG−アスパラギン−Aの生物分布 (数字は最初に注射した放射性薬剤の百分率として表わされる)
時間(分) 血液 肝 臓 腎臓 尿 10 2.6 5.3 4.1 0.2 0.9 74.1 120 0.04 0.6 0.04 0.2 2.2 94.5【表12】
表 XII Tc−99m−MAGG−アスパラギン−Bの生物分布 (数字は最初に注射した放射性薬剤の百分率として表わされる)
時間(分) 血液 肝 臓 腎臓 尿 10 2.6 6.3 4.2 0.1 0.9 73.6 120 0.03 0.4 0.04 0.02 1.8 96.710分および120分でのTc−99m−MAGG−アスパラギン−Aの尿中レベルはそれぞれI−131 OIHの対応レベルの98.9%および102.2%に等しかった。10分および120分でのTc−99m−MAGG−アスパラギン−Bの尿中レベルはそれぞれI−131 OIHの対応レベルの97.1%および103.5%に等しかった。
【0086】これらの高い百分率はTc−99m−MAGG−アスパラギンのどちらのジアステレオマーもシンチグラフィー尿路造影法においてI−131 OIHの代替物として適当であることを示している。また、これらのジアステレオマーは両方ともI−131 OIHの適当な代替物であるので、ジアステレオマーを互いから分離する必要がなく、キットの形でのこれらの化合物の使用はかなり実用的である。
【0087】実施例14Tc−99m−MAGG−グルタル酸の合成および腎臓による取込み前記反応式ならびに実施例1および2に記載の一般合成工程に従って、Tc−99m−MAGG−グルタル酸を製造した。ただし、実施例1のグリシルグリシルグリシンの代わりにグリシルグリシルグルタル酸を使用した。
【0088】Tc−99m−MAGG−グルタル酸は2つの分離可能なジアステレオマー(記号−Aおよび−Bで区別する)として存在する。これらのジアステレオマーを分離して、各々を実施例4に記載のものと類似した方法を使用してマウスに投与した。これらの化合物に関する生物分布の測定結果を夫々表XIIIおよび表 XIV に示す。
【0089】
【表13】
表 XIII Tc−99m−MAGG−グルタル酸−Aの生物分布 (数字は最初に注射した放射性薬剤の百分率として表わされる)
時間(分) 血 液 肝 臓 腎 臓 尿 10 7.5 4.8 5.2 0.4 1.8 50.2 120 0.2 1.7 0.1 0.2 1.1 94.2【表14】
表 XIV Tc−99m−MAGG−グルタル酸−Bの生物分布 (数字は最初に注射した放射性薬剤の百分率として表わされる)
時間(分) 血 液 肝 臓 腎 臓 尿 10 4.2 3.6 6.5 0.2 1.1 65.1 120 0.2 0.9 0.1 0.4 2.4 94.310分および120分でのTc−99m−MAGG−グルタル酸−Aの尿中レベルはそれぞれI−131 OIHの対応レベルの73.0%および99.8%に等しかった。10分および120分でのTc−99m−MAGG−グルタル酸−Bの尿中レベルはそれぞれI−131 OIHの対応レベルの88.6%および98.8%に等しかった。これらの結果はこの化合物がI−131 OIHの代替物として考慮されうることを示している。
【0090】実施例15その他のTc−99m−N3 S系化合物の合成前記反応式ならびに実施例1および2に記載されたTc−99m−MAGGの一般合成工程に従って、本発明範囲内のN3 S系化合物に包含されるその他のTc−99m化合物を合成する。例えば、次の一般式:
(式中、Yは−CH2 CH2 CO2 Hである)で表わされるTc−99m化合物を合成する。この化合物は実施例1のグリシルグリシルグリシンの代わりにNH2 CH2 CONHCH2 CONHCH2 CH2CO2 Hを使用して製造される。
【0091】Tc−99m−MAGGの場合の試験結果に基づくと、この化合物も有意の吸収率を示すことが予期される。
【0092】実施例16実施例15に記載の一般式においてYが−CH(CH2 CH3 )CO2 Hである別のTc−99m化合物を、前記反応式ならびに実施例1および2に記載の一般合成工程に従って合成する。ただし、この場合の出発リガンドはNH2 CH2CONHCH2 CONHCH(CH2 CH3 )CO2 Hである。
【0093】Tc−99m−MAGGGの場合の試験結果に基づくと、この化合物も有意の腎臓吸収率を示すことが予期される。
【0094】実施例17実施例15に記載の一般式においてYが−CH2 CONH2 である別のTc−99m化合物を、前記反応式ならびに実施例1および2に記載の一般合成工程に従って合成する。ただし、この場合の出発リガンドはNH2 CH2 CONHCH2 CONHCH2 CONH2 である。
【0095】Tc−99m−MAGGGの試験結果に基づくと、この化合物も有意の腎臓吸収率を示すことが予期される。
