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【発明の名称】 ミノキシジル誘導体及びそれを含有する医薬
【発明者】 【氏名】加納 隆弘

【氏名】有元 冬紀

【氏名】日比 徹

【氏名】杉森 健一

【目的】
【構成】 一般式(I)で示されるミノキシジル誘導体又は薬学的に許容されるそれらの酸付加塩ならびにそれらを含有することを特徴とする育毛剤。
【特許請求の範囲】
【請求項1】一般式(I)
【化1】

(式中、R1及びR2の少なくとも一方は【化2】

を意味し、他方は水素原子を意味する)で示されるミノキシジル誘導体又は薬学的に許容されるそれらの酸付加塩。
【請求項2】上記一般式(I)で示されるミノキシジル誘導体又は薬学的に許容されるそれらの酸付加塩を含有することを特徴とする育毛剤。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、優れた育毛効果を有する新規ミノキシジル誘導体又は薬学的に許容されるそれらの酸付加塩、及びそれを含有する育毛剤に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、脱毛症は多くの人が抱える問題の一つとなっており、壮年性脱毛の他、先天的体質による脱毛、社会機構の複雑化に伴うストレスによる脱毛あるいは薬の副作用に基づく脱毛症が増加しつつある。脱毛の原因としては、従来から種々の説明がなされているところであるが、未だその発症メカニズムの詳細については、不明な点が多い。脱毛発症メカニズムの代表的なものをあげると、皮脂線からの皮脂の分泌が多くなり頭皮の垢などと混じって皮脂漏となり、これが毛孔に詰まって毛根の栄養障害、循環障害を来すとする皮脂漏説、男性ホルモン(テストステロン)が過剰に産生され、それまで男女の両性ホルモンのバランスによって支配されていた頭頂部にホルモン的アンバランスが生じるためであるとするホルモン説、あるいは遺伝又は栄養との関係等、様々な説がある。しかし、いずれも決定的な原因ということができない。
【0003】これらの脱毛予防剤、発毛剤又は養毛剤としては、ヒノキチオ−ル若しくはメント−ルなどの血行促進剤;メチオニン等のアミノ酸類;ミノキシジル、アセチルコリン誘導体等の血管拡張剤;紫根エキス等の抗炎症剤;エストラジオ−ル等の女性ホルモン剤;セファランチン等の皮膚機能亢進剤;5α−リダクタ−ゼ阻害剤;ビタミンB6等のビタミン剤;抗男性ホルモン剤;あるいは4−ヒドロキシ−3−ヘプチルフタリド等のフタリド誘導体(特開平3−135907号公報)等が知られている。このうち、ミノキシジル(2,4−ジアミノ−6−ピペリジノピリミジン−3−オキサイド)は、もともと経口用血圧降下剤として使用されていたものであるが、副作用としての育毛効果に着目し、開発されたものであり、欧米では既に上市され、また我が国においてもその開発が現在進行中である(特開昭58−88307号公報)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、ミノキシジルは、育毛剤としての作用効果は優れているものの、それ自体極性が高く経皮吸収性が低いという欠点、または、連用による動悸等の副作用の出現など安全性の問題を有し、育毛用外用剤としての適用には若干の問題が残されている。また、上記のごとき3−置換−フタリド誘導体も同様である。しかして、本発明の目的は、改善された経皮吸収と優れた育毛作用を有する新規ミノキシジル誘導体及びその塩を提供することであり、他の目的はこれらミノキシジル誘導体又はその塩を含有する育毛剤を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、改善された経皮吸収性と優れた育毛効果、特に初期発毛率をもち、しかも安全性が高い新規ミノキシジル誘導体及びその塩を見いだし、本発明を完成するに到った。即ち本発明は、下記一般式(I)
【化3】

(式中、R1、R2の少なくとも一方は【化4】

を意味し、他方は水素原子を意味する)で表されるミノキシジル誘導体又は薬学的に許容されるそれらの酸付加塩を提供することを目的とするものであり、また、本発明の他の目的は、上記一般式(I)で示されるミノキシジル誘導体又はその塩を含有することを特徴とする育毛剤を提供することである。本発明化合物は、種々の方法で製造できるがこれら製法のうち1例をあげると以下のとおりである。
〔A法〕
【化5】

【0006】メタノ−ル、エタノ−ル、イソプロピルアルコ−ル等のアルコ−ル、又はアセトン等の溶媒中に一般式(1)で示されるミノキシジルを溶解し、その後適量のオルトフタルアルデヒド酸(2)を混合し、常温乃至60℃で、好ましくは40℃乃至50℃で4〜10時間攪拌することによって反応させ、反応終了後、乾固した結晶物を分取型液体クロマトグラフィ−を用いて精製分取することによって一般式(I−a)、(I−b)、(I−c)で示される化合物を得ることができる。
【0007】〔B法〕
【化6】

アセトン、ジメチルフォルアミド(DMF)等の溶媒中で一般式(3)で示されるクロルフタライド、又はブロムフタライドと一般式(1)で示されるミノキシジルとを無水炭酸カリウム等の塩基の存在下4乃至10時間反応させ、洗浄後、乾固し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ−等で精製分取することにより一般式(I−a)、(I−b)、(I−c)で示される化合物を得ることができる。反応温度は、常温乃至60℃好ましくは40〜50℃である。尚、一般式(3)においてXは、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子を意味する。
【0008】本発明の新規ミノキシジル誘導体(I)は、ミノキシジル(1)のプロドラックであり、これにより経皮吸収性が格段に改善された。また、後述の試験例から明らかなとおり、本発明のミノキシジル誘導体は、経皮吸収された後、皮膚等の体内で徐々にミノキシジルとフタリド誘導体に加水分解される。従って、ミノキシジル(1)に比べて確実に経皮吸収されるとともに、初期発毛率も高く、また、かりに傷口等から大量に吸収されても一度に大量のミノキシジルが体内に吸収される訳ではないので、急激な血圧降下や動悸等をおこすようなこともなく、安全性の面でも優れている。
【0009】育毛剤としてのミノキシジル誘導体(I)の配合量は、適用方法又は剤形によりその最適量が異なるので臨界的でないが、一般に育毛料全量中、乾燥物として0.01〜1重量%、好ましくは0.1〜0.5重量%である。本発明に係わる育毛料にはミノキシジル誘導体(I)の他、発毛、養毛効果を高めるために、例えば他の成分としてジアゾキシド、各種抗男性ホルモン剤(例えば、オキセンドロン、4−アンドロステロン−3,17−ジオン−17−サイクリックエチレンケタ−ル誘導体など)、ニコチン酸及びその誘導体、塩化カルプロニウム、ビタミンEアセテ−ト、ビタミンEニコチネ−ト、パントテン酸及びその誘導体、ビオチン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、冬中夏草エキス、朝鮮ニンジンエキス、センブリエキス、トウガラシエキス、セファランチン、プラセンタエキス、エチニルエストラジオ−ル、塩酸カルプロニウム、感光素、その他ビタミン類及びアミノ酸などを共に配合することができる。
【0010】更に、通常育毛料に用いられる添加剤、例えば、ヒノキチオ−ル、ヘキサクロロフェン、フェノ−ル、ベンザルコニウムクロリド、セチルピリジニウムクロリド、ウンデシレン酸、トリクロロカルバニリド及びビチオノ−ルなどの抗菌剤、メント−ルなどの清涼剤、サリチル酸、亜鉛及びその誘導体、乳酸及びそのアルキルエステルなどの薬剤、オリ−ブ油、スクワラン、流動パラフィン、イソプロピルミリステ−ト、高級脂肪酸、高級アルコ−ルなどの油分、その他界面活性剤、香料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、エタノ−ル、プロピルアルコ−ルなどの低級アルコ−ル、水、保湿剤、増粘剤などを本発明の効果を損なわない範囲で適宜配合することができる。
【0011】本発明の育毛料の剤形は、液状、乳液及び軟膏など外皮に適用できる剤形、ならびに液状及び懸濁状などの皮下注入に適用できる剤形のものであればいずれでもよい。特に軟膏、ロ−ション、トニック、スプレ−、懸濁液、乳剤などの塗布剤とするのが好ましい。これらの製剤は、溶解、乳化又は懸濁化によるそれ自体既知の方法通常の方法により製造することができ、前記有効成分以外に、蒸留水;エタノ−ル等の低級アルコ−ル類;セタノ−ル等の高級アルコ−ル類;ポリエチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル等の多価アルコ−ル類;カルボキシメチルセルロ−ス等のセルロ−ス類;動物性、植物性および合成油脂成分;ワセリン、ロウ、シリコ−ン、界面活性剤、香料などを本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。こうして得られる本発明の育毛剤の脱毛症患者への適用量は、その症状の進行程度、併用する他の成分、又は適用方法などに応じて変動しうるので限定的でないが、一般に外皮に適用する場合を例示すると、1日のミノキシジル誘導体(I)の適用量は被適用皮膚面積1cm2当たり約1×10-4g〜1×10-2g、好ましくは約1×10-3g〜5×10-3gとすることができる。本発明化合物は経皮的にも何等の副作用も示さないので、1日当たりの運用回数には制限がない。
【0012】
【実施例】次に実施例及び試験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが本発明は、これにより限定されるものではない。なお、実施例中で使用した略号は、以下の意味を表す。
1H NMR プロトン核磁気共鳴スペクトルIR 赤外分光光度計GC−MS ガスクロマトグラフ質量分析計【0013】実施例1オルトフタルアルデヒド酸(150.13mg)をメタノ−ル(5ml)に溶解し、その後ミノキシジル(105mg)を混合し、50℃の温度条件下で攪拌しながら、7時間反応させた。反応終了後、減圧乾固した残渣を分取型液体クロマトグラフィ−にて精製した。尚、精製条件はクロロホルム−メタノ−ル系を順次使用し精製分取した。その結果、前記一般式(I−a)で示される4−アミノ−2−{(3−フタリジル)アミノ}−6−ピペリジノピリミジン−3−オキシド、前記一般式(I−b)で示される2−アミノ−4−{(3−フタリジル)アミノ}−6−ピペリジノピリミジン−3−オキシド及び前記一般式(I−c)で示される2,4−ジ−(3−フタリジル)アミノ−6−ピペリジノピリミジン−3−オキシドがそれぞれ収率17%、12%、6%の割合で得られた。粗エキスからの全収率は、約35%であった。これら(I−a)、(I−b)、(I−c)の3化合物の物性値を表1に示す。
【表1】