【0096】実施例18Tc−99m−N4 系化合物の合成先に合成されたN3 S環系を有するTc−99m化合物に加えて、N4 系を包含するTc−99m関連化合物を合成することも可能である。例えば、次の一般式:
(式中、Yは−CH2 CO2 Hである)で表わされる新規Tc−99m化合物を、前記反応式および実施例2に記載の一般合成工程を用いて合成した。ただし、この場合はリガンドNH2 CO2 CONHCH2 CONHCH2 CONHCH2 CO2 H(グリシルグリシルグリシルグリシン)を過テクネチウム酸ナトリウムと反応させた。
【0097】得られた化合物Tc−99m−GGGGを実施例4に記載のものと類似の方法を用いてマウスに投与した。注射の10分後および120分後での生物分布の測定結果を表XVに示す。
【0098】
【表15】
表 XV Tc−99m−GGGGの生物分布 (数字は最初に注射した放射性薬剤の百分率として表わされる)
時間(分) 血 液 肝 臓 腎 臓 尿 10 3.8 3.4 4.2 1.1 2.2 69.3 120 0.5 1.0 1.1 1.9 2.5 90.010分および120分でのTc−99m−GGGGの尿中レベルはそれぞれI−131 OIHの対応レベルの89.4%および96.7%に等しく、この化合物がI−131 OIHの代替物となり得ることを示している。
【0099】実施例19環系にいくつかの構造変化を有する他のTc−99m化合物を製造することもできる。例えば、次の一般式:
で表わされる化合物は有意の腎臓吸収率を示すことが予期される。上記一般式においてXがSでありYが−CH2 CO2 Hである化合物は、前記反応式ならびに実施例1および2に記載の一般合成工程に従いかつNH2 CH2 CH2 NHCOCONHCH2 CO2 Hから出発することにより合成できる。
【0100】実施例20次の一般式:
(式中、XはSであり、Yは−CHCH3 CO2 Hである)で表わされる他のTc−99m化合物は、前記反応式および実施例2の一般合成工程に従いC65 COSCH2 CH2 NHCOCONHCH2 CONHCHCH3 CO2 Hと過テクネチウム酸ナトリウムとを反応させることにより合成される。
【0101】Tc−99m−MAGGGを用いて行った試験の結果に基づくと、この化合物も有意の腎臓吸収率を示すことが予期される。
【0102】実施例21次の一般式:
(式中、XはSであり、Yは−CH2 CH2 CO2 Hである)で表わされる別のTc−99m化合物は、前記反応式および実施例2の一般合成工程に従いCH3 COSCH2 CH2 NHCH2 CONHCH2 CONHCH2CH2 CO2 Hと過テクネチウム酸ナトリウムとを反応させることにより合成される。
【0103】Tc−99m−MAGGを用いて行った試験の結果に基づくと、この化合物も有意の腎臓吸収率を示すことが予期される。
【0104】実施例22次の一般式:
(式中、XはNであり、Yは−CH2 CO2 Hである)で表わされる別のTc−99m化合物は、前記反応式および実施例2の一般合成工程に従ってH2 NCH2 CH2 NHCH2 CH2 NHCOCONHCH2 CO2 Hと過テクネチウム酸ナトリウムとを反応させることにより合成される。
【0105】Tc−99m−MAGGGを用いて行った試験の結果に基づくと、この化合物も有意の腎臓吸収率を示すことが予期される。
【0106】前述のことから、本発明の新規Tc−99m化合物はそれらの優れた腎臓吸収率ならびに異性のごとき不利な性質の回避ゆえにシンチグラフィー尿路造影法におけるイメージング薬剤として有用であることが理解されるであろう。さらに、混合工程と加熱工程以外は何も必要としないキットの形でこれらのTc−99m化合物の前駆体を提供できることは、Tc−99mの放射性標識としての使用を非常に実用化ならしめるものである。
【0107】本発明はその精神または本質的特徴から逸脱することなく他の特定形体に具体化することができる。先に述べた実施態様は全ての点において例示としてのみ考えられるべきであり、何ら制限を与えるものではない。従って、本発明の範囲は先の記述よりもむしろ特許請求の範囲に示される。この特許請求の範囲と均等の範囲および意味に含まれる全ての変更は、本発明の範囲に包含されるべきである。
【出願人】 【識別番号】592150228
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・ユタ・リサーチ・ファウンディション
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITY OF UTAH RESEARCH FOUNDATION
【出願日】 昭和60年(1985)6月25日
【代理人】 【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 恭三 (外3名)
【公開番号】 特開平5−208986
【公開日】 平成5年(1993)8月20日
【出願番号】 特願平4−183915