【0014】実施例2アセトン2ml中に無水炭酸カリウム(308mg)を加えミノキシジル(209.3mg)とクロルフタライド(357mg)を加え、室温で8時間以上反応させた後、濾過後アセトン適量で洗浄し、濾液を乾固し、シリカゲルカラムクロマトグラフィ−を用いて化合物(I−a)、(I−b)、(I−c)を精製分取した。尚、精製条件は、ベンゼン−酢酸エチル系を順次使用した。各化合物の収率は(I−a)が3%、(I−b)7%、(I−c)が15%であり、粗エキスからの全収率は、約25%であった。
【0015】次に本発明化合物の薬理効果を検討するため以下に示す試験を行った。尚、ここで本発明品とは、実施例1で得られた一般式(I−a)で示される4−アミノ−2−{(3−フタリジル)アミノ}−6−ピペリジノピリミジン−3−オキサイド)10mgをエタノ−ル10mlに溶解したものを表す。また、対照薬としてミノキシジル(2,4−ジアミノ−6−ピペリジノピリミジン−3−オキサイド)も、同様に調製した。また、コントロ−ルとは10mlエタノ−ル液を意味する。尚、化合物(I−b)、(I−c)についても同様であった。
【0016】試験例1本発明品を用い、C3Hマウス背部毛における養毛・育毛効果について評価した。すなわち、実質的な休止期にある生後12週目のマウス(雄)の背部毛を皮膚を傷をつけない様に電気シェ−バ−を用いて剃毛した(4×4cm2)。これらのマウスを5匹ずつの群に分け、翌日から、本発明化合物、及び対照薬としてのミノキシジル、コントロ−ル等の各試料を各々の群に、1匹当たり1日100μl(100μg/日、匹)毎日背後皮膚に塗布した。この後、経日的に発毛の割合を肉眼及び写真で評価した。その結果を第1図に示す。
【0017】上記試験結果によれば、例えば10日経過時点における本発明品の毛再生率(約48%)はミノキシジルのそれ(約20%)に比べ著しく高く、即ち初期発毛率の点で優れていることが分かる。
試験例2本発明品の経皮吸収率を公知物質ミノキシジルと比較する目的で以下の試験を行った。すなわちSD系ラット(生後15週)の背部毛を皮膚を傷つけないよう電気シェ−バ−で剃毛し(6×8cm2)、本発明化合物を1ml/匹塗布し、15時間後、40時間後に皮膚を15g採取し、ジクロロメタン100mlを加えホモジナイズした。後、全量を3000rpmで15分間遠心分離を行った。上澄み液を蒸発乾固したのち、残渣にメタノ−ル5mlを加えボルテックスミキサ−で振とうした。この試料20μlを高速液体クロマトグラフィ−(HPLC)にかけ、本発明化合物(I−a)の皮膚及び筋肉中への吸収量を測定した。対照薬についても同様の試験を行った。液体クロマトグラフィ−の測定条件は以下の様である。
【0018】HPLC測定条件カラム:ODS 4.6mφ×150mm移動相:メタノ−ル/水UV波長:260nm流速:1.0ml/min結果を表2に示す。
【表2】

以上の試験により対照薬であるミノキシジルそのものに比べ、本発明化合物が優れた経皮吸収性を有することは明かである。
【0019】試験例3本発明化合物が一種のプロドラッグとして作用していることを確認する為、即ち、皮膚に吸収された本発明化合物の皮下組織中におけるミノキシジルへの変換を確認する目的で以下の試験を行った。試験例2と同様にSD系ラットの背部毛を皮膚を傷つけないよう電気シェ−バ−で剃毛し(6×8cm2)、本発明品1ml/匹を正確に塗布し、0時間、15時間、30時間、45時間、60時間後にそれぞれ皮膚15gを採取し、試験例2と同様に20μlの検体をつくり、これをHPLCにかけることにより、皮膚中におけるプロドラッグとしての本発明化合物及びそれらの変換体であるミノキシジルの残存濃度を測定した。結果を第2図及び第3図に示す。第2図は、ミノキシジル誘導体のラット、皮膚中への吸収量を示すグラフであり、このうち一部はすでにミノキシジルに変換されている。また第3図は皮膚中に吸収されたミノキシジル誘導体のミノキシジルへの変換率を示すグラフである。これによれば、例えば、塗布後15時間後に、本発明化合物の約26μgがラットの皮膚中に吸収され(第2図参照)、しかもそのうち約15%に当たる約4μgがミノキシジルに変換されていることが理解される(第2図及び第3図参照)。
【0020】
【発明の効果】以上の試験結果より明かなように、本発明化合物は、改善された経皮吸収性と優れた育毛効果をもち、しかも安全性が高く、育毛剤として応用することができる。
【0021】
【出願人】 【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
【出願日】 平成4年(1992)1月24日
【代理人】
【公開番号】 特開平5−202037
【公開日】 平成5年(1993)8月10日
【出願番号】 特願平4−32889